化学療法学改訂第2版
病原微生物・がんと戦う
監修 | : 大村智 |
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編集 | : 供田洋/黒田照夫 |
ISBN | : 978-4-524-40349-3 |
発行年月 | : 2018年2月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 326 |
在庫
定価6,050円(本体5,500円 + 税)
正誤表
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2019年11月15日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
薬学部で学ぶべき抗微生物薬と抗悪性腫瘍薬を基礎から詳しく解説した教科書。今改訂では新薬等の最新情報を盛り込んだほか、感染症治療薬と抗悪性腫瘍薬に重点をおき、より「化学療法」に焦点を絞った構成に変更した。また、代表的な感染症については治療ガイドラインの内容を包含し、臨床を意識した内容とした。薬学教育モデル・コアカリキュラム(平成25年度改訂版)対応。
第1章 微生物感染症
A 微生物学総論
1 微生物の多様性
2 微生物学の発展と微生物感染症の現状
3 微生物の範囲と分類
4 原核生物と真核生物
B 微生物学各論
1 細菌
2 真菌
3 寄生虫
4 ウイルス
5 放線菌
C 微生物感染症
1 常在微生物叢
2 感染症とは
3 細菌と感染症
4 真菌と感染症
5 寄生虫と感染症
6 ウイルスと感染症
7 プリオン
第2章 感染症治療薬・総論
A 化学療法薬の発展の歩み
1 合成化学療法薬の発展の歩み
2 抗生物質発展の歩み
3 化学療法薬の今後の課題
B 力価と検定法および感受性試験
C 抗菌薬耐性
1 耐性菌の現状
2 耐性菌とは
3 抗菌薬開発と耐性菌の歴史
4 微生物が耐性となる理由
5 抗菌薬耐性菌の出現機構
6 抗菌薬耐性の生化学的機構
7 交差耐性と多剤耐性
8 薬剤耐性菌への対策
D 選択毒性と副作用および相互作用
1 選択毒性
2 副作用
E 使い方
1 感染症の原因微生物を考える
2 感染症治療薬の体内動態を考える
3 感染症治療薬の投与法(用法・用量)を考える
4 TDMを実践し最適な投与設計を考える
5 耐性菌出現を抑制する投与法を考える
6 感染症治療薬の安全性を考える
7 腎機能低下時の抗菌薬投与法を考える
8 感染症治療薬の投与法を具体的に考える
第3章 感染症治療薬・各論
A 抗菌薬(抗細菌薬)
1 抗菌薬の作用点による分類
2 β-ラクタム系抗菌薬
3 テトラサイクリン系抗菌薬
4 マクロライド系抗菌薬
5 アミノ配糖体系抗菌薬
6 キノロン系抗菌薬
7 サルファ薬
8 グリコペプチド系抗菌薬
9 その他の抗菌薬
10 生物学的製剤
11 抗結核薬
12 抗MRSA薬
13 抗ヘリコバクター・ピロリ薬
B 抗真菌薬
1 細胞膜傷害性抗真菌薬
2 その他の抗真菌薬
C 抗ウイルス薬
1 抗ヘルペスウイルス薬
2 抗インフルエンザ薬
3 抗HIV薬
4 抗B型肝炎ウイルス薬
5 抗C型肝炎ウイルス薬
D 抗原虫薬・抗寄生虫薬
1 抗原虫薬
2 抗寄生虫(蠕虫)薬
3 アニサキス症
第4章 抗腫瘍薬
A 悪性腫瘍の生物学と薬物治療
1 悪性腫瘍とは
2 悪性腫瘍の生物学
3 悪性腫瘍の薬物治療
B 抗悪性腫瘍薬
1 代表的な抗悪性腫瘍薬
2 アルキル化薬
3 代謝拮抗薬
4 抗腫瘍抗生物質
5 微小管阻害薬
6 トポイソメラーゼ阻害薬
7 抗腫瘍ホルモン関連薬
8 白金製剤
9 分子標的薬
10 サイトカイン関連薬
11 その他の抗悪性腫瘍薬
C 抗悪性腫瘍薬の耐性と副作用
1 抗悪性腫瘍薬の耐性獲得機構
2 抗悪性腫瘍薬の主な副作用とその対処法
第5章 微生物が生み出す医薬品
A 免疫抑制薬
1 シクロスポリン
2 タクロリムス
3 エベロリムス
4 グスペリムス
5 フィンゴリモド
6 ミコフェノール酸モフェチル
7 ミゾリビン
B 脂質異常症治療薬
C 農薬や香粧品など
1 農薬
2 香粧品
3 その他
第6章 発酵による医薬品を含む有用物質の生産
A 抗生物質の生合成
1 二次代謝産物の生合成
2 生合成経路
B 発酵による医薬品の生産
1 抗生物質の生産
2 微生物変換または微生物酵素による医薬品の生産
C 半合成抗生物質
1 β−ラクタム系抗菌薬
2 テトラサイクリン系抗菌薬
3 マクロライド系抗菌薬
4 アミノ配糖体系抗菌薬
5 その他の半合成抗生物質
6 全合成で生産される抗生物質
和文索引
欧文索引
改訂第2版のまえがき
本書の前身は1979年に刊行された「微生物薬品化学」(上野芳夫・大村 智編集)である。微生物が生産する生物活性物質を中心として、これを微生物学、生化学、薬理学、分子生物学、天然物化学や発酵工学など幅広い観点から解析し理解することにより、微生物薬品化学の基礎概念についての方向性を示すかたちで編集され発展してきた。しかし、微生物薬品化学と関連性が深く、本来の研究対象とされた感染症を惹起する病原微生物から悪性腫瘍(がん)までを対象とする新しい化学療法学の解釈が広く社会に受け入れられ一般に使用され始めたことから、2009年に現在の「化学療法学−病原微生物・がんと戦う−」(田中晴雄・土屋友房編集)と改題して出版された。さらに薬学教育が2006年から6年制への変換したこともその背景にあったといえる。6年制発足時の薬学教育モデル・コアカリキュラムが2013年に改定され、今回それに準じて本書を改訂する運びとなった。改訂モデル・コアカリキュラムと本書との対応はxiii-xv頁に示され、新しいSBO(到達目標)は本文中に示されており、薬剤師国家試験出題範囲の参考にもなると期待する。
今回の改訂では、1)2009年以降の新しい薬や新しい知見を盛り込んだ。特に、抗腫瘍薬の章ではその開発がめまぐるしい抗体薬を含めた分子標的薬についても最新の情報を盛り込んだ。2)近年、大きな社会問題ともなっている肝炎、HIV感染症、インフルエンザ、結核、MRSA感染症など治療ガイドラインが公開されている疾患に関してはその内容を含め、より臨床を意識したものとしてまとめた。3)章立てを一部圧縮した。微生物と微生物感染症を統合し、発酵による医薬品の生産と有用物質の生産を統合した。逆に、感染症治療薬と抗腫瘍薬の章はより充実した記述とした。
微生物を含む天然資源からは、人類の福音に大きく貢献してきた医薬品やそのリードが見いだされてきた。抗菌薬(ペニシリン、ストレプトマイシン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリンなど)や抗真菌薬(アンホテリシンBなど)などいわゆる抗生物質の範疇にとどまらず、抗悪性腫瘍薬(ブレオマイシン、マイトマイシンCなど)、抗寄生虫薬(アベルメクチンなど)、脂質異常症治療薬(ML-236B(コンパクチン)など)や免疫抑制活性物質(シクロスポリン、タクロリムスなど)など幅広い生物活性物質があげられる。これらを俯瞰するとこの領域の研究は、いかに日本人研究者が世界に大きな貢献を残してきたかを知ることができるが、長年にわたって本書の編集そして監修をされてこられた大村 智先生(北里大学特別栄誉教授)が、折しも本書の改訂を準備し始めた2015年にノーベル賞生理学・医学賞を受賞されたことが伝えられた(カラー口絵参照)。これは日本の研究者のみならず、天然物化学に携わってきた研究者や学生にとっても大きな励みとなったことである。ここに心からお祝いとお礼を申し上げたい。
最後に、お忙しいなか貴重な原稿をご執筆いただいた先生方に深くお礼申し上げる。また編集に際して多大なるご尽力を賜った南江堂の野澤美紀子氏、宮本博子氏に深く感謝する。
2017年10月
編者(供田 洋・黒田照夫)