教科書

シンプル理学療法学・作業療法学シリーズ

人間発達学テキスト

監修 : 細田多穂
編集 : 植松光俊/中川法一/大工谷新一
ISBN : 978-4-524-26867-2
発行年月 : 2014年6月
判型 : B5
ページ数 : 206

在庫あり

定価4,180円(本体3,800円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

「人間発達学がなぜリハビリテーションに必要なのか」を理解しながら学べるテキスト。わかりやすくシンプルな解説が学習を後押しする。総論では人間発達学と関連領域、その歴史を解説、各論では骨、筋、内部機能など臓器別の章立ての中で発達段階別に項目立てすることで、それぞれの臓器や機能がどのように発達していくか理解しやすい構成とした。

総論
1章 人間発達とは
A 人間発達とは
 1 発達と成長・成熟、そして老化とは
 2 発達の特性・規則
 3 発達段階と発達課題
 4 ライフステージとリハビリテーション医療
B 人間発達学の介護やリハビリテーションへの応用
 1 理学療法
 2 作業療法
 3 言語聴覚療法
2章 人間発達学(発達科学)の理論と研究法
A 発達科学と学問体系
B 発達理論の歴史的な流れ
 1 18世紀−発達科学の黎明
 2 19世紀−進化論から発達科学へ
 3 20世紀前半−発達科学の誕生
 4 20世紀後半−発達科学の発展
 5 21世紀−発達科学の現在
C 諸家の発達理論
 1 運動学(運動発達)
  a.スキャモン
  b.マッグロウ
  c.ゲゼル
  d.ミラニー・コンパレッティ
  e.フランケンバーグ
  f.フォスベルグ
 2 心理学
  a.ビネー
  b.フロイト
  c.ウェルナー
  d.シュテルン
  e.ハヴィガースト
  f.ワロン
  g.エリクソン
  h.サリバン
  i.マズロウ
  j.ピアジェ
  k.コールバーグ
  l.バウァー
  m.プロミン
  n.ジェンセン
  o.シーグラー
 3 神経心理学(認知神経科学)
  a.ヘッブ
  b.ワディントン
  c.フッテンロッハー
  d.セーレン
  e.ダマシオ
  f.中山
 4 行動科学
  a.ワトソン
  b.ローレンツ
  c.スキナー
 5 社会学
  a.パーテン
  b.ヴィゴツキー
  c.ボゥルビー
  d.ルリヤ
D 発達科学の研究方法
 1 発達の諸領域と研究方法
 2 発達科学における種々の研究手段と研究方法
3章 自然科学からみた人間
A 解剖生理学
 1 ヒトの身体は細胞の集合体である
 2 人間発育・発達は細胞分裂の繰り返しである
B 系統発生(遺伝)学
 1 出生まで
  a.受精から着床まで
  b.着床から胚葉への分化
  c.器官形成
 2 出生後
C 体育学(スポーツ科学)
 1 運動能力指標(文部科学省、体力テスト)
 2 体力テスト項目
 3 体力の加齢に伴う変化
 4 体力と運動習慣
D 行動科学
 1 乳児期
 2 幼児期・学童期
 3 成人期
 4 老年期
E 自然科学からみた人間発達のリハビリテーションへの応用
4章 社会科学からみた人間
A 社会とは
B 社会科学とは
C 発達と社会学的側面
D 発達と法律
E 発達と経済
F 社会科学からみた人間発達のリハビリテーションへの応用
各論
1章 身体運動器機能−身体構造 1:胎児期〜青年期
A 体格・脊柱・姿勢・性徴
 1 胎児期(受精から出生)の体格・脊柱・姿勢・性徴の発達
 2 新生児期(生後28日以内)〜乳児期(1歳未満)の体格・脊柱・姿勢・性徴の発達
 3 幼児期(1歳半〜6歳未満)〜学童期(6〜歳以下)の体格・脊柱・姿勢・性徴の発達
 4 青年期(思春期含む22歳まで)の体格・脊柱・姿勢・性徴の発達
B 歯・骨
 1 歯の発達
  a.乳児期
  b.幼児期
  c.学童期
  d.成人期
 2 骨の発生・発達
  a.胎児期
  b.新生児期
  c.乳児期
  d.幼児期
  e.学童期
  f.学童期〜青年期
C 筋肉
 1 体組成の中の骨格筋
 2 胎児期の筋肉と筋力の特徴
 3 新生児期〜乳幼児期の筋肉と筋力の特徴
 4 学童期〜青年期の筋肉と筋力の特徴
D 異常と障害
 1 体格・脊柱・姿勢の異常と障害
  a.胎児期
  b.新生児期
  c.学童期
  d.青年期
 2 歯の異常と障害
  a.新生児期
  b.学童期
  c.青年期
 3 骨の異常と障害
  a.胎児期
  b.新生児期
  c.幼児前期
  d.幼児後期
  e.学童期
  f.青年期
 4 筋肉の異常と障害
2章 身体運動器機能−身体構造 2:成人期〜老年期
A 体格・脊柱・姿勢・性徴
 1 成人期(23〜64歳)の体格・脊柱・姿勢・性徴の発達
 2 老年期(65歳以上)の体格・脊柱・姿勢・性徴の発達
B 歯・骨
 1 歯の発達
 2 骨の発達
  a.成人期
  b.老年期
C 筋肉
 1 成人期
  a.成人期の筋肉と筋力の特徴
 2 老年期
  a.老年期の筋肉と筋力の特徴
  b.高齢者の筋肉と筋力の性差
  c.高齢者の筋力低下と生活機能の関連
D 異常と障害
 1 体格・脊柱・姿勢・性徴の異常と障害
 2 歯の異常と障害
  a.成人期
  b.老年期
 3 骨の異常と障害
  a.老年期
 4 筋肉の異常と障害
  a.成人期の代表的な筋疾患
3章 身体運動器機能−運動・歩行 1:胎児期〜青年期
A 身体運動の発達とは
 1 胎児期
 2 新生児期
 3 乳児期
  a.12ヵ月以降の歩行の発達
  b.12〜15ヵ月までの上肢機能
 4 幼児期
  a.18〜72ヵ月までの粗大運動機能
  b.18〜72ヵ月までの上肢機能
 5 学童期
 6 青年期
B 筋肉、筋力、耐久力の発達
 1 発達段階の筋肉と筋力
 2 発達段階と筋持久力
C 発達期における異常と障害
4章 身体運動器機能−運動・歩行 2:成人期〜老年期
A 筋力
 1 筋力とは
 2 加齢に伴う筋量の減少
 3 老年期における筋機能変化
B 体力
 1 成人期の体力
 2 老年期の体力
 3 呼吸循環機能と運動耐用能
C 姿勢制御(バランス)
 1 成人期の姿勢制御
 2 老年期の姿勢制御
D 上肢機能(手を含む)
 1 成人期の上肢機能
 2 加齢と上肢機能
E 重力刺激と起居動作
 1 重力刺激と身体機能
 2 ADLと転倒・骨折
F 歩行
 1 成人期以降の加齢による歩行の変化
 2 老年期の歩行と転倒
G 異常と障害
 1 成人期
 2 老年期
5章 身体運動器機能−脳神経系機能(反射・反応)
A 発達期における中枢神経の変化
 1 胎児期から乳児期にいたる神経系の変化
  a.神経系の発生学的変化
  b.軸索の髄鞘化と樹状突起の変化
  c.シナプス投射とその刈り込み
 2 老年期の中枢神経の変化
B 反射・反応
 1 新生児期・乳児期の反射・反応
  a.原始反射
  b.姿勢反射
C 粗大運動・微細運動
 1 運動の発達
  a.胎児期の行動発達
  b.ジェネラルムーブメント
 2 新生児期、乳児期の運動発達
 3 幼児期までの粗大運動・微細運動の発達
 4 学童期・青年期の粗大運動・微細運動の発達
 5 成人期・老年期の粗大運動・微細運動の発達
D 異常と障害
 1 運動発達の遅延と急激な老化
  a.胎児期〜乳児期
  b.学童期
  c.老年期
6章 身体運動器機能−内部(生理)機能
A 呼吸
 1 呼吸器系とは
 2 胎児期の呼吸機能の発達(呼吸器系の発生)
 3 新生児期〜幼児期の呼吸機能の発達(呼吸器系の成長)
 4 成人期〜老年期の呼吸機能(呼吸器系の老化)
B 循環
 1 循環器系とは
 2 胎児期の循環機能の発達(循環器系の発生)
 3 新生児期〜幼児期の循環機能の発達(循環器系の成長)
 4 成人期〜老年期の循環機能(循環器系の老化)
C 代謝
 1 代謝とは
 2 胎児期の代謝機能の発達
 3 新生児期〜幼児期の代謝機能の発達(代謝系の成長)
 4 成人期〜老年期の代謝機能(代謝系の老化)
D 異常と障害
7章 身体運動器機能−感覚・認知機能(精神状態)
A 感覚・知覚・認知とは
B 感覚・知覚面の発達
 1 視覚(視知覚)関連機能の発達
  a.視力の発達
  b.眼球運動の発達
  c.物体視と奥行き知覚の発達
 2 聴覚機能の発達
C 認知面の発達
 1 学童期までの知能の発達(ピアジェの認知発達段階)
 2 青年期以降の知能の発達
 3 記憶の発達
 4 うつ
D 異常と障害
8章 言語機能
A ことばが生まれる前
 1 言語とは何か
 2 音声言語を産生する器官の解剖と機能(新生児期〜乳児期第I段階)
 3 ことばの理解(新生児期〜乳児期第I段階)
 4 人との関係における言語や認知の発達
  a.乳児期(第I段階:0〜4ヵ月頃)
  b.乳児期(第II段階:5〜7ヵ月頃)
  c.乳児期(第III段階:8〜10ヵ月頃)
B 音声によることばの獲得
 1 幼児前期
  a.初語〜2、3語発話の表出
  b.社会的参照
  c.指差しと三項関係の成立
  d.ボキャブラリー・スパート
 2 言語による社会性の発達
  a.幼児前期〜後期
C 文字の獲得
 3 幼児前期
  a.文字への関心:「文字」への気づきと読みの始まり
 4 幼児後期以降
  a.就学までの読み書きの習得
D 加齢による言語機能の低下(老年期)
 1 音声
 2 聴覚
 3 言語
 4 書字
E 異常と障害
9章 心理・社会性
A 心理・情緒
 1 感情
  a.自尊感情
  b.発達課題
 2 性格
 3 気分
B 社会性
 1 社会性とは
  a.乳児期
  b.幼児期
  c.学童期
  d.青年期
 2 日常生活能力
 3 家族・友人・学校・職場・地域との交流
 4 自己制御力
 5 異性関係
C 異常と障害
10章 生について−社会化と再社会化
A 生とは
B 社会化
 1 社会化とは
 2 社会化理論
  a.ライフコース論
  b.ライフサイクル論
 3 家族、家庭の持つ社会化機能
 4 発達段階における種々の社会化
C 再社会化
 1 再社会化とは
 2 再社会化に関する研究
  a.離脱説と継続説
  b.活動理論と離脱理論
 3 成人期(成人前期から老年期)における再社会化
D 異常と障害
 1 機能・形態障害(心身機能・身体構造)
 2 能力低下(活動)
 3 社会的不利(参加)
11章 死について
A 死とは
B 発達に伴う命の理解と死生観の変化
 1 幼児期
 2 児童期
 3 青年期
 4 老年期
C 死に関する統計
 1 国別死亡率
 2 死因別死亡確率
 3 年齢別死因順位
 4 自殺
 5 過労死
D 脳死と心臓死
 1 脳死とは何か
 2 脳死の概念的分類
 3 植物状態とは
 4 脳死の判定
 5 臓器移植
 6 リビングウィルと尊厳死
E ターミナルケア(終末期医療)
 1 ターミナルケアとは
 2 日本におけるターミナルケア
 3 家族とターミナルケア
  a.ターミナルケア前期
  b.ターミナルケア中期
  c.ターミナルケア後期
  d.死亡直前期
12章 身体構造・心身機能の発達関係と整理・統合
付録
参考文献
索引

人間発達学は“人間の一生涯にわたる発達について学ぶ学問”である。人間の発達は、決して子どもに限ったものではなく、誕生から成長、成熟を経て、最終的に死を迎える成人や高齢者にも当てはまる。ヒトの一生涯のあらゆる時期における“生活再建の支援”、つまり、リハビリテーションサービス提供を使命とする理学療法士・作業療法士・言語聴覚士にとって、人間発達学は必要不可欠な学問といえる。したがって、リハビリテーション領域における専門職を目指す学生がリハビリテーションに人間発達学を応用する意義を早くから理解できるような「人間発達学」テキストの存在が求められていた。つまり、「人間発達学」を学ぶにあたって、教育学、心理学や社会学を中心とした子どもが育つ過程である「成長」だけに重点が置かれたものではなく、一生涯を通しての「発達」に目を向け、またリハビリテーション領域で欠かせない「国際生活機能分類(ICF:International Classification of Functioning、Disability and Health)」において扱われる生活機能の構造と障害や、ヒトの発達過程における各心身機能の遅れや異常、さらには老化による影響についての理解を進めてリハビリテーション専門職の資質養成につなげるように作られたテキストの出現が待たれていた。
 こうした状況を背景に、人間発達学教育のスタンダードとなることを目指し、この度『シンプル理学療法学・作業療法学シリーズ』の1冊として本書『人間発達学テキスト』を刊行する運びとなった。本書の構成は、以下のごとく、リハビリテーションが対象とする障害の理解に重点を置いたものとしている。
1。生活機能分類の視点(ICF)からみたリハビリテーション専門職教育に視点を置き、身体構造・脳神経・内部臓器の成長・変化、運動・感覚・認知(精神)・言語機能を中心としながらも、人間の運動機能・動作能力に影響を与えるハンドスキル、コミュニケーション、心理、精神、社会学(性)にも最小限ながら触れた章立て構成とした。
2。各論各章末において、各機能に関する異常と障害について国際生活機能分類(ICF)に触れて簡潔に解説するとともに、各機能間の発達関連性の整理・統合のため、見返しに各論1〜9章における各機能の発達と障害の関係一覧表および発達評価の説明を加えた。
3。“生殖を終えた後の「後生殖期」が際立って長い”生物として、個体の主体化・自立を“より高い社会性”にまで発達させてきたヒトの、生涯発達の中での「生」と「死」についても触れた内容とした。
 学生が将来の治療やリハビリテーションにおいて対象とする、多岐にわたる心身機能やその成長の遅れや疾病(異常)、および老化に起因する障害像について、医学をベースとしてできるだけシンプルに理解しやすいものにしたつもりであるが、十分でないところもあるかと思う。講義される先生方や学生諸君には是非とも忌憚のないご意見・ご批評をいただければと切にお願いするところである。

2014年5月
編集者を代表して 植松光俊

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