フレーズで納得!CGMパターンで解決!糖尿病治療テクニック
著 | : 西村理明 |
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ISBN | : 978-4-524-26834-4 |
発行年月 | : 2015年5月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 166 |
在庫
定価3,300円(本体3,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
CGM(持続血糖モニター)の第一人者が、研究成果から導き出した血糖変動をパターン化。薬物療法による治療後のCGMパターンを波形の特徴を覚えやすいフレーズとクイズで解説。“見て・読んで・声に出して”治療薬別のCGMパターンを覚えて患者さんの血糖コントロールを改善するテクニックが自然と身につく。糖尿病診療に関わるすべてのスタッフに役立つ、これまでになかった一冊。
総論
01 耐糖能正常者のCGMパターン
02 2型糖尿病のCGMパターン
03 食事療法・運動療法の効果
各論
フレーズで納得!治療薬別CGMパターン
A 内服薬のCGMパターン
01 スルホニル尿素(SU)薬のCGMパターン
02 スルホニル尿素(SU)薬(グリクラジド)のCGMパターン
03 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)のCGMパターン
04 α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)のCGMパターン
05 ビグアナイド薬のCGMパターン
06 チアゾリジン薬のCGMパターン
07 DPP-4阻害薬のCGMパターン
08 SGLT2阻害薬のCGMパターン
B インスリンのCGMパターン
09 BOT(夕〜就寝前打ち:グラルギン・デテミル)のCGMパターン
10 BOT(朝打ち:グラルギン・デテミル)のCGMパターン
11 BOT(デグルデク)のCGMパターン
12 混合型インスリン2回打ちのCGMパターン
13 混合型インスリン3回打ちのCGMパターン
14 強化インスリン療法(4回打ち:グラルギン・デテミル)のCGMパターン
15 強化インスリン療法(4回打ち:デグルデク)のCGMパターン
C GLP-1受容体作動薬のCGMパターン
16 GLP-1受容体作動薬のCGMパターン
付録
1 CGMの基本〜これだけ押さえよう!
2 患者説明用のCGMパターン
索引
序文
先日、ある糖尿病関連の学会の会場で、隣の女性2人の会話を聞いて、時代は変わったと実感しました。その内容は、「この症例のCGM (continuous glucose monitoring)を見てみたいよね」「そうだね、血糖変動がどうなっているのか知りたいよね」というものでした。
米国で、1999年から発売されてきたCGM機器ですが、わが国ではなかなか承認されず、臨床上どうしても必要だと感じて、われわれが半年がかりで個人輸入によりCGM機器を手にしたのは2006年のことでした。その頃は、誰に話しても「CGMって何?」という反応が100%近く返ってきたことを今でも鮮明に覚えています。
その後、多くの方々の働きかけやサポートにより、2009年10月にようやくわが国でもCGM機器が承認され、2010年4月に診療報酬点数が決定しました。また、使い勝手が向上した機器が登場したことにより、近年、CGMは日本全国に急速に普及し、学会発表や、臨床研究で使用される場面を多々目にするようになりました。
一方、CGMを使用されている方々がさまざまな点で御苦労されていることも事実であり,相談を受けることも少なくありませんでした。その中でもっとも多いのは、CGMの波形をどう読みこなせばよいのかわからないというものです。
ちょうどその頃、南江堂の大野さん、堀内さんとお会いする機会があり、全く新しいコンセプト、視点からCGMについての本を執筆しないかというお話を頂きました。その後、面会を何回も繰り返し、「CGMで観察される、治療薬ごとの典型的なCGM パターンをイラスト化し、そのパターンの細かな点についてコメントする」という本書のコンセプトが決定しました。おそらく、このプロセスに1年以上、さらに執筆に1年以上かかったと思います。また、波形のトレースや、波形を連想させるフレーズの熟考、イラストの制作、それぞれに多くの方々の力が結集してこの本の基本骨格が完成しました。最終的には、CGMの波形を読みこなしながら、個々の患者さんに適した薬物療法を選択する際の参考書という位置づけでまとめました。
本書が、糖尿病診療に携わりCGMに興味のある方々に、少しでもお役に立てば幸いです。
2015年4月
西村理明
元祖CGM、ドクターCGMの西村氏が、待望のCGM本の第3弾を出版した。早速、期待を胸に手にとって読んでみた。まず、表紙がカラフルできれいでビジュアル的、かつサブタイトルの「見て読んで声に出して覚える!」でさらに期待が膨らむ。
導入の総論部分で、CGM初心者でも理解できるようにCGMでみえる1日血糖変動の基本的なパターンが提示される。CGMにより1日の血糖の点と点が結ばれ、線(パターン)として捉えることが可能になることを実感する。今までみえなかった夜間から早朝にかけての血糖変動を目の当たりにできる。著者の西村氏は、糖尿病治療分野の第一人者であり、氏が初めてCGMを日本に導入した際の熱いストーリーは有名な逸話になっている。すでに、『CGM〜持続血糖モニターが切り開く世界〜』の初版、改訂版は、糖尿病専門医向けのコンセプトで出版され、大好評にある。
各論に入ると、西村イズム、西村ワールド全開となる。現在、糖尿病治療薬は多種多様となり、各薬剤の特性を十分に理解しないとその選択に迷うことになる。とくに、糖尿病専門医ではない一般医にとっては大変な時代になった。その疑問に答えるべく、すべてのクラスの糖尿病治療薬に対して、CGMを用いて患者の一日血糖のパターンが示されており、各糖尿病治療薬の特性が一目瞭然でわかる。インクレチン関連薬、新規のインスリンに加え、最新薬であるSGLT2阻害薬のCGMパターンも含まれる。CGMの第一人者である西村氏であるからこその数多くの症例経験に裏打ちされた内容である。さらに、各薬剤のCGMパターンに薬剤の作用機序を交え、丁寧に説明している。患者の血糖改善のための「次の一手」も盛り込まれており、読者の知りたいところまで踏み込んでいて、痒いところに手が届く内容となっている。
また、各論はクイズ形式となっていて、飽きさせないように工夫されている。各薬剤の血糖低下作用の特性、1日血糖パターンについて、ウィットに富むキャッチコピーがあり、サブタイトルの意味するところがわかる。小生の駄洒落(おやじギャク?)とは違い、洗練されたリズミカルなフレーズで、相当考えたのではないかと想像する。さらに、各薬剤の大規模臨床試験の情報も網羅されており、「1粒で二度美味しい」を実感する。
西村流全開の本に仕上がっており、本当にわかりやすく、明日の糖尿病診療に直結する内容である。読者としては、糖尿病専門医はもとより、一般内科、あるいは内科以外の医師、また医師ではないメディカルスタッフも対象になる。万人が、大変楽しく読めて、ためになる本である。CGMの基礎から応用まで理解できる「CGMの参考書」に仕上がっていて、「よくわかるCGM」がこの本の率直な感想である。さらにパワーアップしたCGM本、ぜひ一読あれ。
臨床雑誌内科117巻1号(2016年1月号)より転載
評者●獨協医科大学内科学(内分泌代謝)教授 麻生好正