がん看護≪隔月刊≫
いまはこうするがん看護〜サポーティブケア〜/いま知っておきたいがん薬物療法5〜くすりをしればケアもよくなる〜(Vol.27 No.1)2022年1-2月号
- 主要目次
- 序文
特集1
いまはこうする がん看護
〜サポーティブケア〜
●特集1にあたって 關本 翌子,飯野 京子
【症状緩和】
●痛み 〜個別性をより重視した疼痛緩和のポイント〜 岡山 幸子,松田 良信
●痛み 〜突出痛の考え方が変わった!〜 栗山 尚子
●ここまでわかってきた! 吃逆のケア 菅野 雄介
●せん妄 〜早期発見,予防的ケアによって重症化を防ぐことができる〜 前原 朝美,綿貫 成明
【支持療法】
●放射線皮膚炎 〜「塗る,貼る」の新しい考え方〜 祖父江由紀子
【有害事象へのケア】
●悪心・嘔吐 〜制吐療法最前線〜 富樫 裕子,長岡 波子
●免疫チェックポイント阻害薬の副作用 〜irAEへの対応〜 伊藤 直美
特集2
いま知っておきたい! がん薬物療法5
〜くすりを知ればケアもよくなる〜
編集:野村 久祥
●特集2にあたって 野村 久祥
●エンハーツ®療法 野村 久祥,土井 久容
●オニバイド®療法 野村 久祥,新田 理恵
●ベージニオ®療法 野村 久祥,入江 佳子
●エムプリシティ®療法 野村 久祥,高橋真由美
●ローブレナ®療法
野村 久祥,服部千恵子
●連 載
▼知って安全! エビデンスに基づく抗がん薬の曝露対策と臨床実践 【5】
エビデンスに基づく曝露対策 〜モニタリング〜 橋真由美
▼シームレスに実践 ターミナルケア・グリーフケア 【5】
希望する場所で生活し旅立つことを支援する
〜在宅医からの終末期ケア報告と提案〜 奥野 滋子
▼もっと知りたい! 放射線療法 【最終回】
看護師が放射線療法を知るための院内教育の取り組み 後藤 志保
▼遺族の声を臨床に活かす 〜J-HOPE4研究(多施設遺族調査)からの学び〜 【#3】
家族
付帯研究25 がん患者の遺族の家族機能とうつ・複雑性悲嘆との関連 平塚 良子
付帯研究28 専門的緩和ケアサービスを利用した患者の家族内葛藤に関する研究 大日方裕紀,浜野 淳
▼がん薬物療法看護のWhat’s Trending! Past ☞ Current ☞ Future 【11】
がん薬物療法におけるIVナースの育成と研修運営 笹本 奈美
●特別寄稿
がんの支援療法と緩和ケア 〜静岡がんセンターにおける整理〜
遠藤 久美,篠田亜由美
衝動エネルギーに対するキンドリング介入
〜ソーシャルディスタンスがある中での看護〜 宇佐美しおり
●投 稿
遺伝性乳がん卵巣がん症候群と診断された家族をもつ未発症女性の遺伝学敵検査受検および診断後の体験
藤村 真瑚,佐藤冨美子,吉田 詩織,島田 宗昭,徳永 英樹,青木 洋子,新堀 哲也,津幡 真理
●リレーエッセイ●“がん看護CNS”奮闘中!〜活動の場の開拓について考える〜【新連載】
連載にあたって 風間 郁子,藤原 由佳
▼第1回 病棟での活動の場を開拓する
看護を意味づけ,看護師の実践力を支える 沖浦 麻矢
失敗をおそれず,自分の理念を軸に行動する 青桺 秀昭
●My Favorite Medicine!! 私が注目している抗がん薬を紹介します【18】
ブスルファン 菅野かおり
●BOOK
もっとうまくいく緩和ケア 患者がしあわせになる薬の使い方 〔評者〕林 ゑり子
特集 1 いまはこうする がん看護 〜サポーティブケア〜
特集にあたって1
本特集では,「いまはこうする がん看護」と題して,がんの進行によって起こる症状への対応,あるいはがん治療によって起こる有害事象の対応などの支持療法について,最新のエビデンスに対応した看護実践について考えることを目指している.
がん治療の進歩により,2008 年から2010 年の全部位全臨床病期の5 年相対生存率は67.9%で,1997 年から1999年の61.8%から徐々に改善している傾向がみられる.また,副作用や症状を抑える支持療法も発展し患者の苦痛の緩和と治療の継続に貢献している.このような変化の中でケアの方策も変化をしているが,新たな知見が普及されるにはタイムラグがある.慣習で行っていること,以前からあたり前に行ってきた実践が通用しなくなっていると感じることはないだろうか.新たな知見を活用することが患者にとって必要であると認識していても他職種にケアの根拠を説明できないゆえにコンセンサスが得られないことなど,チーム医療と言われている中で周知されていない現実もある.一方で,患者の情報収集能力は目を見張るものがある.なぜなら,患者は自身の最善の状態を保つために,がんの治療を続けるために,苦痛を緩和するために,必死になって調べているからにほかならない.
このように,変化の激しいがん医療の中で,エビデンスをふまえ患者のニーズにタイムリーに応えるためには,常に,知識とスキルをアップデートする必要性が高まっている.そのために看護師は,最新のエビデンスに基づいた,経験に頼らない支持療法の在り方を学ぶこと,加えて薬物療法・非薬物療法の知識を深めることが必要で,それをもって初めて実践に活かすことができると考える.
本特集では,進行期の症状緩和や支持療法に焦点をあて,古くから継続されて現在も重要であること,いまは考え方などが変化していることを整理し,最新のがん看護実践について考えることを目指している.加えて,看護師の研究的視点を養い,ケアの創造やスキルの向上のため,研究論文の知見を実践につなげ,それを活かすことを意識して立案した.
とくに,がん診療・治療の場で遭遇することの多い,疼痛治療のポイントや突出痛の考え方,対応が困難な吃逆のケア,せん妄の予防的ケア,放射線皮膚炎のケア,がん化学療法の悪心療法最前線,殺細胞性抗がん薬と作用機序がまったく違う免疫チェックポイント阻害薬の副作用,irAE のケアなどの内容を盛り込んだ.
本特集が,がん看護の現場において多職種で共有され,多くのがん患者のケアの向上に役立つものとなれば幸いである.
編集:關本 翌(国立がん研究センター中央病院),飯野京子(国立看護大学校)
特集 2 いま知っておきたい! がん薬物療法5 〜くすりを知ればケアもよくなる〜
特集にあたって2
近年,がん治療に新たに免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場したことでがん治療戦略が大きく変わってきている.一方で,ICI に効果が得られない患者に対しては,新規抗がん薬が必要となっている.がん治療薬の開発は日進月歩に進められ,多くの薬剤が新規薬剤として市場に送り出されている.
がん看護を実施するにあたり,新規薬剤に対しては,各薬剤の薬剤情報を知ることは最低限必要な知識である.適切な患者(適応やStage)に適切な投与量を適切なスケジュールで投与することは,期待される効果を得るためには必須の医療提供である.また,これらの薬剤情報に加え,看護の視点からみた患者への介入が欠かせないと考える.がん薬物療法を受ける患者は,短期間の入院,または外来の通院が多く,病院から離れて過ごす時間が長いため,その中で起きてくる有害事象に自身で対応できる力が必要になってくる.そのためには一人ひとりの患者に合った生活上の注意点などを説明することが必須で,それは看護師の大切な役割である.
近年,医師,看護師以外の専門職種は多く存在し,多職種でチーム医療を実践している.そして,主治医だけでは対応がむずかしいような症状や問題が出た場合に,医師以外の職種に対応の依頼を促すなど,患者と専門の職種をつなぐことも看護師の大切な役割と考える.
本特集は,近年発売された新規薬剤に対して,薬剤師による薬剤情報,投与前の確認ポイント,治療方法の選択と根拠と臨床試験での副作用についてまとめ,そのあとに看護師による看護のポイント,アセスメントポイント,患者の生活上の注意点をまとめた.また,専門家につなぐ局面を看護の目線から紹介した.
がん看護の臨床現場で活躍される看護師の皆さまの看護実践の参考となり,安心・安全な医療の提供,ひいてはがん薬物療法中の患者のQOL 向上につながれば幸いです.
編集:野村久祥(国立がん研究センター東病院データサイエンス部/薬剤部)