総合診療専門医マニュアル
編集 | : 伴信太郎/生坂政臣/橋本正良 |
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ISBN | : 978-4-524-26614-2 |
発行年月 | : 2017年5月 |
判型 | : B6変型 |
ページ数 | : 546 |
在庫
定価6,930円(本体6,300円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
総合診療医の臨床能力向上を目標としたマニュアル書の決定版。初期診療で見逃してはならない重大疾患につながる症状・症候や、遭遇頻度別の「疑うべき疾患」リスト、「主要疾患スクリプト」から正しい診断へつながるテクニックを解説。ジェネラリストが遭遇する全身の症候、主要疾患の診かたを小児から高齢者まで1冊で網羅。総合診療専門医をめざす医師だけでなく、指導医、家庭医や病院総合医などプライマリ・ケアに携わる実地医家必携の一冊。
総合診療医の考え方・診療の仕方
第I部 症候別診断編
A.重大疾患につながる症状・症候
1.激しい頭痛
2.激しい腹痛
3.激しい胸痛
4.激しい悪心・嘔吐
5.発熱+発疹
6.意識障害
7.失神
8.けいれん
9.喀血
10.吐血・下血
11.腰(背)部痛
B.全身の症状
12.全身倦怠感
13.むくんでいる(浮腫)
14.熱がある(発熱・高体温)
15.体重が減った(体重減少・やせ・るいそう)
16.体重が増えた(体重増加・肥満)
17.筋肉の震え(振戦),不随意運動
18.歩行に障害がある(歩行障害)
19.リンパ節腫脹
C.頭頸部の症状
20.頭が痛い(頭痛)
21.めまいがする
22.白目が黄色っぽい(黄疸)
23.目が見えにくい・二重に見える(視力障害・複視)
24.結膜が赤い(目の充血)
25.耳鳴りがする,難聴(聴力障害・耳痛)
26.鼻水が出る,鼻がつまる(鼻漏・鼻閉)
27.鼻血が出る(鼻出血)
28.喉が痛い(咽頭痛)
29.しわがれ声(嗄声)
30.飲み込みにくい(嚥下困難)
D.胸部・腹部・腰部の症状
31.咳が出る(咳嗽・喀痰)
32.息が苦しい,呼吸時に音が鳴る(呼吸困難・喘鳴)
33.胸が痛い(胸痛)
34.動悸がする
35.胸やけがする
36.食欲がない(食欲不振)
37.お腹の張った感じ(腹部膨満感)
38.お腹が痛い(腹痛)
39.腹部腫瘤
40.腰が痛い(腰痛)
41.下痢(便通異常)
E.泌尿器・生殖器の症状
42.尿が近い,排尿時に痛みや違和感がある,残尿感がある(頻尿・排尿痛・排尿時違和感・残尿感・尿失禁・排尿困難)
43.尿が出ない(尿閉・欠尿・無尿)
44.尿が多い(多尿)
45.尿に血が混じる(肉眼的血尿)
46.不正性器出血
47.帯下の異常
F.手足の症状
48.手足がしびれる(四肢のしびれ,四肢の運動・知覚麻痺)
49.関節が痛い(関節痛)・腫れている
G.皮膚の症状
50.かゆい(皮膚痒症)
51.急性の発疹
H.精神の症状
52.うつ症状
53.睡眠障害(不眠・過眠)
54.幻覚・妄想
55.不安・恐怖
第II部 年代別・性別診療編
A.幼児・小児
■感染症
1.小児のかぜ症候群
2.小児のインフルエンザ
3.麻疹(はしか)
4.風疹
5.水痘(水疱瘡)
6.流行性耳下腺炎(おたふくかぜ・ムンプス)
7.伝染性紅斑(りんご病)
8.伝染性単核球症
9.手足口病
10.ヘルパンギーナ
11.咽頭結膜熱(プール熱)
12.突発性発疹
13.伝染性膿痂疹(とびひ)
14.伝染性軟属腫(水いぼ)
15.百日咳
16.熱性けいれん
17.細菌性髄膜炎
18.RS ウイルス感染症
■アレルギー・呼吸器の疾患
19.アトピー性皮膚炎
20.蕁麻疹
21.小児喘息
22.クループ症候群
23.急性扁桃炎
■その他の疾患
24.急性脳炎・脳症
25.急性腸炎
26.正常な発達のみかた
27.成長・発達の障害
B.思春期
1.起立性調節障害
2.片頭痛
3.過敏性腸症候群
4.貧血
5.思春期のメンタルヘルス(気分障害・摂食障害・過換気症候群など)
C.成人
■アレルギー・呼吸器の疾患
1.かぜ症候群
2.肺炎
3.インフルエンザ
4.喘息
5.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
6.アレルギー性鼻炎
■循環器の疾患
7.高血圧
8.虚血性心疾患(狭心症・急性冠症候群)
9.心房細動
10.心房細動以外の不整脈
11.心不全
■神経・精神の疾患
12.脳卒中(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)
13.パーキンソン症候群
14.アルコール依存
■消化器の疾患
15.胃・十二指腸潰瘍
16.胃食道逆流症(逆流性食道炎)
17.機能性ディスペプシア
18.肝炎
19.胆石症・胆.炎
■内分泌・代謝の疾患
20.糖尿病
21.脂質異常症
22.甲状腺疾患
23.痛風
■腎・泌尿器の疾患
24.慢性腎臓病(CKD)
25.尿路感染症
26.前立腺肥大症
■筋・骨格系の疾患
27.関節リウマチ
28.変形性関節症
■眼の疾患
29.緑内障
D.高齢者
1.高齢者の(健康)評価
2.老年症候群
3.リウマチ性多発筋痛症,巨細胞性動脈炎
4.偽痛風(ピロリン酸カルシウム結晶沈着症)
E.女性
1.月経前症候群
2.更年期障害
3.骨粗鬆症
4.貧血(月経血による)
第III部 応用編
A.緊急時の処置と対応
1.熱傷
2.捻挫
3.アナフィラキシー
4.熱中症
5.新幹線など車中での処置と対応
B.在宅医療
在宅医療の実際
C.緩和・終末期ケア
緩和・終末期ケアの実際
D.地域における医療・福祉連携
地域における医療・福祉連携の実際
E.検査値異常の対応の仕方
検査値異常の対応の仕方の実際
F.予防医学
1.予防医療スケジュール表
2.禁煙指導
3.飲酒指導
第IV部 総合診療専門医のための基本的知識
1.生物心理社会モデルの考え方
2.患者中心の医療とは
3.家族志向のケアとは
4.継続的ケアの重要性
5.多職種連携のためのポイント
6.他科との連携に際して気をつけること
7.臨床倫理
8.医療制度と法律
9.地域包括ケア
10.予防医療の考え方
11.教育と生涯学習青松棟吉
12.検査とその依頼の仕方
13.EBMの活用
14.患者への対応,行動変容の支援,教育方法
15.総合診療と漢方
編集後記
索引
薬剤索引
序文
本書は、総合診療専門医制度に参入する後期研修医の座右の書となることを目的として編集されています。また、その人たちを指導する指導医の先生方にとっても、知識をまとめていただくのに役立つでしょう。当初2017年度からの導入が予定されていた総合診療専門医制度は延期となっていますが、現場で総合診療医を目指す人は制度に振り回されることなく、着実な臨床能力の獲得に努めてほしいと思います。
本書の編集者として集まった我々3人は、いずれも米国の家庭医学レジデンシーを終えていて、さらには3人とも現在は総合内科医(病院総合医)としての診療に従事しています。これらの経験を生かして、本書は、日本の総合診療専門医が、将来家庭医あるいは病院総合医のいずれの進路にも進めるような研修のための参考書として編纂しました。また実践的な書籍となるように、本書掲載の症候・疾患は、総合診療医が遭遇するcommonなものに絞りました。
日本で総合診療医を育成するに当たっては、家庭医か病院総合医かという区別をするのは生産的とは言えません。それは日本の医療環境によります。病院というと、欧米先進国では日本でいう中規模〜大規模病院であるのに対して、日本では約70%の病院は200床以下です。そのような環境では、病院診療から地域医療までカバーできるような幅広い臨床能力を身につけた総合診療医が求められているということを、昨今痛切に感じます。私自身の教室にも実に多くの病院から総合診療医の派遣依頼が寄せられています。
将来僻地・離島で働く人にとっても、都市部の病院や診療所で働く人にとっても相応しい研修が日本の総合診療専門医に求められている基盤研修であり、これは、海外に模範例はありません。日本で独自の総合診療専門医育成システムを開発していく必要があるのです。このようなシステムは、これから総合診療医を育てなければならない多くの海外の発展途上国にも当てはまるものだと思います。
本書が総合診療医を目指す皆さんや、若手を指導する立場の医師の座右にあり、折に触れ手に取って読んでいただけることを祈念しています。
2017年4月
伴信太郎
総合診療医を取り巻く状況が大きく変わりつつあるのを実感する日々だ。「ジェネラリスト」としての矜持をもちつつ、専門的な領域にもそれなりに精通し、情報をアップデートしていかなければならない。そんななか、新たな「総合診療専門医制度に参入する後期研修医の座右の書となることを目的」とした1冊が上梓された。早速手にしたが、546ページに込められた内容はかなり欲張りで、野心的ともいえるほど多岐にわたる内容だ。
執筆陣は国内の総合診療の一線で活躍する、錚々たる面々だ。真っ先に目につく特徴としては、小児科領域への言及が豊富な点だろう。編集者3人がいずれも米国の家庭医学レジデンシーを終え、現在は国内の病院総合診療医として診療にあたっている点が大きく影響しているのだろう。
私事で恐縮だが、数年前、伊豆七島の一つ、新島の診療所で1年3ヵ月にわたって、診療に従事する機会があった。人口2,000人余の離島での診療や住民との交流は今でもよく思い出す。それまでは首都圏の病院での外来や病棟での診療が中心で、3年ほど在宅診療で高齢者宅を回ることはあっても、幼児、小児をみることは初期研修医時代以来、遠ざかっていた。
ところが、新島では90歳代の高齢者からその曾孫の世代にあたる乳児、幼児、小児を日常的にみることとなった。振り返れば、本書があれば、もっと自信をもてたのではないかと思う。本書は、当時しばしば遭遇した小児のクループ症候群から、思春期のメンタルヘルスにまで目配りしている。その行間からは、やはり総合診療の現場をよく知る編集者らの思いが伝わってくる。外傷への記述もありがたい。
ただ、筆者が最も注目したいのは、本書が、I部「症候別診断編」、II部「年代別・性別診療編」に続いて、III部の「応用編」で在宅診療や地域における医療・福祉連携などについて、IV部の「総合診療医のための基本知識」で「生物心理社会モデルの考え方」や「家族志向のケア」、さらに法律的な側面についても記載されている点だ。
「教育と生涯学習」での「総合診療医には、単に医療の専門家としての枠に留まらない能力が求められている」との指摘は実感としてもよくわかる。医学部での卒前教育だけでは必要な知識をすべて学習することは不可能だ、という記述には首肯せざるをえない。それだけに、継続的専門職能開発(CPD)やファシリテーターの重要性に触れていることも、本書の大きな特徴だ。
本文のほか、「TOPICS」や「豆知識」、「私の経験」などコラムで触れられている内容もとても参考になる。
手元に置いて、ことあるごとに必要なページを開いてみる、そんな頼りになる1冊となるだろう。
臨床雑誌内科121巻3号(2018年3月号)より転載
評者●順天堂大学医学部総合診療科病棟医長 村井謙治