がん看護≪隔月刊≫
進行・再発がん患者へのケア(Vol.26 No.3)2021年3-4月号
- 主要目次
- 序文
特集 進行・再発がん患者へのケア 編集:入江佳子
特集にあたって 入江佳子
進行・再発がん患者の重要な局面のサポート 〜伴走者としての看護師の役割〜 入江佳子
がんの転移・再発の概要 〜メカニズム・疫学・治療の考え方〜 近藤千紘
進行・再発がん患者のこころのケア 〜つらい気持ちに寄り添うサポート〜 細矢美紀
がん患者の生の声 〜進行・再発がん患者の不安や生活の変化〜 天野慎介
脳転移のある患者のケア 〜意思決定困難な患者のサポート〜 橋口周子
骨転移のある患者のケア 〜ADL制限と活動のバランスを取りながら〜 黒澤亮子
呼吸困難のある進行がん患者のケア 〜取り切れない症状を和らげるサポート〜 柏木夕香
進行がんに伴う消化器症状ケア 〜身の置き所のない腹部膨満感や消化管閉塞のある患者のサポート〜 清水陽一
ゲノム時代の進行がん患者に必要な看護 〜薬物療法における薬剤選択のために遺伝子検査を受ける患者の看護を考える〜 大川恵
進行・再発がん患者のアドバンス・ケア・プランニング 〜ACPの第一歩〜 田代真理
●連載
・がんも身のうち 〜患者と看護教員 一人二役 リアルレクチャー〜【7】
病室閑話 〜患者は見ている! 病院のベッドから〜 吉原由実
・子宮頸がん 私自身,そして子どものことも考える 〜HPVワクチンと子宮頸がん予防の正しい知識〜【6(最終回)】
ワクチン接種だけじゃダメ! 〜検診も重要〜 長坂桂子,レニック・ニコラス
・がん薬物療法看護のWhat’s Trending! Past Current Future【6】
COVID-19蔓延の中でのがん薬物療法看護 〜院内医療提供の変化と調整の現場レポート〜 岸下礼子,M田のぞみ,藤井友紀,東出千鶴,菅野かおり
・対話に学ぶコミュニケーション 〜第二の患者である家族とのかかわりかた〜【新連載】
患者に「なにもしてあげられない」と無力感をもっていた家族 松田芳美
●特別寄稿
わが国におけるアピアランスケアのあゆみ 野澤桂子
●投稿
資料 若年性乳がん患者への看護の現状と病期別課題に関する文献検討 西尾聡子,樫木政子,作田裕美,村川由加理
●リレーエッセイ●こちらがん看護スペシャリスト奮闘中! 〜新たな敵と対峙してがん医療を前進させる〜【2】
▼第2回 がん治療が招く感染リスクに挑む
COVID-19の脅威と対峙しながらがん医療を進歩発展させていくために 〜ピンチをチャンスに変える“change agency”としての飽くなき挑戦〜 山田みつぎ
患者さんの思いを聴き,得られた情報を発信する 岩田友子
がん治療移行期の患者さんを支え続けるために 中村千里
●My Favorite Medicine!! 私が注目している抗がん薬を紹介します【13】
アルブミン懸濁型パクリタキセル 菅野かおり
特集:進行・再発がん患者へのケア
特集にあたって
近年,がん治療薬の新規開発や適応拡大,先進医療やがんゲノム医療の発展により,がんの集学的治療の選択肢は増加し,多くのがん患者が長期にわたり治療を受ける傾向にあります.進行・再発がん患者は,限られた可能性の治療や未知の治験などから治療を選択し,治癒を目指すことのできない病気の治療を継続するか,またはがんと闘う治療を終了し,症状を和らげながら病気の進行と付き合う緩和医療一本にするかの決定を迫られます.いずれを選択してもそのゴールは死に向かっており,多くの患者は藁にもすがる気持ちでわずかな可能性にも期待をもちながら,終わりの見えない道を歩むことになります.また,進行・再発がん患者が体験する,疼痛,呼吸困難などの苦痛症状は死を想起させ,ADL が制限されることにより生活の質の低下が起こり,先行きの見えない不安や悲嘆が増強することも少なくありません.
進行・再発がん患者にかかわる看護師は,患者の複雑な病態を把握し,患者・家族の希望や状況に応じた意思決定支援を行い,治療のサポート,有害事象マネジメント,心身の症状マネジメントを並行し,先々の患者の変化を予測しながら療養のサポートを行っていく必要があると考えます.また,急激な病状の変化が起こる場合もあり,患者との十分なコミュニケーションを図ることができない状況で意思決定支援を行わなければならない状況も起こり得ます.このような患者とのかかわりのプロセスにおいては,解決困難な身体症状のマネジメントや,患者・家族の強い不安や予期悲嘆にも対応し,倫理的問題や患者背景の複雑な問題にも直面することが多く,経験豊富な看護師であってもジレンマや疲弊感を感じると思います.
本特集では,進行・再発がん患者にかかわる看護師が知っておくべき基礎知識とともに,臨床でよく出合うケアに難渋するようなケースの紹介,および昨今話題のがんゲノム医療,アドバンスケアプランニングに関して,臨床でのがん看護実践者が安心して積極的にケアに取り組むことができる情報を,がん医療・がん看護のスペシャリストの最新知見も含めて解説します.また,体験者の生の声からがん患者の不安や生活への影響を学び,患者・家族のニーズを理解し,つらい状況に寄り添いながら質の高い看護実践ができる力をもち,社会や医療の動向に即したがん医療の現場で活躍できる一助となることを期待します.
編集:入江 佳子(筑波大学附属病院看護部/がん看護専門看護師/緩和ケア認定看護師)