別冊整形外科
No.75 整形外科診療における最先端技術
編集 | : 松田秀一 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-27775-9 |
発行年月 | : 2019年4月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 230 |
在庫
定価7,150円(本体6,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
整形外科の領域において、手術時のコンピュータナビゲーションはわが国に導入されてすでに15年以上が経過している。また、手術教育においてもvirtual reality、augmented realityを用いた取り組みもはじまっており、さらには人工知能を用いた画像診断の開発もすすめられている。本特集号では最先端の画像、動態解析、ロボット技術はもちろんのこと、症例が蓄積されてきたプランニングやナビゲーション技術の有用性や、使用することによって明確になってきた手術目標などの知見についても紹介した。
I.診断,評価
1.新しい画像・機能診断
拡散テンソル画像による頚部脊髄症の神経障害定量評価
腰部脊柱管狭窄症評価における脊柱管内apparent diffusion coefficient,fractional anisotropy値の有用性
椎間板MRIの最新技術
MRI定量的画像法(T1ρ,T2,T2*)による椎間板変性の評価
腰痛の解明−脳イメージングを用いて
マルチスライスCT,T2マッピングMRIを用いた寛骨臼形成不全股における軟骨下骨梁と関節軟骨の評価
多機能OCTを用いた早期変形性関節症軟骨の粘弾性力学特性マイクロ断層診断
整形外科診療における超音波検査−画像診断の第一選択は「X線」から「超音波」へ
整形外科診療における超音波診断(エラストグラフィ,パワードプラ,3D超音波,real-time virtual sonography)の有用性
整形外科領域における超音波剪断波エラストグラフィの有用性−肩腱板修復術の術前評価への応用
超音波はpink pulseless handの血管展開の判断に有用である
関節リウマチ診療におけるイメージングバイオマーカーとしてのPETの有用性
生体磁界計測による神経活動イメージング
2.人工知能
画像診断領域における深層学習
人工知能による骨折の画像診断
3.ウェアラブルデバイスを用いた評価
腰椎疾患患者の病態ならびに治療効果の新しい評価法−ウェアラブル端末を用いた客観的次世代解析
スマートウォッチを用いた振り子運動の定量的解析とその可能性
メガネ型ウェアラブルセンサの開発と整形外科領域への応用
4.形態評価
EOSを用いた変形性股関節症患者に対する三次元的な脊椎,骨盤,下肢アライメントの評価
トモシンセシスの原理と整形外科領域への応用
3Dデプスセンサを用いた脊柱側弯症に対する自動診断支援技術の開発
5.動的評価
Model-based image-matching法を用いた運動解析
三次元動作解析装置を用いたpoint cluster techniqueとその臨床応用
電磁気センサを用いた関節運動の動的評価
後方安定型人工膝関節の階段昇り動作におけるポスト前方インピンジメント−動態解析による検討
2D-3Dマッチングを用いた肩甲骨三次元動態解析−術後リハビリテーションへの臨床応用を目指して
成人脊柱変形(首下がりと腰椎変性後側弯)に対する三次元歩行動作解析を用いた全脊柱アライメントの動的評価
6.コンピュータを用いた病態,手術の生体力学解析
CT有限要素法を用いた大腿骨の生体力学解析
三次元画像解析システムを用いた脊椎手術支援
II.手術シミュレーション,手術教育
上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に対するMRI,CTの三次元合成画像を用いた術前評価と手術計画
関節窩骨欠損症例に対するリバース型人工肩関節全置換術と3Dプリンタを用いた関節窩再建計画の工夫
人工膝関節全置換術におけるvirtual surgeryによる手術手技の検討
フリーソフトウェアによる画像支援,シミュレーション
バーチャルリアリティシミュレータによる膝関節鏡手術手技トレーニング
III.手術支援
1.ナビゲーション
人工股関節全置換術におけるCT-based navigation systemの有用性−肥満患者に対しても同様の精度で設置可能である
簡易ナビゲ−ションシステム,下肢牽引手術台を併用した仰臥位前外側進入関節包靱帯温存人工股関節全置換術の手術手技
ポータブルナビゲーションシステムを用いた人工膝関節全置換術における骨切り精度の検討
Image-free navigationを利用した膝前十字靱帯再建時の膝安定性評価
2.Patient specific guide
脊椎椎弓根スクリュー挿入用のpatient specific templateの設計と臨床評価
前腕変形治癒に対するチタン製カスタムメイド骨切りガイドの治療経験
3Dプリンタを利用したpatient specific instrumentationにおけるデザインの工夫とセット化−寛骨臼回転骨切り術,大腿骨前方回転骨切り術,大腿骨弯曲内反骨切り術編
3.術中画像支援
ハイブリッド手術室における骨盤輪,寛骨臼骨折に対する低侵襲スクリュー固定術
術中MRIを用いた骨・軟部腫瘍手術への新たな試み
整形外科手術におけるスマートグラス導入の試み
4.Augmented reality
仮想現実,拡張現実技術を用いた脊椎,脊髄腫瘍切除術の術前計画と手術支援−患者個別データに基づいた画像空間認識による腫瘍切除の正確性向上を目指して
Augmented realityを用いた簡易ナビゲーションシステム
コンピュータテクノロジーを使用した人工膝関節全置換術−CTテンプレートによる大腿骨回旋位の決定とaugmented reality手術への応用
5.その他の手術支援
デジタル圧センサを用いた人工膝関節全置換術関節摺動面圧評価の意義
最適な人工股関節全置換術設置を目指して−軟部バランスについての考察
Electrohydrodynamics現象を利用した画期的な新しいターニケット装置の開発と至適圧力の検討
IV.カスタムメイドインプラント
4D-有限要素解析シミュレーションによる術前計画と積層造形技術を含む脊柱変形矯正用カスタムメイドインプラントの開発
三次元積層造形法による人工股関節インプラント
Additive manufacturing技術を応用したカスタムメイド寛骨臼インプラントの開発
自家骨製ネジによる骨折治療
V.リハビリテーション,義肢,装具
腰部支援用ロボットスーツを用いた重作業における職業性腰痛の予防
ロボットスーツの人工膝関節全置換術後におけるリハビリテーションの可能性
脳性麻痺患者に対するロボットスーツを用いた歩行訓練の実際とその効果
ロボットスーツの新しい使用法−残存筋活動をトリガーとした麻痺肢訓練
義手開発における3Dプリンタの臨床応用
序
近年、コンピュータやイメージングテクノロジーの急速な発展に伴い、医療を取りまく状況も著しく変化してきました。整形外科の領域においても、さまざまな医療技術が開発され、実用化されてきています。本号のテーマは、「整形外科診療における最先端技術」とさせていただき、たくさんのご投稿をいただきました。ご執筆いただいた先生方にはこの場をおかりして心より感謝申し上げます。
第I章は診断、評価としましたが、近年の画像技術の発展にも伴い、本章が本号の半分を占めることになりました。ご一読いただければおわかりになると思いますが、MRI、超音波、CT、PETなど多種多様の画像技術が撮像のモダリティなどを変えて、今までは評価不能であったことについても、大変わかりやすく病態を把握することが可能になってきています。また、近年AIが非常に注目されていますが、整形外科分野でも取り組みが進んでおり、その成果の一端をご紹介いただいております。
第II、III章の手術計画や手術支援についても、技術革新が進んでいます。MRIとCTの融合画像や3Dプリンタを用いた手術シミュレーション、手術支援機器などは最近のトピックです。コンピュータナビゲーションだけではなく、最近では、virtual reality、augmentedrealityも応用した手術支援が始まっています。第IV章のカスタムメイドインプラントも以前からその必要性は指摘されてきていましたが、積層造形技術の発展とともに実用化が始まりつつあり、これからが期待される分野と思われます。
最後の章では、リハビリテーションを取り上げました。この分野もロボット技術の革新とともにさらに発展していく分野でしょう。
以上のように本号は、最先端の技術を数多く取り上げさせていただきました。どこの施設でもすぐに取り組めるものばかりではないと思いますが、新しい医療技術の開発に対して多大なるご努力をされている先生方の取り組みをご紹介させていただきたいと思いました。楽しんで読んでいただきたいと思っておりますし、読者の先生方による新しい医療技術開発のヒントになればと期待しております。
2019年4月
京都大学教授
松田秀一