薬剤師・薬学生のためのフィジカルアセスメントハンドブック
医薬品適正使用のために
編集 | : 大井一弥/白川晶一 |
---|---|
ISBN | : 978-4-524-40302-8 |
発行年月 | : 2014年4月 |
判型 | : B6変 |
ページ数 | : 266 |
在庫
定価3,520円(本体3,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
医薬品の適性使用のために薬剤師に求められるフィジカルアセスメントの知識を、患者状態の把握、検査値の評価、バイタルサインからわかる薬効評価、病態別のフィジカル・栄養アセスメントと一つひとつ流れに沿って薬学的視点でコンパクトに解説。症例やシチュエーション別の具体例を示した、「知識」を「実践」に移すための最良の導入書。実務実習、現場でも携帯しやすいポケット版。
第1章 フィジカルアセスメントと薬剤師
第2章 フィジカル・栄養アセスメントのコツ
A.患者との会話からわかること
A-1.発症前の状態確認
A-2.現病歴の情報収集
B.患者の様子からわかること
B-1.体格の観察ポイント
B-2.顔の観察ポイント
B-3.頭頸部の観察ポイント
B-4.爪の観察ポイント
B-5.手指の観察ポイント
B-6.歩行の観察ポイント
C.患者に触れてみてわかること
C-1.押してわかること
C-2.つまみ上げてわかること
C-3.その他
D.患者の音からわかること
D-1.聴診器を用いなくても聞こえる音
D-2.聴診器を用いて聞こえる音
第3章 栄養アセスメントの実践
A.治療計画の実施
A-1.栄養療法の選択
A-2.栄養メニューの決定
B.モニタリングと再評価
第4章 バイタルサインと薬剤
A.脈拍
A-1.脈拍のメカニズム
A-2.脈拍のアセスメント
A-3.脈拍の異常を引き起こす代表的な病態と薬剤
B.体温
B-1.体温のメカニズム
B-2.体温のアセスメント
B-3.体温の異常を引き起こす代表的な病態と薬剤
C.呼吸
C-1.呼吸のメカニズム
C-2.呼吸のアセスメント
C-3.呼吸機能の異常を引き起こす代表的な病態と薬剤
D.血圧
D-1.血圧のメカニズム
D-2.血圧のアセスメント
D-3.血圧の異常を引き起こす代表的な病態と薬剤
E.意識
E-1.覚醒のメカニズム
E-2.意識のアセスメント
E-3.意識障害を引き起こす代表的な病態と薬剤
第5章 症状と検査値
A.血液検査からわかること
A-1.血球検査
A-2.凝固・線溶系の検査
B.生化学検査からわかること
C.尿検査からわかること
D.循環機能検査からわかること
D-1.心電図検査
D-2.自動体外式除細動器(AED)
D-3.6分間歩行試験
E.呼吸機能検査からわかること
E-1.パルスオキシメータ
E-2.ピークフローメータ
E-3.スパイロメータ
E-4.肺年齢
F.消化機能検査からわかること
G.簡易検査からわかること
第6章 症状から疑われる疾患や病態
A.頭痛
A-1.患者情報の収集
A-2.フィジカルアセスメント
A-3.頭痛のみられる疾患の特徴
B.胸痛
B-1.患者情報の収集
B-2.フィジカルアセスメント
B-3.胸痛のみられる疾患の特徴
C.腹痛
C-1.患者情報の収集
C-2.フィジカルアセスメント
C-3.腹痛のみられる疾患の特徴
D.咳・痰
D-1.患者情報の収集
D-2.フィジカルアセスメント
D-3.咳・痰のみられる疾患の特徴
E.呼吸困難
E-1.患者情報の収集
E-2.フィジカルアセスメント
E-3.呼吸困難のみられる疾患の特徴
F.発熱
F-1.患者情報の収集
F-2.フィジカルアセスメント
F-3.発熱のみられる疾患の特徴
G.動悸
G-1.患者情報の収集
G-2.フィジカルアセスメント
G-3.動悸のみられる疾患の特徴
H.めまい
H-1.患者情報の収集
H-2.フィジカルアセスメント
H-3.めまいのみられる疾患の特徴
I.下痢
I-1.患者情報の収集
I-2.フィジカルアセスメント
I-3.下痢のみられる疾患の特徴
J.便秘
J-1.患者情報の収集
J-2.フィジカルアセスメント
J-3.便秘のみられる疾患の特徴
K.全身倦怠感
K-1.患者情報の収集
K-2.フィジカルアセスメント
K-3.全身倦怠感のみられる疾患の特徴
L.不眠
L-1.患者情報の収集
L-2.フィジカルアセスメント
L-3.不眠のみられる疾患の特徴
第7章 病態別のフィジカルアセスメント
A.循環器疾患のフィジカルアセスメント
A-1.頻脈性不整脈
A-2.徐脈性不整脈
A-3.低血圧
A-4.高血圧
A-5.狭心症
B.呼吸器疾患のフィジカルアセスメント
B-1.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
B-2.気管支喘息
B-3.肺炎(細菌性肺炎)
B-4.間質性肺疾患(薬剤性肺障害)
B-5.過換気症候群(HVS)
B-6.咳(湿性・乾性)
C.消化器疾患のフィジカルアセスメント
C-1.胃潰瘍,十二指腸潰瘍
C-2.下痢
C-3.便秘
C-4.潰瘍性大腸炎、クローン病
C-5.ウイルス性胃腸炎(ノロウイルス)
C-6.偽膜性大腸炎
C-7.過敏性腸症候群(IBS)
D.肝臓・胆道・膵臓疾患のフィジカルアセスメント
D-1.肝炎
D-2.肝硬変
D-3.胆石症
D-4.膵炎
E.泌尿器疾患のフィジカルアセスメント
E-1.腎不全
E-2.ネフローゼ症候群
E-3.尿路結石
第8章 症例検討
A.循環器疾患
scene1.脈が乱れると訴える患者(1)
scene2.脈が乱れると訴える患者(2)
scene3.下肢が痛いと訴える患者
B.呼吸器疾患
scene1.処方薬を飲んでも熱の下がらない患者
scene2.胸部痛を訴える患者
C.消化器疾患
scene1.関節リウマチ治療薬を服用している患者
scene2.心筋梗塞の既往歴のある患者
D.肝疾患
scene1.薬剤服用中に食欲の低下や倦怠感がみられた患者
scene2.肩こりで整形外科に通院中の患者
scene3.パーキンソン病患者の在宅医療
scene4.アルコールを多飲の男性
E.腎・泌尿器疾患
scene1.双極性障害で通院中の患者
scene2.ダイエットのために薬局を訪れた女子大学生
scene3.生活習慣改善中の男性
scene4.不安を訴える入院患者
F.小児の症例検討
scene1.有熱性の痙攣が出現した乳児
scene2.ゼイゼイした呼吸をしている乳児
scene3.お腹を痛がっている6歳児
第9章 シチュエーション別フィジカルアセスメント
A.薬局でのシチュエーション
scene1.かぜをこじらせた独居老人が来局
scene2.腹痛を訴える女性が来局
B.病院でのシチュエーション
scene1.癌疼痛治療により便秘を起こしている患者
scene2.うつ病治療により頻脈を起こしている患者
C.在宅でのシチュエーション
scene1.在宅療養中の高齢者からの徐脈の訴え
scene2.在宅療養中の脳梗塞後遺患者からの軽い呼吸苦の訴え
scene3.癌末期患者の疼痛緩和目的での在宅医療
索引
近年、薬剤師は医療の高度化とともに、以前にも増して薬物治療に参画することが多くなってきました。
これまで、薬剤師は正確に調剤することに重点を置いてきました。薬を間違いなく調剤することはとても大切なことです。その一方で、医師や看護師と比べて患者と会話をすることが少なく、情報収集も患者の主観的な短い言葉を通したものが主でした。2006年に薬学部が6年制に移行するまでは、薬学部のカリキュラムのなかでコミュニケーション技術やアセスメント教育が十分になされていなかったという背景もあります。また、客観的な患者情報を得るための脈拍測定や血圧測定などのフィジカルアセスメントは診療行為にあたると考え、患者の体に触れることをためらう薬剤師が多くいたことも事実です。しかしながら、薬剤師のフィジカルアセスメントに対する認識は大きく変わりつつあります。チーム医療の一員としてバイタルサインや栄養状態から、薬の専門家として、医薬品の適正使用や副作用の早期発見などに関与し、患者のQOLの向上に貢献することを求められるようになったからです。
現在、日本における乳児死亡率や平均寿命などの健康指標は、世界でもトップクラスです。それに伴い世界でも類をみないほど、高齢化が進んでいます。そのため医療の拠点は、病院から在宅へとシフトしつつあります。薬剤師には病院での病棟薬剤師業務や地域での在宅医療への介入が、これまで以上に期待されています。
そのためには薬剤師や薬学生が、生体の生理機能および疾病時の病態生理を理解し、バイタルサインの測定やフィジカルアセスメントの意味について、十分な知識・技能・態度を習得することが必要です。それらを実際の現場で活かし、日々の業務に役立てることで、処方鑑査などを通し患者によりよい薬物治療を提供するとともに患者のQOL 向上に貢献することができます。
このように主観的・客観的な患者情報をもとに、ファーマシューティカルケアが実践できれば、薬剤師の真価をより発揮できると考えます。
以上の観点からこの本では、バイタルサインやフィジカルアセスメントをわかりやすく解説しています。ハンディサイズで白衣のポケットにも入りますので、ぜひ現場や実務教育のなかでご活用いただければ幸いです。
2014年3月
大井一弥
白川晶一