チームで取り組む心臓デバイス植込み患者のケアとマネジメント
遠隔モニタリングの活用から一般管理まで
編著 | : 鈴木誠 |
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ISBN | : 978-4-524-26965-5 |
発行年月 | : 2012年9月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 144 |
在庫
定価3,300円(本体3,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
ペースメーカー、植込み型除細動器、CRTなどの植込み型心臓デバイスの遠隔モニタリングの活用から一般的な管理まで網羅したチーム医療の実践書。患者管理における診療の実際からトラブル発見のポイント・対処法、フォローアップまで具体的に解説。現場で役立つ情報が満載。医師だけでなくコメディカルスタッフも必携の一冊。
I チームで取り組む患者ケアのキホン
1.チームで取り組む医療のキホン:よりよい患者ケアのために
2.チーム医療における各職種の役割
1医師
2看護師
3臨床工学技士
4臨床検査技師
5診療放射線技師
6薬剤師
7管理栄養士
8理学療法士
9医療ソーシャルワーカー
10医師事務作業補助者
U 遠隔モニタリングシステムによる植込み型心臓デバイスの管理
1.遠隔モニタリングシステムとは
2.当院における遠隔モニタリングシステムの導入とその効果
3.遠隔モニタリングシステムの適応
4.導入時の留意事項と患者さんへの説明のポイント
5.遠隔モニタリングの具体的な導入手順、機器のセッティング
6.遠隔モニタリングシステム導入後の外来運用のノウハウ
7.チーム医療による導入患者さんのフォローアップ
1モニタリングの実際
2アラート受信時の対処
3病診連携のポイント
4モニタリングに関する不具合(トラブル)
5患者さんのメンタルサポート
V モニタリングデータの活用法
1.不整脈の遠隔モニタリング
2.心不全の遠隔モニタリング
W 植込み型心臓デバイスの一般管理
1.電磁干渉
2.合併症対策
3.誤作動時の対処
4.リードトラブル
5.デバイス交換
6.運転免許について
X 植込み型心臓デバイス診療の実践例?遠隔モニタリングシステムを含めて?
症例1 アラート(注意喚起通達)機能が心室波高値低下の早期発見、対応に役立った症例
症例2 運動負荷試験を行い心拍応答機能を調整し心不全のリハビリテーションを行ったCRT-Dの症例
症例3 ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)の処分方法について
症例4 ペースメーカーの設定変更が心不全加療に有効であった症例
症例5 通院困難な遠方患者さんの一例
付録
1.患者さんからよくある質問
2.各遠隔モニタリングシステムの特徴および主要機器一覧
索引
コラム
患者さんがMRI を撮りたいと言ったら?
遠隔モニタリングシステムの通信機能がカバーできないエリアとは?
災害時のペースメーカー・植込み型除細動器(ICD)植込み患者さんへの対応
変時性不全(chronotropic incompetence)とは?
患者さんが海外旅行に行きたいと言ってきた.さてどうする?
遠隔モニタリングの海外の動向と今後の展望
心臓植込みデバイス患者さんには、様々な背景(高齢、施設入所者、老老介護、寝たきり、離島など遠方居住者、働き盛りなど)、疾患(徐脈、致死性不整脈、心房細動、心不全など)の方が存在します。それらを理解することはもちろんのこと、それぞれに対応した管理をしなければなりません。しかし、従来型のデバイス管理では、それを十分に満たしているとは言えません。
遠隔モニタリングは、2009年4月から日本でも使用可能となり、2010年4月からは、遠隔モニタリングによる指導管理料が請求できるようになりました。海外から報告されている臨床試験の結果などからも、デバイス患者さんの管理上、このシステムの有益性は明らかであり、そのような患者さんを管理するために、導入するべき重要なシステムです。
遠隔モニタリングを導入して、上手に管理・運用するためには、デバイス患者さんに携わるスタッフが、遠隔モニタリングの重要性・意味を理解し、導入目的を共有化したうえで、それぞれの職種のかかわり方をイメージする必要があります。
私は、遠隔モニタリングを最大限活用する方法として、チーム医療を基本とし、多職種が上手にかかわりながらデバイス患者さんを、チームでケアし、マネジメントしていくことが何よりも重要であると考えます。
本書はこれからチーム医療を始める方々の参考になればと考え、亀田総合病院のスタッフと一緒に作成しました。今からでも遅くはありません。遠隔モニタリングの導入をきっかけに多職種のスタッフと話し合い、各施設に最も合ったチーム医療を構築してみましょう。
2012年8月
鈴木誠
医療の高度化とともに、医師だけでなくさまざまな医療職種の専門分化が進んでいる。しかしながら医療は複雑なシステムであり、専門分化すれば高度の医療が行えるわけではない。個々の医療者はバランスよく専門と総合の両面から仕事をしなければならないが、専門家集団からなる医療チームにおいても、専門職として任務を果たしつつ、他職種と連携を図らなければならない。
循環器疾患は急性期から慢性期まで病態が多岐にわたるため、さまざまな職種が必要である。循環器領域で使用される医療機器は驚くほどのスピードでモデルチェンジがなされており、1種類の機器であってもこれに精通することは容易でない。これらの機器を植込んでいる循環器疾患の患者の不安は想像するに難くない。とくにペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)、除細動装置付き心臓再同期療法器(CRT?D)は進歩が著しく、最近は送信器を介して遠隔モニタリングも可能となった。これらの機器の機能を十二分に生かし、安全に高度医療を提供するためには、病院が最適の体制をつくるとともに、職員が一体となったチーム医療を実践しなければならない。
本書は、こうした状況を背景として編集され、ペースメーカー、ICD、CRT?D等のデバイスを植込んだ患者に対するケアのあり方を、実践的な視点でわかりやすくまとめた教材である。全体は5章、131頁からなり、通読するのに手頃である。第T章「チームで取り組む患者ケアのキホン」、第U章「遠隔モニタリングシステムによる植込み型心臓デバイスの管理」、第V章「モニタリングデータの活用法」、第W章「植込み型心臓デバイスの一般管理」、第X章「植込み型心臓デバイス診療の実践例」に整理され、最後に付録として、「患者さんからよくある質問」、「各遠隔モニタリングシステムの特徴および主要機器一覧」が紹介されている。本書は各医療職種の立場だけでなく、患者の立場にも立っていることが大きな特徴である。院内体制、合併症対策、誤作動への対応等の記述は要を得て簡潔ながら、患者第一の細心さが感じられる。とくにわが国で開始されて間もない遠隔モニタリングについては、その受け入れ体制から実践にいたるまで、記載は丁寧である。
本書は、遠隔モニタリングをこれから始める臨床医だけでなく、循環器診療に携わる医療者に広く歓迎される好著である。植込み型デバイスの患者のケアに関わらないとしても、チーム医療とは何かを学ぶことができる。これからの医療に関心をもつ多くの方々に一読をお薦めする。
評者■永井良三
内科111巻2号(2013年2月号)より転載