別冊整形外科
No.67 変形性膝関節症の診断と治療
編集 | : 越智光夫 |
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ISBN | : 978-4-524-27767-4 |
発行年月 | : 2015年4月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 230 |
在庫
定価6,930円(本体6,300円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
変形性膝関節症は、超高齢社会において予防や治療に最も力が注がれなければならない重要な疾患の一つである。早期診断のためには優れた画像診断、バイオマーカー等の診断技術が必要となるが、本号ではその最新の知見をまとめた。また治療法もさまざまあるが、種々の保存的・手術的治療から、その他今後期待される新しい治療についてまで幅広く取り上げている。
I.病態・疫学
1.病態
1)軟骨変性
制御因子からみた軟骨変性機構
初期変形性膝関節症の病変進行の部位別差異
2)疼痛
変形性膝関節症の痛みの病態
変形性膝関節症の疼痛と進行におけるMRIの骨髄異常陰影の関連
末期変形性膝関節症における疼痛と滑膜炎,炎症性メディエータの発現パターンの連関性
変形性膝関節症の重症化に伴う疼痛影響因子の変化
II.診断・評価の進歩
1.MRI検査
T1rhoマッピングにおける半月板変性の評価
2.関節症マーカー
血清マーカーによる変形性膝関節症の病態評価・進行予測−cartilage oligomeric matrix proteinとヒアルロン酸を用いた検討
変形性膝関節症の関節症マーカーとなるマトリセルラープロテイン
初期変形性膝関節症におけるバイオマーカーを用いた疼痛と軟骨代謝の連関
変形性膝関節症のバイオマーカー−血清ヒアルロン酸の臨床応用に向けたエビデンス
変形性膝関節症のX線学的進行予測因子としての尿中II型コラーゲンC−テロペプチド−3年間の縦断的大規模住民検診(松代膝検診)より
3.歩行解析
変形性膝関節症患者の歩行解析
開大式・閉鎖式高位脛骨骨切り術後の臨床成績と歩行解析の比較
片脚立位移行動作の生体力学的検討−歩行動作の評価および動作修正の指標
変形性膝関節症の歩行解析−モーションキャプチャーシステムの疫学調査への応用
III.保存的治療
1.薬物療法
1)NSAIDs,オピオイド,プレガバリン
変形性膝関節症に対する内服薬による薬物療法
2)関節内注射
変形性膝関節症に対する2種類のヒアルロン酸製剤による治療効果の比較・検討
変形性膝関節症に対するヒアルロン酸関節内注射の有効性と安全性
2.理学療法
1)物理療法
変形性膝関節症に対する深部温熱療法
変形性膝関節症に対する物理療法のエビデンスと骨格筋電気刺激の効果
2)運動療法,栄養療法
変形性膝関節症における運動療法の有効性と限界
3)装具療法
変形性膝関節症に対する膝装具療法−膝関節痛・歩行バイオメカニクス・歩行能力に与える効果に関する臨床介入研究
歩行解析を用いた変形性膝関節症に対する装具療法の効果の検討
IV.手術的治療
1.鏡視下デブリドマン
変形性膝関節症に対する鏡視下半月板部分切除術への警鐘
変形性膝関節症に対する鏡視下デブリドマン
2.高位脛骨切り術
内側型変形性膝関節症に対する開大式楔状高位脛骨骨切り術の術後成績とピットフォール
ロッキングプレートを用いた内側開大式楔状高位脛骨骨切り術の短期成績と合併症
進行した内側型変形性膝関節症に対する脛骨顆外反骨切り術−手術手技上の留意点
3.人工関節置換術
1)UKA
変形性膝関節症に対するスクリュー付き脛骨板の人工膝関節単顆片側置換術の成績
Medial and lateral unicompartmental knee arthroplastyの適応・手技と短期成績
2)TKA
後十字靱帯温存型人工膝関節全置換術の手術手技
人工膝関節全置換術を楽にする新しいレッグポジショナー
キネマティックアライメント人工膝関節全置換術
術中に後十字靱帯温存/切離を決定できる人工膝関節の歴史とその成績−信州大学とその関連施設の場合
後方安定型人工膝関節全置換術において術中関節ギャップが術後膝キネマティクスにどう影響するか
3)その他
患者適合型インストゥルメントを用いた人工膝関節全置換術
ポスト・ポリオ症候群による麻痺性反張膝に対する人工膝関節全置換術の検討
人工膝関節置換術後の深部静脈血栓症に対する各種の予防的抗凝固薬が血栓症マーカーの可溶性フィブリン・Dダイマーに与える影響
V.今後期待される新しい治療
1.多血小板血漿
変形性膝関節症に対する多血小板血漿関節内注射治療
2.細胞療法
滑膜間葉系幹細胞を用いた関節軟骨・半月板損傷の再生医療
変形性膝関節症の骨棘形成−パールカンの滑膜間葉系細胞制御による治療介入の可能性
序
健康寿命延伸のために、整形外科領域で積極的に取り組むべき課題はロコモティブシンドロームであります。その原因となる疾患は変形性膝関節症に代表される関節疾患、変形性脊椎症を主体とした脊椎疾患、骨粗鬆症などです。変形性膝関節症はその予備軍を含めると2,530万人とも言われ、超高齢社会において予防や治療に最も力が注がれなければならない重要な疾患の一つです。
効率的な治療法の選択には正確な診断が必須です。この診断に関しては、変形性膝関節症の早期診断が可能になり、また緩徐進行群と急速進行群の2群に判別できるようになれば、積極的な治療介入は緩徐進行群には不要となります。医療経済面からも効率のよい治療選択になりますが、そのためには今後優れた画像診断、バイオマーカーなどの診断技術の開発が必要となります。現状でどのレベルまで診断可能となっているのかを知ることは、診断に関する知識を整理できる点で有益であるだけでなく、診断法についての新しいアイデアを生むためにも必要な下地となります。
治療法に関しても、限局する軟骨損傷から広範囲な骨軟骨損傷まで種々の保存的治療や手術的治療があります。治療法の選択にあたっては、関節軟骨の状態はもちろん、軟骨損傷の部位、年齢や活動性、下肢アライメント、肥満の程度などを総合的に判断する必要があり、実際の診療では治療法の決定に難渋する症例もしばしば見かけます。さらには変形性膝関節症を、神経障害性疼痛を伴った運動器慢性疼痛という観点から見る必要性もあり、以前に比べさらに広い視野から治療計画を構築することが求められています。
本特集号では変形性膝関節症の最新の知識を網羅すべく、注目されているトピックスにおいて経験の豊富な先生方から充実した内容の論文を頂きました。この特集号が、読者の皆様方に日々進歩する診断と治療の最前線を経験して頂く一助となれば幸いです。
2015年4月
広島大学教授
越智光夫