教科書

新 放射化学・放射性医薬品学[電子版付]改訂第5版増補

編集 : 佐治英郎/向高弘/月本光俊
ISBN : 978-4-524-40477-3
発行年月 : 2024年8月
判型 : B5判
ページ数 : 376

在庫あり

定価6,600円(本体6,000円 + 税)

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放射化学,放射性医薬品学のスタンダードな薬学部学生向けの教科書.放射化学の基礎から,放射線,放射性同位体元素の利用,関連法規まで網羅し,基礎から応用までわかりやすく解説.今回の増補では,改訂第5版の内容に一部手を加えたうえで,電子版付とした.薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版/平成25年度改訂版)対応.

本書は,初版の序でも述べたように,薬学および関連分野の学生諸君が,放射線,放射性同位元素に関連した基本的知識を正しく身につけるための教科書ないしは参考書としてまとめたものである.
薬学教育においては,薬学基礎教育のより一層の充実,病院・薬局での半年間の実務実習を含めた医療薬学教育の充実を求めて,2006 年4 月から薬学6 年制が始まり18 年が経つ.この間,6 年制の薬学教育は「薬学教育モデル・カリキュラム」および「実務実習モデル・カリキュラム」,さらにその後のコアカリキュラムの統合・改定による「平成25(2013)年度改訂版・薬学教育モデル・カリキュラム」基盤として実施されている.また最近,教育の一層の深化,充実を目指して,「薬学教育モデル・カリキュラム」のさらなる改定の検討も進められ,令和4(2022)年度には,変化し続ける未来の社会や地域を見据え,多様な場や人をつなぎ活躍できる医療人の養成を目指して医学・歯学・薬学教育の3 領域で統一したキャッチフレーズ「未来の社会や地域を見据え,多様な場や人をつなぎ活躍できる医療人の養成」のもと,新たな「薬剤師として求められる基本的な資質・能力」の提示,各大学の創意・工夫に基づいたカリキュラム作成,課題の発見と解決を科学的に探究する人材の育成,医学・歯学・薬学の教育内容の一部共通化を行った「薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4 年度改訂版)」が作成され,それに沿った教育が令和6(2024)年度から本格的に適用されている.
放射性医薬品についても,最近アルツハイマーに関係するβアミロイドイメージングや腫瘍に発現する受容体,脳神経終末の再取り込み部位のイメージングをはじめとする核医学診断薬や,β線放出核種だけでなくα線放出核種を用いる核医学治療薬を含めて,いくつかの新しい放射性医薬品が製造承認され,放射性医薬品学領域も大きく変化,進展している.
また,核医学における放射性医薬品の調製や品質管理,薬物動態評価などをはじめとして,放射性医薬品・放射性物質の取り扱いに習熟した薬剤師を養成し,診療の安全性を向上して社会に貢献することを目的として,放射性医薬品・放射性物質の取り扱いに関する充分な知識と実績を有する薬剤師を核医学認定薬剤師として認定する核医学認定薬剤師制度を2017 年に一般社団法人日本核医学会が発足させ,現在までに53 名が核医学認定薬剤師として認定されている.薬学分野では,最近の医療の高度化に伴い,専門薬剤師・認定薬剤師の制度がいくつかの分野で設置されているが,核医学認定薬剤師もその背景のもとに発足したものである.なお,専門薬剤師制度を最初に発足させて本制度が最も進んでいる米国では,放射性医薬品を取り扱う薬剤師が専門薬剤師Radiopharmacist として一番初めに制度化され,放射性医薬品の調製や供給管理は病院内に独立した部署(放射性医薬品の薬局:Radiopharmacy)を設け,そこで行われている.
さらに,2019 年4 月にはわが国の放射線の安全取扱・障害防止に関する基本法である「放射性同位元素による放射線障害の防止に関する法律」(障害防止法)が大きく改正され,これまでの放射性同位元素の使用,販売,賃貸,廃棄その他の取り扱い,放射線発生装置の使用および放射性同位元素によって汚染された物の廃棄その他の取り扱いに加えて,核セキュリティ対策による特定放射性同位元素の防護を目的に追加して,事業所が自主的に責任のある放射線管理を実施してより積極的に放射線安全管理に取り組むことを求めて,法律名も「放射性同位元素等の規制に関する法律」(RI 規制法)として改題する改革がなされた.
改訂第5 版では,このような背景のもと,さらに最近の学問の進展への対応も含めて,初版の基本方針を踏襲しながら,放射線,放射性同位元素の物理・化学・生物,放射線測定に関する基本項目,放射性医薬品を含めた放射線・放射能の薬学・医療領域への応用,X 線診断法,CT,MRI などの物理学的手法を利用した各種画像診断法,放射線の防護と管理などの項目を中心に,大幅な改訂を含めて,より一層記載を充実させた.また,編集,執筆体制も,現在この領域の教育を実際に担当している先生方に大幅に交替した.さらに,図表においては可能な限りわかりやすいものにし,記述されている事項の理解につながる内容や関連情報を記した「より理解を深めるために」などの項目も充実させて,より理解しやすいように配慮した.また,今回の増補版では一部内容の修正を行うとともに,タブレットやスマートフォンでの学習に役立つ「電子版」が利用可能となった.
このように本書は,新しい薬学教育の体系ならびに薬剤師国家試験出題基準に適合するとともに,薬学および関連分野における放射線,放射性同位元素の基礎および応用に関して,学部学生に向けてできるだけ幅広く易しく解説することを心がけたつもりであるが,十分でない点もあろう.本書の内容について,読者諸氏からのご意見,ご指摘は編者,著者にとって極めて貴重なものであり,それらを参考にして,今後さらに充実したものにしたいと願っているので,忌憚のないご意見,ご指摘を積極的にお寄せ下さることをお願いする次第である.
本書が,放射化学・放射性医薬品学を学ぶ学生諸君に役立ち,薬学および関連分野での放射線,放射性同位元素,放射性医薬品および関連領域の教育・研究の質的向上に少しでも貢献できれば幸いである.
最後に,本書の執筆にあたり,貴重な資料の提供を快諾していただいた方々のご厚意に心から感謝の意を申し上げたい.さらに,本書の出版に多大なるご努力をいただいた南江堂出版部諸氏に心よりお礼申し上げる.
2024 年6 月
編 者

9784524404773