シンプル内科学改訂第2版
総編集 | : 寺野彰 |
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編集 | : 菅谷仁/清水輝夫/羽田勝征 |
ISBN | : 978-4-524-26658-6 |
発行年月 | : 2017年9月 |
判型 | : B5 |
ページ数 | : 734 |
在庫
定価7,150円(本体6,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
医療系学部学生のための、最新かつ重要な知識が整理されたスタンダードな内科学の教科書の改訂版。初版同様、基礎から臨床まで、習得すべき必須の内容が十分に解説されている。全体的な情報更新に加え、救命救急の章を新設し、より精査された内容となった。医療を学ぶ学生にとって最も重要な科目の一つである内科学を、系統的に学ぶことができる一冊。
序章 内科学とは
第1章 診療のすすめ方
A 患者へのアプローチ
1 患者と医療従事者の関係
2 インフォームド・コンセント(IC)
3 医療の質と安全
4 医療訴訟を少なくするには
5 医療事故調査制度
B 診断の考え方および実践
1 診断の考え方
2 診断がもたらす患者,家族への影響
3 診断の実際(プロセス)
4 診療の記録
C 主な症候
1 症候から診断へ
2 内科領域における主な症候
3 バイタルサイン(生命徴候)
第2章 臨床検査と治療法
A 一般的な検査と注意点
1 臨床検査の意味
2 臨床検査の種類と測定誤差
3 検査のすすめ方:非侵襲的か侵襲的か
4 偽陽性と偽陰性の考え方
5 検査に伴うリスク
B 一般的な治療と注意点
1 安静と入院の適応
2 食事療法と栄養指導
3 水分の管理
4 運動療法とリハビリテーション
5 酸素吸入療法
6 薬物療法
7 インターベンション
8 内科治療か外科治療か
C 治療における信頼関係の構築
第3章 新しい医療システム
A プライマリ・ケア
B 総合診療
1 総合診療の基本理念
2 総合診療と内科
3 総合診療の診断と治療の特徴
C ターミナル・ケア
1 ターミナル・ケアとは
2 終末期患者の痛み
3 ターミナル・ケアの三大要素
4 高齢者の終末期医療
D 介護医療
1 高齢社会と介護保険
2 介護保険制度の概要
3 介護サービスの種類と内容
4 介護支援専門員
5 介護保険制度の見直しの経緯
6 介護保険制度の新たな見直し
E 在宅医療
1 退院計画
2 訪問看護
3 在宅リハビリテーション
4 訪問診療と往診
F リハビリテーション
1 対象疾患
G 高齢者医療
1 高齢者医療の役
2 老年症候群
3 高齢者診療の実際
H 医療相談
1 医療ソーシャルワーカーの業務指針
2 業務の方法と倫理
3 医療ソーシャルワーカーとなるには
I 地域医療と病診連携
1 効率的・経済的診療のすすめ:紹介と逆紹介
2 IT化による情報の共有と医療費暴騰の抑制
3 国民・社会の理解と教育
J チーム医療
1 チーム医療とは
2 チーム医療の実際
3 まとめ
K クリニカル・パス
1 クリニカル・パスの歴史
2 クリニカル・パスの定義と意義
3 医療の効率化と業務の評価
L 臨床試験
1 新薬の開発と臨床への導入
2 臨床試験とは
3 臨床試験の条件
4 新GCPの策定
5 治験コーディネーター(CRC)
第4章 新しい医学・医療
A 遺伝子診断・治療
1 遺伝子診断・治療とは
2 遺伝子診断・治療と倫理
B 移植医療
1 移植医療の歴史
2 脳死
3 脳死判定
4 臓器移植法
5 移植ネットワーク
6 移植施設と移植の実際
7 生体移植
8 今後の展望
C 生活習慣病とNCD
1 生活習慣病の概念と非感染性疾患(NCD)
2 生活習慣病の現状
3 生活習慣病への国の取り組み
4 勧められている生活習慣
D 輸入感染症
1 疾患の概念
2 輸入感染症の現況
3 感染経路
4 とくに見落としてはならない症状
5 診断
6 治療
7 予防
E 院内感染
1 疾患の概念
2 発症要因
3 院内感染を起こしやすい宿主側要因
4 院内感染を引き起こす病原微生物
5 院内感染対策
F 医原性疾患
1 医原性疾患とは
2 原因・要因
G EBM
1 evidence-based medicine(EBM)とは
2 EBMの手順
3 EBMの活用分野
第5章 救命救急
A 気道の蘇生
1 気道狭窄・閉塞の症状
2 気道狭窄・閉塞の原因
3 気道の確保
4 気道異物の除去
B 低酸素血症の蘇生
1 低酸素血症の原因
2 酸素療法
C ショックの蘇生
1 ショックの原因
2 ショックの蘇生
D 心肺蘇生法
1 胸骨圧迫:心臓マッサージ
2 除細動
第6章 中毒・環境要因による疾患
A 医薬品中毒
1 三環系抗うつ薬中毒
2 バルビツール酸中毒
3 ベンゾジアゼピン受容体作動薬中毒
4 リチウム中毒
5 アセトアミノフェン中毒
6 アスピリン中毒
B 農薬中毒
1 パラコート中毒
2 有機リン中毒
3 グルホシネート含有除草剤中毒
C ガス中毒
1 一酸化炭素中毒
2 硫化水素中毒
3 刺激性ガス中毒
D 化学製品・工業製品による中毒
1 無機ヒ素化合物・無機水銀中毒
2 メタノール・エチレングリコール中毒
3 シアン化合物中毒
E 自然毒中毒
1 フグ中毒
2 トリカブト中毒
3 ドクツルタケ類中毒
4 マムシ咬傷
F 環境要因による疾患
1 熱射病(重症型熱中症)
2 低体温症
第7章 感染症
総論
1 感染症の成立
2 感染症の診断・検査
3 感染症の治療(主に抗菌薬療法)
各論
1 細菌感染症
2 真菌感染症
3 スピロヘータ感染症
4 マイコプラズマ感染症
5 リケッチア感染症
6 クラミジア感染症
7 ウイルス感染症
8 寄生虫感染症
9 敗血症
第8章 循環器疾患
総論
1 構造
2 心機能と冠循環
3 心機能障害と心不全
4 症状
5 身体所見
6 検査法
7 心不全の一般的治療法
各論
1 虚血性心疾患
2 心筋疾患
3 先天性心疾患
4 弁膜疾患
5 感染性心内膜炎
6 心膜疾患
7 血栓
8 心臓腫瘍
9 大動脈瘤・大動脈解離
10 不整脈
11 特発性肺動脈性肺高血圧症・遺伝性肺動脈性肺高血圧症
12 高血圧
13 低血圧
14 末梢血管疾患
第9章 呼吸器疾患
総論
1 呼吸器の機能と構造
2 症状と所見
3 検査法
各論
1 呼吸不全と肺性心
2 換気異常
3 肺循環障害と肺血管異常
4 感染性呼吸器疾患
5 気管支の慢性炎症性疾患
6 慢性閉塞性肺疾患
7 腫瘍性呼吸器疾患
8 間質性肺疾患
9 気胸・血胸
10 特殊治療
第10章 消化管・腹膜疾患
総論
1 構造
2 機能
3 症状
4 検査
各論
1 食道疾患
2 胃・十二指腸疾患
3 小腸疾患
4 大腸疾患
5 腹膜疾患
6 脾腫
第11章 肝・胆道・膵疾患
11-1 肝疾患
総論
1 肝臓の構造(解剖)
2 肝臓の機能
3 症状と所見
4 検査法
各論
1 肝炎ウイルス感染症
2 肝炎ウイルス以外のウイルスによる肝炎
3 急性肝炎
4 慢性肝炎
5 肝硬変
6 薬物性肝障害
7 体質性黄疸
8 脂肪肝
9 ウィルソン病
10 ヘモクロマトーシス
11 アミロイドーシス
12 先天性代謝異常による肝疾患
13 自己免疫性肝疾患
14 肝腫瘍・肝嚢胞
15 感染性肝疾患
16 妊娠と肝
17 各種の病態と肝障害
18 アルコール性肝障害
11-2 胆道疾患
総論
1 胆道・胆嚢の構造(解剖)
2 機能
3 症状
4 検査法
各論
1 先天性異常
2 胆道ジスキネジー
3 胆道感染症
4 胆石症
5 胆嚢・胆道腫瘍
11-3 膵疾患
総論
1 膵臓の構造(解剖)
2 機能
3 症状
4 検査法
各論
1 先天性異常
2 急性膵炎
3 慢性膵炎
4 自己免疫性膵炎
5 膵腫瘍
6 膵嚢胞
第12章 腎・尿路系疾患
総論
1 腎臓の構造と機能
2 腎臓の検査
各論
1 急性糸球体腎炎
2 急速進行性糸球体腎炎
3 慢性糸球体腎炎
4 全身性疾患
5 感染症関連腎症
6 その他の腎疾患
7 急性腎不全
8 慢性腎不全
9 透析療法
第13章 内分泌・代謝疾患
13-1 内分泌疾患
総論
1 構造
2 機能
3 症状と所見
4 検査法
各論
1 視床下部-下垂体疾患
2 甲状腺疾患
3 副甲状腺疾患
4 副腎皮質疾患
5 副腎髄質疾患
6 性腺疾患
13-2 代謝疾患(栄養疾患)
総論
1 代謝疾患の趨勢
2 糖質代謝
3 脂質代謝
4 蛋白質代謝
各論
1 糖尿病
2 糖尿病の急性合併症
3 糖尿病の慢性合併症
4 脂質異常症
5 尿酸代謝異常(痛風,高尿酸血症)
6 肥満症
7 るいそう
8 ビタミン欠乏症
9 骨粗鬆症
第14章 自己免疫・アレルギー疾患
14-1 臨床免疫学の基礎
1 免疫系とは
2 抗原抗体反応
3 免疫反応と組織傷害
4 I型アレルギー反応
5 自己免疫疾患の発症機序
14-2 アレルギー疾患
総論
1 アレルギー疾患の病因抗原
2 アレルギー疾患の検査法
3 アレルギー疾患の治療法
各論
1 アナフィラキシー
2 花粉症・鼻アレルギー(アレルギー性鼻炎)
3 気管支喘息
4 薬剤アレルギー
5 過敏性肺炎
14-3 膠原病・リウマチ性疾患
総論
1 膠原病の検査法
2 膠原病の治療
各論
1 全身性エリテマトーデス(SLE)
2 関節リウマチ(RA)
3 強皮症(全身性硬化症)(SSc)
4 多発性筋炎(PM)・皮膚筋炎(DM)
5 結節性多発動脈炎
6 血管炎症候群
7 膠原病類縁疾患
14-4 免疫不全症
総論
各論
第15章 血液疾患
総論
1 血液・造血系の構造
2 機能
3 症状と所見
4 検査法
各論
1 造血幹細胞疾患
2 赤血球疾患
3 リンパ系疾患
4 止血・血栓疾患
5 特殊治療
第16章 脳神経・筋疾患
総論
1 神経の機能解剖
2 神経の診察と神経症候
3 神経の検査法
各論
1 脳神経疾患
2 脊椎・脊髄疾患
3 運動ニューロン疾患(筋萎縮症)
4 末梢神経疾患
5 筋疾患(ミオパチー)
第17章 精神症状と精神疾患
総論
1 精神症状
2 検査法
3 治療法
各論
1 身体疾患に伴う精神症状
2 アルコール関連疾患
3 薬剤による精神症状
4 神経症性障害
5 摂食障害
6 気分障害
7 統合失調症
付録
1.検査基準値一覧
2.略語一覧
索引
改訂第2版の序
本書初版から、すでに10年が経過した。この間の社会的な変化と医学・医療の進歩・変遷には顕著なものがみられ、本書改訂の必要性が認識された。そこで本改訂は時宜を得たものと考え、ここに第2版(改訂版)を上梓することになった。
この間の第一に挙げるべき社会的出来事は、2011年3月11日の東北大地震と大津波、そしてそれに続く福島原子力発電所の事故である。この大災害によって、2万人余の犠牲者を出し、その後の状況は救急医学の重要性を改めて認識させた。さらに、福島原発事故は、広島・長崎の原子爆弾以来、チェルノブイリ原発事故に続く国際的な放射能を巡る医学的課題を具体的に示した。これらの大災害に対しては現在に至るまで根本的解決はなされておらず、今後数十年にわたって人類の大きな負担となっていくであろう。この大災害は、医学の役割が、単に学問的な面のみならず、社会的視野に基づくものでなければならないことを改めて再認識させた。
医療においては、この間に、医療事故が頻発し、医療安全に対する社会の関心が高まり、医療者の基本的考え方に大きな変容が生じた。さらに低医療費政策や初期臨床研修制度などによって、地域医療の崩壊が深刻となり、近くスタートする新専門医制度のあり方が厳しく問われている。看護制度の面でも、看護体制の変化とともに、看護学部・看護大学ラッシュとなり、認定看護師制度など看護の本質も変化しつつある。
他方、医学・医療も、インターネットあるいは人工知能artificial intelligence(AI)などの発達とともに、驚くべき発展をみせている。ノーベル賞学者 山中伸弥 教授によるiPS細胞の登場は、再生医療の概念を大きく変え、国際的に臨床に応用されつつある。大村 智 教授は、イベルメクチンの発見により、寄生虫疾患の治療に多大な貢献をして、やはりノーベル賞に輝いた。がんをはじめとする悪性腫瘍の診断・治療は現代の最大の医学的課題であるが、その治療に対しては、内視鏡的治療、interventional radiology(IVR)などの進歩とともに、分子標的抗がん剤の発展が注目されている。とくに、人が本来持つ免疫力を利用してがんを攻撃する免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブは、今後のがん治療の方向性を示すものである。原発性肝がんの最大の原因であるC型肝炎ウイルスも、特異的に作用する核酸型ポリメラーゼ阻害薬ソホスブビルによって大きな解決をみている。
このような医学・医療の驚異的な進歩によっても、いまだ解決の見通しのたっていない疾患も多い。新型鳥インフルエンザをはじめとする感染症は、21世紀の疾患といわれている。認知症をはじめとする多くの精神神経疾患も、今世紀最大の解決すべき課題である。糖尿病をはじめとする生活習慣病も、社会とともに改善していかなければならない。
今後、人類最大の課題となる人口構成の変化も、医学・医療に大きな影響を及ぼすことになる。少子高齢化は重大な社会的課題であるが、そこに医学・医療はどのような貢献ができるのか。地域医療に対する方策も、行政とともに取り組むべき医療の責務である。
以上、初版以来の出来事、医学・医療の変化などについて概観してみたが、序文で言い尽くせるものでもなく、本改訂版にわかりやすく記述されているので、熟読してほしい。
本書のコンセプトについては、初版の序に述べてある通りである。医学生、医師、薬剤師、看護師、理学・作業療法士をはじめとするすべての医療関係者に高度な内科学を思考過程重視の形で「わかりやすいシンプルなもの」にして、効果的に習得していただきたいというのが編集者の願いである。本書で内科学の本質を学び、より専門的なところはinternetなどを駆使して、真のEBMに基づく医療を展開していただきたいと念ずるものである。
最後に、編集者の先生方、各分野を著述していただいた先生方に深謝し、本書の編纂にご協力いただいた南江堂の諸氏に御礼申し上げる。
2017年7月吉日
獨協学園理事長室にて
編集者代表 寺野彰