看護師・検査技師・研修医のためのペースメーカー心電図が好きになる!改訂第2版
著 | : 山下武志/葉山恵津子 |
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ISBN | : 978-4-524-26554-1 |
発行年月 | : 2014年10月 |
判型 | : A5 |
ページ数 | : 164 |
在庫
定価2,750円(本体2,500円 + 税)
- 商品説明
- 主要目次
- 序文
- 書評
ペースメーカー心電図の判読法をわかりやすく解説した好評書の改訂版。ペースメーカーの仕組み、ペースメーカーモード、各種設定などの基本から、ペースメーカー心電図の12誘導心電図、ホルター心電図、運動負荷試験についてまで詳述。今改訂では、機器の進歩などを盛り込むとともに新章「心室刺激をしないようにする設定を知っておこう!」を追加。ペースメーカー心電図に手こずっている人、これから学ぶ人に最適の一冊。
I章 ペースメーカーってなに?
A ペースメーカー心電図は難しい?
B ペースメーカーはどんな仕組みなのでしょうか?
C ペースメーカーモードを理解しよう!
ペースメーカーモード3文字の意味は?
ペースメーカーモード4文字目の意味は?
D 知っておきたいペースメーカーの種類
AAI
VVI
DDD(VDD)
E 正しいペースメーカー心電図の法則(設定条件)を覚えておこう!
AAI
VVI
DDD(VDD)
II章 ペースメーカー心電図の12誘導心電図で気をつけることは?
A ペースメーカー心電図は12誘導心電図ではどんな波形になる?
ペースメーカーモードとその心電図波形の特徴
ペーシングスパイクの見つけ方
波形の特徴
電気刺激によるP波、QRS波が変化したら
B フィルターをオフにしよう!
C めまい・動悸などの症状がないかを確認しよう!
III章 ペースメーカー心電図のモニター心電図、ホルター心電図解析
A モニター心電図、ホルター心電図で見たいことは?
B どんな種類のペースメーカーが入っているかを考えよう!
心拍数トレンドグラムを見てみよう!
最低心拍数の心電図パターンを確認しよう!
C 代表的なペースメーカー不全の心電図を知っておこう!
センシング不全
ペーシング不全
D 心電図所見の規則性を見つけよう.そこにペースメーカーの特殊機能が潜んでいる!
ヒステリシス
スリーピングレート
ミニマムトラッキングリミット
セーフティペーシング
PVARP自動延長機能
ペースメーカー自体の設定によるもの
心房頻拍応答機能
E ペースメーカー不全を見つけよう!
最大R−R間隔をチェックしよう!
心臓が反応しない刺激スパイク(スパイクの後にP波もQRS波もないもの)の有無をチェックしよう!
ホルター心電図分析で主治医に報告したほうがよい所見は?
IV章 ペースメーカーを装着した患者さんにおける運動負荷試験
A 運動負荷試験で知りたいことは?
B 運動負荷試験開始時の基本心電図を確認しよう!
C 運動負荷極期で心拍数が急に減少しないかを確認しよう!
DDD、VDD
AAIR、VVIR、DDDR
D 植込み型除細動器を装着した患者さんにおける運動負荷試験
V章 心室刺激をしないようにする設定を知っておこう!
A ペーシングモード自動変更型
MVP(managed ventricular pacing)
SafeR
B A−V delay自動延長型
VIP(ventricular intrinsic preference)心室自己心拍優先機能
VI章 ペースメーカーの一歩上の知識
A 電磁波障害
ホルター心電図記録に際して
電磁波障害とは
携帯電話
B ICDってなに?
ICDの適応
ICDの仕組み
ICDの治療法
C CRT、CRT−Dってなに?
CRTの原理と適応
CRTの仕組み
CRTの治療法
CRT−D
D 遠隔モニタリングシステム
遠隔モニタリングシステムとは?
いつから始まった?
植込み機器の対象は?
使うことによるメリットは?
VII章 ペースメーカー心電図.練習問題
【付録】 ペースメーカー心電図.用語集
索引
本書の初版が出版されて約7年の歳月が過ぎました。幸いなことに、これまで多くの読者の方々からご好評いただき、7年間も生き残ることができたことを大変ありがたく思います。ある意味で特殊な「ペースメーカー」というデバイス、しかも心電図に絞った書物ということで、読者対象がかなり少ないかもしれないと感じつつも、自分たちの経験を共有することで少しでも役に立てたらという気持ちで始まった本でした。
昨今の医療は7年も経過すると、さまざまな意味で進化、進歩していきます。ペースメーカーもその例外ではありません。初版の基本となる事項は今もまったく変わっていませんが、そこに新しい技術が加わり、初版に掲載されていない情報も増加してきました。そこでこの第2版では、第V章として「ペーシングしないための特殊機能」を新たに書き加え、ペースメーカー周辺の知識をさらに整備しました。「ペースメーカーであるにもかかわらず、わざとペーシングしない」という機能は、ペースメーカーの役割と相反するものですが、そこにはここ数年で蓄積した医学の進歩があります。このような進歩は今後も継続していくことでしょう。
とはいえ、初版と同じように、本書はペースメーカーのすべてを網羅するのではなく、ペースメーカー心電図の大枠を理解するというコンセプトを守るようにしました。進歩した医学の中では、「すべてを知っている」ことより、「自分が知っていることと知っていないことがわかっている」ことのほうがずっと重要だと思うからです。知るべきことはやはりそれでも多くない……主要なポイントを押さえることからまず始めてほしい……看護師、検査技師、研修医など、これからペースメーカーを知りたいと思うすべての方々に役立ってほしいと心から願っています。
2014年10月
山下武志
葉山恵津子
ペースメーカーは1950年代に登場し、それまで徐脈性不整脈で命を落としていた患者さんを半永久的に救命することができ、また日常生活が妨げられていた患者さんのQOLを向上させることができるようになった。初期のモデルのジェネレーターは、段ボール箱ほどの大きさで命をつなぎ止めるだけの役割であったが、現在ではシンプルなペースメーカーであれば、500円玉程度の大きさで厚さも5mm程度と軽量化が進んでいる。これに反して、その機能やアルゴリズムの進歩・複雑化には目を見張るものがあり、実際にデバイス外来などで患者さんやペースメーカーの設定に直接関与していない看護師、検査技師、またたとえ循環器専門医あるいは不整脈専門医であっても、到底その機能やアルゴリズムを十分に理解しているとはいいがたい。
本書は、心臓血管研究所所長の山下武志先生と同研究所付属病院臨床検査室の葉山恵津子先生の共著で、好評であった2007年の初版に続く改訂第2版である。私は山下先生とは同い年で、共に心電学・不整脈学を専門とすることから、30年近くに及ぶ旧知の仲である。私たちが心電学・不整脈学を志し始めた1980年代後半から1990年代前半(今から二十数年前)は、ペースメーカーについて知っていなければならない知識は今ほどは多くなく、ペースメーカーモード(本書のI章)、ペーシングスパイク(II章)、ペースメーカー不全や一部の特殊機能(III章)くらいであった。それでも、本書のようにわかりやすい日本語の書籍が当時はなかったため、私は国立循環器病センターのレジデント時代に、同じレジデントの仲間たちと、ペースメーカーの英語書籍の輪読会をしたものである。しかし、本書のIII章でも記載のあるヒステレシス、ミニマムトラッキングリミット、セーフティペーシングやPVARPなど、日本語の説明を読んでもわかりにくい機能を英語で理解するのに苦労したことを今でも懐かしく覚えている。当時、実際の心電図をふんだんに取り入れた本書のようなわかりやすい日本語の書籍があれば、よりペースメーカーの理解が深まったであろうことは間違いない。
本書ではVI章でさらに、その後1990年代後半から本邦でも使用可能となった植込み型除細動器(ICD)、両室ペーシングによる心臓再同期療法(CRT)、ICD機能付きCRT(CRT-D)についても、わかりやすく記載してある。また、携帯電話やMRIの登場により問題となってきた電磁波障害や、現在ではデバイス外来の主流となりつつある遠隔モニタリングシステムについても紹介してある。さらに、不必要な心室刺激をできるだけ回避するための特殊機能についてもV章で新たに触れている。
本書がペースメーカー診療に携わる多くの医療従事者に読まれ、ペースメーカー理解の一助となり、書籍名のごとくまさしく「ペースメーカー心電図が好きになっていただける!」ことを期待する。
臨床雑誌内科116巻1号(2015年7月号)より転載
評者●日本医科大学大学院医学研究科循環器内科学分野大学院教授 清水渉