No.87 脊柱変形 up-to-date

- 商品説明
- 主要目次
- 序文

特に2000年以降に成人を含めた脊柱変形は自然経過,病態,診断,治療の各分野で発展してきた.扱うレベルは胸腰椎から頚椎や骨盤まで広がり,手術自体も内視鏡や腰椎椎体間固定術(LIF)などの小さな侵襲から前後合併のオープン手術まで,手技も多様になった.本号では、最新の診断・治療をはじめ、長期経過やアライメントの評価、首下がり症候群などについて幅広く論文を多く取り上げた.
T.Early onset scoliosis(EOS)
■早期発症型側弯症に対するone-way self-expanding rods(OWSERs)を用いた低侵襲双極固定―ほかのインストゥルメンテーションとの比較 町田正文
U.学童期側弯症
1.病態・自然経過
■思春期特発性側弯症非手術例の長期経過 大橋正幸
2.診 断
■小児整形外科医と脊椎外科医による側弯外来の試み 佐野敬介
3.装具療法
■思春期特発性側弯症に対してのcomputer-aided design/computer-aided manufacturing Chêneau装具とactive corrective装具の矯正率の検討 岩沢太司
4.手術療法
1)矯正手技の工夫
■Dual rod translation法による特発性側弯症の三次元矯正―胸椎後弯形成への新アプローチ 堀 悠介
■思春期特発性側弯症手術のロッドの設置法による胸郭変形の比較 和田簡一郎
■思春期特発性側弯症胸椎カーブにおいてアウトリガーデバイスを用いた胸椎後弯形成の増強効果 関 庄二
■思春期特発性側弯症に対するvertebral coplanar alignment techniqueの強み―特に低後弯に対する生理的後弯形成 山田勝崇
2)神経モニタリング
■脊柱変形における運動誘発電位を用いた術中脊髄機能モニタリング(intraoperative neuromonitoring)―経頭蓋刺激と脊髄刺激による運動誘発電位の比較 町田正文
5.神経筋原性側弯症
■神経筋原性側弯症up-to-date 中村直行
■脳性麻痺に伴う脊柱変形に対する治療 浦山大紀
■脳性麻痺の側弯症に対するone-way self-expanding rod・腸仙骨スクリュー併用による低侵襲双極固定 町田正文
■脳性麻痺患者の側弯症手術の周術期管理 佐藤真亮
■神経筋原性側弯症と特発性側弯症の側弯症手術における周術期合併症の比較 和田簡一郎
V.成人脊柱変形
1.自然経過
■高齢者の脊柱変形における腰痛―椎体終板障害に着目して 中前稔生
2.診 断
■成人脊柱変形における手術での矢状面アライメントの目標値 大内田 隼
■Spinopelvic mismatchに対する股関節代償機能の定量化―pelvic femoral angleを用いた股関節矢状面アライメントの新たな評価法 馬場一慈
■三次元歩行解析が明らかにする脊柱変形の動的変化と代償破綻 坂下孝太郎
3.手術療法
1)変形全体に対する固定手術
■成人脊柱変形に対するcompression hookを併用した脊柱短縮骨切り術―矯正効果とロッド折損予防の検討 菅野晴夫
■成人脊柱変形における低侵襲手技併用pedicle subtraction osteotomy 清水孝彬
■S2 alar-iliac スクリューを併用した脊椎固定術が仙腸関節痛に与える影響の検討 木村 敦
2)矯正手技の工夫
■硬いカーブを有する重度側弯症に対する手術経験
―temporary internal distraction rod(TIDR)法 井上雅俊
■経椎間孔開大型椎体間ケージ回転設置法(最小切開法)による
脊柱矢状面アライメント不良を伴う腰部脊柱変形矯正の工夫 小倉 卓
■高度側弯変形に対するロッド分割脊椎長範囲後方固定術 小島利協
■高齢者脊柱後側弯症に対するdual sacral alar iliac screwを用いた脊柱骨盤固定術
―遠位instrumentation failure予防策 和田明人
■Four delta-rods configuration strategy 薗 隆
■骨粗鬆症性椎体骨折に対するvertebral body stentingの適応と限界
―前方開大手技の有用性 松木健一
3)出血対策
■成人脊柱変形手術でのトラネキサム酸投与の手術出血量の減少に対する効果 平田 光
4)短期手術合併症
■成人脊柱変形手術におけるproximal junctional kyphosisとその予防対策
―上位固定椎インストゥルメンテーションに注目して 木下右貴
■成人脊柱変形手術後の機械的合併症に関する予測因子の特定に関する研究 川畑篤礼
■Controlling nutritional statusを用いた術後主要合併症の予測と予防 角南貴大
5)長期成績
■成人脊柱変形矯正固定術後10年以上経過例の治療成績
―健康関連の生活の質の変化に注目して 谷脇浩志
■腰椎除圧術後の脊椎アライメントの推移と臨床成績との関連 豊田宏光
W.成人の頚椎変形
1.病態・診断法・アウトカム
■首下がり症候群の病態と治療 遠藤健司
2.保存療法とその成績
■首下がり症候群に対する保存療法の予後不良因子 佐野裕基
3.手術療法の適応と手技,成績と合併症
■脊椎手術支援ロボットを用いた頚椎椎弓根スクリュー設置の実際と設置精度 山本祐樹
■首下がり症候群に対するタイプ別手術治療戦略 福原大祐
4.その他
■頚椎椎弓形成術後後弯変形―予測と予防の実際 藤城高志
序
本号特集「脊柱変形up-to-date」に多くの貴重な研究成果を投稿いただきました.ありがとうございました.Early onset scoliosisでは,one-way self-expanding rodを用いた低侵襲双極固定の報告をいただきました.学童期の特発性側弯症については非手術例の長期報告や側弯外来の試み,さらに3D情報を用いたChêneau装具の使用経験が示されました.手術関連ではdual-rod, アウトリガー,coplanar手技などとともに,脊柱変形ではますます重要となる脊髄モニタリングの報告がありました.また,以前は比較的マイナーな存在であった脳性麻痺をはじめとする神経筋原性側弯症への寄稿をいただきました.特に周術期合併症には特発性以上の注視が必要であり,さまざまな取り組みの報告がありました.
成人脊柱変形では,矢状面の評価や股関節をはじめとする隣接関節への考慮が欠かせません.その関係性の解析や,歩行解析を示していただきました.手術関連でもtemporary distraction,経椎間孔開大型椎体間ケージ導入,ロッド分割,dual sacral alar iliac, four delta-rodsなどの報告があり,さらに椎体骨折でのbody stentingなどの寄稿がありました.特に成人では必須の合併症対策として,患者の栄養状態の把握や隣接部障害など機械的合併症の予防の解析がなされています.
一方,頚椎では首下がり症候群の病態の解析ともに,保存療法,そして手術支援ロボットを用いた椎弓根スクリュー設置などの報告がありました.すべての寄稿を紹介することは叶わなかったことをお詫びいたします.
脊柱変形診療は乳幼児から超高齢者まで幅広い年代にわたり,脊椎レベルのみでなく隣接する運動器への視点が必要になりました.自然経過,病態,診断そして治療の各分野で知見がすすんでいます.本号が今後の日常診療,さらに研究や教育に役立つことを願っております.
2025年4月
自治医科大学教授
竹下克志
