理学療法士・作業療法士のためのできる!ADL練習
編集 | : 山ア裕司 |
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ISBN | : 978-4-524-26579-4 |
発行年月 | : 2016年6月 |
判型 | : A4 |
ページ数 | : 152 |
在庫
定価4,180円(本体3,800円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
「ADL」をどのように患者に再獲得させるのかを、会話形式で愉快なイラストとともに平易に解説した実践的なテキスト。総論では理学療法・作業療法の達人たちのアプローチを理論的に分析し、各論では実例を基に、達人の技を用いた重症片麻痺者、認知症患者のADL再獲得の道筋を豊富なコマ送り写真と実際の動画で解説。動画は二次元コードですぐに再生が可能。非利き手での箸操作など、読者もADL練習を試せるような工夫を凝らし、楽しく読める。現場に出てからも活用できる一冊。
序章 まずは,達人の技をみてみよう
1 義足歩行練習
2 非利き手による箸操作練習
3 重症片麻痺者の座位保持練習
I章 対象者にADL動作を再獲得させるには?
A なぜ,教科書に書いてある正しい動作ができないのだろう?
1 これまでのADL障害の原因分析
2 新たなADL障害のとらえ方
3 動作障害の原因分析
B ADL動作を上手に学習させる方法とは?
1 七転び八起きのADL練習
2 学習の秘訣(無誤学習)
3 無誤学習過程創出の方法
(1)知識の問題に対する介入方法
(2)技術の問題に対する介入方法
a.プロンプト・フェイディング
b.段階的な難易度設定
c.行動連鎖化
(3)動機づけの問題への介入
C 動作指導体験
1 模擬大腿義足を装着した対象者に歩行練習を指導してみよう
(1)歩行練習前の義足歩行の状態
(2)無誤学習過程の創出
a.義足歩行の課題分析
b.基礎練習
c.全体練習(段階的な難易度の上昇)
(3)練習後の義足歩行の状態
2 非利き手による箸操作を指導してみよう
(1)練習前の状態
(2)無誤学習過程の創出
a.身体的ガイドの紹介
b.基礎練習過程
c.フェイディングと段階的な難易度の上昇
(3)練習後の状態
II章 原因がわかる,効果がみえる評価法
1 課題分析表をつくろう
2 ADL評価表をつくろう
3 一般的なADL評価法と比較してみよう
4 ADL評価のバリエーションを増やそう
III章 達人のいろいろな技をみてみよう
A 重症片麻痺者の日常生活動作練習
1 座位保持練習
2 座位,立位保持練習
(1)座位-立位保持練習
(2)立位保持練習
3 歩行練習
4 寝返り練習
5 起き上がり練習
6 移乗練習
7 車椅子駆動練習
B 認知症患者の日常生活動作練習
1 起き上がり練習
2 車椅子からトイレへの移乗練習
3 車椅子駆動練習
付録 拒否的な認知症患者への対応
索引
序文
じつは、これまでの日常生活動作に関する書籍には、動作練習の方法はほとんど書かれていません。書かれているのは適正な動作手順だけです。重症片麻痺や認知症の患者さんは、動作手順を説明しても、そのとおり動作することはできません。したがって、私たちは書籍から有効な動作練習の方法を得ることはできませんでした。
本書には、だれもが実践可能で、効果的な日常生活動作練習の方法を記しました。重度の片麻痺や認知症を有した症例に対する治療内容やその効果が動画によって紹介されています。ご覧になれば、日常生活動作練習の大いなる可能性に気づくはずです。
序章では、達人が行う動作練習の凄味を感じていただきたいと思います。困難な動作が失敗なく、効率的に学習されていきます。達人の技に共通した無誤学習の原則をご覧ください。
I章では、まずコペルニクス的転回を求めています。能力障害は、機能障害だけでなく、知識、技術、動機づけの問題によって影響を受けるという発想の転換です。この考え方によって、対象者の動作能力の可塑性を感じることができるようになります。ついで、達人の技を構成する技法が解説されています。これを読めば、達人の技が特別なテクニックやセンスを必要としない学習方略であることを理解いただけるでしょう。引き続く動作指導体験を熟読し、それに倣って模擬大腿義足歩行や非利き手での箸操作の動作指導を行ってみてください。困難な動作を学習させる練習過程を実体験できます。それを繰り返すことで、達人の技を身につけられることでしょう。
II章では、治療効果がわかりやすい、動作障害の原因を分析できる新たなADL評価方法を紹介しました。特別な機器を用いなくとも、客観的に動作能力を評価することができます。動作練習を反復するだけでは、達人の動作練習のすばらしさは理解できません。この評価方法を利用し、動作練習の有効性を体感することこそが達人への近道となります。
III章では、重症片麻痺、認知症の患者さんに対する具体的な介入例について紹介しました。I章で説明した理論、介入方法がどのように活用されるのかご覧ください。きっと、患者さんの動作能力の回復具合に驚かれると思います。また、認知症でもあきらめないセラピストの姿にも注目していただきたいと思います。
本文のほとんどは、達人セラピストと若手セラピストの対話形式となっています。これは、若手セラピストにも理解可能な文章表現を心がけることで、初学者の方にも読みやすい内容となるように配慮したものです。
本書に掲載されている患者さんの動画はすべて、実際に患者さんが動作練習を行う様子を撮影した貴重な映像です。病院のリハビリテーション室や病室等で撮影されたため、スタジオのような撮影環境ではありませんが、リアルな練習風景を撮影することができました。撮影にご協力いただいた患者の皆様に心から感謝申し上げます。
本書で紹介された日常生活動作練習を1人でも多くのセラピストに実践していただき、対象者の日常生活動作能力の向上に寄与できることを願っています。
2016年5月
山ア裕司