臨床雑誌内科≪月刊≫
“思春期内科” (Vol.131 No.3)2023年3月号
大人でも子どもでもない患者を診る
- 主要目次
- 序文
[特集]
“思春期内科”―大人でも子どもでもない患者を診る
企画:國松淳和
[Chapter 1]思春期の患者を誰が診るのか?
小児内科医からみた思春期診療 早川 格
成人内科医からみた思春期診療 川島篤志・稲葉哲士
[Chapter 2]思春期に発症しうる疾患
伝染性単核球症のゲシュタルト 島田侑祐・小坂鎮太郎
菊池病 勝倉真一
感染性心内膜炎 日馬由貴
炎症性腸疾患 渕上綾子 ほか
機能性消化管障害 中野弘康
気管支喘息 駒瀬裕子
糖尿病 浦上達彦
ネフローゼ症候群 岡本正二郎
若年性特発性関節炎 清水正樹
急性リンパ性白血病(ALL)―AYA世代ALLの治療開始までの基礎知識 松井基浩
Langerhans細胞組織球症 工藤寿子
てんかん―思春期を迎えた小児てんかん患者の未来を考える 榎 日出夫
統合失調症―児童青年期の統合失調症とその周辺の精神症状 深津英希・藤田純一
強迫症―思春期に発症する強迫症の特徴 原井宏明・松浦文香
双極性障害(躁うつ病) 多田光宏・仁王進太郎
摂食障害 水原祐起
思春期の月経トラブルと低用量ピル 中山明子
糖原病 福田冬季子
[Chapter 3]思春期にまつわる問題
先天性免疫異常症 伊藤健太
不登校 水谷 肇 ほか
思春期の不明熱―機能性高体温症を考える 徳増一樹
思春期診療とSNS 尾久守侑
不定愁訴 眞島裕樹
妊娠とその周辺―ユースフレンドリーな医療施設になるために 柴田綾子
救急外来での思春期世代診療の注意点 久村正樹
[鼎談]
子どもは小さな大人であり,大人は大きな子どもである 國松淳和[司会]・早川 格・尾久守侑
[連載]
内科医が精神科のくすりを処方する。
第3回 ベンゾと私A 國松淳和
イメージで捉える呼吸器疾患
第6回 特発性肺線維症「健診のX線異常と乾いた咳」 皿谷 健
医療用ITツールのイマとミライ
第8回 予防医療スクリーニングアプリ 宮植和希
Focus On
非がん性呼吸器疾患の緩和ケア―呼吸困難を訴える患者に出会ったら? 富井啓介
[書評]
限られた時間での対応にもう悩まない! 緊急PCIマニュアル 阿古潤哉
リウマチ病学テキスト(改訂第3版) 竹内 勤
「思春期」の年齢の患者を,どの科が診たらよいだろうか.そういうことを考えたことは,あるだろうか.
一般的には,15歳までを小児科,16歳から内科など成人の各科,という切り分けが多いであろう.しかし,16歳になった瞬間に人は大人になるのだろうか.むろんそうではないだろう.成人の内科医が,15歳の患者を診られないことはないはずである.以前,内科医がどの年齢からなら診られるのかということについて後輩の小児科医と一緒に考えたことがあったが,そこでは6歳以降は診られるのでは,ということになった.が,それも極端なので,ざっくり中学生からは内科医でも問題ないように思われる.
一方,小児科医も中学生までは自分たちの守備範囲であるという誇りももっているはずである.小学生くらいから芽生える人間としての「自分」が,脳や身体の成熟の経過とともにブレてくるのを,心ある小児科医たちはこれまでずっと職務として見届けてきたと思う.場合によっては,高校生になっても成人になっても小児科医である自分が診てきたという事例もあろう.
思春期年齢の診療は難しい.手垢に塗れた言い方になるが「身体は大人で心はまだ子ども」という状態像となるわけであり,いかにも心身の変調をきたしそうな世代と思われる.そんな難しい時期を,「小児科まかせ,内科医まかせ」でよいはずがない.
今回の特集はそういった問題意識が根底にある.思春期の問題を解決するには,「過敏で繊細な内面に寄り添う」といった気持ちだけでは無理である.まずはこの年齢帯に起きる医学的問題を知ること.とくに「疾患」について知ること.前提となる臨床医学知識なくして,思春期の子どもたちになど寄り添うことなどできない.ここが本特集のまさにねらいであり,きちんと疾患・病態について各論的に理解できることを目指した.
今回の特集で少しでも思春期に問題になる疾患についてインプットしていただき,いつかは患者の年齢を気にしないような内科医になってほしい.本誌がその助けになれば幸いである.
國松淳和
(南多摩病院 総合内科・膠原病内科)