パートナーシリーズ
パートナー医薬品化学改訂第3版
監修 | : 佐野武弘 |
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編集 | : 堀口よし江/宮田興子/斎藤俊昭 |
ISBN | : 978-4-524-40338-7 |
発行年月 | : 2017年3月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 332 |
在庫
定価5,170円(本体4,700円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
有機化学の知識を土台として、医薬品を化学構造から理解することを目的とした教科書。30年にわたって版を重ねてきた『薬品化学』(津田喜典ほか編)の後継書籍。今改訂では第十七改正日本薬局方、薬学教育モデル・コアカリキュラム(平成25年度改訂版)に対応したほか、抗がん薬、糖尿病治療薬等の解説を拡充。薬の化学構造と関係する薬害の解説も追加した。
序章 医薬品化学とは
1.医薬品化学の目標
2.医薬品化学の位置づけ
第1章 医薬品と生体との関わり
1.医薬品と生体との相互作用
A 医薬品の作用の特徴
B くすりの作用部位−薬物受容体−
C くすりと生体との結合
D タンパク質構造の特徴
E 薬物受容体と薬物の結合
F アゴニストとアンタゴニスト
G 逆アゴニスト
H アゴニストと逆アゴニストの受容体の応答
I 代謝拮抗薬
2.医薬品のコンポーネント
A ファーマコフォアの同定の基本的な考え方
B ファーマコフォアの同定のいくつかのサンプル
第2章 ベンゼン誘導体:ベンゼン置換医薬品
1.ベンゼンの化学的性質
2.フェノール誘導体
A 殺菌薬としてのフェノール誘導体
B 緩下薬としてのフェノール誘導体
C 診断薬としてのフェノール誘導体
D 抗がん薬としてのフェノール誘導体
E キノホルムとスモン病
3.ベンゼンカルボン酸誘導体
A 解熱・鎮痛・抗炎症薬としてのベンゼンカルボン酸誘導体
B COX-2選択的阻害薬
C 造影剤としてのベンゼンカルボン酸誘導体
D 抗カビ薬・保存剤としてのベンゼンカルボン酸誘導体
4.アミノベンゼン誘導体
A 解熱・鎮痛薬としてのアミノベンゼン誘導体
B 局所麻酔薬・抗不整脈薬としてのアミノベンゼン誘導体
C その他
5.ベンゼンスルホンアミド誘導体
A サルファ剤
B スルホンアミド系利尿薬
C アリールスルホニルウレア血糖降下薬
D その他のスルホンアミド類
■酸・塩基の性質
A 酸・塩基の定義
B 酸・塩基の強さの尺度
C 医薬品に含まれる酸性官能基と塩基性官能基
■一般的性質と反応
A 錯塩形成反応
B 加水分解反応
C アシル化反応
D カルボニル誘導体とアミン類の縮合
E 各級アミンと亜硝酸との反応
F フェノールのブロム化
G 熱,酸およびアルカリ分解反応
H フェノール誘導体の酸化と還元
第3章 複素環化合物:複素環関連医薬品
1.医薬品における複素環の意義
A 複素環化合物の分類
B 医薬品における複素環の意義
2.複素環の性質
3.含窒素複素環化合物
A 核酸塩基類似医薬品
B アシル尿素類
C ベンゾジアゼピン系医薬品
D ピリジン関連医薬品
E キノリン,イソキノリン関連医薬品
F アゾール関連医薬品
G インドール関連医薬品
H その他の含窒素複素環化合物
4.含酸素複素環化合物
A フラン誘導体
B クマリン類とその誘導体
C フラボン類,クロモン類,クロマン類
■一般的性質と反応
A π過剰系複素環化合物
B π不足系複素環化合物
第4章 オニウム塩:アセチルコリン類似医薬品
1.ニコチン作用関連医薬品
A 神経節刺激薬と神経節遮断薬
B 神経筋遮断薬
C 中枢性ニコチン受容体部分作動薬
2.ムスカリン作用関連医薬品
A コリン作動薬
B 抗コリン作動薬(抗ムスカリン薬)
3.コリンエステラーゼ(ChE)阻害薬
A 可逆的ChE阻害薬
B 非可逆的ChE阻害薬(リン酸化剤)
C ChE再賦活薬
D 中枢性ChE阻害薬(アルツハイマー病治療薬)
■一般的性質と反応
第四級アンモニウム塩
第5章 脂肪族アミン:生体アミン関連医薬品
1.カテコールアミン関連医薬品
A カテコールアミンの生合成
B カテコールアミンの不活性化過程
C カテコールアミン受容体
D アドレナリンの構造修飾と作用
E アドレナリン作動薬
F アドレナリン拮抗薬
G カテコールアミン代謝酵素阻害薬
H ドパミン作動薬
I ドパミン拮抗薬(アンタゴニスト)
2.セロトニン関連医薬品
A セロトニンの生合成と代謝
B セロトニンの貯蔵,再取り込み,および遊離
C セロトニンの作用と受容体
D セロトニン作動薬(セロトニンアゴニスト)
E セロトニン拮抗薬(セロトニンアンタゴニスト)
F セロトニントランスポーター阻害薬
G メラトニン関連薬
3.ドパミンおよびセロトニン関連医薬品(統合失調症治療薬)
A 統合失調症治療薬の開発
B 定型抗精神病薬
C 非定型抗精神病薬
4.セロトニンおよびノルアドレナリン関連医薬品(抗うつ薬)
A 抗うつ薬の開発
B 三環系抗うつ薬
C 四環系抗うつ薬とNaSSA
D トリアゾロン系抗うつ薬
E 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
F セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
5.ヒスタミン関連医薬品
A ヒスタミンの生合成と代謝
B ヒスタミンの作用と受容体
C ヒスタミン受容体作動薬(ヒスタミンアゴニスト)
D ヒスタミン受容体拮抗薬(ヒスタミンアンタゴニスト)
6.オピオイド関連医薬品
A モルヒネの歴史
B モルヒネの構造
C モルヒネの構造修飾と鎮痛活性
D オピオイド拮抗薬(オピオイドアンタゴニスト)
E 麻薬拮抗性オピオイド鎮痛薬
F 光学活性と鎮痛活性
G 中枢性鎮咳薬
H 内因性オピオイドとオピオイド受容体
■一般的性質と反応
A 2-アミノアルコール部分の反応
B アミン部分の反応
第6章 ステロイド系医薬品
1.構造と命名
2.ステロイド系生理活性物質と医薬品
A 性ホルモン
B 副腎皮質ホルモン
3.合成ステロイド
A エストロゲンの転換デザイン
B 合成エストロゲンの構造要件
4.HMG-CoA還元酵素阻害薬
5.ビタミンD製剤
■一般的性質と反応
A 分光学的確認法
B 化学的確認法
第7章 アミノ酸とペプチド関連医薬品
1.アミノ酸関連医薬品
A 甲状腺ホルモン製剤
B 抗プラスミン薬
C 中枢神経刺激伝達に関連するアミノ酸誘導体
2.ペプチド関連医薬品
A ヒトインスリン
B 合成カルシトニン誘導体
C 下垂体後葉ホルモン
D 視床下部ホルモン
E カルシニューリン阻害薬
F レニンアンギオテンシン系に作用する降圧薬
G HIVプロテアーゼ阻害薬
H タンパク質性医薬品と抗体医薬品
3.b-ラクタム系抗生物質
A ペニシリン系抗菌薬
B セファロスポリン系抗菌薬
C モノバクタム系抗菌薬
4.その他のペプチド系抗生物質
■一般的性質と反応
A アミノ酸の反応
B ペプチドの反応
第8章 脂肪酸関連医薬品
1.エイコサノイドとは
A エイコサノイドの発見
B エイコサノイドの構造と命名法
2.エイコサノイド関連の必須脂肪酸と医薬品
3.エイコサノイドの生合成(アラキドン酸カスケード)
A リン脂質からのアラキドン酸の遊離
B プロスタグランジン類の生合成(シクロオキシゲナーゼ経路)
C ロイコトリエン類の生合成(リポキシゲナーゼ経路)
D 多価不飽和脂肪酸の代謝と生合成されるプロスタグランジン類
4.エイコサノイドの代謝(不活性化)
5.エイコサノイドの薬理作用
6.医薬品としてのエイコサノイド
7.エイコサノイド関連のターゲット医薬品
■一般的性質と反応
A 脂肪酸
B プロスタグランジン
薬学教育モデル・コアカリキュラム対応一覧
和文索引
欧文索引
改訂第3版の序
本書は2008年、6年制薬学教育に対応して初版を刊行した。当時の薬学教育モデル・コアカリキュラムの「生体分子・医薬品を化学で理解する」と「リード化合物の創製と最適化」の項目を意識し、「医薬品の作用を化学構造と関連づけて理解できる」ことを基本方針として編集した。
今回の改訂では平成25年度改訂版薬学教育モデル・コアカリキュラムの「生体分子・医薬品の化学による理解」を意識し、その中の「医薬品の化学構造と性質、作用」を理解できるよう内容の見直しを図った。
6年制薬学教育も社会に定着してきており、医療の現場で活躍する6年制の卒業生も年々増加している。現在のチーム医療の中では様々な職種の医療関係者が異なった立場から異なった視点で医療に関わっていくことが求められている。このような観点から薬剤師の役割を考えると、医薬品の専門家として「化学的根拠を元に医薬品を考えることのできる」能力がさらに求められていくと考えられる。化学的な視点から医薬品の性質を知ることは、適切で安全な薬物療法を提供するだけでなく、医薬品管理や薬物情報の収集・発信にも大きな力となると思われる。
薬学教育における医薬品化学は先に学ぶ化学や有機化学の知識を医療系の科目へと結びつけていく橋渡しの役割を担うものである。特に有機化学の知識が医療においてどのように役立つかがわかるよう具体的に示していくことが必要である。
本書は新しい医薬品の概念も盛り込み、また第十七改正日本薬局方にも対応している。これから社会に巣立っていく薬学生のみならず医療現場で働く薬剤師にとっても、その知識を活用できるよう配慮した。
第3版の改訂の方針
1。本書の基本的概念である「医薬品の作用を化学構造と関連づけて理解する」ために、代表的な化学構造と官能基の性質に関する基礎的な知識を理解できるようにまとめた。
2。医薬品の作用は医薬品の吸収、運搬、代謝、排泄などの過程と大きく関連することから、これらの過程も化学構造を元に理解できるように配慮した。
3。抗がん薬について、近年使用頻度が増大している分子標的薬の記述を充実させた。
4。糖尿病治療薬はその作用機構や構造上の分類が各章にわたるため、まとまった概念で理解することが難しかった。今回、ナビゲーションの項目をもうけて、理解を深める工夫をした。
5。薬物相互作用や禁忌医薬品について、化学的見地や医薬品の開発の経緯から説明できるものを各項目で明記した。
6。いわゆる「薬害」についても関連医薬品の項に記載した。
7。前版から引き続き、重要な医薬品はマークをつけて区別した。
以上、今回の改訂では「化学的に医薬品を理解する」ことに加え、薬剤師としてその知識がどのように活用できるかをできるだけ具体的に表現するよう工夫した。しかし、医薬品に対する理解や記述が十分でないことも認識している。さらなる工夫や情報が必要でもあり、この点についてご教示いただけると幸いである。
本書は薬学生のための教科書として刊行されたものではあるが、薬学生のみならず、医療現場で働く薬剤師諸兄にとっても役立つものであれば幸いである。
2017年2月
監修者・編集者を代表して 堀口よし江