がん看護≪隔月刊≫
アピアランスケアUp to Date(Vol.27 No.3)2022年3-4月号
- 主要目次
- 序文
特集
アピアランスケア Up to Date
編集:藤間 勝子
●特集にあたって 藤間 勝子
●アピアランスケアとは 野澤 桂子
●新しい治療薬と外見の変化 宇田川涼子,久保 晶子
●脱毛のケアとウイッグ選びの支援 藤間 勝子
●脱毛予防としての頭皮冷却法 齊藤 光江
●頭皮冷却装置の使用経験 高 幸子,渡邊 歩,齊藤 光江
●タキサン系薬剤による爪障害予防とケア 高山かおる
●分子標的治療薬による外見変化に対するアピアランスケア 柳 朝子
●放射線療法による外見変化に対するアピアランスケア 飯野 京子
●衣服によるアピアランスケア 乳がん患者の下着の選択 阿部 恭子
コラム番外編 そこが医療者にはわからない!?
●Q1 ヘアカラー,ヘアマニキュア,髪が染まるシャンプー,何が違いますか?
髪を染めたいと希望する患者さんに対して,どれがおすすめですか? 伊藤 隆司
●Q2 敏感肌用化粧品と一般化粧品では,肌への安全性が異なりますか? 高田 定樹
●Q3 日焼け止めは,やはり数値が高いと肌によくないのですか? 佐藤 隆
●Q4 がん患者に,有機溶剤を使用したマニキュアやアセトン入り除光液の使用は避けたほうがよいですか? 岸 悟史
●Q5 人工毛素材のウイッグは人毛に比較し,やはり不自然ですか? 西田 宗平
●連 載
▼知って安全! エビデンスに基づく抗がん薬の曝露対策と臨床実践 【6】
抗がん薬などのhazardous drugがこぼれたとき 坪井 香
▼シームレスに実践 ターミナルケア・グリーフケア 【6】
地域でのグリーフを支える教育活動〜死別を支える地域基盤を育成に向けて〜 小野若菜子
▼善先生のがんなにそれ講座 〜まずは相手を知らなあかんで〜 【新連載】
なにそれ1〜3 廣瀬 善信
▼遺族の声を臨床に活かす 〜J-HOPE4研究(多施設遺族調査)からの学び〜 【#4】
ケア
付帯研究8 終末期がん患者の呼吸困難に対する望ましいケアに関する研究 山本 瀬奈,荒尾 晴惠
付帯研究32 日本の終末期がん患者の「湯船につかる入浴」の意義 林 ゑり子
▼がん薬物療法看護のWhat’s Trending! Past ☞ Current ☞ Future 【12】
大阪府がん診療拠点病院での看護師教育の実態と課題 玉田 加寿,有働みどり,菅野かおり
●特別寄稿
患者向け「処方別がん薬物療法説明書」の活用〜患者・家族への情報支援の充実に向けて〜 北村 有子
●投 稿
End-of-life discussion(終末期の話し合い)後の患者の思い 福田 麻実
●リレーエッセイ●“がん看護CNS”奮闘中!〜活動の場の開拓について考える〜【2】
▼第2回 外来での活動の場を開拓する
遺伝看護との出会いからがんゲノムというがん医療の進歩の中で 日下 咲
委ねる力を育む シュワルツ史子
●My Favorite Medicine!! 私が注目している抗がん薬を紹介します【19】
ベバシズマブ 菅野かおり
特集 アピアランスケア Up to Date
特集にあたって
「アピアランスケア」は,国立がん研究センター中央病院の外見関連支援チームが提唱した造語であり,対外的に使用し始めたのは2012 年からです.医療者が行うがん治療に伴う外見のケアについて,単なる美容的な問題ではないことを明確にし,その身体・心理・社会的な問題に対して,治療や整容的手法,心理社会的介入を用いて包括的に支援を行うことを表すために,新しい用語を使い始めました.まだ10 年程の新しい概念ですが,がん看護に携わる医療者の間に浸透し,アピアランスケアを学びたいと希望する人も年々増えています.しかし,アピアランスケアについては体系的にまとめられていないこともあり学ぶ機会は少なく,広告的な文言やネット情報など不確かな情報に惑わされているのが現状です.また,分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬による新しい外見への副作用が現れる一方で,頭皮冷却システムの医療機器承認など新しいケアの方法も登場し,学ぶべきことは増えています.さらに外見の悩みは,患者を取り巻く社会の状況も反映するため,時代と共に対処方法が変化する部分もあります.当院アピアランス支援センターで提供するケアも,多くの臨床実践を重ねる中で徐々に進化しています.このような背景の中,患者さんにとって最適なアピアランスケアの選択について迷う方も多いかと思います.
判断に迷った時,私たちは医療者である以上,常にエビデンスに基づき方法を選択していかなければなりません.エビデンスが不十分なアピアランスケアの分野ですが,2016 年に発刊された『がん患者に対するアピアランスケアの手引き』には,それまでに明らかになっている知見がエキスパートオピニオンとともにまとめられており,医療者がケアを行う際の指針とされてきました.この手引きが2021 年に『がん治療におけるアピアランスケアガイドライン』として改訂されました.そこでこの機会に,アピアランスケアを実践する皆さんに今一度エビデンスを意識し,自分の行っているケアを再確認していただきたく,今回の特集を企画いたしました.
この特集では,このガイドラインの作成に関わった先生方に,現在までに集積しているエビデンスから考えられる最も新しいアピアランスケアについて,臨床現場で使いやすい形で解説していただくことで,明日からの看護実践に即活かしていける内容を学ぶことを目標としています.また,医療者にはわかりにくい化粧品やウイッグに関する事柄についても,香粧品や頭髪装飾用繊維に造詣の深いエキスパートの先生方に科学的見地からの解説を,理解しやすいQ&A 方式でお願いしました.
今までアピアランスケアを学ぶ機会がなかった人だけでなく,既にアピアランスケアを実践している人にも最新の知見に触れていただくことで,より多くの患者さんに一歩進んだアピアランスケアが提供されるようになれば幸甚です.
編集:藤間 勝子(国立がん研究センター中央病院 アピアランス支援センター)