シンプル理学療法学シリーズ
義肢装具学テキスト改訂第3版
監修 | : 細田多穂 |
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編集 | : 磯崎弘司/両角昌実/横山茂樹 |
ISBN | : 978-4-524-25597-9 |
発行年月 | : 2017年12月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 464 |
在庫
定価5,720円(本体5,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
学生が義肢学・装具学に興味をもち理解を深めていけることを目標に編纂された教科書。簡潔なわかりやすい文章と用語解説、豊富な図表と写真を用いてコンパクトにまとめた。今改訂では、基礎から臨床応用への流れが理解しやすい構成はそのままに、装具写真などを充実。義足歩行の動画が加わり、より視覚的な理解が可能となった。
第I部 装具編
装具総論
1 装具総論
A 装具とは
B 装具の目的
1 診療別の目的
2 理学療法における目的
3 対象部位別の目的
C 装具の役割
D 装具の歴史
1 世界での歴史
2 わが国での歴史
E 装具の適応疾患
F 装具の分類
G 装具の課題と展望
1 名称にかかわる課題
2 制度にかかわる課題
3 作製にかかわる課題
4 導入にかかわる課題
5 作製チームに関する課題
2 装具を理解するための運動学
A 装具の役割と生体力学
1 装具による関節の動きの制御に関する用語
2 3点支持(固定)の原則
3 装具自体がもつ力学的要素
B 各装具と運動力学
1 下肢装具
2 靴型装具と足底挿板(インソール)
3 上肢装具
4 体幹装具
C 装具歩行の運動学
1 正常歩行について
2 短下肢装具を使用した歩行(片麻痺者の場合)
3 短下肢装具歩行の運動力学
4 装具歩行の運動学的評価における注意点
下肢装具
3 短下肢装具
A 短下肢装具とは
B 短下肢装具の種類と特徴
1 両側支柱付短下肢装具
2 片側支柱付短下肢装具
3 らせん状支柱付短下肢装具
4 両側ばね支柱付短下肢装具
5 後方板ばね支柱付短下肢装具
6 プラスチック製インサート付短下肢装具
7 プラスチック短下肢装具
8 PTB短下肢装具
C 歩行における短下肢装具の働きと適応
1 短下肢装具の機能分類
2 歩行における機能
4 長下肢装具
A 長下肢装具とは
B 長下肢装具の種類と特徴
1 両側金属支柱付長下肢装具
2 ハイブリッドタイプ長下肢装具
3 スコット・クレイグ長下肢装具
4 機能的長下肢装具(UCLA式)
5 坐骨支持型長下肢装具(免荷装具)
6 骨盤帯長下肢装具
C 歩行における長下肢装具の働きと適応
1 長下肢装具の機能分類
2 適応
5 靴型装具
A 靴型装具の定義
1 足部と靴の関係
B 足部にみる主な変形と病態
C 靴の基本
1 靴型
2 靴の基本構造
3 靴の高さ
4 靴の開き
D 靴の補正・整形外科靴(靴型装具)
1 靴外部からの補正の場合
2 靴内部からの補正の場合
6 下肢装具のチェックアウト
A 下肢装具のチェックアウトの流れと項目
1 下肢装具のチェックアウトの流れ
2 チェックアウト項目
B 長下肢装具のチェックアウト
1 金属支柱付長下肢装具のチェックアウト
C 短下肢装具のチェックアウト
1 金属支柱付短下肢装具のチェックアウト
2 プラスチック短下肢装具のチェックアウト
3 免荷式下肢装具のチェックアウト
D 靴型装具のチェックアウト
上肢装具
7 上肢装具
A 上肢装具の目的
B 目的別にみた,上肢装具の適応となる代表的疾患
1 変形の予防
2 変形の矯正
3 組織の保護
4 機能の代償または補助
C 上肢装具の特徴,構成要素,適応について
1 主として指関節に関与する装具
2 主として手関節に関与する装具
3 肘関節に関与する装具
4 肩関節に関与する装具
5 上肢に関与する装具
8 上肢装具のチェックアウト
A チェックアウトの流れと項目
1 チェックアウトの流れ
2 チェックアウトの項目
B 上肢装具のチェックアウト
1 主として指関節に関与する装具
2 主として手関節に関与する装具
3 肘装具に関与する装具
4 肩関節に関与する装具
5 その他の装具
頸部体幹装具
9 頸部体幹装具
A 使用目的と目的達成に必要な基本事項
1 使用目的
2 目的達成に必要な基本事項
B 分類
1 構成材料による分類
2 装着部位による分類
3 使用目的による分類
C 基本的構成要素とその構造
1 構成要素
2 構造
D 頸部体幹装具の種類と特徴
1 頸胸腰仙椎装具(CTLSO)
2 胸腰仙椎装具(TLSO)
3 腰仙椎装具(LSO)
4 仙椎装具(SO)
5 頸椎装具(CO)
6 頸胸椎装具(CTO)
E 頸部体幹装具の生体工学的効果
10 頸部体幹装具のチェックアウト
A チェックアウトの流れと項目
1 チェックアウトの流れ
2 チェックアウト項目
B 注意点
C 頸部体幹装具チェックアウトの実際
1 頸胸腰仙椎装具(CTLSO)
2 胸腰仙椎装具(TLSO)
3 腰仙椎装具(LSO)
4 頸椎装具(CO)
疾患別の装具
11 脳卒中片麻痺患者に対する装具
A 脳卒中片麻痺患者の上肢装具
1 脳卒中片麻痺患者のADLを阻害する上肢の機能障害
2 脳卒中片麻痺におけるADLと肩関節の機能・構造的な障害
3 上肢装具
B 脳卒中片麻痺患者の下肢装具
1 歩行や日常生活活動における適応
2 歩行障害に対する下肢装具療法の実際
12 脊髄損傷患者に対する装具
A 脊髄損傷患者の上肢装具
1 変形・拘縮予防
2 損傷レベルによる上肢装具とADL
B 脊髄損傷患者の下肢装具
1 歩行や日常生活活動における適応
2 歩行障害に対する下肢装具療法の実際
3 最新技術の動向−3Dプリンタの活用とロボットスーツHALを利用した最新技術
13 小児疾患患者に対する装具
A 小児疾患患者における装具療法の目的
B 装具療法の適応と実際
1 上肢装具
2 体幹装具
3 下肢装具
C 小児疾患における下肢の装具療法
1 脳性麻痺の装具療法
2 進行性筋ジストロフィーの装具療法
3 ペルテス病の装具療法
4 二分脊椎の装具療法
5 先天性股関節脱臼の装具療法
6 先天性内反足の装具療法
14 整形外科疾患患者に対する装具(変形性膝関節症)
A 変形性膝関節症の装具
1 変形性膝関節症とは
B 膝装具
1 膝装具の目的と種類
2 変形性膝関節症に対する(膝)装具療法の推奨グレードとエビデンス
3 膝装具処方のアルゴリズム
4 膝装具装着時の関節力学的効果
5 軟性膝装具
6 硬性膝装具
7 膝装具装着のチェックポイントと注意点
C 足底板
1 足底板の目的と種類
2 足底板の効果
3 足底板の適応
4 外側楔上足底板
5 足関節固定付足底板
6 アーチパッド付足底板
D 変形性膝関節症に対する新しい概念の装具
1 変形性膝関節用短下肢装具
2 SHM機構付靴型装具
15 スポーツ外傷に対する装具
A スポーツ用装具とは
1 スポーツ外傷と装具療法
2 スポーツ用装具の目的
3 スポーツ用装具の種類
B 疾患ごとの装具療法
1 肩関節
2 肘関節
3 手関節,手指
4 体幹
5 膝関節
6 下腿・足関節
C 手段・方法論からみた装具療法
1 足底板(足底挿板)
2 テーピング
第II部 義肢編
義肢,切断と評価
16 義肢総論
A 義肢とは
1 義肢のしくみ
2 義肢の特徴
B 義肢の目的
1 一般的な目的
2 理学療法における目的
3 対象部位別の目的
C 義肢の役割
D 義肢の歴史
1 世界での歴史
2 わが国での歴史
E 義手部品の変遷
F 義足部品の変遷
1 ソケット
2 継手
3 足部
G 義肢の課題
1 制度にかかわる課題
2 入院期間にかかわる課題
3 教育にかかわる課題
17 切断の原因と治療
A 切断者数と切断原因
1 切断者数の動向
2 切断原因の動向
3 切断の原因
B 外傷
C 末梢循環障害(PVD)
1 末梢循環障害(PVD)の原因
2 閉塞性動脈硬化症(ASO)
3 糖尿病(DM)
4 バージャー病(閉塞性血栓性血管炎[TAO])
D 悪性腫瘍
E 肢切断と理学療法
1 切断原因別の理学療法実施上の留意点
18 切断部位と切断術
A 切断と離断
1 切断および離断と切断部位の選択因子
2 上肢切断に対応する義手
3 下肢切断に対応する義足
4 人名などで呼ばれる切断
5 骨腫瘍の手術療法
B 切断手術における各種の処置
1 切断手術における皮膚の処置
2 切断手術における血管の処置
3 切断手術における神経の処置
4 切断手術における骨の処理
5 切断手術における筋肉の処置
19 切断者の評価(1) 全体的評価
A 理学療法評価の目的
B 理学療法評価
1 一般情報
2 問診
3 全身状態
4 身体面
5 心理面
20 切断者の評価(2) 断端評価
A 断端評価の目的
B 断端評価の基本的留意事項
C 断端評価の実際
1 断端長
2 断端周径
3 断端左右径
4 断端前後径
5 形状や皮膚の状態
21 断端管理法
A 断端管理の目的
B 切断から義肢装着までの流れ
C 切断手術後の断端管理法の特徴と利点,欠点
1 ソフトドレッシング
2 リジドドレッシング
3 セミリジドドレッシング
D 断端への包帯の巻き方
1 良好な断端
2 弾性包帯の巻き方
E 切断手術後の良肢位の保持と拘縮の予防
1 切断によって損傷を受ける筋と残存筋
2 日常生活上の不良肢位
3 良肢位の保持
4 関節可動域(ROM)運動,筋力増強運動,姿勢の矯正
F 脱感作および断端末の強化
G 断端の衛生管理
義足
22 足継手
A 足継手と足部
1 足継手とは
2 足部とは
3 中足趾節関節での底背屈運動とは
B 足部の種類
1 無軸足部(SACH)
2 単軸足部
3 多軸足部
4 エネルギー蓄積型足部
5 スポーツ用義足足部
23 下腿義足ソケット
A 下腿義足のソケットとは
B ソケットの種類
1 差し込み式または在来式下腿義足ソケット
2 PTB下腿義足ソケット
3 PTS下腿義足ソケット
4 KBM下腿義足ソケット
5 TSB下腿義足ソケット
24 股義足,膝義足,サイム義足,足部義足
A 股義足
1 股関節離断の特徴
2 カナダ式股義足
B 膝義足
1 膝関節離断の特徴
2 膝義足の種類と特徴
3 アライメント
C サイム義足
1 サイム切断の特徴
2 サイム義足の種類と特徴
3 アライメント
D 足部義足
1 足部切断の特徴
2 足部切断の義足
25 膝継手
A 膝継手とは
B 膝継手の分類
1 機能別分類
2 立脚相制御
3 遊脚相制御
4 最近の膝部品
C 膝折れとTKA線の関係
D 膝継手部品選択時の指標について
26 大腿義足ソケット
A 大腿義足の概要
1 大腿義足の基本構成
2 ソケットの必要条件
3 ソケットと懸垂機能
4 ソケットの力の伝達性と装着性
B 各種ソケットの変遷
1 吸着式ソケットの変遷
2 ソケット形状の変遷
3 その他,ソケット構造の変遷
義足歩行
27 義足歩行の特徴,立位歩行練習
27-1 義足歩行の特徴
A 下肢切断者の理学療法の目的
B 義足歩行の評価
1 歩行機能,歩行能力の評価
2 時間・距離因子と位置・角度因子の特徴
3 力学的因子
4 力の伝達とフィードバック機能
5 義足歩行とソケット内圧の変化
6 歩行周期におけるソケット内圧の変化
7 歩容の観察評価
27-2 立位・歩行練習(大腿切断者を中心に)
A 練習の意義
B 正しい義足装着の指導
C 歩行前練習
D 歩行練習
E 応用動作練習
1 床からの立ち上がり
2 障害物をまたぐ動作
28 異常歩行分析と指導,アライメント
A 義足異常歩行の概要
1 異常歩行とは
2 異常歩行の原因
3 義足異常歩行の対処
B アライメント
1 ベンチアライメント
2 静的アライメント
3 動的アライメント
C 義足異常歩行
1 下腿義足の異常歩行
2 大腿義足の異常歩行
3 股義足の異常歩行
義手
29 義手
A 義手の種類と特徴
1 装飾用義手
2 作業用義手
3 能動義手
B 上肢切断の部位による分類と義手
C 構造による義手の分類
D 義手の構成部品
1 ソケット
2 幹部
3 継手
4 手先具
5 ハーネス
6 コントロールケーブルシステム
E 義手のチェックアウト
1 上腕義手,肩義手のチェックアウト
2 前腕義手のチェックアウト
F 義手の練習
1 装着前練習
2 能動義手の装着使用練習
3 筋電電動義手の装着使用練習
演習
30 義肢の処方と理学療法
A 交通事故により下腿切断となった症例
1 一般情報
2 評価
3 考察
B 末梢血管障害により大腿切断となった症例
1 一般情報
2 評価
3 考察
C 組織内圧亢進により循環不全を呈し,両側大腿切断となった症例
1 一般情報
2 評価
3 考察
第III部 関係特論
31 障害者スポーツ松井伸子 393
A 義肢装具を使用する障害者スポーツ
1 障害者スポーツの分類
2 競技として
3 レクリエーション,レジャースポーツとして
B 運動に適した義足,装具とは
1 硬ソケット(外ソケット)
2 軟ソケット(内ソケット,ライナー)
3 膝継手
4 パイロン
5 足継手と足部
C 障害者スポーツで使用する代表的な義肢,装具
1 陸上競技
2 冬季スポーツ
D トレーニング方法
1 歩行のためのトレーニング
2 走行のためのトレーニング:大腿義足編
3 走行のためのトレーニング:下腿義足編
E リスク管理
F 理学療法士の役割
G 理学療法士のパラリンピックでのサポート
1 クラス分け
2 メディカルチェック,コンディショニング,応急処置
3 姿勢アライメント調整,装具・補装具の調整
4 その他
32 義肢装具の給付制度
A 義肢装具処方と理学療法士のかかわり
B 義肢装具の給付制度
1 医療保険制度
2 労働者災害補償制度
3 生活保護制度
4 戦傷病者特別援護法
5 社会福祉制度
6 各制度適用の優先関係
C 義肢装具の交付基準
1 補装具の種目・購入または修理に要する費用の
2 価格構成
3 耐用年数
D ケーススタディ(作製までの流れ)
付録
第30章に登場する症例に対する考察
A 交通事故により下肢切断となった症例
B 末梢血管障害により大腿切断となった症例
C 組織内圧亢進により循環不全を呈し,両側大腿切断となった症例
参考文献
学習到達度自己評価問題の解答
索引
改訂第3版の序
リハビリテーション医療における義肢装具の役割は大変重要である。義肢装具を用いることにより失われた機能・生活能力を獲得できることは、本来のリハビリテーションの基本概念である。理学療法士国家試験模擬テストの各社分析では、義肢装具分野の正解率は他分野と比較して非常に低く、リハビリテーション医療を学ぶ学生にとって苦手な分野であるといえる。確かに義肢装具の分野は物理学(力学)や工学が基礎となり、理数系科目が苦手な学生には敬遠されやすい。しかし、その内容は中学校程度の基礎的な物理学を復習するだけで、他の科目のように多くの事柄を暗記することなく“理解”できる学問である。
義肢装具は関節の固定や矯正・安静・保護、失われた機能の代償として用いられる。たとえば脳卒中片麻痺患者が使用する短下肢装具の足関節角度を少し変化させるだけで、歩行周期における膝関節や股関節、体幹の動きを変化させ安定した効率的な歩行が可能となる。下肢切断では、切断者自身の身体能力と使用する膝継手や足継手の特性を最大限に利用することにより歩行能力を向上させることができ、走行も可能となる。このように義肢装具の分野では、アライメントや、使用する部品、対象者の能力、環境等の関係を調整することにより恒常的で安定した効果を発揮できる。また、適切な義肢装具を用いた治療効果は定量的に分析でき、理解しやすい分野である。
近年の義肢装具分野は人間工学や材料工学の発展に伴い著しく進歩している。対象者のニーズは複雑多様化し、本人の要望に関連する科学情報や医療情報は各種メディアやインターネットを通じ簡単に入手できる。一方、医療現場でのインフォームドコンセントやセカンドオピニオンの考えは、医療を受ける側、行う側の双方に浸透している。この現状の中、リハビリテーション医療従事者は対象者が知りたい情報をわかりやすく提供し、最良のリハビリテーションサービスを実施できるように、幅広く深い知識と確かな技術の習得が必要となっている。
このテキストは義肢装具学の入門編として、用語の解説やmemo、図表や動画による知識の整理を多く加えてポイントを学習しやすく構成されている。最近の知見やエビデンスに加え、症例紹介や疾患別の義肢装具処方例も掲載し、実際の医療現場に対応できるものとなっている。
改訂第3版では読者が利用しやすい紙面づくりにも配慮し、紙面のフルカラー化(4色化)を行った。図や写真の見やすさは格段に向上した。全体構成としては、新たに「整形外科疾患患者に対する装具」の章を新設し、主に変形性膝関節症の装具を中心に解説を加えた。
本書がリハビリテーション医療を学ぶ読者の義肢装具に関する興味と理解を高め、臨床実習や国家試験対策、卒業後の知識の整理に役立つことを望む。
平成29年11月
編者を代表して 磯崎弘司