薬学生のための臨床化学改訂第4版
編集 | : 藤田芳一/眞野成康 |
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ISBN | : 978-4-524-40319-6 |
発行年月 | : 2015年9月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 310 |
在庫
定価5,280円(本体4,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
薬学生にとって必要な臨床化学をまとめ、生体内化学成分の変動と関連付けて病態を理解することを目指した教科書。今改訂版では、特長である豊富な化学構造式や反応式等はそのままに、新ガイドライン・新知見などに対応したほか、重要ポイントがよりわかりやすくなるよう、本文の理解を助ける「用語解説」と、復習の助けとなる「学習課題」を加えた。
第1章 総説
1-1 臨床化学とは
1-2 臨床検査の手順
1 臨床検査の目的
2 診療と臨床検査
3 検査項目の種類と分析方法
4 検査室のシステム化
5 ベッドサイド検査
1-3 検査試料
1 血液
2 尿検体
3 糞便
4 喀痰
5 脳脊髄液
6 穿刺液(腹水,胸水など)
1-4 精度管理
1 内部精度管理
2 外部精度管理(外部精度調査)
1-5 前処理
1 試料
2 前処理
3 夾雑物の影響
1-6 解析法
1 臨床化学分析法
2 画像診断
第2章 生体成分の臨床化学
A 体液成分の検査
2-A-1 糖質
1 生理化学と病態代謝
2 血糖測定法
3 糖質関連物質とその測定法
2-A-2 脂質
1 生理化学と検査
2 血清脂質測定法
2-A-3 タンパク質
1 タンパク質代謝と動的平衡
2 血清タンパク質
3 尿タンパク質
4 タンパク質の測定法
2-A-4 非タンパク質性窒素
1 NPN総量
2 血液尿素窒素(BUN)
3 アンモニア
4 クレアチン,クレアチニン
5 尿酸
2-A-5 ビリルビン
1 ビリルビンの代謝
2 ビリルビンと病態
3 ビリルビンの測定
2-A-6 酵素
1 測定意義
2 単位
3 測定法
4 酵素の種類
2-A-7 無機質
1 ナトリウム(Na)イオン,カリウム(K)イオン
2 塩化物イオン(Cl−),炭酸水素イオン(HCO−)
3 カルシウム(Ca),リン(P),マグネシウム(Mg)
4 鉄(Fe),銅(Cu)
5 その他の無機質(微量元素)
2-A-8 ホルモン
1 生理作用
2 測定法と検査値
B 遺伝子関連検査
1 染色体検査
2 遺伝子(DNA)診断
3 SNPs
C 微生物検査
1 毒素と酵素
2 定着因子
3 質量分析計による細菌同定
D 感染症検査(米田孝司)
1 ウイルス院内感染
2 ウイルスの抗原および抗体測定法
3 移植患者における感染症
4 梅毒
5 肝炎ウイルス
6 ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)
7 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
8 インフルエンザウイルスA,B
9 ヘルペス科ウイルス
第3章 器官機能と病態
3-1 消化管機能と病態
1 各消化管の機能と病態
2 胃液分泌の調節機構とその破綻による病態
3 Helicobacter pyloriによる疾患
4 消化管ホルモン
5 ペプシノーゲン
6 胃液検査
7 内視鏡検査
8 ABC検診
3-2 肝・胆道機能と病態
1 肝臓の構造と機能
2 肝・胆道系の病態
3 肝・胆道機能検査と病態
3-3 腎機能と病態
1 腎臓の構造と各部位の機能検査
2 腎疾患の病態と検査
3-4 膵機能と病態
1 膵外分泌機能
2 膵内分泌機能
3 膵臓の検査
3-5 内分泌異常と病態
1 内分泌の概念と作用機構
2 ホルモンの分泌異常とその病態
3 視床下部-下垂体系と病態
4 甲状腺疾患と病態
5 副甲状腺疾患と病態
6 副腎疾患と病態
7 多発性内分泌腫症
3-6 循環器機能と病態(脳を含む)
1 不整脈
2 高血圧
3 静脈圧
4 チアノーゼ
5 ショック
6 心筋梗塞
7 心不全
第4章 薬物と臨床化学
4-1 治療薬物モニタリング(TDM)
1 概念と意義
2 臨床的意義と有用性
3 TDMの対象薬物
4 血中薬物濃度の測定
4-2 薬物代謝障害
1 薬物代謝障害
2 肝血流速度の異常
3 チトクロームP450(CYP)と肝疾患
4-3 臨床検査値への薬物干渉
1 直接的な薬物干渉
2 間接的な薬物干渉
3 治療薬側から判断する検査値への影響
付表
略語一覧
基準範囲一覧
参考図書
索引
和文索引
欧文索引
改訂第4版の序
医療において、健康かそうでないかの判断をできるだけ早期に、信頼性高く、しかも安心・安全に行うことがますます重要になってきており、そのため、医療現場における臨床化学の重要性が加速しています。再生医療、個別化医療(テーラーメイド医療)、遺伝子治療などのことばが一般化してきていますが、科学技術振興機構(JST)は、2010年に「高齢化が世界で最も早く進むわが国こそ先制医療の推進が重要である」ことを謳っています。先制医療(Preemptive medicine)とは、病気と診断されるより以前の段階、すなわち何も症状がない発病以前の段階で、将来罹患する可能性の高い病気を見つけ、病気が表に出ないうちに抑えてしまおうという医療です。それには、バイオマーカーなどのように病気のわずかな変化を捉える指標や遺伝子診断や画像診断などが使われ、ここにも臨床化学の有意義性が明確に表わされています。
臨床化学は、本来、基礎と臨床の間を取り結ぶものであり、基礎研究を臨床現場に橋渡しするトランスレーショナルリサーチやその逆のリバーストランスレーショナルリサーチに最も相応しい学問領域であるといえます。したがって臨床化学を学ぶには、分析化学、物理化学、有機化学、生化学、微生物学、放射化学、解剖生理学、薬理学、薬剤学、病態生理学、病理学など、基礎と臨床の両方の多岐にわたる分野の知識や理解が必要で、それらを関連させ、統合することが大切です。薬学は、医療分野の中でも、広範な科学的知識、科学的思考・考察が要求される領域であり、薬学において臨床化学を学ぶことは、大変意義深く、薬学の真骨頂であるといえます。さらに、これまでの臨床化学領域において、薬学が果たしてきた役割は、極めて大きく、これからさらに踏み込んで医療の一翼を担うことが求められる薬学生諸君は、本書のタイトルが、「薬学生のための臨床化学」であることを心に留め、是非、「臨床化学」に興味を持ち、修得して頂きたいと思います。
今回、本書を出版するにあたっては、前版までの後藤順一(東北大学名誉教授)、片山善章(神戸常盤大学客員教授)両先生の編集基本方針を踏襲しつつ、できるだけ新しい医療知識・情報を掲載するべく、現在活躍され、広い知識と深い洞察力を持たれた先生方に執筆をお願い致しました。その結果、単に検査値と疾患という枠組みを超えた、文字通り「薬学生のための臨床化学のバイブル」ができあがったと感じます。また、今回の新しい試みとして、項末に「学習課題」を掲げましたので、皆さんの学習内容の理解や知識の整理・定着の一助になればと思います。
平成27年7月
編者