なぜ?どうする?がわかる! 便秘症の診かたと治しかた
編集 | : 中島淳 |
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ISBN | : 978-4-524-26615-9 |
発行年月 | : 2019年12月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 180 |
在庫
定価3,080円(本体2,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
近年30余年ぶりに慢性便秘症の新薬が上市され、種々の薬剤が次々に登場してきた。しかし、その使い方に悩む便秘症診療を専門としない医師は多く、結局従来の処方が延々となされ、困難な病態にいたってしまう患者さんも少なくない。そうした悩めるドクター、苦しむ患者さんを救うため、本書ではやさしく、コンパクトに、「令和時代の便秘症診療」のノウハウをまとめ、また、薬剤ごとの詳細な解説や診療現場でよく尋ねられる疑問、特殊な便秘とその対処法まで網羅している。診療ガイドラインだけでは味わえない、リアルワールドの実践知識が詰まった一冊。
口絵
A 便秘症治療薬一覧
B 便秘症の治療アルゴリズム
C 治療に役立つ各種ツール
序論 便秘症診療を改めて考える
第1章 便秘症診断のコツ〜いかに短時間で診たてができるか〜
A 便秘症診断のコツ,便秘症の分類〜いかに短時間で分類を評価するか〜
B 鑑別診断のポイント〜悪性疾患のサインを見逃さない〜
第2章 便秘症治療のキホン〜薬の選びかた,治療の進めかた〜
A リアルワールドでの便秘症治療の問題点
B 便秘症治療の流れを押さえる
1 治療アルゴリズム
2 治療のゴールの設定と,そのためにどう治療すべきか
3 薬物療法の基本〜処方の失敗を減らすためにはどうすればよいか?〜
4 薬物療法の実践
a 浸透圧性下剤の使いかたのコツ
b ルビプロストンの使いかたのコツ
c リナクロチドの使いかたのコツ
d 胆汁酸トランスポーター阻害薬の使いかたのコツ
e 刺激性下剤の使いかたのコツ
C 治療に役立つ各種ツール
第3章 便秘症診療の実践〜これができればあなたもエキスパート!〜
A 診療現場で気になるギモンにエキスパートが答えます!
診断・検査・患者指導編
1 効率的・効果的に問診を行うにはどうしたらよいですか?
2 排便造影検査,直腸肛門内圧検査などの専門的検査はどんなときに行いますか?
3 生活習慣の改善指導がうまくいきません.コツはありますか?
治療編
1 薬物療法の治療効果は何日目に判断すればよいですか?薬剤の切り替えや投与量増減の目安を教えてください
2 刺激性下剤を長く続けている患者さんにはどのように対応すべきですか?
3 専門医への紹介を考える基準,特に便排出障害の見きわめかたを教えてください
4 漢方薬は使えますか?どう使ったらよいですか?
5 プロバイオティクスは使えますか?どう使ったらよいですか?
6 外科的治療が必要なケースは?どのような手術をするのですか?
7 緩和医療や疼痛治療中の患者さんに便秘症治療薬を使うとき,気を付けることはありますか?
8 高齢便秘症患者さんの診療を効率的に行うためのアセスメントのコツと治療の注意点について教えてください
応用編
1 腹部マッサージを効果的に用いるにはどうしたらよいですか?
2 在宅医療や寝たきりの患者さんの便秘症にはどう対応すればよいですか?
3 管理栄養士がいないとき患者さんから食事について聞かれた際に把握しておくべき最低限の知識を教えてください
B エキスパートに学ぶ!「私はこうして便秘症治療をしています」
1 愁訴の理解,病態の把握,そして適度な薬剤治療が大切
2 患者のみならず,「腸からも話を聞く」
3 肛門疾患専門クリニックにおける便秘症治療
4 リアルワールドの便秘症診療〜外来診療でよく出会うケースから〜
5 エキスパートによる便秘症の治療アルゴリズム
第4章 特殊な便秘症とその対処法
A 巨大結腸症
B 直腸肛門機能異常
C 慢性偽性腸閉塞症
D 機能性腹部膨満症
E 腹部手術後・骨盤内手術後の排便障害への対応
序文
いまさらなぜ便秘なのか?
超高齢社会を背景にしてまさに便秘症患者が急増している。これまではQOLの病気であったが、今まさに便秘症は「死ぬ病気」と認識が大きく変わろうとしている。新聞や雑誌でも便秘の特集が多く、患者の関心の高さをうかがわせる。これまでは、とはいっても治療薬のオプションが少な過ぎた。ところが近年、多数の便秘症治療の新薬が一気に出てきた。患者のニーズに応えることができるようになったわけである。
そうはいっても便秘の治療はむずかしい!
治療薬が続々出てきても、たかが便秘、されど便秘で、患者の納得する治療はそうたやすくできるものではなく、非常に奥が深い。ただし、一部の実地医家の先生は自分なりの処方経験に基づきスマートに患者満足度の高い治療を実践している。その過程で多くの先生が失敗を繰り返し苦労しながらようやく自分なりのスタンスで便秘症治療が上達しているわけである。
便秘症治療の上達への近道
本書は、このような経験を積んだエキスパートによる血と汗の結晶である秘伝の治療法を論理的に実践できるように、各専門家に玉稿をいただいた。必ずや読者の先生がこれさえ読めば明日から便秘症治療のエキスパートになれると確信できる渾身の書である。ぜひ先生方の日々の診療にお役立ていただきたい。
2019年10月
中島淳
横浜市立大学の中島淳教授の便秘診療に関する講演を聞かれた方は少なくないと思う。いつもご自身の診療経験と研究成果を含めたわかりやすいお話をされ感心しているが、中島教授の便秘診療の講演が単行本になったものが本書であると思っていただければよい。鳥居明先生、水上健先生、尾健夫先生など、便秘診療を得意とするたくさんの先生方が本書の執筆に参加しておられるが、実は本書の1/3ぐらいは中島教授ご自身が熱意とこだわりをもって執筆しておられる。
本書は小ぶりで頁数もわずか180頁であるため、白衣のポケットなら入ってしまう。ところが、目次を開いて全体の構成をみると、便秘診療全般に関する実用的な記載が並んでおり、この1冊で便秘診療の基本的知識からちょっとマニアックな診療のコツまでを身に付けることができるとわかる。
第1章には、「便秘症診断のコツ」が記載されている。まずコツから始まる本書の構成に驚いた。この章に記載されていることだけでも知ってもらえれば今までとはひと味違う一歩上の診療を行うことができるので、本書を通読できない読者の先生方でもこの章だけは初めに読んでもらいたいという中島教授の願いとこだわりを感じることができる。きわめて実践的で有効な配置だと思われる。
第2章の「便秘症治療のキホン」の前半は中島教授ご自身が執筆し、治療法のアルゴリズムやゴールを解説するとともに、便をブリストル便形状スケール4の適切な硬さに調整することで便秘治療が成功する理由がわかりやすく解説されている。排便回数だけにこだわらず、便の硬さの調整にこだわることの重要性、有用性がよくわかる。これに続いてタイプ別に便秘薬の解説が記載されている。最近、新薬が次々と発売され、各種の便秘薬の選択や組み合わせに困ることが多く、一部では混乱も生じているが、これらの新薬を含めたすべての便秘薬がわかりやすく分類され、それぞれの薬剤の選択基準や使用上の注意点が解説されている。
第3章は「便秘症診療の実践」として、便秘診療の各場面で起こり得る疑問点にその道の専門家が答えるQ&Aが多数記載されている。読者の先生方が便秘診療で感じる疑問点のほとんどは、この章のQ&Aのなかに見つけることができる。
最後の第4章は巨大結腸症や慢性偽性腸閉塞症などの特殊な便秘の解説と、これらの特殊状態に対する対処法が簡潔に解説されている。
本書は半日もあれば、ところどころに挿入されている息抜きのコラムを含めてすべて読破することが可能な、便秘診療に特化したコンサイスで実践的な単行本である。ところが、内容はこれ1冊で便秘診療に関してすべてがわかってしまう野心的な構成の本でもある。記載は明快でシンプルでわかりやすく、ポイントが絞られていて、中島教授がいつも講演されている便秘診療に対する姿勢を感じることもできる。
本書を手に取っていただき、第1章を読んでいただくと、読者の先生方の便秘診療に対する考え方が少し変化するものと期待できる。休日の午後、半日使って通読していただくと幸いである。本書が便秘診療のレベルを一歩上にあげることを確信している。
臨床雑誌内科125巻5号(2020年5月号)より転載
評者●兵庫県立姫路循環器病センター院長/製鉄記念広畑病院病院長 木下芳一