Q&Aでわかる呼吸器疾患ガイドライン実践ブック
監修 | : 千田金吾 |
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ISBN | : 978-4-524-26987-7 |
発行年月 | : 2013年11月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 246 |
在庫
定価4,950円(本体4,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
呼吸器疾患の各種ガイドラインで示されている“指針”を実臨床に活かすためのプラクティカルな一冊。24種類のガイドラインの内容に沿って、病態の捉え方から診断・検査のポイント、薬剤の選択や使い分け等の治療の実践までをQ&A方式でわかりやすく解説。「MEMO」や「エビデンス」などのコラムも豊富に掲載。呼吸器内科医はもちろん、研修医、一般内科医も読んでおきたい。
I.呼吸器感染症
I-A 市中肺炎
成人市中肺炎診療ガイドライン:2007年
I-B 院内肺炎/医療・介護関連肺炎
成人院内肺炎診療ガイドライン:2008年
医療・介護関連肺炎診療ガイドライン:2011年
I-C 気道感染症
成人気道感染症診療の基本的考え方:2003年
I-D 真菌感染症
深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2007:2007年
I-E 結核
結核診療ガイドライン(第2版):2012年
I-F 非結核性抗酸菌症
肺非結核性抗酸菌症診断に関する指針:2008年
肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解−2012年改訂:2012年
II.閉塞性肺疾患
II-A 気管支喘息
喘息予防・管理ガイドライン2012:2012年
II-B COPD
COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン(第4版):2013年
III.呼吸不全と呼吸調節障害
III-A ALI/ARDS
ALI/ARDS診療のためのガイドライン(第2版):2010年
III-B 睡眠時無呼吸症候群
成人の睡眠時無呼吸症候群診断と治療のためのガイドライン:2005年
IV.間質性肺疾患
V.肺循環障害
V-A 肺血栓塞栓症
肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2009年改訂版):2009年
V-B 肺高血圧症
肺高血圧症治療ガイドライン(2006年改訂版):2006年
VI.サルコイドーシス
サルコイドーシスの診断基準と診断の手引き−2006:2007年
VII.薬剤性肺障害
薬剤性肺障害の診断・治療の手引き:2012年
VIII.腫瘍性疾患
VIII-A 非小細胞肺癌
肺癌診療ガイドライン2012:2012年
VIII-B 小細胞肺癌
肺癌診療ガイドライン2012:2012年
IX.呼吸管理・リハビリテーション
IX-A NPPV
NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン:2006年
IX-B 酸素療法
酸素療法ガイドライン:2006年
IX-C 運動療法
呼吸リハビリテーションマニュアル−運動療法−(第2版):2012年
X.その他
X-A 咳嗽
咳嗽に関するガイドライン(第2版):2012年
X-B 禁煙
禁煙治療マニュアル:2009年
索引
本書は“数ある呼吸器疾患に関するガイドライン”の“ガイドブック”というべきものを目指しました。
ガイドラインは数多く出版され、呼吸器疾患関係だけでも20種類を超えます。内科疾患関連まで範囲を広げると、個人がすべてのガイドラインにあたることはとても不可能です。
そこで、「これら多くのガイドラインを鳥瞰(あるいは俯瞰)図的に見る方法はないか」という立場からQ&A方式の解説書を企画しました。このアプローチが、氾濫する情報に埋もれてしまう中から、必要な点を意識してポイントを絞り込む1つの解決策ではないかと思われたからです。
われわれは、自分に関係ないものは見落としがちです。また、知っている(と思い込んでいる)部分にはあらためて目を配ることをしません。そして、われわれは自分の見たいものしか見ないという短所もあります。
そういったことから起こる弊害−つまり「ミスは知識不足よりも驕りに起因するという事実に気付いていない」とか、「お風呂の入り方は実は十人十色で非常に個性に満ちているのにもかかわらず、誰もが同じように入浴していると決めつけていて、診療も実際のところかなり自己流に陥っている」とか−が実地臨床に満ちています。この悪弊を最小限に抑える方向性を示すことが、ガイドラインに与えられた役割です。
したがって、ガイドラインは身近にあって、研修医から専門医まで常に手に取ってもらえるものでなくてはなりません。まさに物の価値は使われる頻度で決まります。
本書で取り上げた多くのガイドラインが、本書を通して身近なものになることを祈念しています。
2013年10月
浜松とよおか病院
千田金吾
呼吸器疾患はきわめて多種多様であり、さまざまなジャンルの疾患が含まれている。肺炎、肺結核、真菌症といった感染症、気管支喘息やCOPDといった閉塞性疾患、間質性肺炎やサルコイドーシスなどの間質性肺疾患、肺循環の疾患、腫瘍等々である。近年、欧米ではさまざまな疾患に対してガイドラインを作製し、わが国でもこれに倣って多くのガイドラインが作製されるようになった。ガイドラインには、しかしながら作製方法と形態に厳格な定義があり、原則的にevidence-basedのものである。したがってわが国のガイドライン類には、必ずしも定義に則らない“ガイドライン的”書物も含まれている。しかしながら、こういったガイドライン類は、当該疾患についてのとくに治療法のup-to-dateなものに触れることができるため、実地臨床できわめて有用であり、呼吸器の分野でも多数のガイドライン類が出版されている。
本書は呼吸器領域で大活躍されている、浜松医科大学内科学第二のグループ(須田隆文教授)が、これら多数の呼吸器疾患ガイドライン類のエッセンスをまとめられたものである。監修をされた千田金吾先生は、長くこのグループを率いてこられた方であり、呼吸器疾患の分野では千田先生を知らない人はいらっしゃらないであろう。呼吸器疾患のガイドラインも多数あり、評者も一応すべてを揃えているのだが、何種類あるかは知らなかった。このたび、本書が発行され24種類ものガイドライン類があることがわかり、驚いた次第である。自分の専門分野のガイドラインは当然通読したことがあるわけであるが、他のガイドラインは、必要に応じて本棚からひっぱってくることになる。
本書は、各ガイドラインのなかで、とくに問題になりそうな項目をうまく選定してある。ともかく、一冊、机の前に並べておくときわめて便利であり、本棚にいちいち出向かなくても済むというものである。今後さらにガイドラインの改定とともにアップデートしていただき、またQuestionの選定もバージョンアップしていただくと大変便利な一冊になるであろう。
臨床雑誌内科114巻2号(2014年8月号)より転載
評者●自治医科大学呼吸器内科教授 杉山幸比古
現代はまさにEBM時代で、日常のそれぞれの診療現場においてエビデンスをふまえた医療の実践が強く求められるようになった。しかし、医学の日進月歩や疾患概念の変化にキャッチアップしていくことは、ごく狭い自分の専門分野を除いては非常に困難となっている。
本書は呼吸器疾患に関するガイドラインのガイドブックをめざして編纂されたものであると、監修の千田金吾先生の著された序文にある。多くのガイドラインを鳥瞰図的にみる方法を考えてQ&A形式での解説書を企画した由であり、まさにこの情報氾濫の時代に時宜を得たものといえよう。さらに、「自分に関係ないものは見落としがち、知っている(と思い込んでいる)部分にはあらためて目を配らず、自分のみたいものしかみない、といった人の陥りやすい欠点から起こる弊害が実地診療にも満ちており、この弊害を最小限に抑えるのがガイドラインである」と述べられている。しかしガイドラインの数は多く、すべてを忙しい臨床現場で常に参照するのは非常に困難である。
本書で解説されている呼吸器疾患のガイドラインは24で、成人市中肺炎から成人院内肺炎、医療・介護関連肺炎、成人気道感染症診療、深在性真菌症、結核、肺非結核性抗酸菌症診断、肺非結核性抗酸菌症化学療法、喘息予防・管理、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性肺損傷(ALI)/急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、成人の睡眠時無呼吸症候群、特発性間質性肺炎、肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症、肺高血圧症、サルコイドーシス、薬剤性肺障害、肺癌2種、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)、酸素療法、呼吸リハビリテーション、咳嗽、禁煙治療に及ぶ。このすべてのエッセンスが200頁余にコンパクトにまとめられていることは特筆に値する。本書はガイドラインにおいて本質的で重要なQ(質問)を厳選して、それに非常に切り詰めた短いA(解答)を用意することで、まさにガイドラインを鳥瞰することを可能にしている。執筆は浜松医科大学内科学第二講座とその同門の方を中心としているが、質問の厳選にはさぞや多くの労力を注がれたのではないかと拝察する。
筆者の専門の非小細胞肺癌のところでは、「新しいTNM分類について教えてください」、「EGFRやALKなどの肺癌の遺伝子変異の検査はどのように行いますか」、「EGFR遺伝子が陰性の肺癌でも全身状態が不良で通常の化学療法ができない場合にはgefitinibを投与してよいですか」など、臨床に直結する50のQがあげられており、Aもできるだけ短いセンテンスで直截に表現されている。
特に、あまり得意でない分野では薬剤名(商品名)や投与量などが処方例として適宜記載されているのは、非常に便利でありがたい。さらにMEMOやエビデンスといったコラム記事も用意されており、興味深く読みながら理解を深めることができる。ちなみに肺癌のところでは喫煙と肺癌、遺伝子検査の検体について、ALK融合遺伝子陽性肺癌、放射線治療の期間などがMEMOとして、ゾレドロン酸の第III相試験の結果、加速分割照射と通常照射の第III相試験の結果などがエビデンスとして、簡潔に解説されている。
本書は呼吸器専門医はもちろん、プライマリ・ケアにかかわる医師をはじめ、呼吸器病学を学び始めた研修医、肺炎や肺気腫などとは無縁でいられない一般内科・外科の医師まで広くすすめられる一冊であると考える。
胸部外科67巻5号(2014年5月号)より転載
評者●近畿大学呼吸器外科教授 光冨徹哉