がん看護≪隔月刊≫
患者の思いを引き出して支え,力を高める意思決定支援(Vol.30 No.2)2025年3-4月号
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- 商品説明
- 主要目次
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特集にあたって
がん医療の発展により治療の選択肢は増え,また複雑化しています.がん治療の多くは結果が不確実であり,メリットだけでなく,副作用などのデメリットも伴います.どの治療を選択するかによって,その後のQOLが大きく変わることもあるため,患者本人や家族等が,疾患や治療,生活への影響などについての情報をよく理解し,納得して意思決定することは重要と言えます.
近年,インターネットなどで医療情報はすぐに入手できますが,がんによる不安や動揺がある中で,患者が氾濫している情報から正しいあるいは自分にとって適切な情報を選択し,読み解き,整理し,自分の状況に照らし合わせて意思決定に役立てるということは,よりいっそうむずかしくなってきていると思われます.
また,意思決定においては,従来日本人に多いと言われていたパターナリズムから脱却し,本人の価値観を尊重することが強調されるようになってきました.「がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針」や診療報酬でも,意思決定支援を提供できる体制の整備や,適切な意思決定支援に関する指針を定めるよう記載されています.しかし,自分の価値観を明確にし,医療者にそれを伝えて話し合える患者はまだ多くはなく,支援体制についても十分整っているとはまだまだ言えない状況ではないでしょうか.
さらに,2 人に1 人ががんにかかる時代,意思決定が困難な人々もがんにかかり,なんらかの決定をしなければならない状況も増加しています.近年では,意思決定に関するガイドラインが複数作成されており,意思決定がむずかしく思われる人であっても,本人のこれまでの人生観や価値観,どのような生き方を望むかなどについてできる限り把握し,その人にとっての最善を探る支援が求められていますが,実際に行うのは容易なことではありません.
本特集では,意思決定に関する知識や情報を整理するとともに,意思決定にかかわる患者の力を補い高めるにはどうすればいいのか,また,意思表示や決定が困難な患者の価値観や推定意思を引き出して,少しでも患者の希望に近い決定となるようにするためには,どのように考えかかわっていくとよいのかについて,知識や事例を通した実践内容を提示しています.
本特集が,がん患者や家族の意思決定にかかわる看護師の方々にとって,支援が必要な患者・家族,そして自分たちが行う支援内容や体制について改めて考え,取り組みを進めていくきっかけとなることを期待しています.
特集
患者の思いを引き出して支え,力を高める意思決定支援 編集:小澤桂子
●特集にあたって 小澤桂子
●意思決定支援の基本知識と支援のポイント 小澤桂子
●SDM(共同意思決定)とは 石川ひろの
●ヘルスリテラシーを高めて意思決定を支援する 大坂和可子
●意思決定支援に役立つツールとその活用のポイント 井上泉子
●患者力向上プログラム(PEP)で患者の自己決定する力を支える 長谷川友美
●意思決定支援ガイドラインの解説と臨床現場での活用方法 小川朝生
●意思決定が困難な患者とSDMを行うためのコミュニケーションのポイント 關本翌子
●精神疾患をもつ人ががんになった際の意思決定支援のポイント 梅澤志乃
●認知機能の低下がみられる家族からの支援が乏しいがん患者の意思決定支援のポイント 中 恵美
●意思表示できない患者の方向性決定に必要な支援のポイント 安永浩子
特別寄稿
がん治療に伴う経済毒性のマネジメント 山本瀬奈
連載
▼My Favorite Medicine!!【37】
エンホルツマブ ベドチン(パドセブ®) 菅野かおり
▼リレーエッセイ
●がん看護CNS奮闘中!
〜理想と現実のギャップを乗り越える!!〜【2 初回更新前:OCNS認定後の理想と現実のギャップA】
専門看護師の「役割」を担うことのむずかしさ 津康弘
▼臓器別がん 最新のエビデンスに基づいた薬物療法と看護の実践【18】
皮膚がん 野村基雄
▼遺族の声を臨床に活かす 〜J-HOPE 4研究(多施設遺族調査)からの学び〜【22 介護負担】
付帯研究3 がん患者の介護者の介護中の離職および死亡 松坂早希子
付帯研究35 在宅ホスピス・緩和ケアにおける介護度別での家族介護者の介護負担感と
訪問看護利用状況およびケア利用満足度 大槻奈緒子,山本陵平
▼がん薬物療法看護のWhat's Trending! Past ☞ Current ☞ Future【29】
My experience at the 49th Oncology Nursing Society annual congress
〜海外学会参加の準備,出会い,米国での新規承認薬剤情報〜 菅野かおり
▼直腸がん患者への術前アプローチとストーマ・排便障害のリハビリテーション【2】
ストーマ造設が必要な直腸がん患者への術前教育 松原康美
今月の症例
卵巣がん治療後にリンチ症候群が疑われた患者への看護
〜遺伝カウンセリング受診をやめたいと訴えた患者の意思決定支援〜 島田理恵
BOOK
今夜からもう困らない! 夜の症状緩和 〈評者〉林 ゑり子
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次号予告
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