別冊整形外科
No.63 腰椎疾患up-to-date
編集 | : 大川淳 |
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ISBN | : 978-4-524-27763-6 |
発行年月 | : 2013年4月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 280 |
在庫
定価6,930円(本体6,300円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
腰椎疾患の最新の情報を掲載。代表的な見解から現在の動向、トピックス、将来の展望まで幅広い内容を網羅。公募による第一線の臨床医から寄せられたオリジナル論文で構成されており、これ1冊で腰椎疾患の最前線がわかる内容となっている。
I.腰椎疾患に対する診断・評価の進歩
1.画像および機能診断
腰仙椎移行部の外側病変に対する神経根造影後CTの有用性
MRI矢状面二軸斜位撮像による腰椎椎間孔部神経根絞扼の診断
第4腰椎変性すべり症の不安定性様式による画像所見と臨床症状の特徴
腰椎変性側弯進行のX線学的危険因子
腰部脊柱管狭窄症における腰部脊柱筋の筋収縮と血流動態
胸腰椎椎体骨折後偽関節に対する椎体形成術後の腰背筋筋活動評価−表面筋電図を用いた検討
2.疼痛の評価と病態の検討
日本整形外科学会腰痛評価質問票(JOABPEQ)の特徴と使用法
日本整形外科学会腰痛評価質問票(JOABPEQ)による腰部脊柱管狭窄の手術成績評価の妥当性と限界−腰痛の程度と機能障害の乖離例からみた治療評価・前向き研究
腰椎椎間板ヘルニア手術に対する患者の満足度と日本整形外科学会腰痛評価質問票(JOABPEQ)における評価
一次医療の初診時における日本整形外科学会腰痛評価質問票(JOABPEQ)の診断的意義
プロスタグランジンE1製剤の効果からみた腰部脊柱管狭窄症における腰痛性間欠跛行
腰部脊柱管狭窄症に対する椎弓切除術の腰痛評価と危険因子
II.腰椎疾患に対する保存的治療
1.オピオイドの利用
腰椎疾患に対するオピオイド療法
腰椎疾患由来の疼痛に対するトラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合錠の効果−44例の前向き臨床研究の結果より
慢性疼痛に対するオピオイド製剤
オピオイド鎮痛薬を用いた難治性疼痛治療の取り組み−フェンタニル貼付剤の使用経験
2.神経症状に対する薬物治療
高齢者慢性腰痛症に対するプレガバリンの効果
腰部脊柱管狭窄症に伴う根性痛に対するプレガバリンの効果と投与上の留意点
腰部脊柱管狭窄症に伴うこむら返りに対するリマプロストアルファデクスの有効性
3.その他の治療法
超音波療法による腰部脊柱管狭窄症の治療
腰椎分離症の装具療法−各種コルセット間の伸展抑制効果の比較
持続神経根ブロックの小経験
III.骨粗鬆症性椎体骨折に対する診断・治療の進歩
1.診断・検査
骨粗鬆症性新鮮椎体骨折診断時における単純X線動態撮影の有用性
骨粗鬆症性椎体骨折偽関節における坐位前屈位CTの有用性
尿中ペントシジン値は骨粗鬆症性椎体骨折の重症度の予測マーカーになりうるか
骨粗鬆症性椎体骨折後偽関節に対する経椎弓根的椎体造影および椎体ブロックを用いた椎体形成術前評価
2.治 療
テリパラチド連日皮下投与製剤の治療成績
β−リン酸三カルシウム(β−TCP)充填による椎体形成術を併用した後方固定術
骨粗鬆症性椎体骨折に対する局所麻酔下鏡視下でのリン酸カルシウムセメントを用いた経皮的椎体形成術
骨粗鬆症性脊椎椎体骨折新鮮例における椎体形成術でのハイドロキシアパタイトブロックの適性
IV.手術的治療の進歩
1.最小侵襲手術(MIS)
多裂筋温存椎間板ヘルニア摘出術
腰部脊柱管狭窄症に対する内視鏡下筋肉温存型椎弓間除圧術(ME−MILD)の臨床成績−2年以上経過例について
透析患者に対する脊椎内視鏡手術の有用性
腰椎変性すべり症に対する経筋膜的刺入椎弓根スクリューシステム併用椎間関節固定術
低侵襲腰椎椎体間固定術の治療成績と合併症−従来法と比較して
基礎疾患合併例における再発性化膿性脊椎炎に対する低侵襲手術−経皮的病巣掻爬ドレナージ
化膿性脊椎炎に対する経皮的挿入椎弓根スクリューの使用経験
皮質骨軌道のスクリューを用いた低侵襲椎体間固定術
Cortical bone trajectory(CBT)法による脊椎固定術−強固な固定性を有する新しい低侵襲手術法
低侵襲外側腰椎固定術(XLIF)の適応と手技の実際
2.脊椎固定術と姿勢の制御
後方経路腰椎椎体間固定術(PLIF)における骨移植−PLIFにおける椎体間移植骨の体積変化
腰椎変性側弯症に対する椎体間解離・経椎間孔的腰椎椎体間固定術の手術成績
腰椎変性側弯症に対する多椎間矯正固定術の長期臨床成績−特に腰仙椎アライメントの推移と各種合併症の影響について
成人脊柱変形に対する骨切り術の選択
起立・歩行困難を主訴とするrigidな変性後側弯症に対する非対称pedicle subtraction osteotomy(PSO)の手術手技と治療成績
思春期の胸腰椎・腰椎側弯症に対する後方矯正固定法
V.特殊病態
仙腸関節障害の診断と治療−10年間の進歩
“牽引性脊髄損傷”の概念の提唱
腰椎化膿性椎間関節炎の臨床的特徴
本誌は、『別冊整形外科』としては1991年に「腰椎部のインスツルメンテーション手術」がテーマとなって以来、22年ぶりの腰椎疾患に関する特集です。腰椎疾患は整形外科日常診療においてもっとも患者数が多い領域ですが、ここ10年間で画像診断のみならず、評価法と治療法にも大きな進歩がありました。
椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症ではMRIがすでにルーチンに行われる検査になりましたが、神経根造影と組み合わせたり、撮像方法を工夫することでより明確に病巣を示すことができるようになりました。その影響で単純X線像の出番がなくなりそうですが、変性進行の把握や荷重・非荷重の画像の比較で新鮮椎体骨折を診断できるなど、加齢腰椎に対しての有用性は尽きません。また、腰痛の評価をするうえでは従来の腰痛治療成績判定基準に代わり、JOABPEQの使用が一般化しつつありますが、そろそろその妥当性を検証する時期にもきたようです。
もっとも大きく変化したのは治療法です。保存的治療では、神経障害性疼痛をターゲットとする新規薬剤の登場でNSAIDs以外の選択肢が増えました。慢性疼痛に対してもオピオイドが使えるようになり、良好な効果が報告されています。手術的治療に関しては、低侵襲化と姿勢制御がキーワードです。単椎間の除圧固定では、内視鏡手術や傍脊柱筋の温存に配慮した術式が開発されました。一方、脊柱後弯の病態が筋血流量や背筋筋電図を用いた機能検査によって明らかになり、矢状面アライメントが高齢者の慢性腰痛にとって重要なことが再認識されました。骨粗鬆症性椎体骨折では各種の経皮的椎体形成術により楔状椎遺残の頻度を軽減し、できあがった腰曲がり姿勢に対しても後方からの骨切り術や多椎間の椎体間固定術により対処可能になってきています。
本誌では、このようにいつのまにか変容した腰椎疾患の診断・治療に関するまとめを行うことを目的としました。先端的な治療を実施している脊椎外科医から、一般診療に従事している整形外科医までが必要とするトピックスが盛り込まれています。本誌により腰椎疾患関連の診断・治療に関する知識を、最新なものにアップデートしていただければ幸いです。
2013年4月
東京医科歯科大学教授 大川淳