Essentialタンパク質科学
監訳 | : 津本浩平/植田正/前仲勝実 |
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ISBN | : 978-4-524-26864-1 |
発行年月 | : 2016年2月 |
判型 | : A4変型 |
ページ数 | : 468 |
在庫
定価7,480円(本体6,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
生命現象・生体内におけるタンパク質の機能を、様々な研究領域に関連するよう包括的に解説された新しいタンパク質科学のテキスト。単著により解説は一貫性と読みやすさが追求され、図版が豊富でわかりやすい。本書日本語版は、単著の表現を忠実に再現しつつ読者の理解に配慮して翻訳されている。医学、薬学、生命科学分野での講義テキストとして、また研究に携わる学生から研究者の参考書としてお薦めの一冊。
第1章 タンパク質の構造と進化
1.1 アミノ酸とペプチドの構造
1.1.1 タンパク質はアミノ酸により構成される
1.1.2 アミノ酸はいくつかの許容されたコンフォメーションしかとり得ない
1.1.3 もっとも存在確率の高いコンフォメーションはβシート領域にある
1.1.4 ほかの主要なコンフォメーションはαへリックスと“ランダムコイル”である
1.1.5 pKaは側鎖のプロトン化の性質を表すパラメータである
1.2 タンパク質を構築しているさまざまな相互作用
1.2.1 静電相互作用は強い結合になり得る
1.2.2 静電双極子によって形成される水素結合
1.2.3 ファンデルワールス力は一つひとつは小さいが,集まると強力になる
1.2.4 疎水性相互作用は性質上エントロピーに寄与する
1.2.5 水素結合は独特の方向性を示す相互作用である
1.2.6 協同性は巨大システムの特徴である
1.2.7 βヘアピン構造の形成は協同的である
1.2.8 協同的な水素結合ネットワーク
1.2.9 タンパク質の機能にとって必要な水和構造
1.2.10 相互に補償し合うエントロピーとエンタルピー
1.3 タンパク質の構造
1.3.1 タンパク質は一次構造,二次構造,三次構造,四次構造からなる
1.3.2 二次構造は構造モチーフをとってパッキングされる
1.3.3 膜タンパク質は球状タンパク質とは異なる
1.3.4 タンパク質の構造は(多かれ少なかれ)自身の配列によって決定される
1.3.5 準安定構造を形成するタンパク質もある
1.3.6 構造は配列よりも保存されている
1.3.7 構造類似性は機能解明に使われる
1.4 タンパク質の進化
1.4.1 タンパク質の目的は何か
1.4.2 進化はよろず修繕屋である
1.4.3 多くのタンパク質は遺伝子重複によって起こった
1.4.4 あたらしいタンパク質はほとんどが重複した遺伝子の改良によって生み出される
1.4.5 進化的な修繕は指紋を残している
1.4.6 あたらしいタンパク質は遺伝子を分け合うことでつくられる
1.4.7 進化においてたいていの化学反応は保存され,結合は変えられる
1.4.8 収束進化と分岐進化を区別するのは難しい
1.4.9 あたらしい機能はプロミスカスあるいはムーンライティング前駆体から発達した可能性が高い
1.4.10 逆行性進化は一般的ではない
1.4.11 タンパク質はRNA ワールド内で始まった
1.4.12 進化的革新のほとんどは非常に早い段階で起こった
1.5 章のまとめ
1.6 推薦図書
1.7 Web サイト
1.8 問題
1.9 計算問題
1.10 参考文献
第2章 タンパク質のドメイン
2.1 ドメイン:タンパク質構造の基本単位
2.1.1 ドメインはさまざまな方法で定義される
2.1.2 ドメインは固有の機能と関連する
2.1.3 ドメインはタンパク質を構築するための基本構成要素である
2.1.4 モジュールは交換可能なドメインである
2.2 タンパク質の進化におけるドメインの重要な役割
2.2.1 マルチドメインタンパク質はエキソンシャッフリングによりつくられる
2.2.2 マルチドメインタンパク質は別の遺伝的機構によってもつくられる
2.2.3 3次元ドメインスワッピングにより進化は加速する
2.2.4 3次元ドメインスワッピングは現在もなお起こる
2.2.5 あらたに付加されたドメインを介した相互作用により結合特異性が向上する
2.2.6 分子内相互作用は強く,その実効濃度は高い
2.2.7 分子内相互作用により水素結合が協調的に形成される
2.2.8 分子内のドメイン−ペプチド間の相互作用は自己抑制を促進する
2.2.9 分子内のドメイン−ペプチド間の相互作用は分子進化を促進する
2.2.10 足場タンパク質により結合特異性が高まる
2.2.11 エントロピー的な不利が少ないため分子内相互作用は強い
2.3 マルチドメイン構造の利点の推察
2.3.1 マルチドメイン構造により,あたらしい機能が容易に創出される
2.3.2 マルチドメイン構造により調節や制御が容易に導入できる
2.3.3 マルチドメイン構造が有用な酵素を生み出す
2.3.4 マルチドメイン構造はタンパク質のフォールディングや会合を単純にし,タンパク質を安定化する
2.4 道具としてのタンパク質の利用
2.4.1 独立して動く部分がある道具
2.4.2 サイズは異なるが形状の同じ部品を使う道具
2.4.3 取り替え可能な部品をもつ道具
2.4.4 対称性をもつ道具
2.4.5 特有の機能をもつ道具
2.5 章のまとめ
2.6 推薦図書
2.7 Web サイト
2.8 問題
2.9 計算問題
2.10 参考文献
第3章 オリゴマー
3.1 なぜタンパク質はオリゴマー化するのか
3.1.1 オリゴマー化は活性部位を遮蔽および制御している
3.1.2 オリゴマー化は酵素機能を改善する
3.1.3 オリゴマー化は対称的な二量体を形成する
3.1.4 遺伝情報伝達のエラー,効率およびリンカーは説得力のある理由ではない
3.2 アロステリー
3.2.1 多くの酵素はアロステリックではない
3.2.2 ヘモグロビンはアロステリーの典型例である
3.2.3 ヘモグロビンの酸素への親和性はほかのエフェクター分子によって微調整される
3.2.4 アロステリーには2つの主なモデルがある
3.2.5 グリコーゲンホスホリラーゼはアロステリーのもう1つのよい例である
3.3 二量体によるDNAへの協同的な結合
3.3.1 協同性は熱力学を使うことで理解される
3.3.2 配列特異的なDNA結合の問題
3.3.3 trpリプレッサーはヒンジを曲げることでDNAを認識している
3.3.4 CAPは二量体界面を回転させてDNAを認識する
3.3.5 対称的なロイシンジッパーによるDNA認識
3.3.6 ヘテロ二量体のロイシンジッパーによるDNA認識
3.3.7 MaxとMycはほかのパートナーとのヘテロ二量体ジッパーをつくる
3.3.8 タンデムな二量体によるDNA認識
3.4 アイソザイム
3.5 章のまとめ
3.6 推薦図書
3.7 Web サイト
3.8 問題
3.9 計算問題
3.10 参考文献
第4章 in vivoにおけるタンパク質間相互作用
4.1 分子同士の衝突頻度に及ぼす要素
4.1.1 小さなスケールでは,無作為な過程がより重要な影響力をもつ
4.1.2 分子の拡散はランダムウォークによって起こる
4.1.3 衝突頻度は幾何学的な要素によって制限されている
4.1.4 分子同士の衝突頻度は静電的な引力によって増加する
4.1.5 衝突頻度はまた,静電性舵取りによっても増加する
4.1.6 タンパク質複合体形成は過渡的複合体を通して形成される
4.1.7 静電相互作用による反発力も,相互作用を制限するために重要である
4.1.8 高分子が密集することでタンパク質同士の会合は増えるが,その速度は低下する
4.1.9 巨大タンパク質の拡散は遅くなる
4.2 どのようにしてタンパク質はパートナーを迅速に見つけることができるのか
4.2.1 逐次前進性は高分子基質からの解離速度を低下させる
4.2.2 2次元的探索はより速い
4.2.3 1次元的探索により探索はわずかに迅速化する
4.2.4 タンパク質の標的認識には,より細かい区画分けがされていた方が都合がよい
4.2.5 粘着性のアームは近距離での結合標的の探索に便利である
4.2.6 プロリンリッチ配列が,よい粘着性アームを形づくる
4.2.7 粘着性アームの相互作用は結合・解離速度が速い
4.2.8 粘着性アームの反応が速い理由は,そのジッパーを閉めるような反応形式にある
4.3 天然変性タンパク質
4.3.1 天然変性タンパク質は広く利用されている
4.3.2 天然変性タンパク質は,速い結合速度での特異的結合に役立つ
4.3.3 天然変性タンパク質は,強い結合を伴わない特異的結合を与える
4.3.4 天然変性タンパク質には,ほかにも利点があるかもしれない
4.4 タンパク質の翻訳後修飾
4.4.1 共有結合性の修飾がタンパク質の機能を最適化する
4.4.2 リン酸化
4.4.3 メチル化とアセチル化
4.4.4 糖鎖修飾
4.5 タンパク質のフォールディングとミスフォールディング
4.5.1 タンパク質のフォールディングは多くの場合速く,そして熱力学的に制御されている
4.5.2 すべてのタンパク質,とくに折りたたまれていないタンパク質の寿命は限られている
4.5.3 アミロイドはタンパク質のミスフォールディングの結果である
4.6 章のまとめ
4.7 推薦図書
4.8 Webサイト
4.9 問題
4.10 計算問題
4.11 参考文献
第5章 どのようにして酵素は働くのか
5.1 酵素は遷移状態のエネルギーを下げる
5.1.1 遷移状態とは何か?
5.1.2 酵素は遷移状態においてエンタルピーとエントロピー障壁を下げる
5.1.3 触媒抗体は強力なエントロピーの寄与を論証する
5.2 化学的触媒作用
5.2.1 化学反応は電子の動きと関係する
5.2.2 よい脱離基が重要である
5.2.3 一般酸塩基触媒は広範に分布する
5.2.4 求電子触媒も一般的である
5.2.5 サーモリシンはこれらのすべての機構を利用している
5.2.6 求核触媒は機構を変える
5.2.7 酵素はしばしば補因子や補酵素を用いる
5.2.8 酵素は活性部位で水をコントロールする
5.3 酵素は基質の形よりも遷移状態の形を見分ける
5.3.1 鍵−鍵穴モデルと誘導適合モデル
5.3.2 酵素はその基質に対して強く結合すべきでない
5.3.3 結合と触媒速度は密接に相互関係がある
5.3.4 遷移状態類似体はよい酵素阻害剤をつくる
5.4 トリオースリン酸イソメラーゼ
5.4.1 トリオースリン酸イソメラーゼは多くの触媒機構を利用している
5.4.2 トリオースリン酸イソメラーゼは進化的に完全な酵素である
5.5 章のまとめ
5.6 推薦図書
5.7 問題
5.8 計算問題
5.9 参考文献
第6章 タンパク質の柔軟性と動力学
6.1 運動の時間域と距離域
6.1.1 すばやい運動は局所的であり,互いに相関がない
6.1.2 局所的な運動が全体の不規則なコンフォメーションを生み出す
6.1.3 大きなスケールの運動はより相関があり,それゆえに遅い
6.1.4 すばやい運動と比較して,遅い運動はよりタンパク質に特異的である
6.1.5 相関する運動は,複数の水素結合を介して起こる
6.2 立体配座選択
6.2.1 タンパク質はコンフォメーション地形に存在する
6.2.2 立体配座選択は誘導適合よりもよいモデルである
6.2.3 立体配位選択と誘導適合は連続体の両端である
6.2.4 酵素の少数が活性型コンフォメーションを示す
6.3 機能的な運動
6.3.1 酵素は,反応座標に沿った運動性を触媒しない
6.3.2 部分運動は結合と触媒に必須である
6.3.3 埋もれた水は内部の運動性にとって重要である
6.3.4 内部動力学はアロステリック効果を生む
6.4 章のまとめ
6.5 推薦図書
6.6 Web サイト
6.7 問題
6.8 計算問題
6.9 参考文献
第7章 タンパク質はどのように移動するか
7.1 タンパク質はどう働くのか
7.1.1 細胞内移動の多くは自由拡散により起こる
7.1.2 一方向への移動には機械的な歯止めが必要である
7.1.3 RasGTPアーゼはスイッチの原型である
7.2 分子モーター,ポンプ,トランスポーター
7.2.1 ミオシンは筋肉のリニアモーターである
7.2.2 ミオシンはアクチン結合と頭部の回転を連携させて働く
7.2.3 ダイニンは微小管のマイナス端方向へ移動する
7.2.4 キネシンは微小管のプラス端方向へ移動する
7.2.5 ATP合成酵素は回転モーターである
7.2.6 ATP合成酵素は回転モーターとプロトンポンプを連携させている
7.2.7 細菌の鞭毛はATP合成と関連している
7.2.8 多くのポンプやトランスポーターは対称的な開閉器に基盤がある
7.2.9 光駆動型プロトンポンプであるロドプシンは本の膜貫通ヘリックスをもつGタンパク質共役型受容体である
7.3 アクチンやチューブリン線維に沿った動き
7.3.1 アクチンやチューブリン線維は継続的に重合と脱重合を繰り返している
7.3.2 細胞は線維構造の伸長をしっかりと制御する
7.3.3 細胞はどのように移動するのか
7.3.4 小胞は微小管に沿って運ばれる
7.3.5 大きな細胞はより方向性の高い細胞内輸送を必要とする
7.3.6 有糸分裂には主要な細胞内運動を必要とする
7.4 核輸送
7.5 膜を介した輸送と膜への輸送
7.5.1 膜への輸送はシグナル配列を必要とする
7.5.2 小胞体膜のチャネルはSec61である
7.5.3 ミトコンドリアや葉緑体への輸送も同様である
7.5.4 輸送にはエネルギーが必要である
7.6 章のまとめ
7.7 推薦図書
7.8 Webサイト
7.9 問題
7.10 計算問題
7.11 参考文献
第8章 タンパク質のシグナル伝達
8.1 問題点とその解決方法の概要
8.1.1 シグナル経路はいくつかの問題を克服しなくてはならない
8.1.2 細胞膜の障壁は脂溶性シグナルによって越えることができる
8.1.3 細胞膜の障壁は受容体の二量体化によって乗り越えることができる
8.1.4 膜障壁はヘリックスの回転で乗り越えることができる
8.1.5 膜障壁はチャネルを開くことで通過できる
8.1.6 シグナル経路は特殊化されたタンパク質モジュールを利用している
8.1.7 シグナル経路は特異性を得るためにモジュールを利用する
8.1.8 シグナル経路は特異性を得るために共局在を利用する
8.2 二量体化受容体キナーゼシステム
8.2.1 Jak/Statシステムは単純な経路である
8.2.2 受容体の二量体化はさまざまな形をとる
8.2.3 Rasは受容体チロシンキナーゼ(RTK)システムの直接のターゲットである
8.2.4 RasはキナーゼRafを活性化する
8.2.5 Rafより下流の経路はキナーゼカスケードである
8.2.6 共局在によりさらなる制御が可能となる
8.2.7 自己阻害によってさらなる制御が可能となる
8.2.8 細菌の二成分シグナル伝達系はヒスチジンキナーゼを有する
8.2.9 進化予想によって統一的な説明が可能となる
8.2.10 シグナルのスイッチをoffにする
8.3 Gタンパク質共役型受容体
8.4 イオンチャネル
8.5 潜在性遺伝子制御タンパク質の分解を介したシグナル伝達
8.5.1 Notch受容体は遺伝子の転写を直接活性化する
8.5.2 ヘッジホッグは細胞内シグナルのタンパク質分解を抑制する
8.6 章のまとめ
8.7 推薦図書
8.8 Webサイト
8.9 問題
8.10 計算問題
8.11 参考文献
第9章 タンパク質複合体:分子機械
9.1 細胞のインタラクトーム
9.1.1 インタラクトームは類似した構造をもつ
9.1.2 インタラクトームの全体像はいまだ明らかではない
9.1.3 相互作用複合体は決まった構造をもつが,その構造は過渡的なものである
9.1.4 インタラクトームは分子機械を構成する
9.2 エキソソーム
9.3 RNAポリメラーゼII複合体
9.3.1 PolIIは順番に組み上がる
9.3.2 転写開始前複合体の電子顕微鏡による立体構造
9.3.3 C末端ドメインは伸長反応において鍵となる部分である
9.4 メタボロンの概念
9.4.1 メタボロンを巡る論争
9.4.2 共局在はメタボロンの証拠となる
9.4.3 チャネリングはメタボロンの証拠となる
9.4.4 ハイスループットによる解析はメタボロンに対して何の証拠も提供しない
9.4.5 糖分解のメタボロンには非常に有力な証拠がある
9.5 章のまとめ
9.6 推薦図書
9.7 Webサイト
9.8 問題
9.9 計算問題
9.10 参考文献
第10章 多酵素複合体(MEC)
10.1 基質チャネリング
10.1.1 トリプトファン合成酵素は基質チャネリングのもっともよい例である
10.1.2 ほかの基質チャネリングの例でも,毒性のある中間体を経由するものが多い
10.2 回路反応
10.2.1 回路反応は協同性を必要とする
10.2.2 PDHは巨大で複雑な構造を有する
10.2.3 PDHでは活性部位でのカップリングがみられる
10.2.4 脂肪酸合成酵素は回路反応の中の複数の反応に関わっている
10.2.5 FASの構造は反応を繰り返し起こすための大きな空洞をもつ
10.2.6 β酸化は脂肪酸合成の逆反応のようなものである
10.3 ほぼMECとみなせる酵素複合体
10.3.1 タイプIポリケタイド合成酵素は化学的にはFASと似ているがMECではない
10.3.2 いくつかのポリケタイド合成酵素は,まっとうなMECである
10.3.3 非リボソームペプチド生合成はポリケタイド合成酵素と似ている
10.3.4 芳香族アミノ酸生合成はMECとしては未熟である
10.3.5 膜内在性タンパク質はMECのようでない
10.4 多酵素複合体(MEC)の考えられる利点
10.4.1 基質の代謝回転
10.4.2 基質チャネル
10.4.3 反応速度の上昇
10.4.4 より迅速な応答時間
10.4.5 活性部位のカップリング
10.4.6 溶媒容量の増加
10.4.7 結論
10.5 章のまとめ
10.6 推薦図書
10.7 Webサイト
10.8 問題
10.9 計算問題
10.10 参考文献
第11章 タンパク質研究のための実験手法
11.1 発現と精製
11.2 分光学的手法
11.2.1 分光学的手法序論
11.2.2 紫外/可視吸光度
11.2.3 円二色性
11.2.4 蛍光
11.2.5 1分子解析法
11.2.6 流体力学的測定
11.3 NMR
11.3.1 核スピンと磁化
11.3.2 化学シフト
11.3.3 双極子カップリング
11.3.4 Jカップリング
11.3.5 2次元,3次元,および4次元スペクトル
11.3.6 実例:ヘテロ核単一量子コヒーレンス実験
11.3.7 タンパク質NMR スペクトルの帰属
11.3.8 化学シフトマッピング
11.3.9 緩和
11.3.10 NMRデータからのタンパク質の構造計算
11.4 回折
11.4.1 顕微鏡法とその回折限界
11.4.2 X線回折格子
11.4.3 X線回折における位相問題
11.4.4 構造,電子密度,分解能
11.4.5 質の目安:R因子とB因子
11.4.6 タンパク質結晶中での溶媒やほかの分子
11.4.7 タンパク質X線回折の実際
11.4.8 膜タンパク質の構造
11.4.9 繊維回折
11.4.10 中性子回折
11.4.11 電子線回折
11.5 顕微鏡
11.5.1 クライオ電子顕微鏡
11.5.2 原子間力顕微鏡法(AFM)
11.6 相互作用解析に用いられる手法
11.6.1 表面プラズモン共鳴法(SPR)
11.6.2 等温滴定カロリメトリー(ITC)
11.6.3 スキャッチャードプロット:実例
11.7 質量分析法
11.8 ハイスループット法
11.8.1 プロテオーム解析
11.8.2 タンパク質間相互作用−イーストツーハイブリッドスクリーニング法
11.8.3 タンパク質間相互作用−TAP法
11.9 コンピューター活用法
11.9.1 バイオインフォマティクス
11.9.2 動力学的シミュレーション
11.9.3 システム生物学
11.10 章のまとめ
11.11 推薦図書
11.12 問題
11.13 計算問題
11.14 参考文献
用語解説
索引
監訳者序文
生命現象を分子で記述する分子生物学、そして生命現象を原子レベルで記述する構造生物学は日進月歩の勢いで、私たちを驚かせてきています。つい50年前には、ごくわずかな数のタンパク質の立体構造が明らかになっていただけですが、先哲はこのような限られた情報から、モデルとなるタンパク質のふるまいを精査することで、有益な描像を提案してきました。そして、今、組換えDNA技術、構造解析などの技術革新が、タンパク質研究を取り巻く環境を高度に進化させ、その成果が社会的に大きな影響を及ぼす時代になってきています。
原著『HOW PROTEINS WORK』は、一見すると、どのようにタンパク質が機能するかについて、主に生物学的にまとめているように見えますが、実際は、官能基レベルの化学的記述から、物理学的考察、さらにはネットワーク系の生物学的記述まできわめて広範囲に及んでいます。また、本書に「Essential」という言葉を書名に入れさせて頂いたように、タンパク質の本質を理解する上で必須の観点が網羅されています。そのような意味で、本書は、タンパク質科学の教科書として、タンパク質の機能について重要かつ不可欠な視点がまとめられているだけでなく、最先端研究の現状をもっとも簡潔にかつ適切にまとめたものと言えるでしょう。
原著者の序文からも、タンパク質は生命システム・進化システムの機能的部位を担っている、という考えのもとに本書はつくられています。化学、物理学、生物学などさまざまなバックグラウンドを持つ学生、研究者を想定して、どこからでも読むことができ、かつタンパク質研究の魅力に取りつかれる内容となっています。さらに、医学、薬学に関連するタンパク質分子についても多く取り上げられています。これらは、特に近年医薬品開発の中核となってきていて興隆著しいStructure-Based Drug Design(SBDD)にも重要な知見を多く含んでいます。医学生、薬学生、そして広く医薬関連研究者にも本書が有益であることを強調しておきたいと思います。
本書の翻訳にあたっては、それぞれの分野の第一線で研究を牽引されている研究者にお願いして、正確でかつ分かりやすく訳出頂きました。原著者の独特な文章表現もあり、日本語に訳しづらい箇所も多く、大変苦労したところもありました。訳語の統一をはじめ、最終的な翻訳本の仕上がりについては、監訳者に責任があり、読者諸賢からの御叱正を待ちたいと思います。
本書がすべてのタンパク質研究者に、タンパク質研究の魅力と著者の熱意を正しく伝えること、またこれからタンパク質研究に関わる若い皆様に大いなる啓発を与える書となることを祈念しております。
2015年 初冬の本郷にて
監訳者、訳者を代表して
東京大学大学院工学系研究科、医科学研究所 教授
津本浩平