別冊整形外科
No.84 バイオ時代におけるリウマチ性疾患の診療
編集 | : 大川淳 |
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ISBN | : 978-4-524-27784-1 |
発行年月 | : 2023年10月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 198 |
在庫
定価7,480円(本体6,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
本邦では,薬物治療から手術的治療の介入まで,関節リウマチ患者のトータルマネジメントを整形外科医が担っている.また、7年ぶりに関節リウマチ診療ガイドラインが改訂され,関節リウマチの診療は変革期にある.本号ではリウマチ診療の現状を解説しつつ、実臨床で役立つタイムリーな情報を掲載している.関節リウマチの評価・手術的治療・薬物治療もちろん、脊椎関節炎・リウマチ性多発筋痛症など,整形外科診療に紛れ込むリウマチ性疾患についても情報が得られる.
T.関節リウマチの病態
1.疫 学
関節リウマチの手術のトレンド 冨永絢子
関節リウマチ患者のmodified Health Assessment Questionnaire(mHAQ)の上昇は翌年の骨折発生と関連する 新井由実
関節リウマチ患者における骨粗鬆症―IORRAコホート研究の結果から 中山政憲
2.基礎研究
関節リウマチ膝の滑膜由来間葉系幹細胞 河野佑二
U.検査・診断
1.血液検査
抗シトルリン化ペプチド/蛋白質抗体と関節リウマチ 梅本啓央
2.画像診断
MRIによる関節リウマチ早期診断と treat to target(T2T)戦略における有用性 池ア龍仁
関節リウマチにおける関節超音波検査の有用性 関 万成
関節リウマチにおけるFDG-PET/CTの有用性 須藤貴仁
V.薬物治療
1.ステロイド
生物学的製剤を投与した関節リウマチ患者におけるステロイド中止困難例 杉村祐介
2.メトトレキサート
リウマチ診療におけるアンカードラッグとしてのメトトレキサート 萩原茂生
3.生物学的製剤
整形外科医が知っておくべき生物学的製剤の特徴 瓦井裕也
関節リウマチに対するゴリムマブの臨床成績 角谷梨花
4.ヤヌスキナーゼ阻害薬
整形外科医が処方するヤヌスキナーゼ阻害薬 中村順一
トファシチニブ,トシリズマブを使用中の関節リウマチ患者に行った整形外科術後経過の比較 内尾明博
W.手術的治療
1.上 肢
関節リウマチ肘関節に対する関節温存手術としての広汎滑膜切除術の可能性 針金健吾
リウマチ肘に対する手術戦略最前線 小田 良
人工手関節置換術の術前計画と短期成績 松尾知樹
リウマチ手に対する人工指中手指節/近位指節間関節の歴史と現況 石川 肇
Monitored anesthesia careと超音波ガイド下選択的知覚神経ブロック併用麻酔での関節リウマチ伸筋腱皮下断裂再建術の
治療経験 窪田綾子
リウマチ手に対する手術戦略最前線 小田 良
2.下 肢
新たな人工足関節置換術の使用経験 矢野紘一郎
関節リウマチの前足部変形に対する関節温存手術 川端紳悟
関節リウマチによる外反母趾変形に対する人工母趾中足趾節間関節置換術の臨床成績 近藤直樹
アルゴリズムに基づくリウマチ前足部手術 猪狩勝則
3.脊 椎
リウマチ頚椎手術の変遷 山中卓哉
関節リウマチの腰椎病変 本田新太郎
4.周術期合併症対策
生物学的製剤を投与した関節リウマチ患者における術後感染 杉村祐介
関節リウマチ患者の整形外科手術における手術部位感染,創傷治癒遅延の治療と生物学的製剤使用の関係 浪花崇一
関節リウマチに対する整形外科手術における周術期ヤヌスキナーゼ阻害薬の休薬 佐原 輝
X.整形外科診療に紛れ込む類縁疾患
1.脊椎関節炎
強直性脊椎炎の診断における整形外科医の役割 岸本賢治
脊椎関節炎外来における診療の実際と最新の動向―体軸性脊椎関節炎を中心に 高橋 宏
脊椎関節炎の現状と整形外科医の役割 小田 良
2.リウマチ性多発筋痛症
リウマチ性多発筋痛症の診断と治療 土田真吏奈
Y.治療システム
1.高齢患者への対応
高齢関節リウマチ患者の治療対応 小宮陽仁
2.多職種連携
関節リウマチにおけるチーム医療の重要性 杉村祐介
リウマチ医が関節リウマチのリハビリテーション治療を理解するために必要な知識 遠山将吾
序
関節リウマチ(RA)に対する薬物治療は,1999年にアンカードラッグとしてメトトレキサートの使用が開始され,さらに2003年には生物学的製剤,2013年にはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬も加わって,treat to target(T2T)という治療戦略のもと,診断早期から積極的に薬物治療が行われるようになりました.ここ20年で大きく変革した薬物治療により寛解症例が多くなり,整形外科医が行う手術的治療は激減するのではないかといわれましたが,本誌に投稿された疫学研究によれば,活動性の高いRA症例の手術件数は漸減しているものの,低活動性のRA症例の手術件数は減っていないようです.また,部位別には膝関節と頚椎に対する手術件数のみが激減し,それ以外の部位に対しては維持されているということです.
この間に,画像診断についても関節エコーによる滑膜炎の評価が一般化し,CTでも腱を含めた軟部組織の評価やPET‒CTによる炎症の評価も可能となりました.また,肩・股・膝といった大関節を除く,中・小関節における機能回復を目的とした手術的治療についても,数多くの投稿論文に最新知見が網羅されています.さらに,RA患者のトータルマネジメントに対する多職種介入の取り組みや,脊椎関節炎・リウマチ性多発筋痛症など整形外科診療に紛れ込むリウマチ性疾患について紹介する論文も投稿されています.
各薬物の実際の使い方や副作用,使用上の留意点を含め,本誌ではまさに「バイオ時代におけるリウマチ性疾患の診療」の現在地点を示すことができたと思います.多くの経験に基づく示唆に富む論文を,明日のリウマチ診療に活かしていただければ幸いです.
2023年10月
横浜市立みなと赤十字病院
大川 淳