はじめての上部消化管内視鏡ポケットマニュアル
著 | : 藤城光弘/道田知樹/山本頼正/小田一郎/今川敦 |
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ISBN | : 978-4-524-26756-9 |
発行年月 | : 2014年10月 |
判型 | : A6 |
ページ数 | : 200 |
在庫
定価3,300円(本体3,000円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
内視鏡初心者がはじめて内視鏡を行う際に必要な情報を、注意点や考え方とともにコンパクトに解説した“これさえ知っておけば安心”の一冊。内視鏡を始める前に知っておきたい基本的知識や解剖、練習法、実際の手順・処置方法、施行前-後の確認事項、生検のしかた、書式例などを具体的に掲載し、付録も充実。初期研修医だけでなく、指導医や一般内科医、メディカルスタッフにもおすすめ。
巻頭言
はじめに-本書の活用法-
巻頭1.内視鏡診療のフローチャート
巻頭2.はじめての内視鏡Q&A
第I章 上部消化管内視鏡検査に必要な基礎知識
1.内視鏡部を理解する
2.内視鏡機器の役割を理解する
3.内視鏡観察法を理解する
4.電子内視鏡スコープの構造を理解する
5.内視鏡検査時の処置具を理解する
6.使用後の洗浄、消毒、滅菌、保管
第II章 上部消化管内視鏡検査に必要な局所解剖
1.口腔、咽頭
2.食道
3.胃
4.十二指腸
第III章 上部消化管内視鏡検査施行前に行ってほしい自己練習法
1.内視鏡の持ち方を理解する
2.内視鏡の動きを理解する
3.内視鏡画面を理解する
4.上部消化管モデルを用いたトレーニング
第IV章 上部消化管内視鏡検査施行前・施行中の確認事項
1.内視鏡施行医の感染対策
2.適応と禁忌
3.患者へのインフォームドコンセント
4.内服薬の状況
5.前処置・前投薬
6.セデーション(鎮静)
7.検査中のモニタリング
第V章 上部消化管内視鏡検査の基本手技
1.経口内視鏡の食道挿入
2.経鼻内視鏡の食道挿入
3.通常白色光観察法
4.インジゴカルミン撒布
5.ルゴール染色の方法
6.食道の画像強調観察
7.胃の画像強調観察
8.観察時の偶発症
第VI章 生検のしかた
1.生検の目的
2.胃の生検
3.食道の生検
4.十二指腸の生検
5.生検検体の取り扱い
6.生検後の対応
第VII章 緊急内視鏡時の心得
1.緊急内視鏡とは
2.緊急内視鏡の適応
3.緊急内視鏡の体制
4.緊急内視鏡の準備
5.インフォームドコンセント
第VIII章 上部消化管内視鏡検査施行後の確認事項
1.セデーション施行者への注意点
2.通常観察のみの患者への注意点
3.生検施行の患者への注意点
第IX章 上部消化管内視鏡検査に関する書式例
1.内視鏡検査申込書の書き方
2.内視鏡検査(所見)報告書の書き方
3.病理依頼書の書き方
付録
I.診断ガイド
1.所見の鑑別をする
2.病態を鑑別する
3.主に鑑別すべき病変
II.知っていたほうがよい上部消化管内視鏡治療
1.食道静脈瘤治療(EVL、EIS)
2.胃・十二指腸潰瘍止血術
3.ポリペクトミー、EMR、ESD
4.バルーン拡張術、ブジー拡張術、ステント留置術
5.イレウス管挿入
6.胃瘻造設
7.異物除去
8.アルゴンプラズマ凝固法
III.知っておくべき分類法
1.食道がん・胃がんの病型分類
2.食道がん・胃がんの深達度分類
3.酸関連食道疾患の分類
4.食道・胃静脈瘤の分類
5.胃炎の分類
6.胃・十二指腸潰瘍の分類
IV.資料
1.「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」のポイント
2.「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン」のポイント
3.三豊総合病院での内視鏡研修の紹介
4.入門書の次に読んでもらうおススメ書籍リスト
COLUMN
内視鏡を動かさないことがむずかしい?
平静の心
腕がいいこと
急がば回れ内視鏡治療
編集後記
索引
私たちが研修医の頃は、消化器科への入局を決めてから内視鏡の世界に足を踏み入れることが一般的であった。よって“内視鏡のお作法や深遠さ”は、逃げ場のない環境でイヤというほど叩き込まれ、幸か不幸か、それによってどんどん自分が内視鏡好きになっていったのを覚えている。しかし臨床研修の必修化に伴い、“内視鏡のお作法や深遠さ”を知らぬ間に現場に身を投じ、また教わる間もなく現場を後にする研修医の皆さんを目の当たりにし、大学病院で内視鏡を専門とするものとしては幾ばくかの寂しさを感じてきた。一方で大学以外の臨床研修病院では、超多忙な消化器診療の中で研修医の内視鏡指導まではとても手が回らないという声も聞かれる。そんな中、南江堂の編集者にたまたま学会場で「先生と内視鏡の本を作りたいのですが…」とお声掛けいただき、たまたまそこに居合わせた“お友達”の共著者4氏にお話ししたところ、「専門書は数多あるけれど、研修医にとりあえずこれを読んでおいてねっていう本はないよね」「じゃあ、そういう本を私たちで作ってしまおう」ということとなって出来上がったのが本書である。
本書の編集にあたっては、
(1)研修医やメディカルスタッフが求めやすい価格であること
(2)彼らでも気楽に読める内容でありつつ、必要最低限の知識や情報を網羅していること
(3)白衣や術衣のポケットに忍ばせておいて、必要な時にすぐ取り出して参照できる大きさと厚さであること
を大きな三本柱とした。
本書を手に取った方は、まず巻頭の「内視鏡診療のフローチャート」を見ていただきたい。自分が今抱えている問題によってどの章を参照すればよいのか、ひと目でわかるようにした。「はじめての内視鏡Q&A」では、研修医からよく挙げられる質問をまとめて記載し、それらに該当する本文ページとをリンクさせた。診療現場で困ったときのリカバリーショットとして活用いただきたい。また、時間のあるときはぜひ本書を最初から最後まで通読してほしい。読破したときには、内視鏡の奥深い世界にますます興味をもっていただけるはずである。
企画から2年を費やしたが、素晴らしい“お友達”に恵まれ、期待通りの書籍に仕上がったものと自負している。ぜひ、初期内視鏡研修のお供に本書を活用いただきたい。なお、カバーを外していただくと多少こだわったシックな表紙が現れるので、この状態で使っていただくのがおススメである。
2014年9月
藤城光弘
このたび「はじめての上部消化管内視鏡ポケットマニュアル」が刊行された.内容は実に多彩であり,手に取って読み進むと本書の特色をすぐに理解することができ,著者らが内視鏡検査を学ぼうとする若手医師の課題をよく理解し,彼らの視点から執筆したことが伝わってくる.また,他の内視鏡診断学書ではなかなかみることのない,上部消化管内視鏡検査に必要な基礎知識,つまり本書の巻頭言にもある「大きな声では尋ねにくい,ごくごく常識的な事項」についても詳細に記載されている.
「上部消化管内視鏡検査の基本手技」の項では,食道への内視鏡挿入法から胃内の観察法について,初学者が悩む手技的な疑問点を見事に解説している.また色素内視鏡検査やnarrow banding imaging(NBI)についても,食道,胃疾患に関して,余すことなく記載されており,非常に質の高い画像とともに必要十分な内容が網羅されている.さらに生検時のコツ,偶発症への対応,緊急内視鏡時の心得,内視鏡検査報告書の書き方なども解説されており,本書を一読すれば内視鏡検査の概要を理解できるように実に読みやすく書かれている.何よりも,評者が惹きつけられた項目はコラムであり,著者らのコメントが彼らの“名言”とともに記載されている.加えて,随所に読者へのアドバイスが盛り込まれており,これまで著者らが,どのように後進の育成に携わってこられたかを実感できる.
本書は,国内でも屈指の消化器内視鏡プロフェッショナルの名医が,その極意を読者に伝授するべく執筆した書であり,常に世界をリードするわが国の消化器内視鏡分野において,その一翼を担っている著者らの経験に基づく技術と豊富な知識を学ぶことができる.ぜひ,これから消化器病学ならびに消化器内視鏡学を志す若い医師の先生には,本書を白衣のポケットに入れ,日常診療に活かし,これまで先輩たちが築き上げたものを直に感じていただきたい.また,すでに消化器内視鏡の専門医・指導医となっている先生方におかれては,本書を手元に置いて後進の育成・指導に役立てていただければ幸いである.内視鏡検査前の確認事項から,検査後の注意点まで書かれた本書は,メディカルスタッフの方々にとっても読み応えがあり,改めて内視鏡検査に関する理解を深めるうえで最適の書である.
最後に,名著を執筆された藤城光弘先生,道田知樹先生,山本頼正先生,小田一郎先生,今川 敦先生のご尽力に心から敬意を表します.
臨床雑誌内科115巻6号(2015年6月増大号)より転載
評者●日本消化器内視鏡学会理事長 田尻久雄