別冊整形外科
No.76 運動器疾患に対する保存的治療
私はこうしている
編集 | : 竹下克志 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-27776-6 |
発行年月 | : 2019年10月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 192 |
在庫
定価7,150円(本体6,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
運動器疾患の大半は保存的治療の適応である。本号では、保存的治療がより豊富な情報とリソースを礎として行われるようになったことが再認識できる論文、またマニピュレーションなど徒手治療、テーピングや装具、さらに多血小板血漿治療に関する論文など多彩な治療法を盛り込んだ。巻頭には、近年整形外科医が直面する、複数の併存疾患を有する高齢者診療の現状に関する論文を掲載した。
I.巻頭トピックス
保存的治療を選択した大腿骨近位部骨折患者に対して整形外科医は内科主科での治療を希望している−91例のロジスティック回帰分析を用いた検討
地方都市の急性期病院整形外科における入院保存的治療の実態調査
II.保存的治療にあたっての診断,支援機器,診療体制
マークシート式問診票を用いた運動器検診の結果と問診票の精度
アドヒアランスが向上するスマートフォンアプリの開発
腰椎分離症に対する保存的治療後の競技復帰判定にはMRIが有用である
骨転移集学的診療における整形外科へのニーズと役割
III.保存的治療各論
ロコモティブシンドロームに対するアプローチ
足アーチ部,趾間部に施行した「非定型的」テーピングの効果
関節内注射の利点と効用,副作用とその対策
病態に応じた多血小板血漿の使い分け
多数点一回法での組織損傷部投与による運動器エコーガイド下多血小板血漿治療−多血小板血漿を用いて組織修復により疼痛改善をめざす新たな運動器治療法
整形外科疾患における多血小板血漿療法
IV.上肢疾患に対する保存的治療
凍結肩に対する非観血的関節授動術(サイレント・マニピュレーション)の術後成績
母指手根中手関節症,Heberden結節の保存的治療
手指骨折に対するテーピングの工夫−隣接手指との固定による治療法の試み
母指手根中手関節症に対するカスタムメイド軟性装具の有効性
ばね指−保存的治療の新展開
V.下肢疾患に対する保存的治療
肉ばなれに対する超音波ガイド下多血小板血漿療法−積極的保存的治療の開発をめざして
内側半月板の脱出を伴った変形性膝関節症患者への多血小板血漿注射の効果
変形性膝関節症に対する多血小板血漿療法
変形性膝関節症に対する新しい疼痛治療戦略−患者教育を中心とした貼付剤,内服薬,装具を用いたオーダーメイド治療
短下肢装具を用いたアキレス腱断裂に対する保存的治療
第5中足骨基部骨折に対する保存的治療の工夫−Uスラブ型ギプス副子を用いた外固定法
VI.脊椎,骨盤疾患に対する保存的治療
環軸椎回旋位固定の保存的治療
頚椎症性神経根症に対する超音波ガイド下頚部神経根ブロック
頚椎後縦靱帯骨化症に対する保存的治療
化膿性脊椎炎の保存的治療
骨粗鬆症性脊椎椎体骨折のMRIによる診断とハイブリッド半硬性装具を用いた保存的治療
骨粗鬆症性椎体骨折の保存的治療成績−ステロイド性骨粗鬆症を含めて
腰部椎間板ヘルニアに対するコンドリアーゼ化学的髄核融解術
難治性仙腸関節障害に対する保存的治療−理学療法からのアプローチ
仙腸関節機能障害を伴った末期変形性股関節症に対するAKA(arthrokinematic approach)−博田法での長期治療経過
VII.小児整形疾患に対する保存的治療
神経筋性側弯症に対する装具療法
発育期仙骨翼疲労骨折に対する保存的治療
乳幼児未整復発育性股関節形成不全例に対するoverhead traction法−ホームトラクションの導入
VIII.有害事象と対策,予防
新しい深部静脈血栓症予防機器−床上下肢自動運動器
術後せん妄予防のための術前栄養介入の効果
序
本号では「運動器疾患に対する保存的療法」をテーマとして取り上げました。手術手技の改良や開発に努めることは整形外科医の本分であります。手術的治療と保存的治療のせめぎ合いがあってこそ、両方の治療への適応や成績が明確になっていきます。
第II章「保存的治療にあたっての診断、支援機器、診療体制」では、問診票やスマートフォンなどのポータブル電子機器の活用、超音波ガイド支援、画像による診断精度の向上、さらには集学的診療体制など、保存的治療がより豊富な情報とリソースを礎として行われるようになっていることを再認識する内容となりました。続く第III〜VIII章の各論部では、マニピュレーションなど徒手治療、テーピングや装具、さらに多血小板血漿療法など多彩であり、保存的治療の進化を感じさせる興味深い論文を掲載いたしました。
われわれ整形外科医はがんを含めた併存疾患を有する脆弱な患者群の診療にも関わらざるをえなくなってきました。未曽有の医療環境であり、結果的に整形外科的診療に十分な時間を割きにくくなっています。今年からは働き方改革の圧力も加わり、整形外科疾患以外の病状への対処はますます喫緊の課題となっています。これに対し認定看護師やホスピタリストなどいくつかの方策が提言されていますが、整形外科だけでは対応困難であり外科部門が連携して病院や厚生労働省へ働きかける必要があるのではないでしょうか。本号に井上三四郎先生からご寄稿いただいた2論文は、まさしくこうした整形外科の現状が示されておりますので、タイムリーな内容として第I章「巻頭トピックス」として掲載しております。
本号が今後の日常診療、さらに研究や教育のお役に立つことを願っております。
2019年10月
自治医科大学教授
竹下克志