消化管癌カラーアトラス
内視鏡所見から病理診断へ迫る
編集 | : 田尻久雄/斎藤豊/池上雅博/九嶋亮治 |
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ISBN | : 978-4-524-26963-1 |
発行年月 | : 2013年5月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 444 |
在庫
定価15,400円(本体14,000円 + 税)
正誤表
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2014年11月27日
第1刷
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
好評書『目指せ!内視鏡診断エキスパート』のアドバンス版。診断力向上につながる内視鏡像の知識はもちろん、実践的な病理の知識も身につく新しいアトラス。咽・咽頭、食道、から大腸までの消化管癌を網羅。多数の鮮明な内視鏡像と病理所見を対比して、内視鏡医、病理医がそれぞれていねいに解説。生検像や病理像の知識を深めたい内視鏡医必携。
総論
I章 内視鏡検査の基本事項と病理診断の進め方
1.画像強調観察併用拡大観察と病理診断の考え方
2.消化管病理診断の基本
3.「癌取扱い規約」と「WHO 分類」
各論
II章 咽・喉頭、食道
A.基礎知識の整理
1.診断体系
a.咽・喉頭
b.食道
2.内視鏡観察の要点
a.咽・喉頭
b.食道
3.癌の診断と内視鏡的治療適応
a.咽・喉頭
b.食道
B.アトラス
1.咽頭:上皮内癌
2.咽頭:上皮下浸潤癌
3.喉頭癌
4.食道:0-I
5.食道:0-IIa(白い)
6.食道:0-IIa(赤い)
7.食道:0-IIc(M1-2)
8.食道:0-IIc(M3-SM1)
9.食道:0-IIc(>SM2)
10.食道:0-III様病変
11.食道特殊癌(1)
12.食道特殊癌(2)
13.進行食道癌:潰瘍型
14.進行食道癌:びまん型
15.Barrett腺癌:進行癌
16.Barrett腺癌:表在癌
C.鑑別疾患
1.乳頭腫(咽頭)
2.悪性リンパ腫(MALTリンパ腫)
3.悪性黒色腫
4.食道GIST
5.糖原過形成(グライコジェニックアカントーシス)
6.顆粒細胞腫
[コラム]
NBIでbrownish areaを呈さない食道癌
内視鏡観察と生検のポイント:咽・喉頭
内視鏡観察のポイント:食道
中・下咽頭表在性病変のNBI拡大内視鏡診断
dysplasiaとは
食道癌の内視鏡的治療の適応拡大
食道癌に対する内視鏡的治療後の適切な経過観察法
III章 胃
A.基礎知識の整理
1.診断体系
2.内視鏡観察の要点
3.癌の診断と内視鏡的治療適応
B.アトラス
1.腺腫
2.0-I(M)
3.0-I(SM)
4.0-IIa(M)
5.0-IIb
6.0-IIc(well)
7.0-IIc(M、未分化型)
8.0-IIc(SM)
9.0-IIc(advanced)
10.0-IIa+IIc
11.0-IIc+IIa
12.0-IIc+III
13.0-IIc(M、UL(+))
14.0-IIc(SM、UL(+))
15.1型
16.2型
17.3型
18.4型
19.カルチノイド
20.内分泌細胞癌
21.リンパ球浸潤癌
22.肝様腺癌(2型進行胃癌)
23.腺扁平上皮癌
C.鑑別疾患
1.悪性リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫:DLBCL)
2.MALTリンパ腫
3.GIST
4.転移性胃癌(1)
5.転移性胃癌(2)
6.過形成性ポリープ
[コラム]
内視鏡観察のポイント:胃
胃腺腫と胃癌
Helicobacter pylori陰性胃癌:食道・胃接合部も含めて
粘液形質(胃型、腸型)
管状腺癌、中分化(tub2):手繋ぎ癌(横這い型)
HER2陽性胃癌
肝様線癌の病理像
IV章 十二指腸
A.基礎知識の整理
1.診断体系
2.内視鏡観察の要点
3.癌の診断と内視鏡的治療適応
B.アトラス
1.十二指腸腺腫:非乳頭部
2.十二指腸腺腫:乳頭部
3.十二指腸癌:非乳頭部
4.十二指腸癌:乳頭部
5.十二指腸進行癌
6.転移性十二指腸癌
7.膵癌十二指腸浸潤
C.鑑別疾患
1.カルチノイド
2.悪性リンパ腫:濾胞性リンパ腫
3.悪性リンパ腫:マントル細胞リンパ腫
4.GIST
5.過形成性ポリープ
6.Brunner腺腫内癌
[コラム]
十二指腸における腺腫・腺癌のEMR・ESD治療の考え方
内視鏡観察のポイント:非乳頭部の十二指腸腺腫・腺癌
十二指腸癌の発育形式と粘液形質
十二指腸のいろいろな白色変化
V章 小腸
A.基礎知識の整理
1.診断体系
2.内視鏡観察の要点
3.癌の診断と内視鏡的治療適応
B.アトラス
1.原発性小腸癌
2.転移性小腸癌
3.Peutz-Jeghers症候群
4.小腸.粘膜下腫瘍(SMT)
5.悪性リンパ腫(1)
6.悪性リンパ腫(2)
7.小腸カルチノイド
C.鑑別疾患
1.Crohn病
2.腸管Behcet病(entero-Behcet病)
3.NSAIDsによる小腸病変
4.血管腫
[コラム]
内視鏡観察のポイント:バルーン小腸内視鏡
内視鏡観察のポイント:カプセル内視鏡
十二指腸を含めた小腸に発生する悪性リンパ腫の診断
GVHD腸炎
VI章 大腸
A.基礎知識の整理
1.NBI分類(NICE分類を含めて)
2.内視鏡観察の要点とSM深部浸潤癌のポイント
B.アトラス
[隆起型]
1.Ip+IIc型SM癌
2.Ip+IIc型SM癌(NPG)
3.Isp型SM癌
4.Is型SM癌
[表面型]
5.IIa+IIc(PG型)(1)
6.IIa+IIc(PG型)(2)
7.IIa+IIc(NPG型)(1)
8.IIa+IIc(NPG型)(2)
[特殊型]
9.Is+IIc(PG型)
10.SMT様浸潤癌
11.LST-G、SM-S癌
12.LST-G、SM-M癌
13.LST-NG、SM-S癌
14.LST-NG、SM-M癌
[粘膜下腫瘍]
15.pseudo-carcinomatous invasion
16.TSA由来SM癌
17.SSAP由来SM癌
18.小型進行癌
19.4型進行癌
20.カルチノイド
21.colitic cancer
C.鑑別疾患
1.粘膜下腫瘍(SMT)
2.悪性リンパ腫
3.非腫瘍性ポリープ
4.粘膜脱症候群(MPS)
[コラム]
内視鏡観察のポイント
SM浸潤距離
早期大腸癌の転移リスク
PG、NPG分類
大腸のスクリーニング検査:日本における大腸癌検診の現状と今後のあり方
家族性大腸ポリポーシス(FAP)
鋸歯状病変
マイクロサテライト不安定性を伴う大腸癌の組織学的特徴
大腸ポリポーシス
Lynch症候群患者のスクリーニングとしてのマイクロサテライト不安定検査
索引
2011年1月に南江堂より刊行した『目指せ!内視鏡診断エキスパート−早期消化管癌の診断Q&A』は、東京慈恵会医科大学、国立がん研究センター中央病院の2施設の執筆陣により、精選した貴重な症例と鮮明な内視鏡像を多数収載してまとめたものである。お蔭様で増刷にいたり、今日まで好評をいただいている。この書籍の特徴は、東京慈恵会医科大学と国立がん研究センター中央病院の2施設において日々熱い議論が交わされている最新の内視鏡カンファレンスの内容をそのままに、Q&A形式にまとめ上げた点にある。読者にあたかも実際にカンファレンスに参加し、上級医から質問されているような臨場感を持っていただけるよう、選りすぐりの症例に対して、通常光、色素内視鏡やNBI(narrow band imaging)などの画像強調観察、拡大観察まで含め、豊富な内視鏡像を提示し、丁寧に解説している。これまでにも内視鏡関係の書籍は多数出版されているが、全国の多施設による分担執筆で構成され、用語や機種なども異なる立場で総花的にまとめられたものが多く、一貫性に欠ける傾向があった。その弊害をなくすことを目指し、2施設のみでまとめたものである。しかしながら、ページ数の制約から病理診断に関する記載を十分に加えることができず、また病理像や切除標本についても大きく紙面を確保できなかった。
そこで今回、前書『目指せ!内視鏡診断エキスパート』と同じ編集・執筆体制で、同書において叶わなかった病理像(生検病理を含む)、さらには病理学専門家による解説を十分に盛り込み、まとめたものが本書である。本書では、東京慈恵会医科大学病理学講座池上雅博先生と国立がん研究センター中央病院病理・臨床検査科九嶋亮治先生に編者として加わっていただき、新たな症例アトラスを目指して1例ごとに内視鏡像と病理組織像との対比検討を丹念に重ね、およそ2年の月日をかけ、ようやくここに完成した。
本書の構成は、診断体系、内視鏡観察の要点、癌の診断と内視鏡的治療の適応、代表的疾患のアトラス、そして鑑別診断にまで踏み込んでいる。また、随所に知っておいていただきたい最新知識と重要事項をコラムとして盛り込んだ。内視鏡診断、病理診断のエッセンスを理路整然と、しかも余すところなく披露しており、すべての症例において内視鏡像と病理像を対比させ、適切な病理組織解説を含め、必要十分な解説を心掛けた。
ぜひとも本書を座右に備えていただき、日常診療の場で活用していただくとともに、一人でも多くの消化器科医、内視鏡医の先生方に、消化器内視鏡学と病理学の実践的知識を学ぶためにお役に立てていただければ幸甚である。
2013年4月
編集者を代表して
田尻久雄
『消化管癌カラーアトラス 内視鏡所見から病理診断へ迫る』がいよいよ上梓された。先の好評書『目指せ!内視鏡診断エキスパート』のアドバンス版である。B5判、444頁と手ごろな分量だが、その内容はずっしりと重い。
今回も田尻久雄教授門下の東京慈恵会医科大学消化器・肝臓内科/内視鏡科と斎藤 豊科長を中心とした国立がん研究センター中央病院内視鏡科の2施設からの執筆陣である。執筆者のページをみると、その人材の多さにまったく驚かされる。また、今回はさらに、東京慈恵会医科大学病理学講座の池上雅博先生、国立がん研究センター中央病院病理・臨床検査科の九嶋亮治先生と両施設の病理担当の先生が編集者に加わっている。病理診断に関する知識は内視鏡医にとって不可欠のものであるとともに、各症例の最終診断がしっかりと付けられていて、得られる知識が担保されている。各症例アトラスのほとんどすべての執筆者に池上先生、あるいは九嶋先生が加わるという、大変な力作となっている。
本誌の特徴は以下のとおりである。
1)まず、カラーアトラスの生命線である画像が非常に鮮明であり、色調も正確に表されている。編者ならびに南江堂担当者のこだわりが見て取れる。
2)咽・喉頭から大腸まで、全消化管を網羅して多数の症例が示されているが、2施設からのみの提示で、使用機器、用語の記載内容に一貫性があり、理解を助けている。
3)総論では、内視鏡検査の基本と病理診断の進め方が示されているが、精度の高い病理診断を行うための内視鏡医の心得がやさしく示され、また実例をもとに注意すべき点が解説されていて、理解が容易である。
4)臓器別の各論では、@ 診断の体系、A 内視鏡観察の要点、B 癌の診断と内視鏡治療の適応について、順序よく記載されていて基礎知識の整理に役立つ。
5)アトラスでは、選りすぐりの症例に対し通常光、色素内視鏡、NBI(narrow band imaging)による内視鏡像を解説し、その後、病理肉眼所見、組織所見を解説し、最終病理診断により完結している。タイトルどおり内視鏡所見から病理診断である。
6)臓器別ごとに、鑑別診断として重要な疾患をあげ、詳しく解説されている。
7)随所に最新知識や重要事項をコラムとして盛り込み、理解を助けている。
このように本書は、臨床から病理へと大変に豊富な内容ではあるが、きれいなアトラスとわかりやすい記載で簡単に読破できる良書である。どうか座右の書としてお手元に置き、日ごろの内視鏡診療にお役立ていただきたい。
内科113巻2号(2014年2月号)より転載
評者●杏林大学医学部第三内科教授/慶應義塾大学名誉教授 高橋信一