もっといい方法がみつかる目からウロコの感染対策
編集 | : 大湾知子/藤田次郎 |
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ISBN | : 978-4-524-26929-7 |
発行年月 | : 2012年2月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 166 |
在庫
定価2,640円(本体2,400円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
ゼロにできない院内感染にお悩みのナース必見。感染管理では、「わかったつもり」「できているつもり」の落とし穴が少なくありません。この“つもり”にハッと気づかされるような事例や方法を根拠に基づいて解説。院内のマニュアルに掲載されていないこと、原則通りにやってもうまくいかないことなど、日々の悩みの種を解決する“目からウロコ”の一冊。
序論 いま看護に求められる感染対策の実践的知識とは
第1章 効果がみえる感染対策の基本―できているつもりを再チェック
1.手指衛生
(1)手指衛生の基本と落とし穴
1.なぜ手指衛生を行うのか
2.どのように手指衛生を行うのか
a.手指衛生の方法
b.手指衛生のミスしやすい部位
c.流水と石けんによる手洗いの手順
d.擦式消毒用アルコール製剤による手指衛生の手順
3.“できているつもり”の落とし穴
(2)手荒れ対策
1.なぜ手荒れ対策を行うのか
a.手荒れが起きる原因
b.手荒れの問題点
2.どのように手荒れ対策を行うのか
2.個人防護具の使用
(1)手袋使用の基本と落とし穴
1.なぜ手袋を使用するのか
2.どのように手袋を使用するのか
a.手袋の着け方
b.手袋の外し方
c.手袋の交換のタイミング
3.“できているつもり”の落とし穴
(2)エプロン・ガウン着用の基本と落とし穴
1.なぜエプロン・ガウンを着用するのか
2.どのようにエプロン・ガウンを着用するのか
a.エプロンとガウンの選択
b.エプロンの着け方
c.エプロンの外し方
d.ガウンの着け方
e.ガウンの外し方
f.エプロン・ガウンの交換・着脱のタイミング
g.エプロン・ガウンの使用時の注意点
(3)マスク着用の基本と落とし穴
1.なぜマスクを着用するのか
2.どのようにマスクを選び着用するのか
a.マスクの種類と使用目的
b.サージカルマスクの着脱方法と交換のタイミング
c.N95マスクの選択・着脱・保管方法と交換のタイミング
3.“できているつもり”の落とし穴
(4)白衣や身につけるものの基本と落とし穴
1.白衣や身につけるものの使用方法・注意点
a.手洗いをしやすい身だしなみ
b.清潔で安全な身だしなみ
2.“できているつもり”の落とし穴
3.患者への使用物品の管理
(1)洗浄・消毒・滅菌の基本と落とし穴
1.なぜ洗浄・消毒・滅菌を行うのか
2.洗浄・消毒・滅菌の方法
a.洗浄の方法
b.消毒の方法
c.滅菌の方法
3.“できているつもり”の落とし穴
(2)物品の再使用の基本と落とし穴
1.再使用される物品と再使用における原則
a.再使用される物品
b.患者に使用した物品の再使用における原則
c.スポルディングの分類
2.“できているつもり”の落とし穴
4.感染症患者のベッド配置とケア・処置
(1)患者の隔離の基本と落とし穴
1.隔離の方法―個室隔離と集団隔離
2.感染症患者、保菌患者の隔離の考え方
a.標準予防策に基づく隔離
b.感染経路別対策に基づく隔離
c.標準予防策と感染経路別対策の2つをふまえた隔離の判断
3.集団隔離を行う際の注意点
4.“できているつもり”の落とし穴
(2)隔離患者のケア・処置時の基本と落とし穴
1.隔離患者のケア・処置時の感染予防の原則や注意点
a.感染予防の原則
b.ケア・処置時の注意点
2.“できているつもり”の落とし穴
(3)隔離患者の物品管理の基本と落とし穴
1.隔離された患者への使用物品の管理の基本
a.標準予防策の徹底
b.洗浄・消毒・滅菌の判断
2.“できているつもり”の落とし穴
第2章 ケア・処置別に実践的解決!感染対策Q&A50―ムシ・ムダ・ムラをストップ
1.注射・点滴・採血管理
Q1 血管内留置で中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテルの穿刺時の消毒は、どの消毒薬でどのように行えばよいですか?
Q2 末梢静脈カテーテル確保時の穿刺(留置)部位は、感染対策上、どの位置が望ましいですか?
Q3 血管内留置カテーテル(中心静脈・末梢静脈)、輸液ラインの交換はどのくらいの頻度で行うべきですか?成人と小児で違いはありますか?
Q4 カテーテル穿刺部の保護に用いるガーゼやドレッシング材はどのように選択すればよいですか?また、その交換のタイミングはいつですか?
Q5 血管内留置カテーテルの管理において、ライン交換処置時の正しい消毒方法を教えてください.
Q6 三方活栓など側管から抗菌薬投与などのアクセスを行う際の感染対策上の注意点はありますか?
Q7 最近、輸液ラインで閉鎖式回路(クローズドシステム)を使う機会が増えました.この回路を用いたら感染は起こらないのですか?
Q8 輸液にはフィルターを用いるようになっていますが、その効果は何ですか?また、目詰まりすることが多いのですが防ぐ方法はありますか?
Q9 ヘパリンロックと生食ロック、感染対策の点ではどちらがよいのですか?また、感染対策上、ロックを行う際に注意すべきことはありますか?
Q10 真空採血管を用いた採血時にアームダウン法を行うように変わりましたが、非常にやりにくいです.この方法を行う理由は何ですか?
Q11 真空採血管の採血針を刺すゴムキャップ部分は滅菌されていますか?消毒は必要ですか?また、採血ホルダーの再使用は可能ですか?
2.呼吸管理
Q12 開放式気管吸引を実施する時に着用する手袋、マスクなどの個人防護具の実際を教えてください.
Q13 閉鎖式気管吸引は閉鎖式回路であるため、個人防護具の必要性を感じません.何も着用せずに行ってもよいですか?
Q14 口腔吸引、鼻腔吸引を実施する時に着用する個人防護具を教えてください.また、感染対策上、手技の中で注意すべきことはありますか?
Q15 吸引カテーテルはディスポーザブル製品ですが、実際には再使用せざるをえません.再使用時に注意すべきことを教えてください.
Q16 気管切開部の管理で、ガーゼ使用の有無や消毒方法など、正しい管理の方法を教えてください.
Q17 人工呼吸器回路を扱う際の感染対策上の注意点は何ですか?
Q18 人工呼吸器回路の交換は、どのくらいの頻度で、どんなことに注意して行いますか?
Q19 ネブライザーなどの呼吸器関連器具の消毒はどのように行いますか?
3.経管栄養管理(経鼻・PEG)
Q20 経鼻からの経管栄養療法における感染上の問題は何ですか?また、注入用のセット(ボトルやライン)は再使用しても大丈夫ですか?
Q21 経鼻からの経管栄養開始後、チューブ交換はどのくらいの頻度で行いますか?また、チューブは再使用しても大丈夫ですか?
Q22 経鼻からの経管栄養管理で、鼻腔からMRSAが検出されている患者には、とくにどんな点に注意が必要ですか?
Q23 PEGの管理で、胃瘻部はどのように清潔を保つとよいのですか?
Q24 PEGチューブの内腔がすぐ汚れるのですが、感染は大文夫ですか?また、汚れやそれによる詰まりを防ぐよい方法はないのですか?
Q25 経管栄養チューブ(経鼻、PEG)から栄養実施中、酢水注入が感染対策によいと聞いたのですが本当ですか?患者に影響はないですか?
4.尿道カテーテル管理・陰部洗浄
Q26 尿道カテーテル挿入時や管理時の消毒薬は何を使えばよいのですか?
Q27 尿道カテーテル挿入患者で、尿漏れが続く場合の感染上の問題は何ですか?尿漏れに対してはどのような対応法がありますか?
Q28 感染対策上、尿道カテーテルは早期に抜去したほうがよい根拠はありますか?また、カテーテルの交換頻度はどのくらいがよいのですか?
Q29 尿に混濁や浮遊物がある場合に膀胱洗浄を行っていますが、感染の原因になると聞きました.どのように対応するとよいのですか?
Q30 尿道カテーテル留置患者で、認知症の症状などによりカテーテルを自己抜去してしまう患者への対応方法を教えてください.
Q31 尿バッグや尿道カテーテルの固定位置、チューブの管理について、感染対策上の注意点やよりよい方法を教えてください.
Q32 排尿困難の患者に自己導尿の指示が出ましたが、感染が心配です.どのように指導すればよいか教えてください.
Q33 陰部洗浄や陰部の清拭時の感染対策上の注意点は何ですか?白癬、真菌などの感染がある場合は特別な対策が必要ですか?
5.創傷管理・ドレーン管理・口腔ケア
Q34 術後の創傷管理の清潔保持の実際を教えてください.洗浄時は生理食塩水ですか、水道水ですか?消毒薬は使用しますか?
Q35 創部の保護のためのドレッシング材やガーゼはどのように選択すればよいのですか?また、毎日交換する必要はありますか?
Q36 褥瘡の清潔保持や創部の保護は、他の創傷と同じ方法ですか?
Q37 ドレーンバッグの排液処理や体外にあるチューブの管理について、感染リスクに配慮した正しい方法を教えてください.
Q38 ドレーン管理中の患者において、ドレーン刺入部の管理はどのように行えばよいのですか?消毒や洗浄は必要ですか?
Q39 口腔ケア時に消毒は必要ですか?また、口腔内に傷や炎症がある場合はどうしますか?
6.その他の医療器材・物品・療養環境
Q40 近年、パソコンや情報端末など医療従事者が業務中に扱う機器類が増えていますが、どのように感染対策を行えばよいのですか?
Q41 血糖測定の際に使用する微量採血用穿刺器具を介した感染が問題になりましたが、正しい感染対策を教えてください.
Q42 最近、頻繁に使用するようになったパルスオキシメーターについて、使用や管理における感染対策や注意点を教えてください.
Q43 血糖測定器やパルスオキシメーター以外にも日常的に患者に使用する測定機器類がありますが、どのような感染対策を行えばよいのですか?
Q44 患者の治療や処置に関連して扱う鑷子、シャーレなどの個別物品や、包交車や救急カ一トなどの運搬車の感染対策を教えてください.
◆無菌の物品を挟んだ場合であっても、一度使用した鑷子の再使用はやめましょう.
Q45 バイトブロックや酸素マスクなど、患者に直接用いられる、再使用される医療器材については、どのように感染対策を行いますか?
Q46 患者の日常生活に関連したケア・処置に使用する物品類の感染対策を教えてください.
Q47 患者の療養環境にある生活用具の感染対策を教えてください
Q48 患者の療養環境の感染対策で、MRSAなどの細菌感染の場合や、肝炎などのウイルス感染の場合には、特別な対策は必要になりますか?
Q49 内視鏡洗浄ではどの消毒薬を使用すればよいのですか?
Q50 内視鏡の洗浄方法や洗浄時の感染対策について教えてください.
第3章 知っておきたい感染症―感染予防・感染対策と看護ケアのポイント
各項目のトリアージポイント
1 インフルエンザ
2 風疹
3 麻疹
4 水痘・帯状疱疹
5 百日咳
6 肺炎
7 レジオネラ症
8 結核
9 髄膜炎
10 ウイルス性下痢症
11 細菌性食中毒
12 ウイルス性肝炎
13 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
14 バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症
15 多剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症
16 流行性角結膜炎(EKC)
17 流行性耳下腺炎
18 疥癬
コラム 外来トリアージ
あとがき
略語一覧
索引
近年、感染に関する管理・対策・制御・予防・看護などの用語が普及し、基本と根拠が理解され、感染対策室をはじめ院内体制も充実してきました。しかし、現場の看護師から寄せられる院内感染の発生についての相談は、なくなったわけではありません。
現実の感染症発生を早急に解決したくても、何をどうすればいいのか立ち止まって確認する余裕もなく、次第に意欲がすり減ってしまうこともあるでしょう。また、感染対策の知識や視点をもっていても、「間違いやすい」、「勘違いしやすい」という落とし穴が増え、感染対策の効果が失われている面もあります。また一方で、慣習に流された業務の中で感染対策の知識を生かすことができない場面もあります。
そのような状況の中でも、ICN(Infection Control Nurse、感染管理看護師)は実践現場に役立つ効果的な感染対策を着実に目指しています。では、何をもって効果があると言えるのでしょうか?どのような状態になったら効果的と言えるのでしょうか?一緒に考えてみませんか?現場にある「感染対策のヒント」を発見し、明日からの看護に活かしましょう。
本書のねらい
日々寄せられる相談から、院内感染の発生をなかなかゼロにできない原因として、根拠に基づく感染対策の実践過程で看護師が陥りやすい誤りや判断の迷い、いわゆる“落とし穴"が見えてきました。それは、(1)基本的な感染対策の効果的な手段・方法とは何か、(2)ケア・処置時の感染対策は何をどこまでやるのか、(3)個別の感染症および患者への対応、に分けられます。そこで本書では、感染対策の基本とともに、どこにどんな落とし穴があるのか、どのように対処すればよいのかについて示していきます。
感染への対策を講じてもなかなか効果がみえないのは、実は、さまざまな現場の場面における感染対策の基本と実践にあるということに気づいてもらいたいと思います。行うべきなのに行われていないこと、そこまで行う必要がないのにやり過ぎていること、徹底されていなかったり暖昧にされていたりすること、そんなところに課題の出発点があります。それはつまり、臨床や在宅の現場にとって効果的な感染対策のヒントは、現場目線の具体的な1つ1つのケア・処置の中にあるということです。
本書には、「こうすればよかったのか」という気づき、「なるほど!」と思う“目からウロコ"が詰まっています。明日からの効果的な感染対策のヒントとして、実践に役立てていただけますと幸いです。
2012年2月
大湾知子
病院における感染対策は、その施設で治療を受けられる患者さんやそこに勤める職員のための安全対策の一環である。そして、この「感染リスクの低減」という業務は、病院全体で組織的に取り組むべきものであることはもちろんだが、平成24年度の感染対策地域連携加算の新設により、「地域の病院全体が連携して取り組むべきリスク管理」として、社会の中での認識と位置付けが高まりつつある。
しかし、感染対策の業務遂行には専門的知識と経験が必要になる。つまり、主な病原体やそれによって引き起こされる感染性疾患、感染経路、基本的な感染制御方法に関する知識などである。また、それぞれの日常業務の中で感染対策を具体的にどう実践すべきかについても知らなければならない。ところが、すべての施設にこういったことを教えてくれる経験豊富な専門家が揃っているわけではない。さらに、院内感染対策担当者が感染対策に関する知識や技術について研修を行う対象の職員は、入職したばかりの新人看護師から始まり、超ベテラン医師まで、経験年数や知識、職種、専門領域が大きく異なる集団なので、研修を担当するほうも大変である。それでも、「感染リスクの低減」のためには、全職員の感染対策に関する意識や常識を底上げしなければならない。そこで、よい指導書となるのが本書だと思う。研修を担当する者にとっても受講する者にとっても本書は、「ちょっと確認したい時に調べ、拾い読む辞典」でもあり、「全体を通して読めば系統だった知識が得られる病棟感染対策の入門用テキスト」にもなる。このようなテキストがあれば、1回きりの研修会だけでは覚えきれなかったことも繰り返し勉強ができるだろう。
本書の構成は3つからなる。第1章は感染対策業務の基本知識の確認、第2章はQ&A形式による病棟業務の具体的な実践方法、第3章では院内感染で問題となる頻度の高い疾患が解説されている。
また、全体が写真や図表で視覚的にわかりやすく解説されているが、とくに第1章は多くのカラー写真を用いた作業手順の解説があり、目に見えない病原体による汚染のリスクが一目瞭然となるように可視化(=見える化)されている。「目からウロコ」というタイトルが付けられた理由の一つは、この「目に見えない病原体による汚染を可視化することによる理解の促進」を指している点もあるのだろう。
第2章のQ&A形式の項は、1ページ1テーマの病棟業務の疑問に対する解説だが、1ページだけ拾い読みしても、そのポイントの完結した知識となっている。一方、この章の目次と配列を見ると、通して読めば系統的な感染対策の学習が可能となるように構成が工夫されていることがわかる。また、職種横断的に取り組まねばならない感染対策の中でも患者ケアや療養環境整備などの領域は、実際の作業に従事し、経験も豊富な熟練ナースに敵う者はいない。この章の執筆陣は、こういったベテラン・ナース方が当たっている。
次に、感染性疾患の病態や病原体に関しては、感染症専門医や検査技師の方々が詳しいのが当然である。第3章ではこういった専門家が、インフルエンザや流行性角結膜炎、多剤耐性菌、ノロウイルス胃腸炎などを基本的に1疾患あたり見開き2ページにまとめて覚えやすく解説している。そして、このように内容が充実しているのに、全体の分量は150ページ程度と普通の雑誌よりも薄くコンパクトにまとまっていて、通勤の際にも荷物にならない。忙しい感染対策担当者が日常業務の合間に、基本事項の全体を一通り勉強するのにもちょうどよい分量だと考える。
本書をまとめて評すると、「経験豊富な看護師や感染症の専門家が、感染対策業務の実際について、何でも個人指導してくれるようなテキスト」といえるのではないかと思われる。筆者も当院のリンクナースの研修に本書を使わせていただきたい。
評者● 宮良高維
内科110巻1号(2012年7月号)より転載