はじめての根拠がわかる看護実践禁忌ナビ
編集 | : 富野康日己/照沼則子 |
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ISBN | : 978-4-524-26803-0 |
発行年月 | : 2013年4月 |
判型 | : B6 |
ページ数 | : 190 |
在庫
定価2,090円(本体1,900円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
「ナースのための根拠がわかる医療禁忌セルフチェック」を大幅リニューアルした改訂新版。一般病棟で最低限押さえておきたい禁忌項目を、ナースが行うケア・処置別に構成。各禁忌について、「なぜ禁忌?」「ではどうする?」を丁寧に解説。一般病棟に配属された新人ナースに必携の一冊。
1章 看護の基本
1 看護業務は、適時・適切な報告を怠ってはならない.
2 業務実施後のサイン(実施入力)を後回しにしてはならない.
3 看護記録は、推測や憶測を記載したり、一般に理解されにくい専門用語や略語・造語で記入してはならない.
4 「鈴木さん」と呼んで患者さんが返事をしても、その患者さんが鈴木太郎さんだと思い込んではならない.
5 緊急時の口頭指示では、復唱と確認を怠ってはならない.
6 患者さんの治療内容や個人情報がわかることを、むやみに口に出したり他言したりしてはならない.
7 携帯電話を院内で使用してはならない.
8 看護師は、常に患者さんにとっての「最善の選択」を忘れてはならない.
9 看護師は、身だしなみや接遇をおろそかにしてはならない.
10 日常の業務のなかで「おや?」「何かおかしい?」と感じたことを、そのままにしてはならない.
11 医薬品・医療機器を使用する場合は、専門知識を得ずに使用してはならない.
12 病院のなかで盗難事件が起きるはずがないと、思い込んではならない.
13 患者さんが看護師の思ったとおりに説明を理解したり行動したりすると、思い込んではならない.
14 患者さんへのバッドニュースなどの告知は、医師だけの仕事・責任と思ってはならない.
2章 投薬管理
15 医師の処方があったからといって、てんかんの既往を問診せずに薬剤を投与してはならない.
16 医師の処方があったからといって、食物アレルギーの既往を問診せずに薬剤を投与してはならない.
17 医師の処方があったからといって、抗菌薬へのアレルギーの既往を問診せずに薬剤を投与してはならない.
18 医師の処方があったからといって、月経の遅れなど妊娠が疑われる患者さんに安易に投薬してはならない.
19 医師の処方があったからといって、授乳中の患者さんに安易に投薬してはならない.
20 医師からの注射・投薬の指示であっても、用量や単位に疑問をもったまま投与してはならない.
21 薬剤を準備するときは、1つの名称が1種類の薬剤しかないと、思い込んではならない.
22 薬剤を準備するときは、名称が似た薬剤との取り違えを起こしてはならない.
23 薬剤を準備するときは、外観が似た薬剤との取り違えを起こしてはならない.
24 毒薬、麻薬、向精神薬は、ほかの薬剤と一緒に保管・管理してはならない.
25 麻薬の空アンプルや残薬は、廃棄してはならない.
26 抗がん薬の調製や点滴ボトルへの注入は、防護などの曝露対策をせずに行ってはならない.
27 抗がん薬を末梢点滴ルートで投与する場合は、十分な観察を怠ってはならない.
28 カルシウム製剤と炭酸水素ナトリウムは、静脈内投与の際に混合してはならない.
29 高カロリー輸液とともに、脂肪乳剤を同じルートで点滴してはならない.
30 調剤時、混濁する薬剤(フサン、タキソテールなど)は、指定の溶液以外で溶いてはならない.
31 点耳薬は、冷たいまま点耳してはならない.
32 点眼薬は、コンタクトレンズを装用した患者さんに点眼してはならない.
33 点眼薬を点眼する際は、容器の先端を患者さんの眼に接触させてはならない.
34 複数の点眼薬が同時に処方された場合には、間隔を空けずに続けて点眼してはならない.
35 カリウムの急速な、あるいは多量の静脈内投与を行ってはならない.
36 著しい低ナトリウム血症の補正は、急速に行ってはならない.
37 低温で保存していた濃厚赤血球を、急速に輸血してはならない.
38 低アルブミン血症の患者さんには、血漿分画製剤を急速に投与してはならない.
39 錠剤・粉剤を、安易に水以外の飲み物で服用させてはならない.
40 シクロスポリンで治療中の患者さんに、グレープフルーツジュースを摂取させてはならない.
41 患者さんの眠れないという訴えに対して、安易に睡眠薬を服用させてはならない.
42 鎮痛・解熱薬や降圧薬など処方された薬剤の効き目が弱いからといって、追加服用させてはならない.
43 ステロイドや降圧薬、抗てんかん薬などの薬剤は、飲み忘れがあってはならない.
3章 注射・点滴・ライン管理
44 輸液が滴下しない場合には、フラッシュをしてはならない.
45 点滴の滴下数を一度調節したからといって、同じ速度で滴下し続けていると思ってはならない.
46 ダブルバッグ製剤で2槽を混合させる必要がある場合は、隔壁を開通させないまま投与してはならない.
47 シリンジポンプを使用して薬剤を投与する際は、患者さんよりも高い位置に設置してはならない.
48 輸液ポンプを使用して薬剤を投与する際は、クレンメをポンプより上側に設置してはならない.
49 抗凝固薬を服用している患者さんに中心静脈カテーテルを挿入した後は、観察を怠ってはならない.
50 カテーテル穿刺や注射時の皮膚消毒は、過敏症の有無を確認せずに消毒薬を選択してはならない.
51 輸液や輸血をしている側では、採血をしてはならない.
52 乳がん術後の患側の上肢に、注射や採血などの処置を行ってはならない.
4章 検査
53 検査のため食事が中止になっても、内服薬も必ず中止になると考えてはならない.
54 尿検査の前日は、ビタミンCを摂取しすぎてはならない.
55 咽頭ぬぐい液の採取は、満腹時に行ってはならない.
56 消化管穿孔や大腸の通過障害が疑われる患者さんには、バリウムによる造影検査をしてはならない.
57 MRI検査では、磁気や電磁波の影響を受ける金属類を持ち込んではならない.
58 ペースメーカーを植え込んでいる患者さんには、MRI検査を行ってはならない.
59 糖尿病の指標のHbA1c値は、NGSP値と日本のJDS値を混同してはならない.
60 気管支鏡検査直後の患者さんに、飲水や食事を許可してはならない.
61 腰椎穿刺検査直後の患者さんに、坐位や歩行を許可してはならない.
62 肝・腎・皮膚などの生検後は、患者さんのバイタルサインの確認を怠ってはならない.
63 脊髄造影検査後に安静をとる患者さんの頭位は、低くしてはならない.
5章 救急・急変対応
64 救急外来で患者さんの処置を行う場合は、標準予防策を怠ってはならない.
65 異物や毒物の誤食に対して、胃洗浄を慣習的に選択してはならない.
66 外傷で脱落した歯は、捨ててはならない.
67 外傷による鼻出血に対して、安易に鼻腔にタンポンを挿入してはならない.
68 睡眠中の患者さんがいびきをかいている場合、「よく眠っている」と安易に判断してはならない.
69 気管異物や気管支異物が疑われる患者さんには、急激に体位変換をしたり背中を叩いたりしてはならない.
70 外傷による血管損傷では、出血の止血帯として細いひもや針金を使ってはならない.
71 レイノー現象を認める患者さんに、冷水で洗面や手洗いをさせてはならない.
72 ショックの患者さんには、安易に下肢挙上してはならない.
73 心停止の患者さんの第1発見者は、その場を離れてはならない.
74 救命処置の際、患者さんの頸部を動かしてはならない.
75 胸骨圧迫は、肋骨骨折や胸骨骨折を恐れて圧迫が浅くなってはならない.
76 電気的除細動は、意識のある患者さんに行ってはならない.
77 AED(自動体外式除細動器)は、患者さんが濡れた状態のまま実施してはならない.
6章 呼吸管理
78 人工呼吸器のアラームが鳴った際に、患者さんに異常がなさそうだからと安易にリセットしてはならない.
79 人工鼻は、粘稠な痰の喀出が多い患者さんに使用してはならない.
80 気管チューブの管理は、怠ってはならない.
81 気管チューブのカフ圧は、むやみに上げてはならない.
82 気管吸引は、2時間おきなどのルーチンで行ってはならない.
83 気管吸引で痰がたくさん引けるからといって、吸引時間を長くしてはならない.
84 気管吸引で痰が気管支の奥にあるからといって、吸引カテーテルを奥まで挿入してはならない.
85 痰が出ないからといって、安易にスクイージングを行ってはならない.
86 パルスオキシメータのSpO2を、PaO2と混同してはならない.
87 パルスオキシメータは、マニキュアを塗った指先に使用してはならない.
88 高濃度の酸素は、長時間投与してはならない.
89 過換気症候群を起こしている患者さんに、酸素吸入をしてはならない.
90 II型慢性呼吸不全の患者さんが呼吸不全の急性増悪を呈しても、高濃度の酸素投与を行ってはならない.
7章 感染管理
91 手指衛生をせずに、患者さんのケアをしてはならない.
92 患者さんの血液や体液に接触・曝露する可能性がある場合には、標準予防策を怠ってはならない.
93 手袋を着用せずに、鋭利物を取り扱ってはならない.
94 看護師は、ワクチン接種で予防可能な流行性の感染症の予防を怠ってはならない.
95 感染症の患者さんだからといって、むやみに隔離したり接触を避けたりしてはならない.
96 感染症の患者さんをケアする際には、病原微生物に対応した感染経路別予防策を怠ってはならない.
97 患者さんの療養環境の環境整備を、怠ってはならない.
8章 周術期ケア
98 術前の剃毛・除毛を安易に行ってはならない.また、剃毛はカミソリで行ってはならない.
99 術前に休薬が必要な薬剤を服用していないか、確認を怠ってはならない.
100 手術に入る際、患者さんの義歯は病棟で既にはずしてあると思い込んではならない.
101 全身麻酔の開始直前の患者さんに、飲食をさせてはならない.
102 局所麻酔であっても、気道確保や蘇生処置の準備なしに麻酔を開始してはならない.
103 術中・術後の患者さんに加温や冷却を行う際には、患者さんの状態や皮膚の観察を怠ってはならない.
104 全身麻酔直後の覚醒していない患者さんに対し、体位や姿勢の管理を怠ってはならない.
105 全身麻酔からの覚醒時にふるえがみられる間は、酸素投与を中止してはならない.
106 術後や長期臥床の患者さんに対し、深部静脈血栓症の予防を怠ってはならない.
107 術中・術後のカテコラミン投与には、細心の注意を怠ってはならない.
108 術後の患者さんに対し、術後せん妄への注意を怠ってはならない.
109 術後の回復過程にある患者さんを、長期間、ベッド上で安静にしてはならない.
9章 ドレーン・カテーテル管理
110 ドレーン挿入部のガーゼ汚染は、放置してはならない.
111 脳室・脳槽ドレナージでは、ドレーンをクランプせずに患者さんのケアや移動を行ってはならない.
112 脳室・脳槽ドレナージでは、ドレーンの液面の拍動・移動の消失を見逃してはならない.
113 脳室・脳槽ドレナージでは、ドレーンの閉塞が疑われてもミルキングを行ってはならない.
114 胸腔ドレナージでは、水封室のエアリークのサインや呼吸性移動の消失を見逃してはならない.
115 胃カテーテル挿入時の確認は、注入音(気泡音)だけで行ってはならない.
116 尿道カテーテルは、強引に挿入してはならない.
117 尿道カテーテルを留置した男性患者さんの陰茎の固定は、尿道を屈曲させてはならない.
118 尿道に留置しているカテーテルは、安易にクランプしてはならない.
119 尿道カテーテルは、漫然と留置してはならない.
10章 創傷・褥瘡管理
120 脆弱な皮膚の患者さんに包帯交換を行う場合は、皮膚に直接テープを貼ってはならない.
121 創感染の予防のために、創傷にむやみに消毒薬を使ってはならない.
122 創感染が疑われたら、創傷被覆材は原則使用してはならない.
123 褥瘡には、ガーゼを当てすぎてはならない.
124 褥瘡や創部へのラップ療法は、安易に勧めてはならない.
125 発赤を、軽度の褥瘡と思ってはならない.
126 下肢の創傷を、ただの褥瘡や外傷だと決めつけてはならない.
11章 排泄ケア
127 便秘の患者さんに、安易に下剤の服用を勧めてはならない.
128 重度の便秘の患者さんに、安易に浣腸してはならない.
129 浣腸液は、温めずに注入してはならない.
130 肝機能障害の患者さんの排便は、回数だけでなく、量の確認を怠ってはならない.
131 陰部洗浄は、頻繁に行ってはならない.
12章 摂食・栄養管理
132 経腸栄養剤は、静脈ルートから投与してはならない.
133 経腸栄養中の患者さんのベッドは、水平にしてはならない.
134 経鼻チューブでの薬剤・栄養剤投与後は、白湯によるフラッシュを忘れてはならない.
135 嚥下機能が低下している患者さんの口の中に、多量の食物を入れてはならない.
136 とろみをつければ誤嚥しないと、思い込んではならない.
137 食事中にむせないからといって、誤嚥していないと判断してはならない.
13章 口腔ケア
138 寝たきりの患者さんや人工呼吸管理中の患者さんの口腔内を、汚れたままにしておいてはならない.
139 絶食・経管栄養の患者さんには口腔ケアが不要と、思い込んではならない.
140 口腔内の消毒は、むやみに行ってはならない.
141 口腔ケアは、マスク、手袋、ゴーグルを着用せずに行ってはならない.
142 口腔ケアは、口腔内が乾燥した状態で行ってはならない.
143 舌苔は、無理やりこすり落とそうとしてはならない.
144 舌に白い付着物があるからといって、舌苔とみなしてはならない.
14章 高齢者ケア
145 高齢者を、安易に安静臥床させてはならない.
146 改訂長谷川式簡易知能評価スケールなどのスケール値のみで、認知症の有無を判断してはならない.
147 高齢者では、発熱がなくても感染症を否定してはならない.
148 高齢者への皮下注射は、成人と同じように穿刺してはならない.
149 傾眠状態や意識レベルが低下している患者さんに、義歯を装着させてはならない.
150 便秘の高齢者に、多量の浣腸液を用いて浣腸を行ってはならない.
151 高齢者の不眠に対して、安易に睡眠薬を使用してはならない.
15章 精神看護
152 抑制指示のある患者さんの抑制を解除したまま、ベッドサイドを離れてはならない.
153 せん妄の患者さんに対して、安易に身体拘束を行ってはならない.
154 認知症の患者さんに対して、安易に身体拘束を行ってはならない.
155 認知症の患者さんには、否定や叱責をしてはならない.
156 認知障害やせん妄などの精神障害のある患者さんのベッドサイドに、危険物を置いてはならない.
157 抑うつ傾向の患者さんを、励ましてはならない.
158 精神疾患をもつ患者さんの家族に対し、精神的なサポートを忘れてはならない.
159 自殺願望が強い患者さんは、外来からそのまま帰宅させてはならない.
160 悪性症候群の症状を見逃し、精神科系薬剤を安易に投与してはならない.
161 がん患者さんを、1人で悩ませてはならない.
162 終末期の患者さんには、否定や安易な肯定をしてはならない.
16章 移動介助
163 軽い転倒では骨折しないと、思い込んではならない.
164 関節拘縮の強い患者さんの移動介助を行う場合には、細心の注意を怠ってはならない.
165 起立性低血圧の患者さんには、臥位から坐位や立位へ急速な体位変換を行ってはならない.
チーム医療の目的は、医師だけでなく看護師や薬剤師、栄養士、臨床検査技師、臨床工学技士、作業療法士らが協力し、患者さんの治癒・社会復帰に向けた安心で安全な医療を行うことです。これらのメディカルスタッフにとっては、お互いの役割や立場を尊重し患者さん本位の医療を行うことが重要な役割となっています。とくに、患者さんや家族と接することがもっとも多い看護師の役割は大変大きくなっています。また、最近の高度先進医療にも対応しなければならず、看護師の担う分野はいっそう広く・深くなってきました。学ぶべき知識の増加や熟練した手技の向上、患者さんへの心温まる対応など、安心・安全な医療に向けたいっそうのレベルアップが求められます。したがって、看護師のなすべき仕事量・質は、ともに増え続けています。
さて、時の経つのは実に早いもので「根拠がわかるナースのための医療禁忌セルフチェック」が刊行されてから12年が経過しました。当時、私と櫻井美鈴氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院元看護部長)が編集者として上梓した意図は、看護領域で行ってはいけない禁忌についてまとめ、セルフチェックをすることで医療ミスにつながらない一助にしたいと考えたからでした。これまで、皆様からご好評をいただいていると知り、編集者として大変嬉しく思っています。
今回、前著の内容を参考に最近の実情に合わせた全面的な見直しを行いました。全般にわたりアップデートされた全面的な改訂といえる「はじめての根拠がわかる看護実践禁忌ナビ」を上梓いたしました。第1章「看護の基本」、第2章「投薬管理」、第3章「注射・点滴・ライン管理」、第4章「検査」、第5章「救急・急変対応」、第6章「呼吸管理」、第7章「感染管理」、第8章「周術期ケア」、第9章「ドレーン・カテーテル管理」、第10章「創傷・褥瘡管理」、第11章「排泄ケア」、第12章「摂食・栄養管理」、第13章「口腔ケア」、第14章「高齢者ケア」、第15章「精神看護」、第16章「移動介助」の16章に分け、計165の項目を選びました。各項目の「なぜ禁忌?」、「ではどうするの?」の質問に対し、順天堂大学医学部附属順天堂医院の各分野でご活躍中の看護師(専門看護師、認定看護師、課長)および順天堂大学医学部腎臓内科医師にお答えいただきました。各項目について看護師・医師の立場から簡潔にまとめ、ワンポイントアドバイスを付記しましたので大変読みやすい解説になっていると思います。
本書が、前著同様看護師、看護学生の皆さんの日常診療・学習にご活用いただければ幸いです。看護師のみならず、関連領域の医師、薬剤師、栄養士、臨床検査技師ならびに医薬情報提供者(MR)の皆さんにも活用していただければ、チーム医療の推進にいっそう役立つものと考えております。また、本書が診療のリスクマネジメント(危機管理)の一翼を担うことができれば、望外の喜びです。今後とも、読者の皆様のご意見・批判やご叱正をいただければ幸いです。
2013年初春
編集者を代表して
富野康日己