コンパス生物薬剤学[電子版付]改訂第3版増補
編集 | : 岩城正宏/尾上誠良 |
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ISBN | : 978-4-524-40452-0 |
発行年月 | : 2023年12月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 300 |
在庫
定価5,170円(本体4,700円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
わかりやすく,ミニマムエッセンスがコンセプトの生物薬剤学の教科書.図表を多く用い,「見た目」からの理解を意識した構成.章末問題(Exercise)は薬剤師国家試験出題内容も意識しており,解答解説付きで自主学習にも適する.今回の増補では,改訂第3版の内容に一部手を加えたうえで,電子版付とした.薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版/平成25年度改訂版)対応.
目 次
1章 総 論
A 生物薬剤学とは
B 薬物の体内動態と薬効発現
C 投与経路と剤形
D 創薬・創剤と生物薬剤学
E 医療と生物薬剤学
2章 生体膜の構造と薬物の生体膜透過機構
A 生体膜の構造
B 生体膜の透過機構
1 物質の膜透過機構
2 単純拡散(受動拡散)
3 pH分配仮説
4 担体輸送
C 輸送担体(トランスポーター)
1 輸送担体の分類
2 促進拡散
3 能動輸送
a 一次性能動輸送
b 二次性能動輸送
Exercise
3章 吸 収
A 消化管からの吸収
1 消化管の構造と機能
a 胃の構造と機能
b 小腸の構造と機能
c 大腸の構造と機能
B 消化管からの薬物吸収に影響する因子
1 薬物および製剤側の要因
a 脂溶性
b 解離度
c 分子量
d 溶解速度
2 生理学的要因
a 胃内pH
b 胃内容排出速度(胃内容排出時間)
c 吸収型輸送担体
d 胆汁分泌
e 血流速度
f 排出型輸送担体
g 薬物代謝酵素
C 初回通過効果とバイオアベイラビリティ
1 初回通過効果(first-pass effect)
2 バイオアベイラビリティ(bioavailability)と初回通過効果
D 非経口的に投与される薬物の吸収
1 消化管以外からの吸収
a 口腔粘膜からの吸収
b 鼻粘膜からの吸収
c 肺からの吸収
d 皮膚からの吸収
e 直腸粘膜からの吸収
f 注射部位からの吸収
E 消化管吸収過程における相互作用
a キレートの形成
b 薬物の吸着
c 胃内pH変動による薬物溶解性の変化
d 食事による薬物溶解性の変化
e 消化管運動の変化
f 小腸上皮CYP3A4の関与
g 小腸上皮P-糖タンパク質の阻害
h 小腸上皮P-糖タンパク質の誘導
i 小腸上皮OATPsの阻害
Exercise
4章 分 布
A 分布に影響する因子
1 物理化学的要因
2 毛細血管透過性
3 組織細胞膜透過性
4 血流速度
5 血漿タンパク結合
6 組織内結合
B 分布容積とその変動要因
1 分布容積
2 分布容積の変動要因
3 タンパク結合の解析法
4 リンパ管移行
C 脳への移行
1 血液脳関門と血液脳脊髄液関門の解剖学的構造
2 血液脳関門の物質輸送機能
a 血液から脳への供給輸送
b 脳から血液への排出輸送
c タンパク質を運ぶ輸送系
3 血液脳脊髄液関門の物質輸送機能
D 胎児への移行と胎盤関門
1 胎盤関門の解剖学的構造
2 栄養物質および薬物の胎児移行
Exercise
5章 代 謝
A 生体内での薬物代謝による化学構造の変化
1 薬の生体内運命における代謝の役割
2 薬物代謝酵素の存在部位
3 薬物代謝に関与する酵素
a 酸化反応に関わる代謝酵素
b 還元反応に関わる代謝酵素
c 加水分解反応に関わる代謝酵素
d 抱合反応に関わる代謝酵素
4 小腸と肝臓における初回通過効果
B 薬物代謝の具体例
1 酸化反応の具体例
a シトクロムP450(CYP)が関与する酸化反応
b その他の酸化反応
2 還元反応の具体例
a アゾ還元酵素による反応
b ケト還元酵素による反応
c その他の還元反応
3 加水分解反応の具体例
a カルボキシルエステラーゼ(CES)による加水分解
b エポキシド加水分解酵素(EH)による加水分解
4 抱合反応の具体例
a グルクロン酸抱合
b 硫酸抱合
c アセチル抱合
d グルタチオン抱合
C 代謝酵素による薬物の代謝活性化
1 活性代謝物
2 プロドラッグ
D 薬物代謝酵素の阻害と誘導
1 薬物代謝酵素の阻害
a 同一のCYPの基質結合部位での競合的阻害(可逆的阻害)
b CYPのヘム鉄(Fe2+)への薬物の配位結合(可逆的阻害)
c CYPのヘム鉄(Fe2+)への代謝物または代謝中間体の結合(不可逆的阻害)
d 代謝中間体によるCYPのヘム鉄(Fe2+)のアルキル化(不可逆的阻害)
e 代謝中間体によるCYPのアポタンパク質部分の修飾
f その他
2 薬物代謝酵素の誘導
a アリールハイドロカーボン受容体を介した誘導
b 核内受容体を介した誘導
3 薬物代謝酵素遺伝子の遺伝子多型
a CYPの遺伝子多型
b N-アセチル転移酵素2(NAT2)の遺伝子多型
c UDPグルクロン酸転移酵素1A1(UGT1A1)
E 代謝過程における相互作用
a シトクロムP450阻害・誘導
b CYP以外の代謝酵素が関係する相互作用
Exercise
6章 排 泄
A 腎排泄
1 腎臓の構造
2 糸球体ろ過
3 尿細管分泌
a 有機アニオン輸送
b 有機カチオン輸送
c 薬物相互作用―尿細管分泌過程の阻害
4 尿細管再吸収
a 単純拡散
b 能動的再吸収
c 膜動輸送―腎毒性薬物
5 腎クリアランス
a ネフロンにおける薬物移行のパターン
b 糸球体ろ過速度
c 薬物の腎クリアランス
B 胆汁中排泄
1 肝臓の構造
2 肝細胞内への移行
3 胆汁中への移行
a 薬物相互作用―胆汁中移行の阻害
4 胆汁中排泄の支配要因
5 腸肝循環
C 唾液・乳汁中などへの排泄
1 唾液への排泄
2 呼気への排泄
3 母乳(乳汁)への薬物移行
D 排泄過程における相互作用
a 糸球体ろ過への影響
b 尿細管分泌への影響
c 尿細管再吸収への影響
d 肝細胞取り込みの阻害
Exercise
7章 薬物動態の変動要因
A 薬物相互作用
1 薬物動態学的相互作用
2 薬力学的相互作用
B その他の変動要因
1 生体側の生理的要因
a 年 齢
b 妊 婦
c 疾 病
d 遺伝的な要因
Exercise
8章 薬物速度論
A 薬物速度論の基礎
1 反応速度と反応次数
2 速度論の理解のために必要な関数
a 指数関数
b 対数関数
c 微 分
d 積 分
e 等比数列
B 1-コンパートメントモデル
1 急速静脈内注射
a 急速静注時の血中濃度
b 生物学的半減期
c 全身クリアランス
d 血中濃度―時間曲線下面積
e 尿中排泄データの解析
2 静脈内定速注入(持続的点滴静注)
a 静脈内定速注入時の血中濃度
b 定常状態
3 経口投与
a 経口投与時の血中濃度
b 最高血中濃度と最高血中濃度到達時間
c 残余法(分割法)
C 繰り返し投与
1 繰り返し急速静脈内投与
a 繰り返し急速静注時の血中濃度
b 定常状態
c 蓄積率
2 繰り返し経口投与
D 2-コンパートメントモデル
E 生理学的薬物速度論
1 クリアランス
a 組織クリアランス
b 腎クリアランス
c 肝クリアランスと肝固有クリアランス
d 血流律速と代謝律速
2 バイオアベイラビリティ
a 量的バイオアベイラビリティ
b 速度的バイオアベイラビリティ
F モーメント解析法(モデル非依存性薬物動態解析法)
1 モーメントの定義
2 モーメント解析と1-コンパートメントモデル解析
G 非線形薬物動態
1 非線形コンパートメントモデル
2 固有クリアランスに濃度依存性がある場合
3 血漿タンパク結合に濃度依存性がある場合
4 その他の原因
H PK-PD解析モデル
1 PK-PD解析の概念
2 PK-PD解析モデルの種類
3 薬効コンパートメントモデル
Exercise
9章 TDMと投与設計
1 薬物治療におけるTDMの意義
2 TDMが有効な薬物
3 血液採取の際に注意すべき点
a 採血ポイント
b 採血時の注意
c 血液試料の取り扱い
4 TDMに用いられる血中濃度測定法
5 ポピュレーションファーマコキネティクス(母集団薬物速度論)とベイジアン法
a ポピュレーションファーマコキネティクス
b ベイジアン法(ベイズの統計理論)
6 患者ごとの薬物投与設計
a 腎機能に応じた投与設計方法
b 血中濃度が非線形を示すときの投与設計方法
Exercise
本書は薬学教育のなかでも主要な科目のひとつであり,医薬品開発や薬剤師業務に欠かすことのできない生物薬剤学,すなわち薬の生体内運命(薬の吸収,分布,代謝,排泄)をミニマムエッセンスで薬学生が平易にわかりやすく理解できるようにという基本方針で2010 年4 月に「コンパス生物薬剤学」第1 版が発行された.その後,改訂第2 版では,薬物動態の解析にあたる項目として薬学生が最低限知っておくべき「薬物速度論」および「TDM と投与設計」の章を追加した.続く改訂第3 版では,「吸収」の章を大幅に刷新するとともに,トランスポーターや薬物相互作用などの新知見に対応した.加えて,Exercise では薬剤師国家試験問題や複合問題もあらたに追加し,それらの解答解説では本文の参照ページを記載し,学習の便を図った.
今回の増補版では,記載内容の修正を行い,2024 年度入学生から適用される薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4 年度改訂版)対応表を追加した.さらに,2020 年初頭の新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により学習方法のひとつとして一気に進んだICT 機器による学習にも対応できるように電子版付きとした.なお,薬物動態の解析(薬物速度論)の修得には理論を理解した後に,自身で問題を解いて演習することが大切である.薬物動態の解析についてさらに学習されたい方は,姉妹書「コンパス薬物速度論演習」を活用していただきたい.
本書が薬剤師および薬学技術者をめざす薬学生のみならず,現場の薬剤師の方々が薬物の体内動態を理解するための参考書となれば幸いである.
最後に,本書の執筆および編集にあたって多大なるご理解とお世話になりました南江堂の諸氏に執筆者を代表して深く感謝の意を表する.
2023 年10 月
岩城正宏
尾上誠良
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