医療福祉をつなぐ関連職種連携
講義と実習にもとづく学習のすべて
編集 | : 北島政樹 |
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ISBN | : 978-4-524-26802-3 |
発行年月 | : 2013年4月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 220 |
在庫
定価3,520円(本体3,200円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
急性期から回復期-維持期にかけての様々な職種間連携、病院間連携、医療-福祉連携を、豊富な事例とともに学べる、チーム医療・関連職種連携を一から学ぶ学生必携のテキスト。関連職種連携が必要となった背景やその理論等を学ぶ講義編と、知識を実践に活かすPBL形式の演習・実習編という構成で、医療・福祉の現場で行われる様々な連携の基礎知識を身に付けることができる。
1章 関連職種連携の基礎
1 学習の展開
A IPE(Interprofessional Education)とは
B 学習の狙い
C 学習内容
1 講義
2 IPC/IPW演習
3 IPC/IPW実習
D 学習方法
E 学習を進めるにあたっての注意事項
1 専門用語の理解
2 学習内容の記録
3 評価
4 本書の活用方法
2 これからの医療福祉専門職像
A 専門職とは誰か
B 今の時代の医療福祉専門職
C 医療福祉専門職に求められるもの
3 関連職種連携教育の歴史的背景
A わが国における医療福祉環境の変化と関連職種連携教育
B 英国における関連職種連携教育への取り組み
C IPEおよびIPC/IPWの定義
D IPEおよびIPC/IPWの理念
4 WHOの考え方
5 ICF
A 関連職種連携のツールとしてのICF
B ICFの理念
1 ICFの成り立ち
2 ICFの特徴
3 ICFの補完:ICF-CYの公表
C 共通アセスメントツールICF
1 ICFの構成
2 ICFの使用方法
3 ICF概念モデル図の活用
4 その他、ICFの活用に関して
6 情報共有と評価
A 看護領域における情報収集・評価法
1 患者・利用者個人の情報収集・評価法
2 家族の情報収集・評価法
B リハビリテーション領域における情報収集・評価法
C バイオメカニクスの観点からの情報共有と評価
1 下肢装具使用者の歩行の評価
2 介護用ベッドの圧力分布評価
3 移乗動作時の腰部負担の評価
D 社会福祉領域における情報収集
1 必要な情報
2 情報源と情報収集の方法
E ケアマネジャーによる情報収集
1 ケアマネジャーと情報収集
2 共通する情報収集方法
3 ジェノグラムとは何か
4 エコマップとは何か
5 生活課題を把握する
7 情報共有ツールとしてのICT
A 医療情報システムの歴史
B 医療情報システムの特徴と関連職種連携
C 電子カルテとは
8 診療報酬と介護報酬
A 公的な保険
B 診療報酬
C 出来高払いと包括払い
D 介護保険
E 一部負担と高額療養費
9 患者・利用者と家族
A 家族とは何か
B 現代家族の特徴
C 家族に焦点をあわせる必要性
D 家族機能の査定(アセスメント)
10 地域との関わり
A 社会資源
1 社会資源にはフォーマル・サービスとインフォーマル・サポートがある
2 社会資源の内容
B 在宅生活を支えるフォーマル・サービス
1 環境整備
2 権利擁護の制度
C 生活支援サービスの担い手
1 ボランティアと社会福祉協議会
2 町内会や自治会などの地縁組織
3 民生委員
4 NPO
5 患者会などの当事者組織
11 連携に関わる制度とサービスの概要
A 「連携」の多義性
B 地域で暮らす
C 新しい地域医療計画
D 地域包括ケア
E 橋を架ける
12 21世紀の医学・医療のあり方
A 高度先進医療の進歩と医療の専門家・細分化
1 ゲノム医療
2 再生医療
3 生殖医療
4 遠隔医療
5 ロボット医療
B 医師主導型から患者本位の医療へ
C 医療倫理の確立
D チーム医療の確立
13 チーム医療の課題と可能性
A 日本における社会と医療の変化
B 日本におけるチーム医療の課題
C これからの専門職チームのあり方
14 関連職種連携とは
A 関連職種連携の利点
B リハビリテーションの総合的体系と関連職
C 医療サービスから福祉サービスへの移行
D 地域包括支援体制と関連職種連携
E 関連職種連携の種類
F 終わりに
2章 関連職種連携の実践例
事例1 脳血管障害のチーム医療・ケア
A 本事例の概要
B 急性期の連携・協働のあり方
C 回復期の連携・協働のあり方
D 維持期の連携・協働のあり方
事例2 がんのチーム医療・ケア
A 本事例の概要
B 治療(化学放射線療法)
C リハビリテーション
D 退院〜社会復帰
E 終末期
事例3 脳性麻痺児のチーム医療・ケア
A 本事例の概要
B 乳児期(出生〜1歳)
C 幼児期(1〜6歳)
D 学童期から青年期(6〜15歳)
E 青年期後期、成人期に向けて
3章 医療福祉を支える職種の理解
A 医師
B 歯科医師
C 薬剤師
D 看護師
E 保健師
F 助産師
G 理学療法士
H 作業療法士
I 言語聴覚士
J 視能訓練士
K 診療放射線技師
L 臨床検査技師
M 臨床工学技師
N 管理栄養士/栄養士
O 歯科衛生士
P 診療情報管理士
Q 医療情報技師
R 社会福祉士
S 臨床心理士
T 精神保健福祉士
U 介護福祉士
V 介護支援専門員
W ホームヘルパー
X 保育士
Y 学校教員
4章 演習・実習
1 IPC/IPW演習
A 問題解決型体験学習の方法について理解しよう!
B チーム内のコミュニケーション能力を高めよう!
C この演習で学ぶことを確認しよう!
D 自他職種のことを知ろう!
E 事例シナリオをもとにチーム内で検討する1事例を選定しよう!
F チーム内で決定した事例について、目標を設定しチーム内で共有しよう!
G 取り上げた課題の解決方法と専門職種間の連携のあり方についてディスカッションしよう!
H グループディスカッションの結果をまとめて、報告会で発表しよう!
I 発表後のリフレクションを通して「連携」の理解を深めよう!
2 IPC/IPW実習
A 事前演習
B 本実習
索引
近年、医療福祉分野に於いては医学、看護学、薬学あるいは理学療法学など、多様なニーズに応えられる高い専門性と、それぞれの知識や技術を共有するチーム医療の理念が求められている。その背景には従来、医療と福祉分野が独自にその専門性を主導し、協働の理念が欠除していたことがある。しかし社会の高齢化が進むに従って、疾患の多様化と医療の複雑化に対応すべく、個々の職種が専門的な知識と技術の修得はもちろんの事、これらをお互いに共有し、活用する事こそこのような時代背景の中で国民が今、要望している安心と安全の医療の提供が出来るのである。
これが現代の医療福祉のキーワードである「チーム医療およびケア」であり、この理念を学生のうちから修得させるべく、国際医療福祉大学に於いては平成11年度より学科横断チームで、在学中にこの理念を体験する先進カリキュラムによる関連職種連携教育(Interprofessional Education, IPE)を開始した。
本書は過去13年に亘るIPE教育の実績と成果を基盤として講義と実習に基づく学習のレベルアップを図るべく、全学的規模で企画、立案した。
まず、本書の企画のコンセプトとして保健、医療、福祉の横断的連携という視点に立って、急性期、回復期および維持期の緩やかな時間軸を設定して、医療の現場における実践例から一般の生活への移行を勘案して記述する事とした。多くの専門職種のコミュニケーション力を養うと同時に、他職種に対する理解を深め、関連職種連携のあり方を自ら考え、自ら行動・実践出来るよう構成されている。
第1章は職種の連携が求められるその背景と概念に関する知識を中心に簡潔に纏めている。医療福祉の理念から始まり、その歴史的背景、医療情報の共有とその評価法および医療福祉制度とシステムなど多岐に亘っている。
第2章は職種連携教育に於いて特にチーム医療やケアが必須な臨床の事例を取り上げ、医療福祉に関する知識を理解し、実習の実態を明確に学習出来るよう記述されている。
第3章は医療福祉を支える全ての職種の業務内容とそれぞれの役割を他職種の人が理解しておく必要性のある内容を解説している。
第4章は多くの事例を用いて連携が求められる基本概念や実施法を学ぶ「講義」の導入から、連携技能修得のための少人数グループ学習による参加型学習「問題解決型学習」が展開出来る構成にしている。
本書は、本学が実践してきた先進的カリキュラム(講義・演習・実習)をもとに(1)広い視野と深い理解、(2)問題解決能力、(3)対人スキル、コミュニケーション能力を段階的に修得出来るように企画されている。将来、医療福祉の専門職を目指す学生が能動的なグループ学習と自己学習を通して、初めて論理的思考が可能となり、これを培う事に主眼をおいて企画された連携教育に必携の教科書である。したがって、近い将来、医療福祉の現場に出たときに何ら抵抗感なくごく自然とチーム医療・チームケアに貢献し得ると期待している。
本書が高齢社会の中で本邦の医療福祉を支える慈恵の心を持った人材の育成と“共に生きる社会の実現”を目指す礎に貢献できれば、企画者の一人として望外の喜びと感じる次第である。
2013年1月
国際医療福祉大学学長
北島政樹