コンパスシリーズ
コンパス衛生薬学改訂第3版
健康と環境
編集 | : 鍜冶利幸/佐藤雅彦 |
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ISBN | : 978-4-524-40371-4 |
発行年月 | : 2020年4月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 652 |
在庫
定価5,940円(本体5,400円 + 税)
サポート情報
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2023年03月22日
年齢調整死亡率のモデル人口変更について
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
わかりやすく、ミニマムエッセンスがコンセプトの衛生薬学の教科書。豊富な図表とポイントを押さえた解説が特長。領域ごとの全体像をまとめたイラスト(キーワード穴埋め形式)で楽しみながら知識の整理が可能。今改訂では、日本人の食事摂取基準(2020年版)に対応するなど、統計・法規・基準等の情報更新を行い、最新の動向を反映させたほか、栄養スクリーニングや栄養アセスメントについて加筆するなど内容をさらに充実。
I部 健康
I-1 社会・集団と健康
1章 健康と疾病の概念
A 疾病構造の変遷
B 健康の概念
C WHOの活動
2章 保健統計
A 人口統計の意義
B 人口統計・傷病統計に関する指標
C わが国における人口動態の変遷と将来の人口予測
3章 疫学
A 疫学とは
B 疫学の要因
C 疫学調査
I-2 疾病の予防
4章 疾病の予防とは
A 予防
B 健康増進政策
5章 感染症とその予防
A 現代における感染症の特徴
B わが国の感染症関連法規
10 検疫法と国際感染症
C 性感染症とその予防対策
D 予防接種の意義と方法
6章 生活習慣病とその予防
1 生活習慣病の概念
2 生活習慣病の種類
3 生活習慣病のリスク要因
4 生活習慣病予防と行政
5 代表的な生活習慣病の動向・リスク要因・予防
7章 母子保健
A 新生児マススクリーニング
B 母子感染
8章 労働衛生
1 職業病と作業関連疾患
2 労働災害と業務上疾病の発生状況
3 職業病の発生要因
4 職業病の防止対策
5 過重労働による脳・心臓疾患,精神障害による自殺
6 医療における労働衛生
I-3 栄養と健康
9章 栄養
A 五大栄養素の役割
B 栄養素の消化,吸収,代謝
C 食品中の三大栄養素の栄養的価値
D 五大栄養素以外の食品成分の機能
E エネルギー代謝に関わる基礎代謝量,呼吸商,推定エネルギー必要量
F 日本人の食事摂取基準(2020年版)
G わが国における栄養摂取および健康状態の現状
H 栄養素の過不足による主な疾病
I 疾病治療における栄養療法
10章 食品機能と食品衛生
A 食品の変質:炭水化物とタンパク質の変質
B 食品の変質:油脂の変敗と変質試験
C 食品の変質に関与する因子と変質の防止
D 食品成分由来の発がん物質とその生成機構
E 用途別の代表的な食品添加物とその働き
F 特別用途食品と保健機能食品
G 食品衛生に関する法的規制と問題点
11章 食中毒と食品汚染
A 食中毒の種類と発生状況
B 微生物による食中毒
C 寄生虫による食中毒
D 自然毒による食中毒
E マイコトキシンによる食品汚染
F 化学物質による食品汚染
I部まとめイラスト
II部 環境
II-1 化学物質・放射線の生体への影響
12章 化学物質の毒性
A 化学物質の体内動態
B 第I相反応が関わる代謝・代謝的活性化
C 第II相反応が関わる代謝・代謝的活性化
D 化学物質代謝に影響を与える因子
E 化学物質による器官毒性
F 代表的な有害化学物質の毒性
G 重金属や活性酸素に対する生体防御因子
H 薬物の乱用による健康影響
I 中毒原因物質の解毒処置法
J 中毒原因物質の試験法
13章 化学物質の安全性評価と適正使用
A リスクコミュニケーション
B 毒性試験法
C 化学物質の毒性評価
D 化学物質の安全摂取量
E 有害化学物質の法的規制
F 内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)
14章 化学物質による発がん
A 発がん過程と化学発がん物質
B 遺伝毒性試験
C がん化に関わる遺伝子
15章 放射線の生体への影響
A 放射線による生物影響
B それぞれの臓器・組織への放射線による影響の違い
C 晩発影響
D 日常生活における放射線被曝(天然放射性核種と人工放射性核種)
E 放射線を防護する方法
F 非電離放射線
II-2 生活環境と健康
16章 地球環境と生態系
A 地球の階層構造と生物圏
B 生態系
C 地球規模の環境破壊とその対策
17章 環境保全と法的規制
A 典型七公害と四大公害
B 環境基本法
C 公害・環境汚染防止関連法規
18章 水環境
A 上水
B 下水
C 水質汚濁
D DO,BOD,CODの測定
E 富栄養化
19章 大気環境
A 大気
B 大気汚染
C 逆転層
20章 室内環境
A 室内環境を評価するための代表的な指標
B 室内汚染物質と健康
C 室内環境の保全とその法的規制
D シックハウス症候群と化学物質過敏症(多種化学物質過敏状態)
21章 廃棄物
A 廃棄物の種類
B 廃棄物処理の問題と対策
II部まとめイラスト
巻末付録
Exercise 解答・解説
索引
改訂第3版の序
薬学確立の世界史的背景として、ヒポクラテスの医学によって病気が生物学的事象として理解されるようになり、アラビアの錬金術から発展した化学によって化学物質を薬の素材として活用することが可能になり、その後の工業化によって医薬品の大量生産が可能になったという3つの革命が重要だったとされる。そして、薬学を学んだ者は、化学的技術を武器に薬剤師として職権を確立し医薬分業に基づいて医療を担う道と、近代化学の発祥に寄与し創薬を支える化学者への道を歩むものとに分化した。薬剤師が科学的医療だけでなく、医薬品の工業生産にも貢献する存在であるという概念はこうして確立された。一方、「近代衛生学の父」と呼ばれるマックス・ヨーゼフ・フォン・ペッテンコーファーは下水道の普及と衛生行政の発展に多大な功績を収め、疾病の予防的観点から医学・薬学に大きな影響を与えた。ペッテンコーファーは薬剤師免許を持つ研究者であったことは、彼の功績が環境・化学物質・疾病のすべてにわたる深い知識に裏付けられたものであることと密接に関係している。
そのような薬学の世界史的発展の中で、我が国の近代薬学も確立されていった。その中で衛生薬学は最も古い伝統と歴史を持つ領域の1つである。衛生学の流れを汲む領域は、医学・歯学・看護学・獣医学などの関連学部にも存在するが、人の健康の維持・増進の観点から、栄養と健康(栄養学・食品衛生学)、社会・集団と健康(公衆衛生学)、化学物質の生体への影響(毒性学)および生活環境と健康(環境衛生学)の4分野を統合的に1つの領域として確立し、原子・分子から地球環境に至る幅広い問題を人の健康の問題として捉えているのは衛生薬学だけである。この「衛」の知が、化学物質である医薬品の安全性の評価および衛生薬学4分野からの疾病の理解を可能とし、それを通じて「創」と「療」に大きく貢献していることを強調したい。
さて、本書第2版の発行から4年が経過し、このたび第3版を上梓することとなった。衛生薬学研究が長年にわたって積み重ねてきた学と術は膨大なものであり、しかも幅広い分野にわたっている。その内容を「高い専門性をしっかりと維持しつつ、分かりやすく解説する」ことは非常に難しい。しかしながら、本書の執筆者は並々ならぬ尽力によってそれを為し得たものである。そのことが高い評価を得ていることを編者は嬉しく思っているし、分かりやすくそれでいて高度な専門性を失わないという特徴をこれだけ明確に実現した教科書は他に例がないほどであると自負している。本書で衛生薬学を学ぶ学生諸氏が「衛」の知を身に付け、将来、「衛」「創」「療」のどの道に進もうとも衛生薬学の視点を忘れずに社会で活躍することを祈念している。
終わりにあたり、執筆者各位が常に学生諸氏の理解を第一に考え執筆してくださったこと、および南江堂出版部各位が編者の至らなさを適切かつ力強く支援してくださったことを特に記す。深甚なる謝意を表する。
2020年2月
編者