白血病治療マニュアル改訂第5版
| 編集 | : 清井仁/宮本敏浩 |
|---|---|
| ISBN | : 978-4-524-27428-4 |
| 発行年月 | : 2026年10月 |
| 判型 | : B5判 |
| ページ数 | : 360 |
定価8,800円(本体8,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文

白血病患者の治療方針を立てるために必要な治療選択から各種プロトコール,支持療法,合併症対策までを盛り込んだマニュアル書の改訂第5版.今改訂では,WHO分類・ICC分類への対応,CAR-T細胞療法,遺伝子パネル検査,新規分子標的薬など,第4版刊行以降の白血病診療の進歩を反映し,治療選択肢の拡大に対応した内容へアップデート.ベッドサイドマニュアルとして,血液内科医必携の一冊.
目 次
T 治療の前に
1 白血病の治療指針
1.白血病の治療理念
2.白血病治療前の評価事項
3.急性白血病の治療方針
4.白血病の治療評価
5.同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)
2 インフォームド・コンセント
1.ICの理念と目的
2.病名告知による精神症状の変化
3.白血病診療におけるICの実践
4.ICを支えるコミュニケーションスキル
3 薬剤用量の算定法―体表面積と体重kg当たり投与量
1.体表面積の算定方法
2.BSA以外の薬剤用量の算定方法
3.肥満患者に対する薬剤用量の算定
4.腎機能障害患者に対する薬剤の用量調整
4 白血病の診断・治療に必要な遺伝子検査―precision medicineの実践に向けて
1.がん治療におけるprecision medicine
2.遺伝子異常の検出法について
3.がん遺伝子パネル検査の血液内科臨床における有用性について
4.今後の課題と展望
5 免疫療法
1.GVL効果のメカニズム
2.白血病に対する免疫療法
U 治療のプロトコール
1 急性骨髄性白血病(AML)
A 分子病態と予後
1.AMLの発症機構
2.AMLの病型分類(WHO分類第5版に基づく)
3.AMLの予後分類
B fit初発例の治療プロトコール
1.寛解導入療法
2.寛解後療法(CBF-AMLを除く)
3.寛解後療法(CBF-AML)
4.未治療FLT3-ITD変異陽性AMLに対するFLT3阻害薬併用化学療法
5.高リスクAMLに対する寛解導入療法,寛解後療法
6.AMLにおける維持療法
C unfit初発例の治療プロトコール
1.unfit AMLの定義
2.治療プロトコール
3.今後の展望(メニン阻害薬と3剤併用療法)
D 再発・難治例の治療プロトコール
1.再発・難治AMLの定義
2.再発・難治AMLに対する治療戦略
3.再発・難治AMLに対する治療プロトコール
E AMLに対する造血幹細胞移植
1.AMLのallo-HSCT適応
2.MRDと移植適応判断
3.allo-HSCTの方法
4.allo-HSCT後の維持療法
5.allo-HSCT後再発に対する治療
2 急性前骨髄球性白血病(APL)
A 分子病態と予後
1.APLに認める遺伝子異常
2.レチノイン酸受容体の機能
3.PML::RARAの分子メカニズム
4.ATRAの作用機序
5.ATOの作用機序
6.ATRA, ATOに対する薬剤耐性
7.APLの予後予測因子
8.APLにおける測定可能残存病変(MRD)の評価
B 初発例の治療プロトコール
1.JALSG APL204試験の概要
2.寛解導入療法
3.地固め療法
4.維持療法
5.APL204試験の治療成績
6.高齢者の治療
7.ATRA+ATO療法
C 再発・難治例の治療プロトコール
1.再発・難治APLに対する救援薬
2.国内における標準治療(JALSG APL205R)―65歳以下の移植可能症例
3 骨髄異形成症候群(MDS)
A 分子病態と予後
1.分子病態
2.予後予測因子
B MDSの治療プロトコール
1.治療選択の概要
2.予後因子と予後予測システム
3.低リスクMDSに対する治療
4.高リスクMDSに対する治療
C MDSに対する造血幹細胞移植
1.ガイドラインによるMDSのHSCT適応
2.HSCT適応に関わる患者因子
3.移植のタイミング
4.移植前治療
5.前処置
6.ドナー選択・幹細胞ソース
4 急性リンパ性白血病(ALL)
A 分子病態と予後
1.ALLにおける分子病型分布
2.代表的ALL分子病型の分子病態
3.遺伝子病型と予後
B 初発Ph陰性例の治療プロトコール
1.初回治療戦略の概要
2.JALSGによる初発Ph陰性ALL治療プロトコール
C Ph陽性例の治療プロトコール
1.初回治療戦略の概要
2.JALSGによるPh陽性ALL治療プロトコール
D 再発・難治例の治療プロトコール
1.化学療法
2.同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)
E ALLに対する造血幹細胞移植
1.移植適応
2.ドナー選択
3.移植前処置
4.移植後維持療法
5.再発後の治療
5 慢性骨髄性白血病(CML)
A 分子病態と予後
1.分子病態
2.予後予測
B 慢性期CML(CML-CP)の治療プロトコール
1.治療方針
C 移行期・急性期CML(CML-AP, BP)の治療
1.APおよびBPの定義
2.疾患進展のメカニズム
3.AP, BPの治療
4.今後の展望
D treatment-free remission(TFR)
1.TFRとは
2.TFR成功のための治療条件
3.現在の診療ガイドライン
4.TFRを目標とすべき症例
5.DMRを達成し継続するための治療プロトコール
6 慢性リンパ性白血病(CLL)
1.CLLの分子病態と予後
2.CLLの治療プロトコール
V 測定可能残存病変(MRD)の意義
1 MRDの測定・評価法
1.MFCによるMRD評価
2.RT-qPCRによる遺伝子発現量評価
3.免疫グロブリン遺伝子/T細胞受容体遺伝子(Ig/TCR)再構成を用いたALLにおけるMRD評価
4.NGSを用いたMRD評価
5.ddPCRを用いたMRD評価
6.今後の課題
2 AMLにおけるMRD
1.多次元フローサイトメトリー(MFC)によるAMLのMRD解析
2.分子学的手法によるAMLのMRD(molecular MRD)解析
3 Ph陰性ALLにおけるMRD
1.MRD測定に用いる検体
2.MRDの臨床的な意義
3.移植とMRD
4.新規薬剤とMRD
5.MRDによる治療方針決定について
W 支持療法の実際
1 感染予防対策―基本的予防処置,血管内カテーテル管理,抗菌薬予防投与
1.白血病患者における易感染状態
2.感染経路とその対策
3.血管内留置カテーテル管理
4.抗菌薬予防投与
2 感染症治療
A 抗菌薬の使用の実際
1.抗菌薬の適正使用推進の重要性
2.抗菌薬の適正使用の実際
3.発熱性好中球減少症(FN)
B 抗真菌薬の使用の実際
1.血液領域で問題となる侵襲性真菌感染症とリスク因子
2.抗真菌薬の種類と特性
3.抗真菌薬の予防投与
4.経験的治療・早期治療
5.標的治療
C 抗ウイルス薬の使用の実際
1.ウイルス感染症対策一般
2.単純ヘルペスウイルス(HSV)
3.水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)
4.サイトメガロウイルス(CMV)
5.HHV-6
6.EBV
7.AdV,BKV
D G-CSFの使用の実際
1.G-CSF使用ガイドライン
2.急性白血病,骨髄異形成症候群へのG-CSF使用
3.G-CSF投与量とそのタイミング
4.G-CSFの副作用
3 輸血療法(赤血球,血小板,顆粒球を含む)
1.血液製剤の適正使用
2.血液製剤の種別と性状
3.血液製剤の使用基準
4.輸血副作用
5.同種造血幹細胞(allo-HSCT)移植後の対応
6.顆粒球輸血
7.輸血同意書
4 播種性血管内凝固(DIC)への対策
1.白血病に伴うDICの病態
2.病型分類
3.診断(診断基準)
4.急性白血病に合併したDICの治療
5.APLに合併したDICの特徴と治療
6.CAR-T細胞療法に合併したDICの特徴
5 肝炎ウイルス対策
1.B型肝炎ウイルス(HBV)
2.C型肝炎ウイルス(HCV)
6 全身栄養管理
1.投与カロリー
2.経口摂取
3.高カロリー輸液
7 リハビリテーション
1.白血病治療における身体機能とQOL
2.白血病患者に対するリハビリテーションの効果
3.白血病治療に対するリハビリテーションのガイドライン
4.白血病に対するリハビリテーションの実際
X 毒性と合併症の対策・注意点
1 抗白血病薬の作用機序と毒性
1.作用機序からみた抗白血病薬の分類
2.代謝拮抗薬
3.トポイソメラーゼ阻害薬
4.アルキル化薬
5.ビンカアルカロイド製剤
6.asparaginase(ASP)
7.CPX-351(リポソーム化daunorubicin/cytarabine)
2 分子標的薬の作用機序と毒性
1.FLT3阻害薬
2.チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)
3.venetoclax(VEN)
4.gemtuzumab ozogamicin(GO)
5.inotuzumab ozogamicin(InO)
6.blinatumomab(BLINA
7.CAR-T細胞療法
3 悪心・嘔吐の予防と治療
1.症状の定義
2.発現機序
3.発現時期による分類
4.リスク因子
5.抗がん薬による催吐性リスク分類
6.放射線治療による催吐性リスク分類
7.国内で推奨される制吐療法
8.制吐薬としてのolanzapine
9.steroid sparing
4 口腔ケア
1.口腔内感染症の評価,治療および管理
2.口腔粘膜炎対策
3.造血幹細胞移植(HSCT)患者の口腔内の管理
5 心血管毒性の予防と治療 向井幹夫
1.白血病治療における心血管毒性
2.心血管毒性に対するマネジメント
6 腫瘍崩壊症候群の予防と治療
1.病態
2.診断
3.リスク評価
4.予防と治療
5.予後
7 中枢神経系白血病の予防と治療
1.予防
2.治療
8 肝・腎臓障害時の抗がん薬治療と投与量調整
1.肝障害時の抗がん薬治療の留意点と投与量調整
2.腎障害時の抗がん薬投与量調整
3.注意を要する主な薬剤
9 妊孕性温存
1.化学療法,放射線治療,造血幹細胞移植(HSCT)による性腺機能障害のリスク
2.男性造血器腫瘍患者における妊孕性温存
3.女性造血器腫瘍患者における妊孕性温存
4.女性HSCT患者における妊孕性温存の現状
5.造血器腫瘍患者における第三者配偶子の使用,養子縁組
6.CMLにおける妊孕性温存
Y 高齢者・小児の治療上の注意点
1 高齢者白血病に対する注意点
1.超高齢者時代へ
2.高齢者白血病の特徴
3.全身評価方法
4.高齢者AML(APL以外)
5.合併症対策
6.高齢者AMLに対するallo-HSCT
7.高齢者ALL
2 小児白血病に対する注意点
1.小児白血病の疫学と特徴
2.小児白血病の薬物療法
3.小児白血病治療における年齢群別の注意点
4.先天性疾患を有する小児の白血病治療における注意点
5.小児白血病治療における晩期合併症のリスク
6.小児白血病治療における適応外使用の問題
本書『白血病治療マニュアル』は1996年4月に初版を出版後,好評を博し,改訂を重ねてきた.初版発行から30年が経過したが,その間の白血病診療における診断と治療はともに目覚ましい進歩を続けており,2020年11月の改訂第4版出版以降においても,より分子病態を重視した診断指針や病型分類がWHO分類,ICC分類などにおいて提唱されてきている.また,白血病に対する新規薬剤の開発,適応拡大,同種造血幹細胞移植におけるドナーソースの拡大などによって,治療法においても多くの進歩が認められていることを踏まえて,このたび改訂第5版を上梓することになった.
改訂第4版出版以降の白血病診療における最も画期的な進展は,網羅的な遺伝子パネル検査(ヘムサイト ®)の保険収載であったと思われる.特筆すべきは,固形がんと異なり,急性白血病,骨髄異形成症候群では初診時からパネル検査が実施可能となったことで,分子標的薬の選択のみならず,精緻な分子病態に基づく予後層別化によって適切な病期での造血幹細胞移植療法の適応判断が可能になったことである.以前より,分子層別化システムはEuropean LeukemiaNet(ELN)などから提唱され,さまざまなガイドラインで紹介されてはいるものの,日本における実臨床での活用は困難な状況が続いていたことから,本書も,より実践的に活用していただけることが期待される.
治療薬においても,IDH1阻害薬や複数のBTK阻害薬などの分子標的薬に加えて,daunorubicin/cytarabineのリポソーム封入製剤であるCPX-351が新たに実用化された.また,新規薬剤だけでなく,適応拡大も進み,FLT3阻害薬(quizartinib)の初発FLT3-ITD陽性AML患者に対する化学療法との併用療法や,unfit AML患者に対するvenetoclaxとazacitidine併用療法の保険収載はAML患者に対する治療成績の向上に大きく貢献したといえる.
これら分子標的療法の進歩や分子層別化システムの実用化は,予後予測に基づく治療選択だけでなく,unfit白血病患者に対する治療戦略の見直しや寛解後療法のあり方にも影響を与えたといえる.さらに,有効な標的薬や免疫療法薬が存在する疾患に対しては,いわゆるケモフリーレジメンによる治療の検討が開始されており,今まで以上にQOLを維持した有効な治療戦略が構築されることが期待されている.
今回の改訂第5版では,こうした白血病の予後層別化,新規薬剤,新規治療プロトコールを網羅するとともに,実臨床における治療指針,補助療法などを,それぞれの分野における第一人者の方々に執筆をお願いした.本書が白血病診療に関わるすべての方々にとって診療上の参考になれば幸いである.
最後に,標準的治療の確立のために臨床試験に参加くださった患者さんと臨床スタッフの皆さま,ならびに執筆をご快諾いただいた先生方に深謝いたします.
2026年7月
清井 仁
宮本敏浩

