別冊整形外科
No.71 骨折(四肢・脊椎脊髄外傷)の診断と治療(その2)
編集 | : 遠藤直人 |
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ISBN | : 978-4-524-27771-1 |
発行年月 | : 2017年4月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 206 |
在庫
定価6,930円(本体6,300円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
骨折は整形外科医が日常的によく経験し、特に若手医師が担当する症例の多くは外傷、骨折である。さらに昨今では骨折治療そのものの専門性が高まっている。その診断と治療においては、まず重症度評価を行い、全身治療とともに骨折の治療方針について高度な判断と技術に基づく対応が必要となる。本特集では骨折の病態、診断から治療までを幅広く取り上げた。
I.上肢・体幹
1.鎖骨
鎖骨骨幹部および遠位端骨折に対する治療法の選択
鎖骨骨幹部骨折Robinson分類type2B1に対する治療法の検討
不安定型鎖骨遠位端骨折の分類とアーム付きノンロッキングプレートの使用経験
サソリ型プレートを用いた不安定型鎖骨遠位端骨折の治療
2.上腕骨
65歳以上の高齢者に生じた上腕骨遠位端骨折の治療戦略と臨床成績
肩人工関節置換術後の上腕骨骨幹部骨折に対する治療
3.肘関節および周囲
橈骨頭骨折と尺骨鉤状突起骨折の治療成績からみた手術適応
高度不安定性を伴う肘関節内骨折に対するヒンジ付き創外固定の併用療法
4.橈骨(遠位)
橈骨遠位端骨折に対する手術的治療−小皮切手術の工夫
橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングプレート固定
手掌から突いて受傷したと思われる手掌に擦過傷のある掌側転位型橈骨遠位端骨折の治療
5.手
橈骨遠位端骨折に合併した尺骨遠位端骨折に対する髄内釘固定法
舟状骨中央1/3骨折Herbert分類type B1・B2に対する掌側からの経皮的スクリュー固定
有鉤骨鉤骨折に対する骨接合術と摘出術の治療成績
ナックルキャストを用いた手基節骨骨折の保存的治療
II.手術支援・最新の取り組み
1.コンピュータ支援・ナビゲーションシステムの活用
3D–CTナビゲーションを使用したiliosacral スクリュー挿入手術の実際
寛骨臼骨折に対する術中CT ナビゲーションの使用経験
2.開放骨折の治療
開放骨折の治療−現在の問題と解決策は何か?
重症開放骨折の治療戦略−特に下腿骨について
重度開放骨折における血管柄付き組織移植術を用いた治療戦略と機能再建
Orthoplastic approachによる重症下腿開放骨折の治療成績
3.感染予防と治療
長管骨骨折術後感染性偽関節に対する抗菌薬混入セメント髄内釘の使用経験
Modern Papineau法による骨再建の治療成績
4.創傷治癒
四肢外傷治療における局所陰圧閉鎖療法の効果的使用方法
遊離血管柄付き腸骨と遊離浅腸骨回旋動脈穿通枝皮弁の二つの皮弁を単一術野から採取する方法
5.超音波による骨折治療
高齢者橈骨遠位端骨折に対する低出力超音波パルスを併用した保存的治療の工夫
指節骨難治性骨折に対する低出力超音波骨折治療の有効性
6.再建法(Masquelet法など)
Masquelet法による大腿骨非感染性骨欠損に対する再建術
健側大腿よりreamer-irrigator-aspirator systemを用いて採骨しMasquelet法を行った骨欠損を伴う大腿骨顆部開放骨折
大腿骨からのreamer-irrigator-aspirator systemを用いた新しい自家骨採取法
III.小児骨折
手術的治療を行った上腕骨近位骨端線損傷
学童期大腿骨骨幹部骨折に対する創外固定の治療経験
IV.高齢者骨折
高齢者における脆弱性骨盤骨折
粉砕骨折における一期的人工関節置換
V.治療とケアのシステム・チームと人材育成
1.高齢者大腿骨近位部骨折地域連携パス
新潟市および周辺地域における連携パスの現状
高齢者大腿骨近位部骨折地域連携パス−無床診療所の役割について
2.リエゾンサービス
骨粗鬆症リエゾンサービス−チームで取り組む新しい時代の骨粗鬆症診療
急性期病院における骨粗鬆症リエゾンサービス−骨リボン(Re・Bone)運動の取り組み
序
骨折(四肢・脊椎脊髄外傷)は整形外科医が日常的によく経験するもので、特に若い整形外科医にとって担当する症例の多くは外傷・骨折であり、手術を執刀する例も骨折例が多いのが現状と思います。一方、骨折の形態、軟部組織の状態、神経・血管損傷の有無、さらには患者の年齢、骨(骨粗鬆症)の状態、基礎疾患や合併損傷など、それぞれの症例ごとに異なります。例えば、小児期にみられるものから青年〜壮年期でのスポーツ傷害、労働災害、交通災害としての受傷例もあります。加えて高齢者の脆弱性骨折例も近年増加しており、高齢者の加齢による内臓器障害、認知機能低下、摂食嚥下障害、家庭環境などが骨折そのものの治療法や治療後の自立獲得・維持に影響しています。さらには、骨折単独の例から多発外傷のなかで骨折を伴う例まであります。
したがって患者の重症度の評価を行い、全身の傷害への治療とともに骨折への治療方針について高度な判断に基づく対応が必要となります。そのため、骨折(四肢・脊椎脊髄外傷)の診断と治療においては、高度な判断を行うことができるような力量と技術を習得する必要があります。さらに骨折治療そのものの専門性も高まっていることから、本特集号では骨折(四肢・脊椎脊髄外傷)の病態、診断から治療まで幅広く取り上げ、上肢・体幹骨折の診断と治療、および手術支援をはじめとした最新の取り組み、小児・高齢者骨折、高齢者大腿骨近位部骨折地域連携パスや骨粗鬆症リエゾンサービスなどを扱っております。
骨折に対する手術および保存的治療とその成績、診断や治療に関する新しい知見と取り組みについて、さらには推奨する基本的な治療法についての論文が多数集まりました。それだけこの分野への関心が高いことを示していると思います。存分に読んで参考にしていただき、実際の診療に役立てていただくことを願うものです。
2017年4月
新潟大学教授
遠藤直人