はじめて学ぶ臨床栄養管理
薬学生・薬剤師からのアプローチ
編集 | : 鈴木彰人 |
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ISBN | : 978-4-524-40278-6 |
発行年月 | : 2011年10月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 164 |
在庫
定価3,300円(本体3,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
臨床栄養学を初めて学ぶ薬学生・薬剤師を対象とした教科書。薬学生・薬剤師にとって必要な臨床栄養の基本的事項と栄養管理について、フルカラーの図や臨床写真を織り交ぜつつわかりやすく解説。執筆陣には臨床現場で活躍している医師・管理栄養士も参加し、臨床からの視点を重視。初学者必携の一冊。
I章 臨床栄養の基礎知識
1 身体の構成成分
2 体液と電解質の組成
3 消化器のしくみ
a 消化管の形態
b 咀嚼・嚥下
c 胃の役割
d 十二指腸・小腸の役割
e 管腔内消化
f 大腸の役割
g 肝臓の役割
4 栄養素の役割
a 三大栄養素
b 糖質
(1)糖の分類
(2)解糖
(3)糖新生
(4)グルコースの特徴
c タンパク質
(1)アミノ酸の種類
(2)タンパク質の品質
(3)タンパク質の同化と異化
(4)分岐鎖アミノ酸と芳香族アミノ酸
d 脂質
(1)脂肪酸
e ビタミン
f 微量元素
5 日本人の食事摂取基準
a 栄養素の指標
b エネルギーの指標
c 基礎代謝基準値と基礎代謝量
d 身体活動の強度と量
e 臨床栄養管理への適用
II章 栄養と生理機能
1 栄養不良と生理機能
2 栄養と免疫
3 栄養と創傷治癒
4 栄養とホルモン調節
5 摂食・嚥下障害と栄養障害
6 高齢者と栄養
III章 栄養管理の実際
A 栄養評価
1 栄養アセスメント(栄養評価)
2 栄養スクリーニング
a SGA(主観的包括的栄養評価)
(1)病歴・問診
(2)理学的所見
b 身体計測
(1)身長
(2)体重
(3)上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF)
(4)上腕周囲長(AC)
(5)上腕筋周囲長(AMC)
c ODA(客観的栄養評価)
(1)血清アルブミン
(2)RTP
(3)総タンパク質(TP)
(4)窒素平衡
(5)総リンパ球数(TLC)
d 栄養必要量
(1)水分必要量
(2)エネルギー必要量
(3)タンパク質必要量
(4)糖質必要量
(5)脂質必要量
3 栄養管理の実践
a 栄養療法開始の判定基準
b 栄養療法効果の判定基準
(1)栄養管理計画項目
(2)モニタリング項目
c 栄養療法中止の判定基準
B 栄養療法
1 栄養療法の選択基準
2 経口摂取(経口栄養法)
a 経口摂取の特徴
b 治療食(経口食)の種類
3 経腸栄養法
a 経腸栄養法の分類
b 経腸栄養法の特徴
c 経腸栄養法の主な適応と禁忌
d 経腸栄養剤の種類と特徴
(1)天然濃厚流動食
(2)半消化態栄養剤
(3)消化態栄養剤
(4)成分栄養剤
4 経腸栄養剤と栄養補助食品
a 食事摂取量が少なく、栄養が十分に摂取できない場合
b 下痢や嘔吐、発熱や食欲不振などによる脱水の場合
c 基礎疾患により栄養状態が悪化した場合
(1)急性期(周術期など):血糖コントロール不良時
(2)COPD
(3)肝障害・肝硬変
(4)腎障害
(5)褥瘡
d 手術前後の栄養管理が必要な場合
e 摂食・嚥下に障害がある場合
5 経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
a PEGの特徴
b PEGの適応と禁忌
c PEGの管理と注意点
6 静脈栄養法
a 輸液の定義
b 輸液の目的と適応
c 輸液施行時の注意点
d 輸液(注射剤)の基礎知識
(1)パーセント(%)濃度
(2)モル濃度(mol/L)
(3)電解質濃度(ミリ当量:mEq/L)
(4)浸透圧モル濃度(mOsm/L)
(5)浸透圧の概念
(6)pH(水素イオン指数)
e 末梢静脈栄養法(PPN)
f 輸液の種類
(1)電解質輸液剤
(2)水分輸液剤
(3)血漿増量剤
g 末梢静脈栄養法施行時の注意
(1)等張電解質輸液
(2)生理食塩液
(3)投与速度
h 輸液の組み立て方
(1)維持量(投与水分量)の決め方
(2)電解質組成の決め方
i 中心静脈栄養法(TPN)
j 中心静脈栄養法施行時の基本的注意
(1)糖の投与と高血糖
(2)アミノ酸の投与
(3)中心静脈栄養法に使用する輸液
(4)非タンパクカロリー/窒素(NPC/N)比
(5)脂肪乳剤(脂質)の投与
(6)ビタミンB1併用の確認
(7)乳酸アシドーシスの対処
(8)微量元素欠乏症の回避
(9)メイラード反応
(10)中心静脈栄養法における投与速度
(11)カテーテル留置に伴う合併症
7 在宅栄養療法
a 在宅(中心)静脈栄養法(HPN)
(1)HPNの対象
(2)HPNの実施と管理
b 在宅経腸栄養法(HEN)
(1)HENの対象
(2)HENの実施と管理
IV章 病態下の栄養ケア・マネジメントの考え方
1 心疾患(心不全)
a 心不全とは(病態の特徴)
b 栄養管理目的(ポイント)
c 治療法
d 栄養療法
2 脳卒中
a 脳卒中とは(病態の特徴)
b 栄養管理目的(ポイント)
c 治療法
d 栄養療法
3 糖尿病
a 糖尿病とは(病態の特徴)
b 栄養管理目的(ポイント)
c 治療法
d 栄養療法
4 COPD
a COPDとは(病態の特徴)
b 栄養管理目的(ポイント)
c 治療法
d 栄養療法
5 肝疾患(肝硬変を含む)
a 肝疾患とは(病態の特徴)
b 栄養管理目的(ポイント)
c 治療法
d 栄養療法
6 膵疾患
a 膵疾患とは(病態の特徴)
b 栄養管理目的(ポイント)
c 治療法
d 栄養療法
7 腎疾患・腎不全
a 腎疾患・腎不全とは(病態の特徴)
b 栄養管理目的(ポイント)
c 治療法
d 栄養療法
8 腸疾患
a 腸疾患とは(病態の特徴)
b 栄養管理目的(ポイント)
c 治療法
d 栄養療法
9 熱傷
a 熱傷とは(病態の特徴)
b 栄養管理目的(ポイント)
c 治療法
d 栄養療法
10 褥瘡
a 褥瘡とは(病態の特徴)
b 栄養管理目的(ポイント)
c 治療法
d 栄養療法
11 化学療法時
a 化学療法とは(病態の特徴)
b 栄養管理目的(ポイント)
c 治療法
d 栄養療法
12 周術期
a 周術期とは
b 栄養管理目的(ポイント)
c 治療法
d 栄養療法
索引
1968年、米国のDudrickらによって、世界で初めて中心静脈栄養法(total parenteral nutrition)が開発され、同時期に医師・薬剤師・看護師などの栄養管理を専門とする医療スタッフによって、医療チームが構築された。これが栄養サポートチーム(NST:Nutrition Support Team)の始まりとされる。日本では1998年に初めてNSTが誕生し、その後急速に普及した。2005年1月には、NHKスペシャル「食べて治す―患者を支える栄養サポートチーム―」の中でNSTが大々的に取り上げられ、その翌年2006年4月には、診療報酬改定によって多くの病院でNSTが立ち上がった。これに伴い臨床現場では、栄養管理の重要性が認識されるようになり、薬剤師の日常業務においても、臨床栄養管理は重要かつ新しい業務の1つとなっている。
薬剤師が臨床栄養管理を行うには、生理学、生化学、衛生化学(食品栄養学を含む)、薬物治療学、病態学、臨床検査学など幅広い学問を土台として、症例を多角的にみて適正に解釈し、問題点を解決していく「臨床力」が必要となる。
NSTの普及と時を同じくして、2006年4月には「臨床力」を十分に身に付けた薬剤師の輩出を目的とした薬学教育6年制がスタートした。
従来の薬学教育においては、臨床栄養管理や栄養療法の専門教育は行われておらず、薬剤師が身に付けるべき臨床栄養の知識や技能の修得は、すべて卒後教育に委ねられていた。しかし、薬学教育が6年制に移行し、あわせて医療現場の状況が大きく変化した現在、薬学生が臨床栄養学を系統的に学ぶことは必須となり、それに対応できる教科書が必要と考え、本書を企画・作成するに至った。
本書は、栄養管理の一端を担う薬剤師の養成を目指し、臨床栄養学の基礎から応用までを修得できるよう、広範囲の事項について網羅した。将来、臨床現場での活躍を目指す薬学生のみならず、臨床現場の薬剤師にも十分に活用していただけるよう、・章には12の病態における臨床栄養管理の実例を挙げ、写真も豊富に取り入れた。また、臨床栄養管理の最前線で活躍している医師、管理栄養士も執筆に加わり、基礎系科目の教科書とは一線を画した、薬学生・薬剤師の「臨床力」を培う書籍として作成した。
本書が、薬学生・薬剤師の日常の勉学と臨床業務に役立つことを願ってやまない。
2011年8月
鈴木彰人