別冊整形外科
No.82 上肢疾患の診断と治療の進歩(新鮮外傷を除く)
編集 | : 竹下克志 |
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ISBN | : 978-4-524-27782-7 |
発行年月 | : 2022年10月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 172 |
在庫
定価7,150円(本体6,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
上肢の診療は,患者数の増加に加え,医療技術の進歩により日々学習が必要となっている.肩関節ではリバース型人工肩関節の導入とともに治療体系が大きく変化した.肘・手関節では画像診断・動作解析の進歩により精緻な病態把握がなされている.本誌は,病態把握のための新しい診断法,標準治療の中長期の成績,新規の保存的治療および手術的治療など幅広く掲載.サブスペシャリティの学習にも役立つ内容となっている.
T.総 論
1.病態・診断
1)画像評価
■Dual energy CTの手外科領域での可能性
太田 剛
■肩関節疾患に対するdynamic MRI
西頭知宏
■腱板断裂患者における体組成と腱板筋変性との相関解析
和才志帆
■肘内側側副靱帯損傷に対する靱帯再建術が肘関節接触面に及ぼす影響
門間太輔
2)動作解析
■スマートフォンと機械学習を用いた手根管症候群スクリーニングアプリケーションの開発
小山恭史
■手関節運動時における正中神経伸長率測定の新しい試み
島健一
2.保存的治療:リハビリテーション
■肩甲上腕関節外転角度増加をめざした肩関節外転装具の開発
油形公則
■上肢機能障害に対する装着型肩関節ロボットを用いた新たなロボットリハビリテーション治療
久保田茂希
3.侵襲的治療
1)インターベンショナル治療:多血小板血漿局所注射
■肩関節慢性疼痛疾患に対する多血小板血漿療法の治療効果
川崎隆之
2)人工関節手術
■三次元術前計画ソフトウエアを用いたリバース型人工肩関節置換術に対する術前計画の実際
森川大智
■ナビゲーションシステムを用いたリバース型人工肩関節置換術の実際
中澤克優
4.診療体制
■橈骨遠位端骨折を対象とした骨折リエゾンサービス
若林良明
U.疾患各論
1.肩関節・上腕部
1)肩腱板断裂
■一次修復困難な広範囲肩腱板断裂に対する棘下筋回転移行術の成績
四本忠彦
■大・広範囲肩腱板断裂に対する筋前進術を追加した関節鏡視下腱板修復術の成績―より解剖学的な修復をめざして
四本忠彦
2)凍結肩
■凍結肩に対する診断と治療の工夫
大歳晃生
2.肘関節・前腕部:変形性肘関節症
■変形性肘関節症に対するdistal humeral hemiarthroplasty
葛原絢花
3.手関節・手
1)狭窄性腱鞘炎
■狭窄性腱鞘炎・ばね指
坂本大地
2)Dupuytren 拘縮
■Dupuytren拘縮に関する最近の知見と治療法
吉元孝一
3)Heberden 結節
■Heberden結節に対する整容・機能面に配慮した指節間関節固定術の有効性と課題
市原理司
4)手指変形性関節症
■手指変形性関節症
大谷和裕
5)母指手根中手関節症
■母指手根中手関節症の評価とリハビリテーション
前田暁美
6)部分手関節固定・近位手根列切除
■部分手関節固定術の骨癒合率を上げるための工夫―血管柄付き骨移植術と新しいステープル固定の併用
川崎恵吉
■Scaphoid nonunion advanced collapse wristおよびscapholunate advanced collapse wristに対する治療選択
由利拓真
4.スポーツ傷害:肩関節唇損傷
■肩関節後方不安定症に対する解剖学的修復をめざした鏡視下関節唇修復術の手術成績
糸魚川善昭
5.関節リウマチ:リウマチ手
■関節リウマチ手関節病変および手指伸筋腱断裂に対しての治療方針と診療の実際
近藤直樹
6.神経障害・末梢神経疾患
1)複合性局所疼痛症候群
■複合性局所疼痛症候群(CRPS)の治療―pre-CRPS段階で治療を開始すればCRPSは予防可能か
太田 剛
2)胸郭出口症候群
■胸郭出口症候群に対する手術アプローチ
鈴木 拓
■胸郭出口症候群の診断と治療
住元康彦
■胸郭出口症候群の診断と治療の進歩
佐竹寛史
3)肘部管症候群
■肘部管症候群の診断―運動神経のインチング法
多田 薫
4)後骨間神経麻痺
■非外傷性後骨間神経麻痺の鑑別診断と治療方針
小川高志
5)手根管症候群
■手根管症候群の超音波診断の進歩
宮本英明
■有鉤骨鉤の解剖学的破格が鏡視下手根管開放術に与える影響
斉藤公亮
6)Guyon 管症候群(尺骨神経管症候群)
■尺骨神経管症候群の治療経験
藤井賢三
序
本誌は,“上肢疾患の診断と治療の進歩”を取り上げました.外来で目立つのは高齢化に伴う変性疾患の増加です.2000年以前の前世紀には上肢の変形性関節症は母指中手指節関節を除けば比較的めずらしい疾患でしたが,腱板損傷と合わせて肩の疼痛を訴える高齢者は腰・膝に劣らない患者数になりました.肩関節ではリバース型人工肩関節の導入とともに治療体系が大きく様変わりしました.肘・手関節においても精緻な病態把握がなされつつあり,本テーマは,まさしくサブスペシャルティにふさわしい状況になっています.
下肢は歩く動物にとって基盤となる移動機能を担い,ロコモーションにおいても最重要な部位になります.一方で,上肢は尊厳のある生活を送り人間ならではの文化的な活動を行うために必須の運動器といえます.
総論では,CTやMRIの新しい知見や体組成の解析,スマートフォンアプリケーションの開発や運動による組織伸張の測定に加え,橈骨骨折に対する骨折リエゾンサービスなど興味深い論文を投稿いただきました.疾患各論では,肩関節から肘,手関節・手までの腱障害や変形性関節症に対する保存的治療および手術的治療を幅広く含む内容となりました.さらに神経障害疾患として,肘部管症候群や後骨間神経麻痺,手根管症候群,Guyon管症候群に加え,複合性局所疼痛症候群とともに胸郭出口症候群に対する多くの報告をいただきました.
本特集が今後の日常診療,さらに研究や教育のお役に立つことを願っております.
2022年10月
自治医科大学
竹下克志