雑誌

がん看護≪隔月刊≫

がん患者に寄り添うコミュニケーション(Vol.26 No.2)2021年1-2月増刊号

事例で学ぶ患者とのかかわりかた

発行年月 : 2021年2月
判型 : A4変

在庫あり

定価2,750円(本体2,500円 + 税)


  • 主要目次
  • 序文

がん患者に寄り添うコミュニケーション〜事例で学ぶ患者とのかかわりかた〜
編集:日本がん看護学会SIGがん精神看護

編集にあたって 紺井理和
第I章 看護師のコミュニケーションとは 〜理論編〜
 総論
 看護師のコミュニケーション 川名典子
 各論
 看護師のコミュニケーション 川名典子
第II章 コミュニケーションの実際 〜事例編〜
 はじめに 川名典子
 AYA 世代(1)
  医療に不信感があり,気持ちをなかなか表現できない若い白血病患者 野村優子
 AYA 世代(2)
  がん告知後,自分の気持ちを誰にもわかってもらえないと泣く乳がん患者 野村優子
 AYA 世代(3)
  手術を望まない30代の乳がん患者 牛山実保子
 治療拒否(1)
  経済的問題のために治療を拒否するようになった乳がん患者 小野聡子
 治療拒否(2)
  診断時,ステージIVで治療意欲がまったくなかったがん患者 小野聡子
 治療拒否(3)
  抗がん薬治療の副作用がつらくて,今後の治療(移植)を拒否しようとしていた白血病患者 紺井理和
 バッドニュース告知後(1)
  病名告知後,治療よりも自分の夢の実現に固執した男性胃がん患者 松田芳美
 バッドニュース告知後(2)
  ステージIVの告知後,死の不安が強く嘆いていた乳がん患者 小野聡子
 嘆く患者(1)
  術後再発のためのがん薬物療法の継続に意味が見いだせなくなり,嘆く乳がん患者 堀孔美恵
 嘆く患者(2)
  生存率が低いことを告知されて嘆く,膵臓がん手術後の患者 松本好美
 病状を否認する患者
  病状を否認していた肺がん患者 川名典子
 混乱した患者の意思確認
  本人の意思が不明なまま緩和ケア病棟へ転棟するところだった大腸がん患者 紺井理和
 怒り(1)
  イライラし,家族と率直な話ができなかった患者 村田涼子
 怒り(2)
  治療が長期化し,退院の見通しが立たないいらだちから家族との関係が悪化した高齢の胃がん患者 我妻志保
 不眠(1)
  不眠を訴え,いらだっていた食道がん骨転移患者 村田涼子
 不眠(2)
  術後の抗がん薬治療への不安のためか,病棟を落ち着きなく歩き回り不眠がみられた食道がん患者 三浦美和子
 強いこだわりがある患者
  便が出ないことにこだわり続けて看護師を悩ませた膵臓がん患者 野村優子
 家族に相談できない患者
  家族に迷惑をかけたくないと,ひとりで闘病を続けていた乳がん患者 我妻志保
 原因不明の身体症状を訴える患者
  死ぬことばかり考え,原因不明の身体症状を訴えていた脳腫瘍術後患者 川名典子
 医療不信があった患者
  現在の医療チームに対してイライラした様子をみせるようになった卵巣がん患者 紺井理和
索引

特集にあたって

 がんは現在では慢性疾患とされ,共生していくものと捉えられている.それを受けて,がんの診断から死に至るまでその人らしく生きていけるよう支援することが看護師に求められている.そのためには,がん患者の気持ちや考えを知るためのコミュニケーションが不可欠である.

 共感的に寄り添い,傾聴しましょうとよく言われるが,Bad News をきいた直後や予想外の病状悪化に衝撃を受けている患者,怒りや不安が強い患者,自分の死を考える患者を前にすると,返答に悩んで言葉に詰まったり,患者の言葉をオウム返ししたり,会話をしているようにみえて実は看護師から一方的な説明や説得をしているだけということがよくある.

 今回,看護師のコミュニケーションの特集を組むにあたっては,不安や怒りなどへの対処方法ではなく,看護師らしい看護師ならではのコミュニケーションの在りかたを伝えたいと考え,日本がん看護学会特別関心活動グループ(Japanese Society of Cancer Nursing Special Interest Group,以下SIG)のなかのがん精神看護メンバーに協力してもらうことにした.

 このSIG では,「精神看護はコミュニケーションから」をモットーに,患者ケアに欠かせないコミュニケーションの上達を目指して看護師同士で年に数回ロールプレイを用いた対話練習をしている.この練習では勝手に患者の思いを推察したり説明・説得することなく会話を通じて気持ちのつらさそのものを話し合えるようになること,傾聴だけでなく看護師の気持ちや考えもきちんと言葉で伝えることに重点を置いている.そして,最終的に看護師があまりストレスを感じないで患者と自然に会話ができるようになることを目指している.日ごろSIG で考えている患者と双方向性の自然な会話とはどういうことか,自然な会話が患者にどのように治療的にはたらくかということ,さらに自然な会話によって看護師も喜びややりがいが感じられるようになること,を読者のみなさまにお伝えできるように本誌を企画した.

 本特集では,まず看護師のコミュニケーションの意義,良質なコミュニケーションがもたらす効果や留意点といったコミュニケーションの基本を理論編としてまとめてある.

 次に,SIG メンバーに今までの臨床活動のなかで印象深い事例を提供してもらった.読者のみなさまにも似たような経験のある場面が多いことと思う.

 そして,事例ごとにそのやり取りのスーパービジョンを付けた.事例とスーパービジョンを合わせて読んでいただくことで,この場面のこの会話にはそういう意味やケア効果があったのか,ここはもう少していねいに会話を重ねてもよいのだということなどがわかり,今度のコミュニケーションに役立つ,示唆に富むものになるよう編集した.読者のみなさまの日ごろの看護にお役に立てれば幸いである.

 最後に,日本がん看護学会SIG がん精神看護の名称の使用や活動内容の公開を許可して下さった日本がん看護学会に深く感謝いたします.

2021年1 月

編集:紺井 理和(日本がん看護学会SIG がん精神看護代表,聖路加国際病院看護部/精神看護専門看護師)

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