臨床雑誌内科≪月刊≫
プライマリケアに必携! アレルギー診療の基本ガイド(Vol.132 No.6)2023年12月号

- 主要目次
- 序文

[特集]
プライマリケアに必携!アレルギー診療の基本ガイド
企画:永田 眞
[Chapter 1]問診・検査の基礎知識
アレルギー診療での問診のポイント 杣 知行
基本的な検査と結果の活用法 二村恭子
[Opinion]おすすめできない検査 堀向健太
[Chapter 2]治療の基礎知識
アレルゲン回避指導の実際 関谷潔史 ほか
抗アレルギー薬 岡野光博 ほか
アレルゲン免疫療法 中込一之・永田 真
吸入療法薬 玉田 勉
分子標的治療薬 三木春香 ほか
全身性ステロイド 岩永賢司
[鼎 談]
日本のアレルギー診療のあるべき方向性 永田 真[司会]・中村陽一・足立哲也
[Chapter 3]アナフィラキシーと食物アレルギーの基礎知識
アナフィラキシーへの対応と長期管理の原則 海老澤元宏
花粉-食物アレルギー症候群 伊藤 潤
豆類・木の実類のアレルギー 佐藤さくら
花粉関連・種実類以外の主な食物アレルギー 千貫祐子
アニサキスアレルギーと食物関連アレルギーHidden Allergenを見つけ出そう! 鈴木慎太郎
仮性アレルゲンによる食物アレルギー様症状 入江美聡・正木克宜
好酸球性消化管疾患 山田佳之
[Chapter 4]気道系アレルギー疾患対応のための基礎知識
気管支喘息 長瀬洋之
慢性咳嗽 新実彰男
アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM) 浅野浩一郎
アレルギー性鼻炎・花粉症 後藤 穣
好酸球性副鼻腔炎・中耳炎 細川 悠
[Chapter 5]皮膚のアレルギー疾患対応のための基礎知識
成人のアトピー性皮膚炎 佐伯秀久
蕁麻疹 中原剛士
[Chapter 6 ]
そのほかのアレルギー疾患対応のための基礎知識
薬剤アレルギー 山口正雄
アレルギー性結膜炎 海老原伸行
[連載]
内科医が精神科のくすりを処方する。
第10回 SSRIを出したくなる人 ④ 國松淳和
イメージで捉える呼吸器疾患
第13回 夏型過敏性肺炎「自宅に帰ると熱や咳が出て調子がわるいんです」 皿谷 健
[投稿]
Photo Report
仮性肺動脈瘤に対して気管支動脈塞栓術(BAE)を施行した1例 河合将尉
症例
待機的根治術までに三度の超音波ガイド下整復を施行した両側閉鎖孔ヘルニアの1例 髙橋祥也
[書評]
新訂NBI内視鏡アトラス 田尻久雄
特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版) 工藤翔二
ようこそ緩和ケアの森 がん・非がん患者の消化器症状を診る 久永貴之
アレルギー疾患は激増しており,今や21世紀の国民病ともいえる事態となっています.そのなかには軽微なものも含まれますが,たとえば全身ステロイド療法の副作用などの問題を生じる難治性喘息であったり,また寛解しがたくしばしば致命的なアナフィラキシーを反復するような食物アレルギーも含まれます.つまりプライマリケアの先生方にぜひともご診療を全うしていただきたいケースから,専門性の高い診療が要望される例までのばらつきが大きいのです.
アレルギー領域の基本的な臨床的特徴として,体質的な基盤を背景とするゆえ罹病期間が長期となること,家族集積性がみられること,また一人の患者に複数の疾患が発症することなどがあげられます.たとえばわが国における代表的な生活環境アレルゲンである家塵ダニは,気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎,アトピー性皮膚炎,食物アレルギーのいずれにも関与し,発症を誘導しえます.アレルギー疾患は容易に根治せしめることは困難なものの,各種の有益な診療アイテムが豊富に存在しています.プライマリケアの場で活躍するのは,たとえば気管支喘息での吸入療法などの各種の局所療法薬や抗アレルギー薬などです.一方,専門医での活用が望ましいものとしてはアドレナリン自己注射の処方と指導,舌下免疫療法を含むアレルゲン免疫療法,そして重症病態に対する各種の分子標的治療薬が存在します.血中IgE抗体検査については国民皆保険制度のわが国では,しばしば数十種類のアレルゲンに対するマルチスクリーニング法が繁用されていますが,この結果しばしば出てくる臨床的偽陽性の項目まで回避指導が行われる例が少なくないなど,正確な運用には慎重を期する必要もあります.
さて,アレルギー疾患患者さんはしばしばプライマリケアの場を訪れます.そこで適切な初期判断,一定の医療や検査を行っていただき,必要があればアレルギー専門医にご紹介いただくことが,患者を益することとなるでしょう.本特集は当代の日本アレルギー学会のリーダーたちにご執筆を依頼し,プライマリケアの先生方が知っておくべきアレルギー診療の基礎知識について,専門医への紹介のタイミングなども含めて提供することを企図いたしました.本邦のアレルギー診療の向上に貢献できるような基本ガイド的な1冊となり,先生方ひいては患者さんのお役に立てることを期待いたします.
永田 真
(埼玉医科大学呼吸器内科/埼玉医科大学病院アレルギーセンター)
