臨床雑誌外科≪月刊≫
外科医が知っておくべき癌治療の薬物療法(Vol.75 No.12)2013年11月増刊号
- 主要目次
- 序文
特集 外科医が知っておくべき癌治療の薬物療法
●編集にあたって
I.総論
1.がんの治療開発と臨床試験 片山宏
2.抗癌薬の保険承認と適応 斎藤聡
3.抗癌薬の種類と作用機序 今田洋司
4.分子標的治療薬の種類、命名法、臨床課題 永井宏和
5.癌免疫療法の展望 田原秀晃
6.切除不能癌に対する抗癌薬選択の考え方 設樂紘平
7.術後補助化学療法と術前化学療法 金治新悟
8.原発不明癌の薬物療法 安藤正志
9.小児腫瘍の薬物療法 細野亜古
10.抗癌薬投与方法 尾山勝信
II.抗癌薬各論
1.肺癌の薬物療法
a)小細胞肺癌 豊澤亮
b)非小細胞肺癌 古賀祐一郎
2.乳癌の化学療法、分子標的治療 伊藤良則
3.食道癌の薬物療法
a)切除不能・再発癌 山口和久
b)術前・術後補助化学療法 竹内裕也
4.胃癌の薬物療法
a)切除不能・再発癌 水上拓郎
b)術前・術後補助療法 青山徹
5.大腸癌の薬物療法
a)切除不能・再発癌 庄司広和
b)術前・術後補助療法 猪股雅史
6.Gastrointestinal stromal tumorの薬物療法 松橋延壽
7.肝細胞癌の薬物療法 田中真二
8.胆管癌・膵癌の薬物療法
a)切除不能・再発癌 森実千種
b)術前・術後補助療法 上坂克彦
9.膵・消化管神経内分泌腫瘍の薬物療法 河本泉
10.尿路系腫瘍の薬物療法 田岡利宜也
11.前立腺癌の薬物療法 井上貴博
12.子宮癌の薬物療法 竹内聡
13.卵巣癌の薬物療法 勝俣範之
14.骨転移の薬物療法 鶴谷純司
III.支持療法・緩和療法
1.抗癌薬の有害反応に対する薬物療法 大隅寛木
2.癌薬物療法中の栄養療法 東口志
3.疼痛緩和療法 細川豊史
4.精神腫瘍医学における薬物療法 大西秀樹
固形癌に対する薬物療法は、分子標的薬の登場も相まって近年めざましい進歩を遂げている。大規模臨床試験がグローバルに展開し、新しいエビデンスが次々と生み出されていく。欧米はもちろん、アジア諸国でも、この薬物療法を担当するのは腫瘍内科医(medical oncologist)である。
ところがわが国では、教育システムの整備の遅れから腫瘍内科医の数が圧倒的に不足しており、術前・術後の補助療法はもちろん進行・再発癌に対する化学療法でさえ、外科医がその責務を担わざるをえないのが実情である。
もちろん、腫瘍外科医(surgical oncologist)は、単に癌の手術を上手に行うのが仕事なのではなく、薬物療法を始めとする治療学の知識をもち、あらゆるステージの腫瘍に対応する集学的治療の意義を理解していなければならない。しかし、外科医が担うべきは集学的治療の「一翼」であり、全体ではない。固形癌の薬物療法は、予想されるさまざまな有害事象を念頭において患者の状態が許すギリギリのレベルで行われるものであり、「薬を投与するだけなら外科医でもできる」というのでは治療成績の向上は望めない。早く多くの腫瘍内科医が育ってほしいものである。
本号は、外科医が固形癌に対する薬物療法の基本的な考え方を理解し、各臓器分野における今日の標準治療のみならず、今後の展開と方向性までを把握できることをめざした。いずれすべてが書き換えられる日がくると期待されるが、それまでは臨床現場の頼れるマニュアルとして利用されたい。
『外科』編集委員会