アレルギー診療ゴールデンハンドブック
編集 | : 国立病院機構相模原病院アレルギー科 |
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ISBN | : 978-4-524-25353-1 |
発行年月 | : 2013年6月 |
判型 | : 新書 |
ページ数 | : 366 |
在庫
定価4,180円(本体3,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
一般内科医、小児科医、若手医師を対象に、日常のアレルギー診療に必要な最新の〈知識+α〉をコンパクトにまとめた。最低限必要な知識を簡潔にまとめた「エッセンス」と、最新ガイドラインの記載、また臨床現場で役立つ実際的知識などを豊富に盛り込んだ「詳しい解説」の二部構成。診療現場ですぐに調べたいときにも、まとまった時間でしっかり学習したときにも対応したすぐれもの。
I章 基本的アプローチ(総論)
アレルギー患者を診るうえでの注意点
II章 主要な検査手技
1.喀痰好酸球検査
A.Hanselの方法
B.誘発法
2.IgE・IgG検査
3.細胞性免疫検査
4.抗原誘発試験
5.呼吸機能検査および気道炎症マーカー
A.気道過敏性試験:標準法
B.気道過敏性試験:アストグラフ法
C.気道可逆性試験
D.呼気NO検査
6.室内環境アレルゲンの現状と調査方法
III章 主要な治療手技
1.薬物療法
A.成人喘息:長期薬物療法の基本
B.抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬
2.免疫療法(ハチ免疫療法を含む)
A.免疫療法
B.新しい免疫療法
3.環境整備
4.その他の治療法
A.変調療法
B.抗IgE療法、抗サイトカイン療法
IV章 各アレルギー疾患へのアプローチ
1.emergency
A.気管支喘息の急性増悪(発作)
B.アナフィラキシー、アナフィラキシーショック
C.重症薬疹
2.呼吸器科
A.気管支喘息
B.過敏性肺炎
C.PIE 症候群(好酸球性肺炎)
D.アレルギー性気管支肺真菌症
E.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg-Strauss 症候群)
F.咳喘息
3.皮膚科
A.蕁麻疹
B.血管性浮腫
C.アトピー性皮膚炎
D.接触皮膚炎
4.耳鼻咽喉科
A.アレルギー性鼻炎と類縁疾患
B.花粉症
C.副鼻腔炎
D.口腔アレルギー症候群
5.眼科
A.アレルギー性結膜疾患
B.アトピー性皮膚炎の眼合併症
6.小児科
A.小児アレルギー疾患への基本的アプローチ
B.小児気管支喘息
C.思春期喘息:内科医の立場から
D.思春期喘息:小児科医の立場から
E.小児アトピー性皮膚炎
7.その他
A.アスピリン喘息(NSAIDs 過敏喘息)
B.妊娠喘息
C.小児食物アレルギー
D.成人食物アレルギー
E.物理アレルギー
F.薬剤過敏症
G.ラテックスアレルギー
H.ペットアレルギー
I.昆虫アレルギー
J.職業アレルギー
K.化学物質過敏症
V章 代表的アレルゲンの解説
1.アレルゲンの基礎
2.アレルゲンの臨床
付録:アレルギー疾患関連ガイドライン一覧
索引
1992(平成4)〜1994(平成6)年の厚生科学研究班の疫学調査で、わが国における人口の約30%が何らかのアレルギー疾患に罹患していることが明らかになり、アレルギー疾患が決してまれな疾患ではないことが国民にも知られるようになってすでに久しい。最近では、その罹患率が50%を超えるという報告もみられる。また、アレルギー疾患は、乳幼児から高齢者まで全年齢層にわたり罹患する可能性のある疾患群であり、内科、小児科、耳鼻科、皮膚科、眼科などアレルギー疾患に関わる診療科は多く、さらに薬物アレルギーなどは、薬物治療を行うすべての医療者が注意すべき疾患である。すなわち、医療に関わるすべての医師が日常診療で一度は遭遇する疾患であり、決して専門医だけが診療すればよい疾患ではなく、いわばcommon diseaseとして、初期研修のときから関わるべき疾患である。
アレルギー疾患は、本来致死的疾患ではないはずであるが、適切な治療の遅れにより、喘息発作や食物・薬物アナフィラキシーなど死に至ることもありうる。一方、日常生活におけるQOL 阻害という点では、未だ看過できない多くの事例がみられる。アレルギー疾患は、糖尿病や高血圧などのいわゆる生活習慣病と同様の慢性疾患であり、かつ喫煙や肥満など生活習慣とも密接に関連があることが明らかになってきた。さらには、その原因物質としてのアレルゲンは、生活環境中に日常的に存在している。このようにアレルギー疾患は、生活習慣および生活環境がその発症・増悪に大きく関与することから、最近は、「生活習慣・環境病」とも言われている。したがって、その発症予防・増悪予防には、患者本人の自己管理はもとより、家族、学校や職場の友人、さらには周囲のすべての人々の疾患に対する認識、配慮が必要な疾患群である。
近年、アレルギー疾患診断に有用な多くの検査法が開発され、日常検査として自院での臨床検査や外注検査で容易に実施できるようになってきた。しかしながら、アレルギー疾患の診断、特に原因アレルゲンの確定診断には、まずは詳細かつ的確な問診が重要であることは、論を俟たない。ただむやみに血中特異抗体を測定すればよいわけではない。まずは、疾患臓器の鑑別診断と全身病という視点からの他臓器病変との関連についての鑑別診断、さらには原因診断を的確に行うことが大切であり、また、治療については、環境整備を基本として、効果と副作用を勘案しての必要十分かつ最小限の治療によるステップアップ、ステップダウンを考慮した薬物治療を行うことが重要である。
本書は、アレルギー疾患診療を専門とする医師のみならず、将来いかなる診療科に進む場合でも、研修医、レジデントとしてアレルギー疾患患者を診察するときに役に立つよう実地臨床に携わるアレルギー専門医が執筆したマニュアルである。本書を手許に置くことで、アレルギー疾患患者のより良い診療につながることを祈念している。
2013年5月
秋山一男
近年、アレルギー疾患の罹患率はわが国の人口の30%以上にのぼり、さらに増加の一途にある。最近では50%以上という報告もあり、まさに国民病と呼ばれるようになっている。
また、アレルギー疾患は乳幼児から高齢者まですべての年齢層に認められ、かつ上下気道、肺、皮膚、眼、口腔などきわめて多くの臓器に発生する疾患であり内科、小児科、耳鼻科、皮膚科、眼科など多くの診療科が関与する。また、薬物アレルギーは薬剤を使用するすべての診療科において、すべての医療関係者が注意すべき疾患である。
食物、薬物などのアナフィラキシーや喘息発作、そして重症薬疹などは適切な診断ならびに治療が施されない場合は致死的な疾患となる可能性を有し、その他、致死的でない多くのアレルギー疾患も日常生活におけるQOLの阻害という観点から適切な診断・治療と管理が必要である。
また、アレルギー疾患はその専門医だけでなく医療に従事する医師は初期研修医からプライマリケア医まで、すべての医師が必ず遭遇する疾患である。
本書はアレルギー疾患を診療するうえでの注意点から始まり、主要な検査手技ならびに治療手技について簡潔にまとめられている。そして、各論ではアレルギー疾患の救急対応ならびに各診療科におけるそれぞれのアレルギー疾患に対する診断・治療におけるアプローチが詳細に述べられているが、いずれも理解しやすいようにフローチャートも含めた図と表、そして写真が添えられている。この図表のわかりやすさも本書の大きな特徴である。本書の最後には、代表的アレルゲンの基礎的ならびに臨床的解説が加えられている。
本書は一般内科医、小児科医、若手研修医を対象に日常のアレルギー診療に必要な最新の知識がきわめてコンパクトにわかりやすくまとめられている。
そして、各アレルギー疾患に対する最新のガイドラインの記載がその説明とともに盛り込まれている。診療現場ですぐに対応しなければならない場合にも、十分な知識を学習したい場合にも、その両方に役立つきわめて有用なハンドブックである。
秋山一男先生をはじめ、国立病院機構相模原病院アレルギー科を中心としたわが国におけるトップクラスの執筆陣がまとめた実践的『アレルギー診療ゴールデンハンドブック』を多くの研修医、プライマリケア医、そしてこれからアレルギー専門医を目指す多くの医師にお薦めしたい。
また、これだけアレルギー疾患全般についてわかりやすく、かつ詳細に書かれた本は少ない。これは私自身が本書を読んだ感想であるが、最新の知識および情報の整理のためにも、すでに各科のアレルギー専門医となられているベテランの先生方にもぜひ御一読いただきたいと思っている。
臨床雑誌内科113巻5号(2014年5月号)より転載
評者●国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授、山王病院アレルギー内科 足立満