雑誌

別冊整形外科

No.79 骨・軟部腫瘍のマネジメント(その1)

編集 : 松田秀一
ISBN : 978-4-524-27779-7
発行年月 : 2021年4月
判型 : A4
ページ数 : 230

在庫あり

定価7,150円(本体6,500円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

骨・軟部腫瘍の領域ではさまざまな進歩がみられる.診断技術,がんゲノムに基づいたprecision medicineの取り組み,粒子線治療をはじめとした放射線治療,新しい分子標的治療,さらには免疫療法の取り組みも始まっている.本号は(その1)として,診療体制,基礎研究,診断,および治療総論について取り上げた.骨・軟部腫瘍の治療は,他診療科,他職種,多施設の協力が必須であり,病診連携やキャンサーボードなど各施設の特色のある取り組みを紹介した.また,がんゲノム医療やリキッドバイオプシーなど最先端の情報も取り上げている.

I.総論
 1.診療体制
  がん診療連携拠点病院における整形外科の役割
  サルコーマセンター設立と腫瘍内科医との連携−集約化と地域連携
  癌の遺伝的素因を有する患者に対する診療体制−神経線維腫症1型
 2.最新の基礎研究
  近年の研究から明らかとなった肉腫研究の課題
II.診断
 1.画像診断
  骨・軟部腫瘍におけるFDG-PET/CTの役割
  骨・軟部腫瘍におけるPET/CT検査の有用性
  整形外科医が知っておくべき有痛性軟部腫瘍
  デスモイド型線維腫症における新たな予後予測−T1強調画像におけるblack fiber signの有用性
 2.組織・遺伝子診断
  専門医が関与すべき骨・軟部腫瘍の診断
  軟部腫瘍の診療における細胞診のすすめ
  遺伝子検査を目的とした転移性骨腫瘍に対する骨生検
  デスモイド型線維腫症の病理組織診断におけるピットフォール−CTNNB1遺伝子変異解析の有用性
  粘液線維肉腫の臨床病理学的解析に基づく治療戦略
  骨・軟部腫瘍におけるリキッドバイオプシーの開発
  骨・軟部腫瘍におけるリキッドバイオプシー
  肉腫におけるがんゲノム医療の意義
  骨・軟部腫瘍におけるがんクリニカルシークエンス
  RNAシークエンス/融合遺伝子パネル(MSK-fusionパネル)を用いた
  骨・軟部腫瘍における新規融合遺伝子の探索と臨床所見との関連性の解析
  骨肉腫ゲノムの多様性
 3.骨関連事象(SRE)への対応
  骨転移カンファレンス
  骨転移診療における骨転移キャンサーボードの意義
  骨転移診療における院内連携−骨転移外来
  積極的介入型骨転移キャンサーボードの試み
  積極的骨転移診療への3ステップ
  大腿骨に生じた転移性骨腫瘍の術後経過
  骨転移を主訴とした初診時原発不明癌−プライマリケア医も含めた診断戦略
III.治療総論
 1.化学療法
  骨肉腫に対する周術期化学療法
  滑膜肉腫の新たな治療戦略
 2.免疫療法
  肉腫における免疫療法
 3.AYA世代への対応
  思春期・若年成人世代肉腫患者の機能予後と心理社会的問題のマネジメント
  小児および思春期・若年成人(AYA)世代
  悪性骨・軟部腫瘍患者に対する妊孕性温存療法
 4.がんロコモ
  がんの運動器診療−がんロコモとその対策
  がんロコモに対する整形外科無床診療所レベルでの見解



 整形外科は外傷、変性疾患を扱うことが多く、悪性腫瘍を含む骨・軟部腫瘍の取り扱いについては、少し距離をおかれている先生方も多いかと思います。しかし、腫瘍類似疾患を含む良性軟部腫瘍は日常診療で遭遇することも多く、がん治療の進歩とともに骨転移の取り扱いについては整形外科医の役割が大きく求められています。日本整形外科学会では骨・軟部腫瘍の学術集会を独立して開催するなど、以前より骨・軟部腫瘍の診療、研究、教育に力を入れており、世界をリードする研究成果も日本から発信されています。また近年、骨・軟部腫瘍の領域ではさまざまな進歩がみられます。診断技術、がんゲノムに基づいたprecision medicineの取り組み、粒子線治療をはじめとした放射線治療、新しい分子標的治療、さらには免疫療法の取り組みもはじまっています。

 このたび「骨・軟部腫瘍のマネジメント」という企画をたてました。大変多くのご投稿を頂き、1冊では収録できないほどの分量になりましたので2冊に分けてお届けすることになりました。本号は(その1)として、診療体制、基礎研究、診断、および治療総論について取り上げています。沢山のご投稿を頂き、心より御礼申し上げます。

 骨・軟部腫瘍の治療は、整形外科医一人で行えることは少なく、他診療科、他職種、多施設の協力が必須となります。本号でも病診連携やキャンサーボードなどの取り組みについて各施設の特色のある取り組みが紹介されています。がんゲノム医療やリキッドバイオプシーなど最先端の情報も取り上げてもらっており、骨・軟部腫瘍専門医はもちろんのこと、本号を通して若い整形外科の先生方にも骨・軟部腫瘍の領域に興味を持って頂ければ大変有り難く思います。一方、骨転移に伴う事象への対応や、がん患者に伴う運動機能障害である「がんロコモ」への対応は、骨・軟部腫瘍専門医だけではなく、すべての整形外科医に求められているものです。是非多くの先生方にご一読頂ければ幸いです。

2021年4月
京都大学教授
松田秀一

9784524277797