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臨床雑誌整形外科≪月刊≫

整形外科領域におけるAIの応用(Vol.76 No.6)2025年5月増刊号

  • 商品説明
  • 主要目次

特集 整形外科領域におけるAIの応用

■編集にあたって

 近年,人工知能(AI)を利用した技術が医療分野に革新をもたらしています.整形外科領域では,手術支援システム,診断支援,治療計画の最適化,予後予測など,多岐にわたる応用が進んでおります.AIを利用した手術支援システムにより,術前もしくは術中に最適な手術プラニングが可能となり,手術精度の向上が期待されます.

 画像診断においては,異常や病変の自動検出,画像解析を行い,正確な診断が迅速に行われ,いわゆる“見逃し”が減少することが期待されます.特に放射線読影医のいない夜間・休日などの救急患者の画像診断などにおいては,頼もしい“読影マシーン”として活躍が期待できるかもしれません.また患者の個別のデータを元にしたAIアルゴリズムは,最適な治療計画を立案するのに役立ちますし,AIは大規模なデータからパターンを学習し,患者の予後を予測することができます.さらに手術や治療のリスクを評価し,適切な予防措置を提案することも可能です.

 最近では,言語AIも医療分野において活用され始めております.言語AIは診療報告書の作成や,サマリー作成の際に役立ちます.昨今の働き方改革にとっては非常に重要なツールとなる可能性があり,早期の実用化が期待されております.

 本特集号はこうした視点から,現時点での整形外科領域におけるAIの活用について俯瞰し,AIの基礎から画像診断,診療支援,予後予測や生成AI,言語AIによる医療デジタルトランスフォーメーション(DX)など,各領域における具体的な活用方法について広く学ぶことを目的に企画しました.これからAIを学ぶ若い先生だけではなく,多くの臨床経験を持つベテランの先生方にも医療DXの流れを学ぶよい機会になればと思います.われわれ整形外科医がこの便利でパワフルなツールに慣れ,上手に使いこなすことが,さらなる整形外科医療の進歩につながると考えており,本書がその一助になることを願っております.

東京科学大学整形外科教授
吉井俊貴

特集 整形外科領域におけるAIの応用

●編集にあたって  吉井俊貴

T章.AIの基礎
1.医療AI研究の変化――画像AIから言語AIへ  高橋 康
2.放射線科医の立場からみたAI診断の現状と未来  野崎太希
3.希少疾患に対するAI開発戦略  長谷井 嬢

U章.AIによる画像診断
1.AI技術を活用した脊椎画像診断  藪 晋人
2.AIを用いた転移性脊椎腫瘍による脊髄圧迫の評価  魚谷弘二
3.CTから骨転移を自動で検出するための新たな深層学習アルゴリズムの開発  佐藤信吾
4.大腿骨近位部骨折におけるAIを用いた骨折部位の可視化  井元佑一
5.深層学習モデルによる足部単純X線像の自動計測  武田龍太郎
6.単純X線像における仙骨骨折のAI画像検出  稲垣直哉

V章.AIによる動作解析
1.AI動作解析アプリを用いたロコモ度テスト  三上幸夫
2.特発性側弯症に対する可視光画像におけるAIを用いた姿勢推定  後藤 豪
3.成人脊柱変形における歩行解析――三次元動作解析からAIアプローチまで  三浦紘世
4.AIを使用した書字動作解析による頚髄症診断  山田英莉久
5.手指動作の動画解析と機械学習による手根管症候群のスクリーニング法の開発  塚本和矢
6.骨格情報とAIを活用した新規歩行解析法による膝前十字靱帯損傷の鑑別  宝満健太郎
7.機械学習を用いた歩行時の膝関節内反スラスト検知モデル  井原拓哉

W章.AIによる疾患診断
1.正面X線画像データから腰椎および大腿骨近位部の骨密度推定値を演算するAI骨粗鬆症診断補助システム  茂呂徹
2.股関節X線像からの大腿骨近位部2D,3D骨密度計測  上村圭亮
3.AIを用いた骨盤正面X線像からの四肢筋肉量推定  西村亮祐
4.3DデプスセンサーとAIによる側弯症検出  小甲晃史
5.AIによる上腕骨離断性骨軟骨炎の病変検出  乾 淳幸
6.深層学習モデルを用いた成長期野球選手の上腕骨内側上顆変形の検出  辻謙太

X章.AIによる手術・診療支援
1.紙媒体の患者報告アウトカムの自動入力
   ――日本整形外科学会腰痛評価質問票への深層学習の適用  細澤幸輝
2.AIによる腰仙椎前外側椎体間固定術術中内視鏡画像の総腸骨静脈セグメンテーションを用いた手術支援システムの開発  山本香織
3.人工股関節全置換術におけるステムのサイズ・適合性を予測する機械学習モデル  金岡丈裕
4.生成AIの医用画像への応用――人工股関節全置換術後X線像の3D—CT化とカップアライメント評価  藤田 暁

Y章.AIによる手術・治療成績予測
1.AIを用いた頚椎・頚髄損傷予後予測因子の探索
   ――Japan Association of Spine Surgeons with Ambition多施設共同研究1,512例の検討  伊藤定之
2.脊椎疾患における手術予後予測へのAI応用―頚椎後縦靱帯骨化症を中心に  牧 聡
3.股関節単純X線正面像を用いた変形性股関節症の進行予測AI  日高 亮
4.AIを用いた骨肉腫患者に対する術前化学療法の効果判定と予後予測  川口健悟

Z章.生成AIによる医療DX
1.大規模言語モデルの医師国家試験の解答解析
   ――ChatGPTとGPT—4の比較から始まった大規模言語モデル研究の広がり  中原龍 一
2.言語生成型AIから得られる整形外科的専門知識は不正確である
   ――生成型AIが出力する専門知識には要注意  竹上靖彦
3.Chat GPTが示す自己診断の信頼性の問題点とその改善法  黒岩智之
4.日本整形外科学会症例レジストリー自動化に向けた手術記録からの自動情報抽出AIモデルの開発  喜多洸介
5.大規模言語モデル(AI)を用いた救急トリアージシステムの開発  矢崎めぐみ
6.生成AIを活用した論文の書き方  土方保和

●編集後記

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