実地医家ならこれを読め!PPI(プロトンポンプ阻害薬)治療のコツがわかる本
編集 | : 木下芳一/高橋信一 |
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ISBN | : 978-4-524-26905-1 |
発行年月 | : 2013年9月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 136 |
在庫
定価2,750円(本体2,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
消化性潰瘍や胃食道逆流症(GERD)、薬物性潰瘍などにおいて、一般内科医の使用する頻度が高いPPIであるが、剤形や種類も増加し、その使い方に迷うケースも多い。本書ではPPIについての最新情報をコンパクトにまとめ、PPIの種類や効果、副作用、上手な使い方などを、ケーススタディも交えて具体的に解説した。
PART1 PPIのfrom A to Z
A PPIを知る
1.なぜ効くの?
2.H2RAより良いの?
3.どんな疾患に使うの?
4.効果的に使うコツは何?
5.どれぐらい・いつまで使えばいいの?
6.使ってはいけない場合は?
7.怖い副作用はあるの?
8.他剤との相互作用はあるの?
B PPIを使い分ける
1.オメプラゾールはどう使う!
2.エソメプラゾールはどう使う!!
3.ラベプラゾールはどう使う!!!
4.ランソプラゾールはどう使う!!!!
5.どう使い分ける
PART2 実践編 PPIの上手な使い方・コツ
A 胃食道逆流症(GERD)
1.GERDを理解する
2.投与前に患者さんに説明する内容
3.PPIを使った治療の実際
4.効果判定はどうする?
5.PPIが効かなかったときの対処法
6.症例から学ぶPPIの上手な使い方
B H.pyloriが関係する消化性潰瘍
1.消化性潰瘍を理解する
2.投与前に患者さんに説明する内容
3.PPIを使った治療の実際
4.効果判定はどうする?
5.除菌治療はいつする?
6.PPIが効かなかったときの対処法
7.症例から学ぶPPIの上手な使い方
C 薬物性潰瘍(NSAIDs 潰瘍、低用量アスピリン潰瘍)
1.薬物性潰瘍の発生機序を理解する
2.PPIを使った治療の実際
3.PPIを使った再発予防の実際
4.H.pylori 感染症の除菌治療はどうするか(再発予防も含めて)
5.PPIが効かなかったときの対処法
6.症例から学ぶPPIの上手な使い方
D PPIが有効なその他の疾患
1.出血性潰瘍
2.急性胃炎、急性胃粘膜病変
3.Zollinger-Ellison症候群
4.その他:機能性ディスペプシア
付録パッとみてわかる!PPIの一覧表
索引
プロトンポンプ阻害薬(PPI)は胃酸分泌を強力に抑制する薬剤として登場し、H2ブロッカーよりはるかに強力な胃酸分泌抑制作用を持っていた。このため、使用が開始された当時は、食物の消化吸収が障害されるのではないか?何か重大な副作用が起こるのではないか?と心配された。一方、作用は強力で胃内をほとんど無酸状態にするので、どのような投薬の仕方をしても治療効果は十分であろうと信じられていた。ところが、種々の検討が行われてみると、Helicobacter pylori 感染陰性者ではPPIの胃酸分泌抑制効果が必ずしも十分ではない場合があり、十分な治療効果を得るにはPPIの使用方法に工夫が必要であることが分かってきた。また、食生活の欧米化などが原因となって、日本人でも以前に比べてより高い胃酸分泌能をもつ人が増えてきている。
このような状況下で、酸関連疾患の治療に、PPIの薬剤特性をよく理解し、どう使いこなしていくかが重要な問題となってきた。日本では4種類のPPIが使用されており、それぞれの薬剤に特徴があり、使い分けることが必要である。また、投与時間や投与量、他剤との併用の調整など細かい工夫を行っていくことも必要である。
ところが、高い治療効果を得るためのPPI 投薬の工夫・コツを解説した本は今までほとんどなかった。本書は酸関連疾患の治療を行う上で必要となるPPI 治療のコツをまとめた本である。本書を一読いただくと、読者の方には実地診療で重要な胃食道逆流症(GERD)、消化性潰瘍、H.pylori 感染などの酸関連疾患の診療の達人になっていただけると信じている。
2013年9月
編者一同
『実地医家ならこれを読め! PPI(プロトンポンプ阻害薬)治療のコツがわかる本』(編集:木下芳一・高橋信一)を拝読させていただいた。
第一印象は小さくて(A5判)薄いから(136頁)、「これなら読めそうだ!」であった。学生時代も「分厚い教科書を途中で諦めるくらいなら、薄いのを最初から最後まで読むこと!」と教わった。そのほうが、執筆者・編者の意図することがしっかり読者に伝わるものだ。
読んでみて驚いた! Part 1(PPIのfrom A to Z)のPPIの基礎的知識(なぜ効くのか?、PPIの使い分け)に始まり、Part 2(実践編 PPIの上手な使い方・コツ)と流れるように、すべて最新のエビデンスに基づく内容を丁寧でわかりやすい平易な文章で解説されている。すなわち、あの膨大な英語の論文をまったく読む必要がなく、すべて日本語に要約されているというわけだ。それも多色刷で綺麗でみやすい図表と、大変鮮明でこれだけでもアトラスができそうな内視鏡写真が多数添えられている。さらにまた、執筆者たちが日ごろの臨床で体験した、治療に難渋した症例を具体的に提示しているのも、「なんだ、みんな苦労しているんだ!」と、解説書としては非常に親近感を感じる。
それもそのはずである。すべての執筆者がわが国の胃潰瘍やGERD診療ガイドラインの作成委員長や委員をお務めになり、長年この分野の臨床に深く携わっている第一線の先生方なのである。だから国内外の最新のエビデンスのほとんどは頭に入っており、かつ沢山の貴重な症例をおもちなのだ、と合点した。
本書はぜひ最初から最後まで一気に通して読み切ることをお勧めするが、見出しや巻末の索引が充実しているため、時間のない方は知りたい部分だけの拾い読みも十分可能となっている。「実地医家ならこれを読め!」と謳ってはいるが、実地医家のみならず研修医・レジデントや一般の勤務医、またご自分が「消化器専門医」と自負している先生にもぜひお読みいただきたい。必ずや「目から鱗」の最新の知識が得られるはずである。
最後に南江堂さんにお願いがある。現在、PPIはここに取り上げられている酸関連疾患(GERD/NERD、消化性潰瘍、NSAID潰瘍、アスピリンの粘膜傷害など)治療の第一選択薬とされている。さらには機能性ディスペプシア(FD)にも胃酸の関与が指摘されている。よって、これらの分野に関する臨床研究は大変活発であり、毎年のように新しい研究論文が発表されている。よって、本書は最低でも3〜4年に一度は改訂版を出していただきたい。期待しています。
臨床雑誌内科113巻6号(2014年6月増大号)より転載
評者●群馬大学医学部附属病院光学医療診療部部長/診療教授 草野元康