臨床雑誌内科≪月刊≫
ここまで来た不整脈治療(Vol.132 No.5)2023年11月号
明日からの診療に役立つ最新のアプローチ
- 主要目次
- 序文
[特 集]
ここまで来た不整脈治療―明日からの診療に役立つ最新のアプローチ
企画:牧 尚孝
[Chapter 1]Overview
不整脈の機序・病態生理 今井 靖
不整脈の診断と治療update 水上 暁
[Chapter 2]不整脈診断のための検査
12誘導心電図―健診で異常を見つけたら 二宮雄一
Holter心電図,モニター心電図 朝田一生
最新技術を用いた不整脈診断サポート 荷見映理子
心臓電気生理学的検査 坂本和生
不整脈の遺伝学的検査 園田桂子・大野聖子
[Chapter 3]心房細動に対するアプローチ
薬物治療(抗凝固療法は除く) 松田 淳
非薬物治療―カテーテルアブレーション治療 油井慶晃
抗凝固療法 深谷英平
経皮的左心耳閉鎖術による抗血栓療法 田中 旬
外科的不整脈手術・左心耳閉鎖術 堀 大治郎・山本貴裕
[Chapter 4]上室性不整脈・徐脈性不整脈に対するアプローチ
心房頻拍・心房粗動の診断と治療 末成和義
発作性上室頻拍の診断と治療 高麗謙吾
洞不全症候群・房室ブロックの治療 矢那瀬智信・清水 悠
[Chapter 5]心室性不整脈に対するアプローチ
心室期外収縮の治療戦略 牧元久樹
心室頻拍の治療戦略 林 達哉
心室細動・torsade de pointes 綾部健吾
Brugada症候群・QT延長症候群 矢崎義直
ICD・CRT-Dの適応 松永泰治
[Chapter 6 ]実地医家がまれに遭遇する不整脈
トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR—CM)に合併する不整脈 金澤尚徳 ほか
成人先天性心疾患での不整脈 小島敏弥
小児の不整脈 芳本 潤
[座談会]
カテーテル治療で不整脈を克服できるか?―日本と欧州の現状 牧 尚孝[司会]・山形研一郎・齋藤友紀雄・牧元久樹
[連 載]
内科医が精神科のくすりを処方する。
第9回 SSRIを出したくなる人B 國松淳和
イメージで捉える呼吸器疾患
第12回 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症「タツノオトシゴみたいな黄色や赤色の痰が出ました」 皿谷 健
Focus On
不明熱外来の現状―不明熱という不確実性への対応 徳増一樹
[書 評]
みんなの疑問はこれで解決 できる!糖尿病診療 野田光彦
その精神症状どうします?―はじめの処方・次の処方 こう考える・こう評価する 松田能宣
高齢者糖尿病診療ガイドライン2023 井藤英喜
現在,高齢化が進む本邦では心血管疾患患者が増加傾向にあり,社会における負担も大きくなっている.高血圧症,糖尿病,脂質異常症に代表される疾病は虚血性心疾患のみならず心不全発症のリスクともなり,心不全パンデミックとよばれるなど心不全患者の増加は日本社会にとって深刻な問題となりつつある.心不全と不整脈には相互に増悪要因となる関係があり,心房細動に代表される上室性不整脈は心不全悪化を招き,また心室頻拍・心室細動といった致死性不整脈は,一見安定しているようにみえる心不全患者であっても突然死をきたす深刻な問題となる.循環器内科医を含めたすべての内科医にとって,突然の容体急変をもたらす不整脈は厄介な問題であり,その制御にあたっては抗不整脈薬による薬物治療が中心となってきた歴史がある.一方で抗不整脈薬による催不整脈作用により,とくに心機能低下をきたした患者ではかえって致死性不整脈の増加をきたすなど,予後改善に必ずしも寄与しないことが判明し,薬物治療のみでは改善せしめない病態も多々あることがわかってきた.
この四半世紀を振り返って,不整脈診断における心臓電気生理学検査の発展は目覚ましく,マッピングシステムにより不整脈を可視化し,経皮的に回路を遮断するアブレーション治療が大きく発展した.私が循環器内科医のキャリアを開始した2006年と現在とを比べると,カテーテルアブレーションによる不整脈治療の領域はどんどん拡大しており,かつては限られた少数の専門施設でしか行っていなかった病態の症例が,多くの循環器専門施設で治療できるようになり,成績も年々向上してきている.手技の向上も相まって,現在では先天性心疾患や重症心不全での不整脈など,より重症で複雑な症例に対してもチャレンジされている.また最近ではペースメーカ,植込み型除細動器などのデバイス治療における遠隔モニタリングシステムやスマートウォッチによる不整脈診断など,不整脈診療は新しいテクノロジーの導入により大きく変化しつつある.
本特集では診断と治療の両面で大きく変革した不整脈診療の最新のトピックを,各領域で活躍されている専門家の先生方に解説いただいた.内科医が日常診療で遭遇するさまざまな不整脈に対して,どのように対処すればよいのか,どのタイミングで専門施設へ紹介すればよいのか,など日常診療で読者の皆様を悩ませる疑問に本誌が一助となることができれば幸いである.
牧 尚孝
(自治医科大学附属さいたま医療センター 循環器内科)