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がん看護≪隔月刊≫

高齢者機能評価(GA・CGA)を活かした高齢がん患者のケア(Vol.30 No.1)2025年1-2月号

発行年月 : 2025年1月

在庫あり

定価2,530円(本体2,300円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 書評

特集にあたって

 わが国の高齢者人口の推移は年々右肩上がりであり,2015 年には「ベビーブーム世代」が前期高齢者(65〜74 歳)に到達し,その10 年後の2025年には高齢者人口は約3,500 万人に達すると推計されてきた.2025 年,日本に約800 万人いる「団塊の世代」が75 歳以上になるとされる,いわゆる「2025 年問題」を迎える年が,いま現実となった.計算上は国民の4 人に1 人が後期高齢者という社会へと向かっているなか,がんの罹患率においても年齢階級別ですべてのがんで上昇傾向にあり,とくに女性に比べて男性では高齢になるほど高率でがんに罹患しているとされる.また,がん死亡率においても,後期高齢者のがん死亡率が高く,年々増加傾向であることがわが国の特徴とされている.

 がん治療は,殺細胞性抗がん薬をはじめ,分子標的治療薬や免疫療法薬など数多くの薬剤が発展し,テーラーメイド治療が可能な時代となった.また,支持療法の開発も目覚ましく,現在はがん治療と共生しながら生活することができるようになってきたが,高齢がん患者においてはいまだ課題が多く残っている.加齢に伴う生理的変化や併存疾患の多くは,がん治療の効果や有害事象の出現リスクに影響し,認知機能低下による心理社会的な苦痛や意思決定の困難さは治療アドヒアランスに影響を及ぼす.加齢に伴う心身の機能低下は個人差が大きく,一様ではない.また,がん治療による医療費や物価高騰に伴う生活費などの経済的負担は,治療継続の障壁となることもある.2025 年に認知症高齢者は約320 万人になると推計され,高齢者世帯の約7 割が独居もしくは高齢夫婦のみの世帯となることが見込まれており,がん治療を受ける高齢患者をとりまく課題は多種多様で苦渋することが多い.そのため,高齢者を年齢や見た目だけで判断し治療の適応や治療方法を決めるのではなく,高齢者機能評価(geriatric assessment:GA, comprehensive geriatric assessment:CGA)を用いて包括的にアセスメントし,高齢がん患者が安全にがん治療を受けられ,安心した生活を送ることができるよう多職種で支援することがガイドラインにおいても推奨されるようになってきた.

 そこで,本特集ではGA・CGA を用いた支援について多職種のエキスパートの方々にご執筆いただきました.本特集を手に取っていただいた皆さまが,GA・CGA というツールを用い,高齢がん患者さんの治療に伴う苦痛や苦悩に目を向け,多くの職種と協働しながら“生活”を支えられるための一助となる内容になっていると幸いである.

特集
高齢者機能評価(GA・CGA)を活かした高齢がん患者のケア〜
  編集:中村千里

●特集にあたって  中村千里

高齢者機能評価を知ろう!
  ●高齢がん患者の特徴 〜看護師がおさえておきたい支援ポイント〜  田ア亜希子
  ●総合的高齢者機能評価とは 〜CGAの定義から各治療法への活用まで〜  大路貴子
  ●海外における高齢者機能評価を用いたがん治療の最前線  土井綾子
  ●日本における高齢者機能評価とがん治療  古屋直樹
  ●がん治療における高齢者機能評価を活かした栄養支援  胡谷さやか,牧田 桜,水上拓郎
  ●がん治療における高齢者機能評価を活かした意思決定支援  福山雄三
  ●高齢者機能評価を推進してゆくためのチームづくり  玉木秀子

症例紹介 〜高齢者機能評価を活かしたチーム実践と症例〜
  ●症例@ 医師との協働  本間織重
  ●症例A 医師,理学療法士,心理士,薬剤師との協働 〜せん妄予防ケア〜  北川善子
  ●症例B 臨床心理士との協働  中村千里,柳生佳代子

特別寄稿
  がん治療の「経済毒性」  山本瀬奈

連載
▼My Favorite Medicine!!【36】
オキサリプラチン(エルプラット®など)  菅野かおり

▼リレーエッセイ
  ●がん看護CNS奮闘中
   〜理想と現実のギャップを乗り越える!!〜【1 初回更新前:OCNS認定後の理想と現実のギャップ@】
  連載にあたって  渡邉 直美,塗木京子
  患者の希望を叶えるためにチームで取り組む  M田 彩
▼臓器別がん 最新のエビデンスに基づいた薬物療法と看護の実践【17】
  骨・軟部悪性腫瘍  小島勇貴

▼遺族の声を臨床に活かす 〜J-HOPE 4研究(多施設遺族調査)からの学び〜【21 緩和ケアへの紹介時期】
  付帯研究6 遺族からみた「緩和ケア病棟に初めて紹介された時期」と緩和ケアチームの活動に関する評価のためのフォローアップ調査
   ―2003年,2007年の結果との比較―  笹原朋代
  付帯研究11 専門的な緩和ケアの適切な受診・相談時期に関する,遺族の希望についての研究  大日方裕紀,田上恵太

▼がん薬物療法看護のWhat's Trending! Past ☞ Current ☞ Future【28】
  がん薬物療法を受ける患者の災害時の支援を考える 〜経口抗がん薬の服薬管理〜  村上富由子

▼直腸がん患者への術前アプローチとストーマ・排便障害のリハビリテーション【新連載】
  連載にあたって  松原康美

  直腸がん術後に生じる排便パターンの変化  松原康美

今月の症例
     がん遺伝子パネル検査を受ける子宮体がん患者へのかかわり 〜心理サポートに焦点をあてて〜  佐藤 好
BOOK
 みんなの皮膚外用薬(第2版)  〈評者〉赤津サトミ

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次号予告

 臨床現場では診療科に関わらず多くの患者さんが,皮膚トラブルを抱えている.しかし,自覚症状が強くなるまで患者さんからの訴えは少なく,診察時に皮膚を露出しない限り見過ごされてしまっていることが多い.なかでも慢性疾患である糖尿病患者の皮膚トラブル,慢性腎臓病患者が抱えるかゆみの問題は長期にわたるため,なかなか解決できずに苦渋することが多々ある.皮膚外用薬はどの診療科でも処方されるが,皮膚の状態に合わせて外用薬が的確に使用されているか把握するのは難しい.数多くの皮膚外用薬を患者目線でわかりやすく説明することは,基本をマスターしていないと躊ちゅうちょ躇してしまうこともある.薬品名だけ聞いてもなかなか理解できない場合もある.そんななか,待望の『みんなの皮膚外用薬(第2 版)』が発刊されたのはまさに「渡りに船」の境地である.外用薬一覧には写真付きで一般名,商品名が明記されているので,患者さんに写真で説明できとても便利である.さらに皮膚外用薬の基本から始まり,塗布方法,薬剤の種類と特徴,疾患へと読み進めていくと皮膚科疾患が網羅されていることに感嘆する.

 皮膚疾患を学びながら,外用薬の特徴を理解したうえで患者指導につなげていく参考書でもある.また,各章では,それぞれの薬剤の作用機序,基本的な使用方法,指導の注意点などのポイントについてまとめられていて非常にわかりやすい.困ったときにパッと手にして活用できるのも特徴である.医師,看護師,薬剤師はもとより患者さんとも共有していきたい,皮膚外用薬のキモを伝授してくれる親しみやすい一冊である.まさに「これは手放せない!! 臨床現場のみんなが共有できる,わかりやすい皮膚外用薬の待望の一冊」と言っても過言ではない.

がん看護30巻1号(2025年1-2月号)より転載
評者●赤津サトミ(伊那中央病院/慢性腎臓病療養指導看護師(CKDLN),腎臓病療養指導士,腹膜透析認定指導看護師,腎代替療法専門指導士)

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