NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン改訂第2版
編集 | : 日本呼吸器学会NPPVガイドライン作成委員会 |
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ISBN | : 978-4-524-26775-0 |
発行年月 | : 2015年2月 |
判型 | : A4変 |
ページ数 | : 170 |
在庫
定価3,630円(本体3,300円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
日本呼吸器学会によるガイドライン改訂版。NPPV導入に関する項目を総論にまとめ、各論では急性呼吸不全、慢性呼吸不全の各療法における適応・導入の実際・効果等について解説。今改訂では「鎮静薬の使用」、「災害時の対応」、「感染対策」、「周術期」、「終末期、do not intubate、悪性腫瘍、高齢者」等の項目を追加し、臨床現場でより活用しやすい内容としている。
【総論】
1.NPPVからみた急性呼吸不全
2.NPPVからみた慢性呼吸不全
3.NPPVで使用される人工呼吸器とモード
4.急性呼吸不全におけるNPPVの導入方法
5.慢性呼吸不全におけるNPPVの導入方法
6.NPPVと鎮静薬の使用
7.効果に関連する因子とトラブルの対処
8.医療安全
9.災害時の対応
10.感染対策
11.導入後のケア
【各論】
A.急性呼吸不全
1.COPDの増悪
2.喘息
3.拘束性胸郭疾患の増悪
4.間質性肺炎
5.心原性肺水腫
6.胸郭損傷
7.人工呼吸離脱に際しての支援方法
8.周術期のNPPV
9.免疫不全、免疫抑制下に伴う急性呼吸不全
10.ARDS、重症肺炎
11.終末期、do not intubate、悪性腫瘍、高齢者
12.小児
B.慢性呼吸不全
1.拘束性換気障害
2.COPD(慢性期)
3.慢性心不全におけるチェーン・ストークス呼吸
4.肥満低換気症候群
5.神経筋疾患
6.小児
7.リハビリテーション
索引
序
呼吸管理として、1920年代にBarachにより病院内での酸素吸入が整備され、1927年にDrinkerにより鉄の肺が使用され、1936年にPoultonにより肺水腫などの治療にCPAPが使用され、麻酔用のマスクを使用しての陽圧補助呼吸は1947年にMotleyにより始められたが、広く応用されるには至らなかった。1950年代のポリオの流行時、挿管下陽圧人工呼吸と、陰圧人工呼吸との比較試験が行われ、ポリオでは誤嚥などがあったために挿管人工呼吸のほうが予後はよく、その後は、ICUの成立もあり、挿管人工呼吸が主に行われるようになった。
1970年ごろより睡眠呼吸障害の研究が発展し、非侵襲的に使用可能で、正確なオキシメーターができ、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療としてCPAPによる気道確保の有効性が1981年にSullivanにより報告された。その後、マスクを使用した陽圧人工呼吸の有効性が相次いで1987年に報告され、慢性呼吸不全での有効性より、1989年にはMeduriらにより急性呼吸不全にも応用された。CPAPが使用できない症例のために、bilevel positive airway pressureがつくられ、小型で、使用しやすく、在宅人工呼吸が行いやすくなり、マン・マシーンインターフエイスである多数のマスクがつくられ、NPPVが呼吸不全に広く使用されるようになった。1940年代と異なり、このように広く応用されるようになった変革の理由として、オキシメーターなどのモニター機器の発展があり、睡眠呼吸障害の重症度が正確に診断され、治療の必要性が理解され、マスク、機器の発展があって、普及したと思われる。
日本においては、1990年頃より慢性呼吸器疾患、筋ジストロフィーを対象にNPPVの応用が始められ、慢性、急性呼吸不全を扱う施設で使用されるようになり、1998年に保険診療の適用とともにその数は増加した。
2006年に、NPPVの適切な使用を目的として初版のガイドラインがつくられたが、当時はNPPVの普及も重要な目的であり、NPPVの導入は、経験なども必要なために総論が設けられた。その後8年が経過し、NPPVに関する論文は増加し、今回、旧版に比べ、よりエビデンスに基づいたガイドラインとして発行されることになった。総論では新たに医療安全、災害時の対応、感染対策などが追加され、各論急性期では周術期、終末期、小児について新たな項目が設けられた。各論慢性期については、リハビリテーションとの関連が追加された。本ガイドラインが、すでにNPPVを使用している方には、知識の再確認として、また、研修医などの新たにNPPVについて学ぶ方々にはベッドサイドでの導入に役立ち、さらにNPPVが安全に、適切に普及することを願うものである。
2015年1月
大井元晴
2006年、臨床の現場では非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)を試行錯誤で使用していた。その時代に、呼吸生理学に強い呼吸器内科/神経内科/救急・集中治療の新進気鋭の先生方が集まり、『NPPVガイドライン』初版が作成された。当時は、急性呼吸不全ないしは慢性呼吸不全増悪の患者さんに対して、挿管下人工呼吸のほうが慣れているし、NPPVはよくわからないのでやめておこうというのが、一般の呼吸器内科臨床医の感覚であったと記憶している。
その後8年間の歳月が流れ、『NPPVガイドライン』初版作成の先生方にも8年間の経験が積まれ、ベテランの域に到達して、このたび改訂第2版が上梓された。この8年間の医療の世界での変化の一つは、「呼吸ケアサポートチーム(respiratory-care support team:RST)」の誕生と、その活動である。また、「パルスオキシメーター」の大いなる普及もみられた。NPPVを含めた人工呼吸管理、多様な疾患に対する呼吸管理、呼吸リハビリテーションなど、臨床現場で呼吸器疾患を抱える患者さんに適切に対応するには、医師のみでなく、多職種(看護師、呼吸療法認定士、呼吸ケア指導士など)の方々の積極的関与が重要であることが認識された。今回の改訂第2版は、現場で日々臨床に携わっている医師を含めた多職種の方々にも、大いに参考になる。
本書は、総論と各論に大別されている。さらに、各論A:急性呼吸不全、各論B:慢性呼吸不全に小別し、Mindsの評価法を基本として、CQ(臨床的疑問)に対する回答を示している。また、その推奨度を委員会として判断するという、呼吸器疾患分野では新たな試みを導入しているのは、高く評価できる。作成委員長の陳 和夫先生(京都大学)の大変なご努力が陰に隠れている。
各論Aでは、CQ1「COPD増悪による急性呼吸不全の呼吸管理にNPPVを使用すべきか?」、CQ2「喘息発作の呼吸管理にNPPVを使用すべきか」、CQ3「拘束性胸郭疾患の増悪の呼吸管理にNPPVを使用すべきか?」、CQ4「間質性肺炎における急性呼吸不全の呼吸管理にNPPVを選択すべきか?」、CQ5「急性心原性肺水腫の人工呼吸管理にCPAPまたはbilevel PAPを使用すべきか?」、CQ6「胸郭損傷を伴う急性呼吸不全症例の呼吸管理にNPPVを使用すべきか?」、CQ7「侵襲的人工呼吸管理からの離脱支援としてNPPVは有用か?」などがあげられている。これらの臨床場面に遭遇した経験がある医療関係者の方々は、ぜひ本書で、関係のある部分を参照していただければと期待する。
各論Bでは、CQ16「拘束性胸郭疾患による慢性呼吸不全に対し、長期NPPVを使用すべきか?」、CQ17「COPDによる慢性呼吸不全に対し、長期NPPVを行うべきか?」、CQ18「慢性心不全のチェーン・ストークス呼吸に対してNPPVを行うべきか? また、どの機種を選択すべきか?」などがあげられている。
NPPVは着脱が容易である一方、確実性に欠ける面もあり、侵襲的人工呼吸管理以上に多くの問題を抱える面もありうる。NPPVの使用にあたっては、患者・患者家族への十分な説明と意思確認の必要性があり、治療方針、リスク管理の問題などにも十分注意を払う必要がある。本書は、さらに現場の方々からの経験、報告、論文などを踏まえ、5年後の改訂を目指している。ガイドラインの進化のためには、呼吸管理分野における関係者の方々の積極的な関与が期待される。
臨床雑誌内科116巻3号(2015年9月号)より転載
評者●千葉大学医学部呼吸器内科教授 巽浩一郎