がん看護≪隔月刊≫
「がん悪液質」を知ってケアに活かす〜病態・最新の治療を理解してケアをアップデート〜(Vol.27 No.8)2022年11−12月号
- 主要目次
- 序文
特 集
「がん悪液質」を知ってケアに活かす
〜病態・最新の治療を理解してケアをアップデート〜
編集:林 直子
●特集にあたって
●がん悪液質とはなにか
●がん悪液質の病態
●がん悪液質に対する薬物療法
●がん悪液質に対する栄養療法
●がん悪液質に対するリハビリテーション
●がん悪液質に関する看護研究の動向
●がん悪液質のアセスメントと看護
●がん悪液質による心理社会的苦痛への多職種ケア
●事例:がん治療期の悪液質に対するケア
●事例:がん終末期の悪液質に対するケア
●連 載
▼臓器別がん 最新のエビデンスに基づいた薬物療法と看護の実践 【4】
胃がん
▼善先生のがんなにそれ講座 〜まずは相手を知らなあかんで〜 【5】
なにそれ13「これまでより,これからが大事な進行度」
なにそれ14「ややこしいTNM分類」
なにそれ15「半人前なCIS」
▼スピリチュアルケアを学ぼう! 【4】
スピリチュアルとは何をどうすることなのか
▼遺族の声を臨床に活かす 〜J-HOPE4研究(多施設遺族調査)からの学び〜 【#8】
認知
付帯研究14 意思疎通のとりづらい終末期がん患者に対する家族のかかわりの研究
▼がん薬物療法看護のWhat’s Trending! Past ☞ Current ☞ Future 【16】
がん薬物療法を受ける患者・家族に対する相談支援
●リレーエッセイ●“がん看護CNS”奮闘中!〜活動の場の開拓について考える〜【6・最終回】
▼第6回 地域での活動の場を開拓する
患者と家族の「その人らしく生きていく」ことを支援する
家庭との両立に重きを置きながら実践を極める
●My Favorite Medicine!! 私が注目している抗がん薬を紹介します【23】
クリゾチニブ(ザーコリ®)
●BOOK
スローエシックスと看護のアート 〜ケアする倫理の物語〜
特集 「がん悪液質」を知ってケアに活かす 〜病態・最新の治療を理解してケアをアップデート〜
特集にあたって
がん悪液質について,「ターミナル期のがん患者の症状」「回復が期待できないるい痩,低栄養状態」というイメージをいまだ多くの看護師がもっていることが推測されます.実際,『看護学事典』(第2 版,2011 年)においても,悪液質の原因疾患を悪性腫瘍,バセドウ病,下垂体機能低下症としたうえで,「全身状態が著しく衰弱した病的状態」とし,「患者の苦痛を取り除くことを優先したターミナルケアが重要である」と記されています.看護基礎教育課程でがん悪液質の何たるかを学ぶことはほとんどなく,卒後教育においても,がん疼痛,悪心・嘔吐,呼吸困難,倦怠感などの症状コントロールの学習機会はあっても,がん悪液質について学ぶ機会はこれまでほとんどありませんでした.ところが,2011 年にEPCRC (European Palliative Care Research Collaborative)コンセンサスによる定義が示されたことで,これまでのがん悪液質に対するパラダイムが大きく変化しました.すなわち,がん悪液質は前悪液質(Pre-cachexia)から可逆的段階である悪液質(cachexia),さらに不可逆的段階となる不応性悪液質(Refractory cachexia)へと変化する連続性のある病態であり,進行性の機能障害にいたる多因子性の症候群であることが示されました.また可逆的段階の悪液質患者に対し,多職種による集学的治療を行うことで悪液質改善への可能性が期待されることも徐々に明らかになっており,そのためにも看護師が悪液質の病態と介入方法を知り,適切にアセスメントすることで介入の機会を逃さないことが重要になってきました.近年
わが国の看護領域でもこのことが認識されつつあり,2022 年2 月の日本がん看護学会においても,がん悪液質関連のセミナーが開催されるなど,関心が高まっています.
そこで今回,がん悪液質についてさまざまな角度から学び,日常のケアに活かせるよう,‘がん悪液質を知る’特集を企画しました.はじめにがん悪液質の定義と病態について,治療期と終末期の悪液質の病態の違いも含め解説しています.次にがん悪液質に対する治療的介入として,薬物療法,栄養療法,運動療法とリハビリテーションについて,その作用機序と具体的内容を臨床的見地から詳説しました.続いてがん悪液質に対する看護の現状と,アセスメントの枠組み,ケアにつながる心理社会的介入について,エビデンスをもとに解説しています.最後に,がん治療期と終末期それぞれの事例をもとに,ケアの実際を具体的に紹介しました.
本特集を通じて,悪液質を呈するがん患者のケアのtips をつかんでいただけたら幸いです.
編集:林 直子(聖路加国際大学大学院看護学研究科)