臨床雑誌内科≪月刊≫
心エコー 傾向と対策(Vol.131 No.2)2023年2月号
ケースで学ぶ! 実地医家がおさえておきたい診断・評価法
- 主要目次
- 序文
[特集]
心エコー 傾向と対策―ケースで学ぶ! 実地医家がおさえておきたい診断・評価法
企画:波多野 将
[Chapter 1]心エコーの基本知識おさらい
心エコーでわかること(初級編) 加藤奈穂子・渡辺弘之
心エコーでわかること(上級編) 大森奈美・上嶋徳久
[Chapter 2]心エコーによる評価法
経食道心エコー 合田亜希子
POC心エコーとポータブルエコー 加藤奈穂子
負荷心エコー 岩倉克臣
マイクロバブルテスト 蔵垣内 敬ほか
心腔内エコー 三好達也
[鼎 談]
実地医家のための心エコー活用法―違和感を捉えるエコーで診療の幅を広げよう 波多野 将[司会]・瀬尾由広・大西勝也
[Chapter 3]ケースで学ぶ! 心エコーの傾向と対策
A.心エコーで診断する基本的疾患
虚血性心疾患 前川原慧則・泉 佑樹
弁膜症 澤田直子
心筋症 小板橋俊美
HFpEF―心エコーでここまで鑑別できる 山田博胤 ほか
肺高血圧症 佐藤希美・石津智子
B.実は遭遇することがまれではない疾患・病態
低流量低圧較差重症大動脈弁狭窄症 片山大河 ほか
心アミロイドーシス 和根崎真大
心房性僧帽弁閉鎖不全症・三尖弁閉鎖不全症 岡田 厚
心エコーによる急性大動脈解離の診断 西上和宏
心囊液貯留の評価法 坂田好美
感染性心内膜炎 天野雅史
[Chapter 4]心エコーのtipsあれこれ
不整脈患者の心機能評価 橋智紀・楠瀬賢也
人工弁の機能評価 田中秀和
循環器疾患において肺エコーが役に立つ場面 近藤貴士郎
循環器疾患を有する患者に対する心臓以外のエコーによる評価 向井康浩・中西弘毅
心エコー施行時における体位変換のコツ 水上尚子
[連載]
内科医が精神科のくすりを処方する。
第2回 ベンゾと私 @ 國松淳和
イメージで捉える呼吸器疾患
第5回 気管支喘息発作「お酒を飲んだら息苦しくなりました」 皿谷 健
医療用ITツールのイマとミライ
第7回 糖尿病治療アプリ 大西由希子
[投稿]臨床研究
当院での新型コロナウイルス感染症(COVID—19)入院患者から検討した重症化予測因子 小野大樹
[書評]
テキスト臨床心臓構造学―循環器診療に役立つ心臓解剖 安部治彦
造血幹細胞移植診療実践マニュアル(改訂第2版)―データと経験を凝集した医療スタッフのための道標 森 毅彦
今回の特集は「心エコー 傾向と対策」である.まずはChapter 1で心エコーの基本知識について,「初級編」「上級編」に分けてご解説いただいた.「初級編」では広く実地医家に理解しておいていただきたいことをまとめ,「上級編」ではスペックルトラッキング法などの新しい技術についてご紹介いただいている.また,一口に「心エコー」といっても,経食道心エコーや心腔内エコーなど,機器にもさまざまなものがあり,薬剤・運動負荷エコーやマイクロバブルテストなど,評価法にもさまざまなものがある.これらについては,Chapter 2「心エコーによる評価法」でご解説いただいている.Chapter 1の「上級編」と合わせ,「最近の心エコーではこんなことまでわかるのだ」ということを実感していただければ幸いである.
Chapter 3では,特集のサブタイトルにも記したように多くの症例を提示することを重視した.鼎談で瀬尾由広先生(名古屋市立大学),大西勝也先生(大西内科ハートクリニック)が口を揃えておっしゃっていたのは,「違和感をもつことが大切」ということである.まさにこのことこそ実地医家にとって重要なのではないかと思う.「心エコーをする以上は過不足なく全体を評価しなければならない」「計測値を間違ってはいけない」といった心配をされる方が少なくないと思われるが(かくいう私もその一人である),大切なことは違和感をもって専門医による評価につなげることである.極端に言えば,計測値がなくても「動きがわるくみえる」「弁が硬そう」「心室と比べて心房が大きくみえる」といった大雑把な評価だけでも,十分に心エコーを行う価値があるということである.ただし,「違和感をもつ」ためには普段からできる限り心エコーに接して,正常なものも含めて多くの症例をみておくことが必要である.またChapter 4では,画像をより描出しやすくするための体位変換のコツや,循環動態を把握するのに役立つ他臓器のエコーによる評価など,実地医家にとって知っておいていただきたいtipsを取り上げた.
本特集でも紹介しているように,最近ではpoint-of-care ultrasound(POCUS)という,いわゆる「ちょいあてエコー」が急速に普及している.本特集が読者の先生方にとって,心エコーを行うことのハードルを少しでも下げることに貢献できれば幸いである.
波多野 将
(東京大学医学部附属病院 高度心不全治療センター)